ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
空を見上げていた。
モニターにはエラー表示がいくつもいくつも表示されている。
「動け……動いてくれ。動いてくれストライクBond……!」
シャフリヤールの不意をついて倒すため、マギーに背を向けてニャムにビームサーベルを渡して。
それまでは良かったかもしれない。しかし、あまつさえ背後から攻撃したにも関わらずシャフリヤールに手痛い反撃を貰って、その後追ってきたマギーの攻撃に反応する事が出来なかった。
「受け身は取れてた。でもダメか? ガンプラの作りが甘い、操作技術も甘い、何も足りないのか。俺は何も成長出来てないのか?」
地面に叩きつけられ、受け身は取れたが完全じゃない。
どこかで、もう少し上手くやれた───もう少しが届かなかったと、悔しくてモニターを殴る。
そのモニターにはユメがマギーと戦っている姿が映っていた。
「動け……頼む、動いてくれ……!!」
ケイの声が、機体の軋む音が、コックピットで響く。
光を失っていたツインアイが、一瞬だけ灯火を燃やした。
☆ ☆ ☆
刃が交差する。
「頑張るわねユメちゃん!」
「マギーさん……こんなに強い人だったなんて!」
ユメはマギーと初めて会った時の事を思い出していた。
──私はマギー。たまたま通り掛かった親切なお姉さんよ──
初めて会った時、初めてGBNにログインした時。
現実で歩く事の出来なかった自分が、自分の足で立って歩ける。そんな不思議な場所で、彼は親切に色々な事を教えてくれた。
最初は怪しい人だとも思ったけど、今はイアの事でもそうだが、ケイとの事でもよく相談に乗ってくれる本当に親切な
「あら? 意外だったかしら」
「ううん。でも……ちょっと嬉しい!」
マギーのラブファントムを蹴り飛ばし、一度変形して距離を取ってからGNソードⅡをライフルモードで連射するユメ。
マギーはそれを優雅に交わしながら接近。再び刃と刃の鍔迫り合いになった。
「私にGBNを教えてくれた人と、こうして戦える。まだ力が足りない事は分かってるけど、なんだか少しだけ前に歩けたきがして! 今、私達は凄い楽しい!」
弾く。懐に入ろうとして、蹴り飛ばされた。
お互いに腕を一本失った状態。
しかし、誰がどう見てもユメが押されている。どうしても押せない、防戦一方だ。
「ふふ、良いわよ。楽しみなさい! それが愛よ! ガンプラへの、GBNへの、愛する者への、愛よ!!」
マギーの攻撃に激しさが増す。
どこにそんな力が隠されていたのか。否、マギーは本気など出していなかったのだ。それはユメも薄々感じでいたのだろう。
被弾が増えていった。
ビームカマはビームサイズのような物である。ロックと何度か戦った事があるユメは慣れていると言えば慣れていた。
しかし、そもそもロックに勝てる訳でもましてやだからといってマギーの攻撃に反応できる訳でもない。
慣れているおかげで、なんとか耐えている。それだけだった。
「そのままで良いのかしら? ユメちゃん。このまま、終わっても良いのかしら?」
「……っ。私は……私はケー君を───」
ふと、彼女の脳裏にケイスケの顔が思い浮かぶ。
「───うん。信じてる。私はケー君を信じてるから……!! こんな所で、負けられない……!!」
レバーを引いた。ラブファントムの攻撃を受け流す。
「お願い、力を……!! TRANSーAM!!」
そして、赤い光がユメのデルタグラスパーを包み込んだ。
「それでこそよ!!」
再び斬撃。しかしトランザムで機動力を増したデルタグラスパーでも、マギーのラブファントムにダメージを与える事は出来ない。
圧倒的な力の差。
それでもユメは諦めず、防戦一方になっても剣を振る。
全ては───
「───時間切れね。なんだかトランザムが短かったけど、機体が限界を超えてるって事かしら」
「───トランザムが……!!」
直ぐにトランザムの限界時間が来た。
機体の出力が落ちる。
右足を斬り飛ばされた。残った片腕も斬り飛ばされた。
「……終わりよ!!」
「それでも!!」
変形する。
「何!?」
「……まだ!! まだ終わってないよ!!」
不恰好な航空機。
そしそのまま、ユメはマギーのラブファントムに文字通り突撃した。それはもう殆ど特攻である。
シールドも足も腕も翼も何もかも欠けていた。
おおよそ、ユメの好きな航空機の形ではないだろう。だけど、ユメはいつしかそんなボロボロになるガンプラも好きになっていた。
「だから!! 行こう……勝とう───ケー君!!」
「───あぁ!!」
───全ては、この時の為に。
「ストライクBond!? 真下に!?」
変形して突撃してきたデルタグラスパーに押し出されるラブファントム。その真下には、今さっき地面に叩きつけたストライクBondが
「動けるというの……? いや、でも───」
しかし、ストライクBondは見た目通りに満身創痍だ。動く事はおろか、立っている事がマギーには不思議でない。
だからこそ、ストライクBondが動ける訳がないだろう。事実、ストライクBondは動けていない。
本当に、立ち上がっただけでも奇跡を見ているようだった。
「何をしようというのかしら……良いわ、見せなさい! 貴方達の───愛を!!
「ケー君!!」
叫びながら、ユメは自らのデルタグラスパーに装備されていたダブルオーストライカーをパージする。
「動けストライクBond!! 届け!!」
「届いて……!!」
立ち上がるストライクBond。
マギーはユメの機体を振り解いたが、その隙にパージされたダブルオーストライカーに───ストライクBondは換装した。
「空中換装!? でも、トランザムはもう使ってる。そのツインドライブはもう───いや……まさか」
「行けぇええ! ケー君!!」
墜落し、ユメの機体は爆散する。
これで一対一。
「答えてくれ……ストライクBond!! 今日ここで───」
ストライクBondの拳が光った。赤い光が、機体を包み込む」
「───タイガーウルフさんに、シャフリヤールさんに、マギーさんに、ユメに、皆に……貰ったものを!! 出し切るんだ!!」
「来る……!!」
「トランザム!!!」
TRANSーAM
出力を上げるストライクBond。
二回目のトランザム。しかし、マギーは不思議には思っていなかった。
「ユメちゃんはあの土壇場で、不安定なGNドライヴの片方だけを使ったトランザムを使っていたのね……だからあんなにも時間が短かった。だから、今ここでトランザムが使える……!!」
「うぉぉおおお!!! 届けぇぇえええ!!!」
その拳が放たれる。
マギーはビームカマで拳を受け止めるが、その柄はひび割れ───ケイの拳がマギーのラブファントムに届いた。
「まさか……」
「アレが彼の必殺技か……!」
「ケイスケ……」
「ケイ殿……」
「やれるのか?」
「……いける」
「……いけ。……いけ! いっけぇぇ!! ケー君!!」
光が収縮する。
「これが……ケイちゃんの───愛!!」
「これが俺の……ガンプラだぁぁあああ!!!」
「「「いっけぇぇぇええええ!!!!」」」
声が重なった。
太陽炉が、ツインアイが、ストライクBondそのものが、燃えるような光を放つ。
そしてその拳は───
「……素晴らしい物を見せて貰ったわ」
───遂に強敵を貫き、勝利を掴み取った。
爆散。
必殺技に耐えきれなかったストライクBondも朽ちていく。
しかし、勝利そのものは、確かにケイの手の中にあった。
マギー、タイガーウルフ、シャフリヤールVSReBond+α
勝者ReBond+α
確かに掴みたいものを、彼は掴んだのである。