ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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改造ガンプラキラー

 GBNメインフロア。

 

 

「ふ、ヒーローは遅れてやってくる。……待たせたなケイ、ユメ。ロックリバー様が来たぜ!」

 フロアの中央で片目を閉じなら格好を付ける一人の少年。

 タケシことロックリバーは、その場で数秒間固まっていた。

 

 

「…………あれ?」

 しかし一向に何も起きないので、ロックは目を丸くしてコンソールパネルを開く。

 待ち合わせは、間違いなく表示されている時間と場所であっていた。それなのに先にログインしている筈の友人は居ない。

 

 それはそれで、ただ二人が遅刻しているだけだから良かったのだが。

 妙な挨拶と共に現れた金髪の男は良くも悪くも注目の的である。

 

 

「何あの人」

「たまにいるよな、あの手の痛い奴」

「自分の事格好良いと思ってるんだぜ、きっと」

「コーイチ、あの人どうかしたの?」

「見ちゃいけません」

「炭酸みたいな奴がいるな」

「いてててててて」

 

 

 この通り、周りの視線は釘付けで小言が漏れてくる始末だ。

 

「お、俺はスペシャルで……模擬戦で……二千回なんだよ……」

 ロックは顔を赤くして蹲る。もう恥ずかし過ぎて自分が何を言っているのか分からない。

 

 ふとコンソールパネルを開くと、メッセージが一通届いていた。彼はそれを恐る恐る開く。

 

 

 

 ユメです。タケシ君へ

 ケー君が突然フリーバトルを始めたので遅刻します

 

 追伸

 タケシ、悪い! 月曜日弁当分けてやるから許せ! byケイ

 

 

 

「なんじゃそりゃぁぁああああ!!! てか、ロックだって言ってんだろぉぉぉおおお!!!」

 突然絶叫するロックに、GBNのメインフロアは再び騒つくのであった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 機動武闘伝Gガンダム。

 ガンダム作品としては異色を放つ作品であり、物語は各国を代表する格闘家がガンダムを用いて覇権を争う格闘技大会───ガンダムファイトを舞台に進んでいく。

 他の作品にあるような戦争に利用される軍事兵器(モビルスーツ)ではなく、少年漫画のようなバトルキャラとしてのガンダムはモビルファイターと呼ばれていた。

 

 

「───ガンダムファイトォォ!! レディィィイイイ、ゴー!!!」

 掛け声と共に、ニャムの機体が地面を蹴る。

 

 

「素組みのゴッドガンダムか……っ!」

 それに対してケイはスラスターを吹かせて距離を取った。

 

 素組み。

 基本的に改造等のカスタマイズはせず、ストレートに組み立てられたプラモデルの事である。

 彼女のガンプラはまさにそれで、発売されているゴッドガンダムのプラモデルそのものだ。

 

 

 GBNのダイバーの多くが自分だけのガンプラをカスタマイズして作る中で、彼女のように素組みのガンプラで遊んでいるプレイヤーの比率はどちらかといえば少ない。

 しかし彼女のガンプラは合わせ目消しや塗装がしっかりとされていて、ガンプラをそのまま作ったよりも遥かに高い完成度で組み立てられている。

 

 ビルダーとしての腕はその辺のダイバーとは桁違いだ。

 

 

 

「その通り! 機動武闘伝Gガンダムより、ゴッドガンダム。ニャム・ギンガニャムがお相手するっすよ!!」

 歯切れ良く声を漏らしながら、ニャムは両手を合わせて腰を落とす。

 するとゴッドガンダムも同じ姿勢を取った。モビルファイター特有のモビルトレースシステムだ。

 

 

「格闘機相手に距離を取る、基本中の基本っすね。しかし───」

 機体と動きをシンクロさせたニャムは、上空へと飛んだストライクを見上げながら口角を吊り上げる。

 

 

「───初めから全力で行くっすよ。……流派東方不敗、最終奥義ぃ!!」

 合わせた手を上空へと向けるニャム。ゴッドガンダムの手が黄金に輝いた。

 

 

「石破ァ……天驚拳……ッ!!!」

 刹那、ゴッドガンダムの両手から手が放たれる。比喩表現ではなく、モビルスーツよりも大きな手の形をしたエネルギー弾が放たれたのだ。

 

「何それ必殺技ぁ!?」

「しまった……っ!」

 驚くユメの前で、ケイは苦い表情をしながら機体を翻す。

 ストライクのやや上側に放たれた技を避けるには機体を降下させるしかなかった。

 

 しかし、それこそが彼女の作戦だと───わかっていてもそうするしかない。

 

 

「作戦通り!」

 高度を下ろしたストライクBondに肉薄するゴッドガンダム。不安定な姿勢からでも反撃の為にライフルを放つが、ニャムはそれを軽々しいフットワークで避けてみせる。

 

