ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
観戦室。
手を合わせるケイとロック達。
六対三という多大なハンデもありつつだが、ケイ達はマギー達と互角に戦い大切な一歩の勝利を掴み取った。
マギーはそんなケイ達に拍手を送りながら、こう口を開く。
「ツインドライヴによるTRANSーAMの安定性とパワーを犠牲にして、トランザムを二回使う。私にも思い付かなかった素晴らしい戦法だったわ」
「アレは、ユメが上手くやってくれたから」
「でも! 提案してくれたのはケー君だよ?」
あの時。
マギーと戦ってる最中、ケイはユメにこう語りかけたのだ。
「───ユメ! トランザムを使え。少しだけでも耐えてくれ。俺は……俺はまだ戦える!」
「でも、トランザムは……」
「太陽炉の接続を片側だけ切って使うんだ。そうしたら、換装後に俺も使えるかもしれない……!」
ケイが立ち直す時間を稼ぐ為、マギーとの戦いで少しでも全力を出す為にユメに使わせたトランザム。
そのおかげでマギーはストライクBondはもうトランザムを使えないと思い込み、そこに生まれた隙を突く事が出来たのである。
「二人の愛の力よ。……名付けるならそうね、フォース名ReBondから取って───Re:TRANSーAMかしら」
「Re:TRANSーAM……」
ReBondは再び繋ぐという意味でニャムが考えたフォース名だ。
安直なネーミングだが、分かりやすくて良い。ケイはそう思う。
「ありがとうございます……! マギーさん。それにタイガーウルフさんも、シャフリヤールさんも!」
この戦いはケイ達に取って貴重で充実した経験になった事は間違いない。
「おう! またいつでも修行しに来い。コイツの所じゃなくて、俺の所にな!」
「何を言っている。私の所に来ると良い。君のガンプラへの愛をさらに磨き上げてあげよう」
二人の言い争いに苦笑いしか出来ないが、ケイにとっては嬉しい誘いなのは間違いなかった。
そんな二人の間に入ってきたマギーは「ほーら、今日は撤収するわよ」と首根っこを掴んで二人を引き摺ったいく。
「また、バトルしましょ」
振り向いてそうとだけ呟いて、マギーは二人を連れていった。不敵に笑い「楽しみになってきたわね」と呟きながら。
その後。
「……お前は狙撃の練習をしろ」
「俺の狙撃は完璧だが?」
「一撃も当ててなかったしプレッシャーも与えれてなかっただろ……!! 良いから練習しろ!!」
「ひぃ!?」
スズはロックをこっ酷く念入りに叱ってからログアウトした。
彼女の言う通り、結局ロックは狙撃では役に立っていない。ログアウトした後「今度修行」とメッセージが来る程、スズからするとロックの腕に文句があるらしい。
「ドンマイ、タケシ! でも今日は皆凄かった! 見てて楽しかったし、ガンプラ達からも強くなりたいって気持ちが伝わってきたぞ!」
「ロックな!?」
「強くなりたい、か」
話しながら帰路に着く。
今日はこの後フォースネストで反省会をするつもりだが、楽しい時間になりそうだとケイは足速にReBondのフォースネストに向かうのであった。
☆ ☆ ☆
ReBondフォースネスト。
「───と、いう訳で反省会を始めるっすよー」
テーブルにお菓子とジュースを並べ、ケイ達はニャムが前に立つホワイトボードに視線を向ける。
フォースバトルをした後にこうして反省会を偶にする事があったのだが、イアが来てからは初めての事で彼女は「なんだなんだ?」と目を輝かせていた。
「今回のバトルを振り返って、何処が良かった。何処はもう少し何か出来た、なんて事を話すんすよ! あ、お菓子とジュースはジブンの奢りなのでお好きにどうぞ。どうせGBNでいくら食べても太らないので」
