ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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謝罪

 カルミアは困惑している。

 

 

「ここどこよ……。おっさんなんか拉致ってもしょうがないでしょ」

 ニャムは先にシャフリヤールの元へ行ったということで、彼は先にマギーの元を訪れていた。

 

 しかし、マギーは特に彼と修行をしようとする訳でもなく───カルミアをとある場所に連れて来たのである。

 

 

 何もない。

 逆に不思議な空間にポッカリと穴が開いて、マギーはカルミアに着いてきなさいと目で諭した。

 

 

「あら、需要はあると思うわよ」

「勘弁して下さい」

 苦笑いを漏らしながら進んだ先。

 

 そこにいたのは、SDガンダムの姿をした一人のダイバー。

 

 

「……誰よ、あんた」

「始めまして、かな。私はGBNゲームマスター、カツラギ。……君の大切な友人の命を奪ったゲームの責任者だ」

 ───ゲームマスターカツラギ。

 

 このGBNの責任者である。

 

 

「テメェが……」

 カルミアはその手を強く握りしめた。

 

 レイアはGBNの運営に殺されたと考えるなら、その運営の責任者であるゲームマスターは彼女の仇でもある。

 

 

「私を殴りたければ殴りたまえ」

 それはカツラギも承知の事だ。カルミアの気持ちは分かる。

 

 

「……今ここでアンタを殴ろうがぶちのめそうがぶっ殺そうがあんたはどうともならないしレイアは帰ってこない。でもな、ここでレイアは殺されたんだよ! あんたらにな!」

「その通りだ」

 カツラギは静かにそう返した。

 

 カルミアは一度目を閉じてから、大きな溜息を吐いて目を開く。

 目の前のSDガンダムのアバターは真っ直ぐにカルミアの目を見ていた。

 

 

「……おじさんはタダのゲームのプレイヤーだ。ゲームのシステムとか、バグとか、データとか、良く分からんのよ。だからレイアが殺された事に意味があるってのは理解出来ても納得出来ない。それにあんたらがレイアを殺して、俺達に寄越した連絡はバグの消去の詳細だった。セイヤがこの世界をぶっ壊そうとする気持ちを俺はまだ完全に否定しきれない。あんたを本当に殺せるなら殺してやりたいと思ってるくらいだ。それはセイヤも同じだろうよ。……いや、アイツは違うのかもしれないけどさ」

「違うとは?」

 カツラギの問いに、カルミアは目を細めてこう続ける。

 

「セイヤはレイアの事が好きだったんだ。好きな奴を殺されたから、復讐をしてる。あんたを殺したってしょうがないんだよ。……あんたらの、レイアを殺したGBNの運営の一番大切な物を奪うのがセイヤの目的なんだ」

 レイアの仇なら、カツラギや運営の人間を標的にすれば良い。

 

 

 しかし、これは復讐なのだ。

 

 

 大切な者を奪われた男の復讐なのだ。

 

 

「やはり……」

「大方セイヤの動向を教えて欲しいからマギーさんはおじさんをここに連れて来た訳でしょうけど?」

「……ごめんなさいね。でも、私達も───」

「分かってますとも。ただ、おじさんもセイヤが今、何をしようとしてるのか分かってる訳じゃない。おじさんがセイヤといた時に建てた計画に、チャンピオン殿の言ってたELダイバーが行方不明になってるって話と関係ありそうな計画はなかった」

 そこまで言って、カルミアはふと眉間に皺を寄せる。

 

 

「……なるほど、あの大規模スコア戦。あんたら分かってて仕組んだな?」

「その通りだ」

「本当にプレイヤーの俺達やELダイバーのイア達の事は何も考えてないのね……」

「そんな事ないわ。ELダイバーの所属してるフォースの近くには実力のあるフォースを置いて、事情も話してあったもの」

「……へぇ」

 マギーの言葉に、カルミアは目を細めてカツラギに視線を向けた。

 

 表情の動かないSDガンダムのアバターの男は何を考えているのか分からない。

 

 

「……ま、おじさんの知ってる事なんて限られてる。なんかあのイベント戦の時、アンチレッドのメンバーがおじさんの知る頃からさらに増えたのもおじさんは知らなかった訳だし。一応、喋れる事は喋るけど───」

「いや、今日はその為に君をここに読んだ訳ではない」

「───は?」

 カツラギは驚いているカルミアの目の前まで歩く。そして、その身体は突然光りだした。

 

 

「……あんたは?」

「初めまして、はおかしいな」

 光の中から現れる人間の姿のアバター。

 

「私はカツラギ。このGBNのゲームマスターだ」

 カツラギの別の姿。

 

 その姿は、()()の人間であるカツラギと同じ姿をしている。

 

 

