ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ここに居る事

 デパート。

 

 

 現実の世界で、ユメカとヒメカはデパートで買い物をしていた。

 久し振りのお出掛けに楽しそうなヒメカを眺めながら、ユメカはふと視界に入ったプラモ屋さんに目を向ける。

 

 以前この場所に来て買ったガンプラは、カルミアのトラックに轢かれて壊れてしまった。

 勿論あの時の事でカルミアを恨んでいたりはしないし、あの時のベアッガイのパーツが今はユメカのデルタグラスパーに流用されている。

 

 バンシィもヒメカとガンプラを一緒に作る思い出が作れて、ここでガンプラを買ったのはユメカにとって大切な思い出だった。

 

 

「お姉ちゃん? ガンプラ?」

「え? あ、ううん。違うよ。ちょっと見てただけ」

「あはは、お姉ちゃん本当にガンプラが好きなんだね」

「あ、あはは……そうかな?」

 せっかく妹と遊んでいるのに、ガンプラの事を考えてしまうのは申し訳ないと頭を掻くユメカ。

 しかし、ヒメカは不満そうにする訳でもなくガンプラが好きなユメカの事も好きなのだと笑顔で「そうだよー」と答える。

 

 

「本当は今日、ガンプラしたかったの?」

「うーん、どうなんだろ。確かにGBNにも行きたいけど、私はヒメカとも遊びたいから」

「……ありがと、お姉ちゃん」

 ユメカの言葉が嬉しかったのか、顔を赤くして俯くヒメカ。

 

「帰ろっか、お姉ちゃん」

「え? もう良いの?」

 時刻は夕方。

 確かに帰るのに早い時間ではないが、もう少し遊んでいても良い時間ではあった。

 

 

「私は充分お姉ちゃんと遊んだから。お姉ちゃんも、ガンプラしたいかなって」

「ヒメカ……。うん、ありがと。それじゃ、アオト君のプラモ屋さんでGBNをやって来ても良い?」

「うん。終わったら、電話してね。迎えにいくから」

「玄関からで良いよ。多分タケシ君も居るし、一人で帰れるから」

 言いながら、ユメカはヒメカとデパートではないプラモ屋に向かう。

 

 到着すると、丁度カルミアがログインしようとしていた所だった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GBN。

 

 

「……ボクは、ここに居て良いのかな?」

 ゆっくりと口を開くイア。

 

 それを聞いたケイとロックが「当たり前だ」と答えようとしたその瞬間───

 

 

「───当たり前だよ!!」

「そうっすよ!!」

「なーにしょぼくれた顔してんのよ、ほーらおじさん達が来たぜー。遊ぼうじゃないの」

 今日はGBNにログインしないと言っていた三人が、ReBondのフォースネストにやってきて口を揃える。

 

 

「ユメ!?」

「ニャムさんにおっさんまで、どうしたんだ? 今日は来ないんじゃなかったのか?」

「三人共……」

 振り向いたイアも、驚いた表情で三人を見て固まった。

 

 ユメは妹とお出掛け、ニャムは学校の課題、カルミアは仕事。

 今日は珍しく二人しかGBNにログイン出来ない日だった筈である。

 

 

「いやー、なんというかね。テンチョーさんが落ち着いて来たから今日はもう良いよって」

「ジブンは恥ずかしながら、GBNにログインしたいが為に課題を早急に終わらせてしまいまして」

「私も、帰りにちょっとやろうかなと思って。……そしたら、スズちゃんからイアちゃんの事聞いてカルミアさんと急いでログインしてきたんだ」

 言いながら、ユメはイアの元に走って来て彼女の身体を抱きしめた。

 

「ゆ、ユメ……?」

「イアちゃんはここに居て良いんだよ。イアちゃんは、私達の大切な仲間なんだよ。……イアちゃんに、私はここに居て欲しいんだよ」

 泣きながらそう言うユメに、イアは目を見開いて表情を歪ませる。

 

 

「逆に、ジブン達が此処に入れなかった事が申し訳ないと思ってるくらいっすよ。不安でしたよね、本当に……」

「おじさんはさ、イアみたいな子を一人知ってる。……その子は、もう消えてしまったんだけどな」

 イアに視線を合わせて、カルミアはこう言葉を続けた。

 

「……俺はもうあの子に会えない。本当に辛いんだ。もう二度と、あんな思いしたくない、させたくない。……イア、おじさん達が嫌じゃないなら、ずっと一緒に居てくれ」

「ニャム……カルミア……。ボク……」

 ニャムもカルミアも、ユメにならってイアに抱き付く。

 

 安心したのか、余程怖かったのだろうか、イアは二人の胸の中で泣き崩れてしまうのであった。

 

 

 

 その後。

 

「───そもそもなんでボクが怒られないといけないんだ!」

 泣き止んだイアは不満を垂れ流し、頬を膨らませる。

 

 話の内容は彼女が聞いたガンプラの声だった。

 

 

