ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ゴッドフィンガー

 獣が駆ける。

 

 

「───吼えろ!! ジーエンアルトロン!!」

 スズのサイコザクレラージェを貫くジーエンアルトロン。

 

 三対一の戦いで既に満身創痍の機体の中で、しかしタイガーウルフは不敵に笑っていた。

 

 

 

「───ケイ殿! スズちゃんが!」

「でもタイガーウルフさんを倒せたなら充分じゃないかな?」

「いや、ユメ! シャフリヤールさんをフリーにするのはまずい!!」

「え?」

 マギー、そしてシャフリヤールと戦っていた三人はタイガーウルフとの戦闘結果をイアから伝えられる。

 

 タイガーウルフを戦闘不能まで追い込んだのは良い。

 しかし、スズが倒されたという事は狙撃による牽制がなくなったと言う事だ。

 

 

「流石タイガちゃんね」

「……当然。そして、私は私の仕事をする」

 建物から飛び上がるシャフリヤール。スズの狙撃がない以上、遮蔽を気にする必要はない。

 

 

「ヤバいぞコレ!」

「イア、タケシ達に回避するように伝えてくれ!」

「高熱源反応!! 二人共逃げろぉぉ!!」

「間に合わないはしない」

 不敵に笑うシャフリヤール。

 

 

「させないっすよ!!」

「ふふ、勿論……させないわよ!」

 シャフリヤールを止めようと三人が動くが、マギーがその三人を同時に相手にする。一瞬の攻防、三人はマギーを突破する事が出来なかった。

 

 

「───吹けよシムーン……アルフ・ライラ・ワ・ライラ!!」

 放たれる必殺技。

 

 ロックとカルミアを光が包み込む。

 これで三対ニ。決着はこの譜面で決まる事になった。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 観戦室。

 

 

「避けろよロックぅぅ!!」

「いや無理だろ!! アレは避けれないだろ!!」

「あの距離の砲撃はねぇ。おじさんも足が遅いしどうしようもないわ。スズちゃんをフリーにしたおじさん達の負けよね」

 撃破されて観戦室に戻り、イアにポコポコと殴られるロック。

 

「良いバトルだった。正直、あそこまで苦戦するとは思わなかったぜ」

 そんな彼等に、タイガーウルフが声を掛ける。

 

「……実質、三対一で負けたような物だがな」

「そんな事はない。シャフリの野郎が動かなきゃ、俺の特攻は一人倒して終わりだった。……ま、そこは腕の見せ所って奴だがな。経験の差、バトルの組み方───つまり戦略の差とも言う」

 シャフリヤールの必殺技さえなければ、今の攻防は損害一でタイガーウルフ撃破というロック達にとってかなり有利な展開が作れたのは事実だ。

 

 しかし、実際の所はタイガーウルフの突撃でスズを抑えてシャフリヤールが動けるようになった事により逆転。

 ケイ達三人を一瞬でもマギーが一人で止めた事といい、そもそも三対一という発想が間違っていたといえる。

 

 

 ケイ達は三対一と三対ニという構図でバトルを組み立てた。

 

 三対一のロック達が出来るだけ損害を抑えて、スズを抑えるために来たタイガーウルフを倒すか。

 ここに賭け、ケイ達がマギー達と戦っている戦場では足止めに徹底していたのが彼等の取った戦略である。

 

 

 しかしタイガーウルフ達三人は、初めから三対六という譜面で戦略を取っていた。チーム戦というのはこういう物なのだと、見せ付けられたようである。

 

 

 

「ま、俺もシャフリの野郎と連携するなんざ嫌だったがこういう戦いもあるってこった。覚えておけ。それに、三体一とはいえ俺を倒したお前達の実力はやはり見惚れる物がある。これから磨いていけば───」

「タイガーウルフ師匠、確かに褒めて貰えるのは嬉しいけどよ」

「あ? なんだ?」

「まだバトルは終わっちゃ居ないぜ。俺達には、エースが居るからな」

 そう言って不敵に笑うロック。

 