言いながら、ニャムはホワイトボードに青の磁石を六つと赤の磁石を三つ貼り付ける。
ホワイトボードの左側に青の磁石が三つ、右側には赤と青を三つずつで丁度今日のバトルでの初動配置が分かりやすく図説されていた。
「まずは初動。タイガーウルフ氏が動いた所っすね」
「ここまでは作戦通りだったんだけどな」
「ロック氏の言う通り。数の利とスズちゃんという強力なカードで相手を最低でも分断する。作戦はジブン達がマギー氏、シャフリヤール氏を止めて、タイガーウルフ氏を三体一で倒す事でした」
強力なスナイパーというカードがこちらにある以上、相手は狙撃者を撃破或いは止めなければならない。
護衛に二人も使い、前線で強敵二人を止めるのを三人だけで熟そうとしたのはここでしか戦力差を埋めるチャンスがなかったからである。
二対一はある程度戦いなれているダイバーなら、敵を二対共視界に置くようにして戦えば楽にこなす事が可能だ。
しかし、三対一なら敵を囲む事が出来る。
強敵を倒すなら最低三人。
シャフリヤールの撃破もそうだったが、格上に勝つ術というのは気合や根性ではなく戦術戦略論だ。
前回のイベント戦でそれは嫌と言うほど分からされた事である。
「ま、タイガーウルフはなんとかなったんだけどねぇ」
「スズをやられたのが俺達の失敗だったな。いや、師匠が上手かったのか?」
「元々タイガーウルフ氏の狙いがスズちゃんだったのは間違いないっすから、確かにそこは気を付けるべき反省点っすけどね。しかし、スズちゃんが倒されただけならまだ作戦は成功の範囲内でした」
「私達がシャフリヤールさんを止められなかったもんね……。私がもう少し強ければ……」
スズが落ちただけなら五対二の盤面が完成していた。
しかし、実際はタイガーウルフがスズを倒した事で動けるようになったシャフリヤールがロックとカルミアを長距離砲撃で落として三対二。
ケイ達にとっては結果タイガーウルフに三人落とされるという結末が起きてしまったのである。
「止められなかったのは実力っすから。反省というのは、あの時どうしたら良かったを考えるのが反省会っすよユメちゃん」
「あの時どうしたら……」
「常識的に考えて、あーいう強い人達ってのはジブン達が三人でかかって時間を掛けてようやく倒せる相手です。二人でかかれば時間をかけて倒されて、一人でかかれば時間を稼げるかギリギリって感じですね」
ユメとニャムがシャフリヤールの相手をしていたり、ケイがマギーの相手をしていたり。
瞬殺はされないが、一人や二人では絶対に勝てない。時間を稼ぐのがやっと。ニャムの評価はこんな所だ。
「さて、それでは最初の話に戻って。ジブン達の当初の目的は二人を止めて一人を数で叩く。その目的を達成するのに必要だった作戦はなんでしょう! ロック氏!」
「分からん!」
「ポンコツ!」
「酷くない?」
「カルミア氏!」
「ニャムちゃんがゲルマン流忍法で増えて戦う」
「ジブンなんだと思われてるんすか?」
苦笑いを零しながらカルミアにチョップを落とすニャム。そんな彼女の隣で「んー」と考えていたイアが片手を上げる。
「お、イアちゃん何かありました?」
「四対一を作れば良かったんじゃないか?」
そうして開かれた彼女の口から出て来た言葉にケイ達は目を丸くした。
四対一。
言葉にするのは簡単だが、つまりそれは残りの二人で残りの二人を止めなければならないという事である。
「ケイもユメも、マギー相手に瞬殺はされなかった。受け身なら時間を稼いだりスズの援護を期待したりも出来たんじゃないかなって。ボクはそう思ったんだけど」
「それは……」
「確かに……」
続く彼女の言葉を聞いて、二人はマギーとの戦いを思い出した。
防戦一方で、最後の切り札を使うまでやられっぱなしだったのは間違いない。
しかしイアの言う通り、二人共瞬殺された訳ではないのである。
