ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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三対一

 刃が重なる。

 

 

「やるじゃない、ケイちゃん」

「今だ、ユメ!!」

 マギーのガンプラ、ラブファントムのビームカマをビームサーベルで受け止めるケイのクロスボーンストライクBond。

 

 その上空から、ユメのダブルオーデルタグラスパーが変形を解除し真っ直ぐに向かったのはマギーのラブファントムではなく───後方で構えるシャフリヤールのセラヴィーガンダムシェヘラザードだった。

 

 

「隙あり!!」

「なるほど、本命は私か! GNフィールド!!」

 すかさずGNフィールドを展開するシャフリヤール。対するユメは実体剣であるGNソードIIIを振り下ろす。

 

「実体剣なら!」

「なるほど、しっかりと設定を理解している」

 GNフィールドは機体を全方位から守る強力なシールドだ。

 しかし、その特性上実体剣ならばシールドを破る事が出来る。

 

「だがしかし!」

「嘘!?」

「ユメちゃん! 深追いはなしっすよ!」

 GNソードIIIを掴み上げるシャフリヤール。思わぬ反撃を貰いそうになったユメの機体を、ニャムのターンXが飛ばした腕で掬い上げた。

 

「リスク管理もバッチリか」

「いつまで余裕ぶっこいてられるっすかねぇ! シャフリヤール氏!」

 そのまま、分離したターンXの両手足がセラヴィーガンダムシェヘラザードを囲む。

 そして放たれるビームを避けようとスラスターを吹かせた彼の機体を、一筋のビームが襲い掛かった。スズの狙撃である。

 

 

「……確かに、厄介だ」

 GNフィールドで直撃は防いだが、スズの狙撃はシャフリヤールにとっても脅威だった。

 

 なにより、彼の機体の強みはその圧倒的な火力である。

 しかしフィールドの建物がなんとか狙撃の遮蔽になっている関係上、安易に火力を前に出して建物を消しとばして仕舞えば格好の的だ。

 

 

「このまま押し切るっすよ!」

「さて、そうも長く上手く行くものかな」

 しかし、不適な笑みを見せるシャフリヤール。

 

 ニャムにとって気掛かりなのは、この場に居ないタイガーウルフだろう。

 

 

 そしてその憶測通り。

 

 彼はスズの狙撃を攻略する為に動き始めていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ロックとスズのモニターにカルミアとイアの顔が映る。

 

 

「はーい、お二人さん。悪い知らせが二つありまーす」

「おっさん……そういうのは良い知らせと一緒に持ってくる物だろ」

「んな事言われても悪い知らせしかないから仕方ないのよ。イアー、二人にも教えてあげてー」

 そう言うカルミアに続いて、お留守番で観戦兼監督役のイアはこう話を続けた。

 

「ニャムからの通信だと、わんこ───えーと……タイガーウルフの姿がないらしい。そんで、今めっちゃ早い速度でこっちに向かって来てる反応がある」

「そういうのもう少し焦って言おうぜ!?」

「どっちだ」

「三時!!」

「よーし、迎撃体制。一人で突っ込んでくる犬っころをなんとかするわよー。……ま、犬じゃなくてウルフなんだけども」

 一斉に同じ方角を向く三機のMS。

 静かな廃墟都市の傍で、先に動いたのはカルミアのレッドウルフである。

 

 

「炙り出してやるかね……」

 対艦ミサイルと同様に連装ミサイルを発射するカルミア。正面の建物が砕け、爆炎が舞った。

 

 その中から一機のMSが突貫してくる。

 

 

「三対一か、上等だ……!」

「タイガーウルフ師匠!!」

「舐められた物よねぇ」

「……一人で来るとは」

 同時に銃口を向けるカルミアとスズ。

 多彩な武装を搭載するレッドウルフとサブアームにより四つの武装を同時に操るサイコザクレラージェの弾幕はタイガーウルフですらそう簡単には寄せ付けない。

 

 ザクマシンガンにバズーカ、ビームバズーカにビームマシンガン、ミサイルにメガランチャー、地面に罠として設置されていたインコム。

 その殆どを最小限のダメージにで掻い潜り、タイガーウルフは両肩から伸びる腕でマシンガンを受け止めながら一気にスズに肉薄した。

 

 

「うぉぉぉおおおお!!!」

「……コイツ」

 ゲシュマイディッヒパンツァーで拳を受け止め、その陰で逆手持ちにしたヒートホークを二本構えるスズ。

 盾を持ち上げて弾き返したタイガーウルフのジーエンアルトロンに向けヒートホークを切り上げるが、タイガーウルフはそれを足で蹴り飛ばして一度距離を取る。

 