「反撃してみせるとは中々っす。機体のバランスも上手く作られてる。……が、しかし!!」

 そうしてストライクの左側面に回り込んだゴッドガンダムは、右足を上げて回し蹴りを繰り出した。

 ストライクの左肩に回し蹴りが直撃して、機体を弾き飛ばす。

 

 

「……っ、この!!」

 吹き飛ばされながらも自慢のスラスターで機体の制御をしながらザンバスターを構えるケイ。

 しかし放たれたビームライフルはクロスされた腕で受け止められてしまった。完成度が高い証だ。

 

 GBNのガンプラの強さは、作ったガンプラの完成度に依存する。

 

 

 

「……お、オーバーダメージ。左腕が」

「ど、どうしたのケイ君?」

「左腕をやられた……」

 一度の攻防。一撃の攻撃だったが、ダメージを受けたストライクBondの左腕は操作不能に陥っていた。

 それだけの威力を放てる程に、彼女のガンプラは完成されている。

 

 

「その程度っすか。威勢の割には甘々っすねぇ」

「……まだ始まったばかりだろ」

 強がるケイだが、これだけの攻防で彼には分かっていた。彼女が口だけで他人の事を馬鹿にしている訳ではないという事が。

 

 

 全身のデティールへの拘りや、甘えを許さない繋ぎ目消しに塗装。

 ビルダーとしての腕に多少なりともの自信があるケイだが、目の前の彼女は格が違う。

 

 

「……いいや、一撃当てれば分かるっすよ」

 そんな彼女───ニャムは目を細めて低い声でそう言った。

 

 

「フェイズシフト装甲を有するストライクなのに格闘攻撃で一撃で動かなくなる左腕。悪くはないっすが、ビルダーとしての腕は半人前っす」

「そんな事分か───」

 続く言葉に言い返そうとするケイだが、ニャムはそんな彼の言葉を遮ってさらにこう続ける。

 

 

「───それ以前に、その無駄なカスタマイズをするガンプラへの愛が雑っす」

 低い声でそう告げるニャム。彼女の言葉に、ケイは「な……」と口を開いて固まった。

 

 

「クロスボーンガンダムのバックパック……。確かにX字の大型スラスターは木星重力下でも機動力を確保出来る素晴らしい発想による物っすが、それは本来クロスボーンガンダムが使用するために設計された推進器っす。そしてクロスボーンガンダムの重量は装備込みでも25t。対するストライクの重量はご存知っすか?」

「え? えーと、え?」

 唐突に問い掛けられたケイは戸惑って固まってしまう。一応、彼だってガンプラが好きでガンダムが好きだ。

 自分の愛機の事はそれなりに知ってはいたが、どうも困惑して言葉が出ない。

 

 

「約65tっす。クロスボーンガンダムの倍以上。全高だってストライクの方が大きい。……そんなストライクにクロスボーンガンダムのスラスターを装備しても、本来の性能の半分も引き出せるか怪しい所っすよ……っ!!」

 言いながら、彼女は地面を蹴る。同じく、ゴッドガンダムも地面を蹴って跳躍した。

 

 ストライクの上を取ったゴッドガンダムは、腰に装備されたビームサーベルを抜いて振り被る。

 ケイは推進器を全て左に向けて、目一杯スラスターに火を付けた。横移動でゴッドガンダムの攻撃を交わしながら、ビームライフルを放つ。

 

 

「単刀直入に! そのガンプラはストライクの万能性もクロスボーンガンダムの機動性も損なっている! 欠陥品って事っす!!」

 ライフルを屈んで交わし、そのまま地面を走ってストライクに肉薄するゴッドガンダム。

 懐に潜り込んだその手でザンバスターを掴むと、黄金に輝いた拳がライフルの銃身を握り潰した。

 

 

「……っ!」

 すぐさま頭部バルカンを放ちながら距離を取る。しかし直撃した筈のバルカンはゴッドガンダムに傷をつける事もなかった。

 

「なんて出来だよ……っ!」

 舌打ちをしながら潰されたザンバスターの銃身を切り捨て、ビームザンバーを展開する。

 三度肉薄してきたゴッドガンダムのサーベルとザンバーが鍔迫り合って火花を散らした。

 

 

「だから改造ガンプラは嫌いなんすよ! モビルスーツへの理解がまるでなっていない。兵器というのはその開発に沢山の人が関わって、計算され尽くした結果完成される物。そう、もう完成された物なんす。既に完璧、改良の余地なんてない。否、あんたらのやってるカスタマイズなんてのは改良ではなく改悪っす!! ガンプラはそのまま使ってこそ、その真の輝きが見れるんすよ!!」

 猛攻。鍔迫り合ってはいるが、圧倒的にゴッドガンダムがストライクを押している。

 

 