「それじゃ、あのペリシア・エリアのガンプラはイアに対して出て行け……みたいな事を言ってたのか?」

「んー、ニュアンス的にはそんな感じ」

 ロックの問い掛けにそう返事をするイア。

 泣き止んで話していくと、普段の彼女のような元気は戻ってきたようである。

 

「ちょっと気になる話っすよね。バグの発生理由はともかく、ガンプラがそんな事を言うなんて」

「とはいえおじさん達はガンプラが何を考えてるかなんて分からない訳じゃない。案外気まぐれなガンプラだったのかもよ? ほら、部屋に蚊がいる時気にならない時と気になる時があるでしょ。なんかふとした拍子に群がってるダイバーが鬱陶しく思っちゃったんじゃないの?」

「そんな理由でボクは攻撃されたの!?」

 目を丸くしてそう言うイアだが、ユメは「でも、一理あるのかも」と呟いた。

 

 そんなユメの言葉に、イアは「ユメまで!?」と泣き顔を見せる。

 そんな理由で殺されそうになったのなら、イアとしてはたまったものではない。

 

 

「データ量でサーバーに負荷が掛かって、その場所がガンプラにとって居心地のいい場所じゃなくなっちゃったのかもしれない。んーと、自分達のエリアに突然地雷原が出来たらなんとかしてそれを取り除かないと居ても立っても居られないよね?」

「どんな例えだよ」

「まぁ、でもそういう事か。多分、ガンプラ達はイアじゃなくてサーバーの負荷に怒ってたって事なんじゃないかな」

「ボクじゃなくて……?」

 ケイの言葉に、イアはそう言って首を横に傾けた。

 

 

「イアはやっぱり、悪くないって事だよ」

「……なるほど、ボクそのものに怒っていた訳じゃないと」

 未だに頭の上にクエスチョンマークを付けているイアだが、ケイ達の中で「そう考える物」だというのはハッキリする。

 

 イアは悪くない。

 誰がなんと言おうと、絶対に。

 

 

 

「ところで、君達ログアウトしなくて良いの? 親御さん達心配するんじゃない?」

 少しして唐突に、カルミアがそんな事を言った。

 

 考えてみたら既に夜も遅い。

 普通ならログアウトしたいところだが、カルミアの言葉を聞いてイアが少しだけ表情を曇らせたのをみてケイ達はお互いの顔を見合わせる。

 

 

「おじさんが居るから大丈夫よ」

「なんだ、おっさんここで寝るのか?」

「ぼ、ボクは一人でも大丈夫だぞ!」

「ちょっと夜更かししたくなっただけよ。ほらほら、子供は帰った帰った」

 カルミアはそう言って、ケイ達を強引に帰らせた。

 

 二人きりになったカルミアとイア。

 イアは少し気まずそうにカルミアから距離を取って、彼が動くのを待っている。

 

 

「昔さ」

 そう言って、カルミアはどこを見る訳でもなくフォースネストを見渡しながら口を開いた。

 

 

「ここに、レイアって女の子が居たんだ」

「レ……イア。確か、ボクの名前を決める時に……」

「そう。ここに居た、イアと同じELダイバーみたいな子だった」

「みたいな子?」

 カルミアの言葉に引っ掛かりを覚えたイアは、カルミアに近寄りながらそう問い掛ける。

 

「その子はELダイバーじゃなくて、NPCだったんだ。けれど、その子には自我があって、まるでイア達ELダイバーのようにこの世界で確かに生きているように思えた。……いや、きっと生きていた」

「生きていた……」

「……レイアは、GBNにバグを引き起こす要因だと認識されて運営にデータを消され───俺達に殺されたんだよ」

 そんな彼の言葉に、イアは目を丸くして固まってしまった。

 

 

 もしかしたら、自分もそうなるかもしれない。

 そんな事を考えると、身体が震えてくる。

 

 

「二年前、おじさんがGBNから離れてる間にレイアのような───いや、イアのような存在がGBNに現れた。第二次有志連合戦……サラと呼ばれるGBNで生まれた女の子の命を巡る戦いに勝ったビルドダイバーズは、見事にサラの命を守った。……おじさんはそれを見てな、悔しくてならなかった。レイアを助けられなかった事にじゃない……GBNがレイアを殺したのにサラを救った事がだ……」

「カルミア……」

「だけど、ケー君達と会ってReBondに入って……イアと出会って、その気持ちも変わった。……ケー君達は凄いよ。ちゃんとイアを守ろうとしてる。おじさんにはそれが出来なかった。……やっと、自分が何も出来てなかった事に気が付けたんだ」

 そう言って、カルミアはイアの頭を撫でた。

 

 レイアと同じ赤い髪の毛。

 けれど、彼女はレイアじゃない。

 

 

「……俺は、もう絶対に手放さねぇ。だから、安心してよ。イアにはおじさん達が付いてるから」

「……うん。カルミアの手、あったかいよ。……安心した」

 そう言って、イアは彼からゆっくりと離れてくるくると回ってから振り向く。

 

 

「ボクの事、よろしくね!」

「……イア」

 そんな彼女の表情が、カルミアの脳裏で一人の少女と重なったのだった。

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