「今の攻撃を防ぎ切り、あまつさえ反撃してくるとはな」

「……今のカウンターで仕留めれないのか」

 狙撃と遊撃特化のサイコザクレラージェが構えるヒートホーク。隠し玉のつもりで、文字通りゲシュマイディッヒパンツァーの陰から攻撃したつもりが反応だけで交わされた。

 

 

 これが虎武龍のタイガーウルフ。

 しかし、スズは不敵に笑って見せる。

 

「───本命は私達じゃない」

「───何?」

「トランザム!!」

 束の間の攻防。

 参戦していなかったロックがトランザムでタイガーウルフの背後を取った。

 

 

「貰ったぜ!!」

「舐めるな!!」

 ビームサイズを根本から受け止めるタイガーウルフ。そしてロックごと撃ち抜くつもりで放たれたカルミアとスズの攻撃を、タイガーウルフはデュナメスHellのGNフルシールドを盾にするように姿勢を変えて受け止める。

 

「なろぉ!!」

 蹴り飛ばし、GNソードⅣを投げるロック。タイガーウルフはそれを弾き飛ばすと、今度は地面を叩き割って岩盤を捲り上げた。

 それを盾にして銃弾を防ぐと、その岩盤をカルミアに投げ付けながらロックに肉薄する。

 

「ちょっとなんなの!?」

 降って来る岩盤をなんとかライフルで粉々に砕くカルミア。その眼前で、タイガーウルフはロックの機体をスズの側に投げ飛ばし───カルミアに猛進した。

 

 

「狙いは俺!?」

「おい邪魔だロック……!」

「んな事言われても……!」

 投げ飛ばされたデュナメスHellと衝突して動けないサイコザクレラージェを尻目に、ジーエンアルトロンの拳がレッドウルフを襲う。

 カルミアは腰の隠し腕を展開し、ビームサーベルを構えてそれを受け止めた。サーベルをものともしないその拳そのものがジーエンアルトロンの()なのだろう。

 

 

「受け止めたか。やるじゃねーか」

「おじさんも伊達じゃないのよね」

 拳と刃を交えるタイガーウルフとカルミア。しかし、レッドウルフの重装甲ではジーエンアルトロンのスピードには追い付かない。

 

 カルミアは次第に押されていった。

 

 

「よく時間を稼いでくれたぜおっさん!!」

「しまった───」

 そんな二人に向けて、体制を立て直したロックがビームサイズを構え突撃する。

 

 二人の鍔迫り合いから、完全に背後を取った。

 避けることは出来ない。ロックが勝ちを確信して振り下ろされたビームサイズは、確かにジーエンアルトロンの左肩と左足を切り飛ばす。

 

 勝った。

 三人がそう思ったその時だった。

 

 

「───しまった、なんてな……!!」

 不敵に笑いながら、タイガーウルフは片足だけで地面を蹴ってその場を飛び去る。彼の狙いは───

 

 

「───何!?」

「───違う、ロッ君! 奴さんの元々の狙いはスズちゃんだ!!」

 ───彼の狙いは初めから一つだ。

 

 

「───吼えろ!! ジーエンアルトロン!!」

 最早右半身しか動かない機体でスズのサイコザクレラージェに突進するタイガーウルフ。

 

 しかし黄金に輝くその機体は、片腕と肩のサブアームだけでだけでスズの防御を崩し、蹴り飛ばしてバランスを崩す。

 踏み込み、その剛腕がスズの機体を貫くまで刹那。

 

 ロックの援護も間に合わない速度でタイガーウルフはスズのサイコザクレラージェを撃破した。

 

 

「くそ、やられたぜ……。流石師匠だが、流石に三対一は俺達の勝ちだな」

「……それはどうかな。いや、俺の勝ちだ」

 ボロボロになり、もはや動かないジーエンアルトロン。

 

 ロックは「流石にここからは勝てないだろ」と目を細める。

 しかし、その刹那───

 

 

「待てよ……ロッ君、回避!」

「は?」

「何ぼさっとしてる! 私がやられたら来るぞ……!」

 観戦室からスズの怒鳴り声。

 

「高熱源反応!! 二人共逃げろぉぉ!!」

 続いてイアの叫び声が木霊した。

 

 

「まさか……」

「この攻防は()()の勝ちだ」

「吹けよシムーン……アルフ・ライラ・ワ・ライラ!!」

 閃光が地表を包み込む。

 

 その場にいた何もかもが、そこには残らなかった。

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