「今日は君に謝りたかったんだ」

 そしてカツラギは、その姿でカルミアに深く頭を下げた。

 カルミアの表情が歪む。

 

 

「……それを、もっと早く俺じゃなくてセイヤにやってればな!!」

 胸倉を掴んだ。カツラギの視線は、SDガンダムの時のように動かない。

 

 その瞳は真っ直ぐにカルミアの目を見続けている。

 

 

「レイアを殺して、謝って済むなんて俺は思ってない。けれど、あんたらはただセイヤの傷を抉るだけだった! サラを救ったように、もっとやれる事があっただろうがよ。俺達大人は、若い子や生まれてくる命を守るのが仕事だろうがよ!! それを……どうしてあんたらは───」

「すまなかった」

 謝る事しか出来なかった。

 

 

 二年前。

 サラを救ったのは自分達ではない。

 

 六年前。

 イリヤを殺したのは自分達である。

 

 

 他にも沢山の命を知らず知らずの内に奪っていたかもしれない。

 

 

 

 だからこそ。

 

 

「───我々はこれ以上、間違えられない」

「当たり前だ。……次間違えたら、俺はお前を本当に殺してやる」

 カツラギを突き放して、カルミアはコンソールパネルを開いた。

 そこで、とあるデータをカツラギに送り付ける。

 

 

「おじさんが抜ける前のアンチレッドの情報、覚えてるだけ。後コイツは普通に個人情報だけどセイヤの住んでた場所、経営してる会社の場所。じけんを起こしてる訳じゃないから家宅捜索とか出来ないだろうけど、探偵ごっことかは出来るでしょ」

 そう言って、カルミアはカツラギに背中を向けた。

 

 

 セイヤを止める。

 その目的は一緒だ。

 

 

「……悔しいけど、レイアは確かにバグったCPUだった。けれど、イアやサラ達のようやELダイバーはもう命として認められてる。セイヤがそれを殺すのはだけは、止めなきゃいけない」

「我々は全力で彼の野望を阻止する。だから、君達にも協力して欲しい」

「……分かってるよ。分かってるから、分かってるけど───でもおじさんはね、ただこの世界を楽しむダイバーの一人でもあるんだ。そこを、履き違えないで欲しい。おじさんは今、ReBondのカルミアなんだから」

 そう言って、カルミアらカツラギの元を去った。

 慌てて着いていくマギーを見送り、カツラギはカルミアから渡されたデータに目を倒す。

 

 

 その内の一つに一枚のスクリーンショットが残されていた。

 

 レイアとセイヤ。

 カルミアが撮ったのだろうツーショットの写真。

 

 二人は笑っている。

 

 

「……ただこの世界を楽しむダイバーの一人でもある。そうだ、だからこそ我々はもう間違えられない」

 カツラギは強く拳を握った。

 

 

「───それに、問題はアンチレッドだけでもなさそうだからな」

 振り向いたカツラギの視線にモニターが映る。

 

 そこに映し出されたのは───

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 シャフリヤールの元を離れ、ケイ達はマギーのフォースネストを訪れていた。

 

 

「あの色々凄い人はまだか?」

 しかし、フォースネストにマギーの姿は見当たらない。

 

 曰く、カルミアと用事があるからという事で少し遅れるとの事。

 待っている間、ケイ達はアダムの林檎メンバー達に熱いおもてなしを受ける。

 

 普通にジュースが美味しかった。

 

 

「ただいまー」

「お、カルミア! 遅かったじゃないか!」

「待たせたわねー。おじさん到着よー。何々ー、おじさんが居なくて寂しかったのかー?」

 口角を吊り上げてイアの頭を撫で繰り回すカルミア。そんな彼の姿を見て、マギーは安心した表情を見せる。

 

 

「……あなた達にイアちゃんを任せて良かったわ」

「どうした? カルミア。なんの話してたんだ?」

「別にー。大人の話」

「えっちな話か!」

「ニャムちゃんか。子供に変な事教えたの」

「なんでジブンが真っ先に疑われるんすか!?」

 目を丸くするニャム。カルミアを中心に笑いが溢れた。

 

 そこに、GBNへ復讐をしようとしていた男はもう居ない。彼はもう、ReBondのカルミアなのである。

 

 

 

「───さーて、今日最後の修行よ。あの二人の修行を乗り越えたケイちゃん達に、私達からとっておきの主義! 心してかかりなさい!」

「最後の主義……」

「何をするんだろう?」

「何でも来い! ケイが何とかする!」

「ケイ殿任せなんすね」

「おじさん殆ど何も修行してない……」

「修行内容は───」

「「「修行内容は?」」」

「───私達とのガチンコバトルよ!!」

 マギーの背後に現れるタイガーウルフとシャフリヤール。

 

 かつて無い強敵とのバトルが始まろうとしていた。

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