ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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シャフリヤールの下で

 ペリシア・エリア。

 

 

 ニャムは発狂していた。

 

「うっひょーーー!! 最高だぜぇぇえええ!! これがMAXワタナベのガンプラぁ!! しかもこっちはヨシユキ(仮名)(かっこかめい)氏の!! あっちはもしかしてアラカワ先生のジオラマでは!? うっへへへへ、ふひひひひ、ここが天国か!!」

「随分と楽しそうにガンプラを眺めるね。私の所に来たという事は、やはり君もガンプラを愛するビルダーという事だ───改造ガンプラキラー」

 シャフリヤールのそんな言葉に、興奮していたニャムは一瞬で顔を青くしてまるでロボットのようにゆっくりと振り向く。

 

 人を責めるような表情はしていないが、含みのある言い方にニャムは恐る恐るこう口を開いた。

 

 

「その呼び名は返上したいところっすけど、やっていた事がやっていた事なだけに事実ですし批判はあえて受け取るっすよ」

「いや、私は批判するつもりはない。確かにガンプラは自由で、自由を否定するのは愚かしい事だ。……しかし、愛のない無用な改造に怒りを覚える気持ちは分かる」

 そう言って、シャフリヤールはペリシア・エリアのガンプラを眺める。

 

 上位ビルダー達が戦う為ではなく、こうして眺める為に作り上げたガンプラ。

 勿論、その完成度は戦う為に作られたガンプラと比べようと劣らない。

 

 

「───ここのガンプラは良い」

「そうっすね、ジブンもここのガンプラは本当に凄いって思うっす。少し前なら、きっと少しでも手の加えられたガンプラを見るだけで怒っていたかもしれないっすけど。あはは……」

「その自覚こそ、成長の証だ。君はよくガンプラを見ている。その力、私の元でさらに高めあげないか?」

 ニャムに手を伸ばすシャフリヤール。

 

「ガンプラに見惚れて忘れていましたが、その為にケイ殿より先にここに来た訳っすからね。ありがたく、シャフリヤール殿の御教授を承るっす!!」

「よし、私に着いてきたまえ」

 言われるがまま、ニャムはシャフリヤールに着いて行った。

 

 その先で待ち構えていたのは───

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ペリシア・エリアに到着したケイ達は、待ち合わせの場所でシャフリヤールが来るのを待っている。

 以前シャフリヤールの必殺技で吹き飛ばされた街の一片は、既に修復されていた。

 

 

「うぅ……今日は突然襲ってきたりしないだろうな。ボクはもうこりごりだぞ」

「マギーさんは大丈夫だって言ってたし、大丈夫だろ」

「いざとなったら私が守るからね! この前は一緒に居られなくて、とても悔しかったんだから!」

 ユメの言葉に、イアは「頼もしいな!」と笑顔を見せる。

 

 確かにユメのデルタグラスパーなら、この区域を突破するくらい造作もないかもしれない。

 

 彼女の機体の機動力は勿論の事だが───彼女は良く弾を避けるのだ。

 ReBondのメンバーの中で、メフィストフェレスのスズが引き金を引いてから狙撃を交わせるダイバーは彼女しかいない。

 それどころかスズの狙撃技術ならGBN全体で見てもかわせる人間は一握りだろう。

 

 

 ニュータイプとでも言うのだろうか。

 タイガーウルフの言う、この世界の己を完全にコントロール出来ているからなのか。

 

 彼女にはそういう、ガンダム作品で言うところのニュータイプ的な素質を感じざるを得ない。

 

 

「待たせてしまったね。ようやくあの筋肉から解放されたようだが、何か得るものはあったかな」

 そうして話している三人に、シャフリヤールが問い掛けた。

 

 ケイが素直に「はい」と答えると、シャフリヤールは不敵に笑う。

 

 

「ならば良し、次は私の番だ。君達には───ガンプラを作ってもらう!!」

 彼はそう言いながら、ペリシア・エリアの一角にある模型店のような施設の扉を開けた。

 

 その中は見かけ通りの模型店であり、アオトの家のプラモ屋のように様々なガンプラが置いてある。

 違う点といえばGBNへのログインマシン等が見当たらないくらいだ。それもその筈で、ここはそもそもGBNである。

 

 

「GBNに……プラモ屋さん?」

「なんだここ! 小さいガンプラが沢山置いてあるぞ!」

 首を傾げるユメに不思議な光景に目を輝かせるイア。

 

 不思議とはいうが、ユメとイアでは感覚が違った。

 ユメにとってはGBNは現実で作り上げたガンプラをスキャンして遊ぶ世界である。しかし、イアにとって───この世界にとってガンプラはスキャンされた物だ。

 

 この世界には存在しない物。

 

 

 現実で言う()()()()がそこにはある。

 

 

「キョウヤが言ってたな、現実の世界でのガンプラはこんな感じなんだって。ユメ達はあーやってガンプラを作ってるのか?」

 イアはそう言いながら、店の一角にある作業スペースを指差した。

 