それだけの経験を積んで、実力を発揮した。
なら、少しでも前に進める。
「確かに……イアちゃんの言う通り、四対一でタイガーウルフ氏と戦っていれば或いはっすね」
「チーム戦が見えてなかったのも問題かもしれんが、おじさん達はもう少し無茶な作戦を出来るチームになれていたって事じゃない?」
そもそもの作戦が破綻した理由は、タイガーウルフがスズを落とせばシャフリヤールが仕事を出来るというチーム戦術を看破し阻止出来なかった事だ。
戦いは実力と作戦と運で決まる。
実力がなければ作戦を遂行出来ないし、運悪く失敗する事は否定出来ない。
それ以外の相性や根性という要素はそれらが拮抗して初めて意味を成すものだ。
フォースReBondは確実に成長している。
「……でもやっぱり、ユメが言う通りなのかもな」
「え? 私何か言ったっけ?」
「もう少し強かったらって、さ。ニャムさんの作戦に組み込めるくらい、俺は───俺達は強くなりたい」
「ケー君……」
結局。
マギーを倒せたのは運だった。
もうほんの少しでもダメージを負っていたら、あの必殺技の衝撃に耐えられず先に撃破されていたのはケイのストライクBondだっただろう。
もっと強く、この先へ───
「───次のステージ」
ケイの表情を見て、ニャムはシャフリヤールに言われた事を思い出した。
──君の技術はきっと彼等らを次のステージに進ませる事が出来る。ならば君は、彼等の力を借りて次のステージに進むといい──
「ジブン、実は今回初めてミキシングガンプラを使ったんです。ありあわせというか、ターンXの腕をゴッドガンダムと変えただけなんすけどね」
「そういや、ニャムさんがミキシングしてるガンプラ使うの初めて見たな」
「Gガンダムのゴッドガンダムですよね! ちょっと私見てて楽しかったなぁ、ニャムさんが初めてミキシングしてたの」
ロックは知らないが、彼女はシャフリヤールとの修行でターンXをミキシングしていたのである。
GBNで作ったガンプラもガンプラバトルで使えるので、そこで作ったガンプラで今日はバトルをしたという訳だ。
「正直、慣れないことで恥ずかしいというか。改造ガンプラキラーなんてやってたジブンがこんな事していいのかなんて思ったんすけどね」
ミキシングに憎しみさえ覚えていた自分がミキシングに手を出す。
もしガンプラの神様がいるなら神様は自分を許さないだろうと、ニャムは俯いてこう口を開いた。
「……だから、ゴッドフィンガーも上手く出来なかった。シャフリヤール氏のガンプラに簡単に手首を破壊されてしまった。もしかしたら、ジブンはミキシングなんて向いてないのかも───」
「でもあのターンX、凄い喜んでたぞ」
ふと、イアがニャムの目を真っ直ぐに見てそう言う。
ELダイバー。
イアには、ガンプラの声が聞こえるのだ。
「え……」
「なんかなー、安心するって感じ? ソワソワしてた気持ちが和らいだ……みたいな。とにかく! ニャムのガンプラは喜んでた! 安心してた!」
「そんな……。ジブンはこれまで、改造ガンプラキラーなんて事をしてて……」
「ガンプラは分かってるんだろうねぇ、ニャムちゃんがガンプラの事大好きなのをさ。おじさん達はガンプラの気持ちなんて分からないけど……きっとガンプラはおじさん達の気持ちを分かってくれてるんだよ」
泣きそうになるニャムの肩を抱いて、カルミアはそう声をかける。
イアに、ユメ、ロックやケイも。
「……ジブン……ジブン、私は…………本当に、ガンプラが好きで……だから!」
「分かってる。ニャムのガンプラも、ちゃんと分かってた」
「……っ、ぁ……ぁぁあ」
イアに頭を撫でられて、ニャムは崩れ落ちながら床が水浸しになるまで泣いた。
ここはGBNだからどれだけ泣いても脱水症状は起きない。
だけど、きっとその涙は本当なのだろう。