「だからジブンは、全ての改悪ガンプラ使いに引導を渡す!!」

 切り上げ。ゴッドガンダムのビームサーベルは、ついにビームザンバーの持ち手を切り裂いた。

 武器を失ったストライクは後ずさるも、逃げられる距離ではない。

 

 

「……っ!」

「そこです……っ!」

 ビームサーベルを放り投げ、片手を持ち上げるゴッドガンダム。その拳は黄金に光り、ストライクの頭部を鷲掴みにする。

 バルカンで引き離そうとするが、放たれた銃弾は全て蒸発した。ストライクの頭部を握り潰さんと、その拳が真っ赤に燃える。

 

 

「もし君がちゃんとエールストライクを使っていれば、さっきの石破天驚拳だって上昇で避けれたんすよ。エールストライカーにはそれだけの性能がある。……それを切って自分の自己満足でガンプラを改造した己のミスで君は負ける。モビルスーツの性能を生かさずに君は負ける!」

「なにを……」

「ケイ君……っ!」

 足掻こうとするが、ゴッドガンダムはストライクを頭ごと持ち上げて動けない。

 武器をなくして文字通り手も足も出なかった。

 

 

「これからは改造ガンプラなんて使わず、ちゃんと正規のガンプラでGBNを楽しむ事っすね。……終わりっす」

 低い声でそう言うと、ゴッドガンダムの拳が更に強く光り出す。ストライクの頭部は融解し始め、ケイのモニターは真っ赤な警告画面だらけになっていた。

 

 

「───ガンダムファイト国際条約第一条! 頭部を破壊された者は失格となる!」

「なんの話!?」

「アニメの話!」

 ユメの質問に答えながらも何かないのかと模索するケイ。

 

 

 

 確かに彼女の言う通り、俺は未熟なんだろう。

 それでも、守りたい信念があるんだ。負けたくない。負けられない。

 

 

 

「ジブンのこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!! ばぁぁぁくねぇつっ!!! ゴォォォッド───ファンガァァァアアアアッ!!!!」

 ゴッドガンダムの拳が炎を放つ。爆炎がストライクを包み込み───

 

 

「───勘違いするな……っ!!」

 ───ゴッドガンダムが弾き飛ばされた。

 

 

「……な、何が起きたっすか!?」

 爆煙の中から弾かれたゴッドガンダム。ニャムは自分の機体がなぜ吹き飛んだのか分からずに辺りを見渡す。

 しかし視界に入るのは煙に包まれたストライクだけだ。煙の中から漏れるメインカメラの光がゴッドガンダムを睨んでいるように見える。

 

 

「倒せていない……? き、君……一体何をしたんすか?」

 武器もなしに反撃なんて出来なかった筈だ。なのに、どうして? 

 そんな疑問は爆煙が晴れ始めて視界に映るストライクを見て晴れる。ストライクが何かを持っていた。

 

 その何かは機体の腕と同じ程度の大きさで、今度は何処にそんな武器を隠し持っていたのか疑問に思う。

 しかし視線を持ち上げると、その答えはすぐ側にあった。

 

 

「左……腕?」

 爆煙の晴れた平原に立つストライクは、左腕の肘から先が無くなっている。

 ストライクが手に持っていたのは自身の左腕だった。それでゴッドガンダムを殴ったのである。

 

 

「なんでストライクでシロー・アマダみたいな事してるんすか!!」

「……これはガンダムファイトじゃない」

 驚くニャムに、ケイは静かにそんな言葉を投げ掛けた。

 

 同時にストライクはスラスターを吹かせ、ゴッドガンダムに肉薄する。

 怯んだニャムは両手を交差してガードの体勢を取った。

 

 

「武力介入でも、戦争でもない!!」

 右腕を振り上げて、手に持った左手を叩き付ける。衝撃で地面がえぐれ、ゴッドガンダムが膝を着いた。

 

「だったらなんだって言うつもりすか!!」

 言い返しながらモニターに映る警告表示に冷や汗を流す。

 反撃の為に両手を開いた。

 

 

「これは───」

「この……っ! どこからそんなパワーが……っ!」

 ゴッドガンダムの拳がストライクへと向かう。しかしその前に、ストライクの()がゴッドガンダムの頭部を殴り飛ばした。

 

 

 

「───ガンプラバトルだぁ!!」

 殴り飛ばされたゴッドガンダムが地面を転がる。

 

 

 巻き起こった風に、マントが揺れていた。




改造ガンプラキラーの名は伊達じゃない。
そんな訳でバトルシーンが続きます。ガンダムのバトルシーンって書くの大変ですね……っ!
前回の更新でランキングに乗せてもらいました。本当にありがとうございました。

今回はニャム・ギンガニャムのキャラデザを公開します。

【挿絵表示】

ミス属性過多って感じですね。ネコ耳はネタバレ()


読了ありがとうございました!
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