 その場所では、ダイバー達が思い思いにガンプラを作っている。

 

 

「うん、そうだよ。だけどやっぱり、なんでGBNでガンプラを───あれ?」

 ふと、イアの指差す先に視線を向けるユメ。

 

 その先に映った人物に彼女は「あ」と口を開けて指を向けた。

 

 

「ニャムさんだ」

「お、本当だ」

 作業スペースではニャムがガンプラを作っている。

 彼女は「うぉぉおおお!」と叫びながら周りのダイバーとは違う雰囲気で作業に没頭していた。それで、ユメ達に気が付かないのだろう。

 

「なんで、GBNでガンプラを?」

「愛、だよ」

 ケイの質問にシャフリヤールはそう答えると、店の中にあるガンプラを三つ持って三人を作業スペースに座らせた。

 

 それぞれの前に置かれるガンプラはストライク、デルタプラス、Z。

 三人がバトルで使っているガンプラである。

 

 

「……あ、愛?」

「そう、愛だ。君達にはガンプラへの自らの愛を確かめて欲しい。さて、始めたまえ」

 そう言ってシャフリヤールは店の端まで歩いて行った。

 声を掛けて止められる雰囲気でもなく、言われた通りにガンプラを作るしかなさそうだ。

 

 

「とりあえず、やるか」

 言いながらガンプラの箱を開けるケイ。

 普段のように、箱を開けて取扱説明書を確認し、ランナーを分かりやすいように分ける。

 

 そこでふと、ケイはタイガーウルフとの修行を思い出した。

 

 

「GBNで細かい作業をするのって難しいと思ってたけど、なんか思ったより身体が自由に動くな。……さっきの修行の成果なのか?」

 GBNは仮想空間である。

 その世界の身体は自分のものではない為、多くのダイバー達は体を動かす時多少の違和感を覚えるもので───ケイもこれまでそれは例外ではなかった。

 

 しかし、今ふと細かい作業をしようとした時に身体がいつもより素直に動くと感じる。

 

 

 そんな彼を見ながら、シャフリヤールは「流石だな」とこの場に居ない誰かの顔を思い浮かべながら呟いた。

 

 

 

「コレ、ボクが乗ってるZか! ガンプラってこうなってるんだな! てか、これが動いてるのか? 中身スカスカだけど!」

「スカスカ……。あはは、確かに。でも、私達の世界ではこれがガンプラなんだよ。ガンダムの、プラモデル」

「へー。ユメやケイのは……なんか、違うな。似てるけど、ユメ達が乗ってるガンプラとは少し違う」

「あー、俺達が使ってるガンプラはミキシングとか改良したりしてるから」

 首を傾げるイアに、ケイは手を動かしながらそう口を開く。

 

「例えば、このストライクの肩のパーツ。ユメのデルタに似てるだろ? このガンプラのパーツを、別のガンプラに使う。これがミキシング」

「おー! そうやってくっ付けたガンプラをすきゃん? して、GBNで闘ってるのか! 凄いな! ボクのZもみきしんぐ? してくれ!」

「あははー、それはちょっと無理なんすよねー」

 三人の隣に座りながら、ニャムがそう口を挟んだ。

 

 先程までの気迫は薄れている───かと思いきや、手は高速でガンプラを作っている。

 ケイとユメは「これがニャムさんのガンプラ作り……」と口を開いて固まった。

 

「な、なんでだニャム!」

「Zはログアウト出来なくなってて、新しくログイン出来ないからアップデートが出来なくなっちゃってるんすよ。イアちゃんが現実世界に行けないのと何か関係があるとは思ってるんすけど、ジブンにはなんともって感じっすね」

 そう答えるニャムに、イアは「ぐぬぬぬぬ、ボクもみきしんぐガンプラで戦いたい……」と頬を膨らませる。

 

「ま、でもZは自分の自信作でもあるので機体性能は折り紙付きっすよ。あと、今回はガンプラを作るのを体験して欲しいのでミキシングの話は置いておきましょう」

 そう語るニャムの言葉を聞いて、ケイはふと思う事があった。

 

 

 実の所、ケイは素のストライクをガンプラでしっかり最初から最後まで作った事がないのである。

 

 彼が使っているストライクは元々はアオトの物だ。

 アオトが残したストライクの補修の為にパーツを作ったり、ユメのデルタグラスパーを作る為にパーツを触ったりとした事はある。

 しかし、ストライクそのものを使ったことが彼は一度も無かった。

 

「おー! Zはこうやって作るのか!」

「そうっすよ。次はこっちのパーツを───そのパーツは向きに気を付けて下さいね」

「ユメ凄いぞ! このちっさいZがちゃんと変形するらしい!」

「凄いよねー。私のデルタプラスも変形するんだよ、ほら」

「うわ! 凄いなユメ!」

 イアもそうだが、ケイは自分が乗っている機体なのに知らない事がある。

 パーツを切り取りながら、ケイは「こんな風になってたんだな……」と楽しそうに呟くのであった。

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