 タイガーウルフはそんな彼の言葉を聞いて「なるほど」と口角を吊り上げた。

 

 

 視線の先のモニターに、映る───エースの機体を見ながら。

 

 

 

「二人共やられちゃったっすよ!」

「一度離脱する?」

「いや、離れたらシャフリヤールさんの攻撃を避けれなくなる。今は必殺技の反動で動けない内に少しでも状況を有利に!!」

「ふふ、中々賢明な判断ねケイちゃん!」

 ケイ達三人を一人で止めていたマギーは左腕を斬り飛ばされている。

 

 しかし、左腕一本でロックとカルミアを取ったのは代償として軽い。

 三対六がこれで二対三になったのだから、タイガーウルフの仕事は充分過ぎる程だ。

 

 

 それに───

 

 

「さて、ここからはこっちの番よ!」

「動きが……!!」

 スズの狙撃を警戒しなくて良い、そしてシャフリヤールの護衛もしなくていいとなれば、マギーも()()で動く事が出来る。

 

 さっきよりも動きのキレが上がったマギーのラブファントム一機に押し返されるケイ達三人。直ぐにシャフリヤールも動けるようになり、形勢は一瞬で逆転した。

 

 

「脇がガラ空きよ、ユメちゃん!」

「……っきゃ」

 ビームカマにGNソードIIIごと右腕を持っていかれるユメのデルタグラスパー。追撃は変形して離脱、回避するが───距離を離すのは悪手である。

 

 

「ユメ!!」

「しまったシャフリヤールさん!!」

「ここは私の距離だ!」

 ユメに銃口を向けるシャフリヤール。狙撃ならともかく、砲撃は分かっていようが避けられない。

 

「くそ! 撃たせるか───」

「いかせないわよ、ケイちゃん!」

「ここはジブンが!!」

 マギーの方位を抜け、シャフリヤールに突撃するニャムのターンX。

 

「その機体で止められるかな。GNフィールド!!」

 そんなニャムを尻目に、シャフリヤールはGNフィールドを展開してユメへの攻撃に集中した。

 ターンXは実剣を持っていない。

 

 

「これでもう一つ」

「シャフリヤール氏、こっちを見るっすよ! コレが自分の───」

「何!?」

 接近。

 そして、ターンXの左手が黄金に光り出す。

 

 

「───ガンプラへの愛っす!! 必殺!! ゴッド……フィンガー!!!」

 GNフィールドを貫くターンXの左手。

 

 ───否、それはターンXではなくゴッドガンダムの左手だった。

 

 

「ニャムさんが」

「ミキシング!?」

 ユメとケイも驚く。

 

 彼女はこれまでミキシングしたガンプラを持ってきた事はなかったのである。

 

 改造ガンプラキラー。

 ゴッドガンダムに乗った彼女と初めて会い、戦った時の事を思い出した。

 

 そして当時、GBN内やビルダー達から悪い意味で目立っていた彼女をシャフリヤールは知っている。

 だからこそ、彼は油断した。ターンXにGNフィールドを突破する能力はないと。

 

 

「ゴッドフィンガー、なるほど……!!」

「ヒートエンド!!」

 背後からシャフリヤールの左腕を掴み、吹き飛ばすターンXのゴッドフィンガー。

 

 シャフリヤールは不敵な笑みで振り向き、セラヴィーガンダムシェヘラザードをイフリートモードに変形させる。

 

 

「なるほど、面白い!!」

「接近戦なら、ジブンもそれなりに得意っすよ!!」

 ぶつかり合う拳。しかし、力と力がぶつかり合えば───より強い物が勝つのが条理だ。

 

 一度の拳のぶつけ合いで、ターンXの左腕は吹き飛ぶ。

 

 

「な───」

「ミキシングに慣れていない証拠だ。これからも精進するといい───終わらせる!! トランザム!!」

 畳み掛けるシャフリヤール。

 

「ユメ!! ニャムさんを援護しろ!! マギーさんは俺が止める!!」

「うん!!」

 ユメが加勢し、それでもシャフリヤールは二人を相手に互角以上に接近戦をこなしていた。

 

 

 それに加え、ケイはマギーとタイマンである。

 今はユメとニャムを信じて、マギーを止めるしかない。自分に出来る事───エースに出来る事、エースがするべき事。

 

 

 ──エースの仕事は点を取る事だ──

 

 ケイはあの時、ノワールに言われた事を思い出す。

 

 ──届かない敵にも策を練り、択を通す。相手を倒してチームを有利にするのがエースの力──

 

 

 今ここで誰かが一人でも倒れれば、戦況は一気に動き出す筈だ。

 

 届かない敵。

 分かっている。自分とマギーに超えられない壁がある事も。

 

 

「止まるんじゃない……俺が、道を切り開くんだ。……ニャムさん!!」

「ケイ殿!?」

 マギーの攻撃を一瞬跳ね返し、ニャム達の元に向かうケイ。

 

 クロスボーンストライクBondは機動力だけならマギーのラブファントムにも負けていない。

 

 

 この一瞬を使って、勝利への道を作る。

 

 

「うぉぉおおお!!!」

 ビームライフルを連射しながら、アーマーシュナイダーを構えてシャフリヤールの背後から接近するケイ。

 

 マギーが追ってくるが、ストライクBondの方が早い。

 

 

「アーマーシュナイダー、GNフィールド対策か。しかし、私とて伊達にタイガーウルフを越えようとしている訳ではない!!」

 ユメとニャムを相手にしながら、回し蹴りでケイを簡単に迎撃するシャフリヤール。

 

 その刹那、ケイは腰の収納を展開してその中に入っていた武装をニャムに投げ飛ばした。

 

 

「もう一本のアーマーシュナイダーか。なるほど、決定打のない二人に武器を渡す為にあえて犠牲となったか……しかし、アーマーシュナイダーのリーチでは───」

「ケイ殿の意志───貰ったっす!!!」

 受け取った武装を掴み、セラヴィーガンダムシェヘラザードに振り下ろすニャム。

 

 その程度の武装をそんな大降りでは届かない。

 シャフリヤールが見切り、拳をニャムの機体に捩じ込もうとしたその時───

 

 

「いけぇぇえええ!!」

「これがストライクBondの隠し玉───」

 ───ニャムが掴んだ武器が光る。

 

 

「───ビームサーベルっす!!」

「な───ビーム……サーベル」

 ケイが投げたのはアーマーシュナイダーではなく、ビームサーベルだった。

 

 ケイが初めてニャムと戦った時、その不意打ちでニャムを倒した時のように───

 

 

「勝った!!」

「この!!」

 ───セラヴィーガンダムシェヘラザードを貫くビームサーベル。

 

 同時にセラヴィーガンダムシェヘラザードの拳がターンXを貫く。

 

 

 爆散。

 

 シャフリヤールとニャムが撃破。

 

 

 同時にケイは追い付いてきたマギーに蹴られ、地面に叩きつけられた。

 

 撃破はされなかったが、もう動けないだろう。

 

 

 

「ケイ君……!」

「私にやられてでも、一機落としにいくなんて流石ね。……でも───」

 残ったのはボロボロになって動かないクロスボーンストライクBondと右腕を失ったダブルオーデルタグラスパーのみ。

 

 マギーも片腕を失っているが、戦況は拮抗しているとは言えない状態だった。

 

 

「───まだ足りないわよ」

 最後の戦いが幕を開ける。




最近真面目にお絵描きの練習をしております。ReBondメンバーも描く機会があったので一応あp。ケイとイアの顔は初公開ですね。ケイ、主人公なのに……。

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