ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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垣間見える目的

 交戦するセイヤとカルミアにニャムのターンXが合流する。

 

「兄さん!」

「ナオコか……」

「何が目的なんです! こんな事したって悲しいだけで、何も起きないでしょ!」

 GBNへの復讐。

 

 カルミアの語るセイヤの過去は、確かに何も知らないニャムでも辛い事だということだけは分かった。

 それでも、何をしたって失ったものは取り返せない。

 

 こんな事をしたって、虚しいだけの筈。

 

 

「自分がされて嫌な事を他人にしてるんですよ兄さんは! そんな事したって───」

「意味がない? 違うな。これは復讐だ。俺がされて嫌だったから……してるんだよ」

「そんな子供みたいな言い方! そんなの兄さんじゃない!」

「お前に何が分かる!!!」

 モニターが響く。

 

 空間がひび割れる様な声に、ニャムは言葉を失った。

 

 

「俺はレイアが好きだったんだよ!! お前の俺の気持ちが分かるのか!! 分からないだろ!! 俺は、好きな人を殺されたんだよ!!」

「……っ。兄さん」

「だらかって殴る相手が違うだろうがよ!」

 ニャムのターンXに切り掛かるヤークトアルケーのバスターソードを受け止めるカルミア。

 

「俺らからイアを奪ってどうする気だよ。俺らにお前と同じ気持ちを味わえってか? もうそんなのはレイアだけで充分だっての!」

「……違うな。俺の目的は初めからGBNへの復讐だ。そんな小さな感情で動いている訳じゃない!!」

「何をする気だ……お前」

「答える必要はない。分からないだろお前はもう、仲間じゃないからな。……この裏切り者が!!」

 振り抜かれるバスターソード。

 

 レッドウルフのサブアームが二本斬り飛ばされる。セイヤの表情は、何を言われても変わらなかった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 光が交差する。

 

 

「───邪魔すんじゃねーよ! アオト!!」

 ロックのデュナメスHellの前に立ち塞がるアオトのイージス。

 

 ビームサイズを両手のビームサーベルで受け止めるアオトからの返事はない。

 

 

「なんとか言えよオラァ!」

 連撃。

 

 ヤイバを振り抜いて突き飛ばしたイージスに、ビームサーベルを二本構えて突進するロック。

 なんとか捌くので精一杯のイージス。その右腕を、ロックは上空に投げ飛ばしておいたビームサイズを掴み取って斬り飛ばした。

 

 

「……っ。お前こそ、邪魔するなよタケシ!! ブレイクビット!!」

「あぁ!?」

 展開されたシールドから放たれるビット。

 

 ここは地上だからオールレンジ攻撃は使えない筈である。しかし、ビットはロックのデュナメスHellを囲むように追い詰めていた。

 

 

「なんのバグだよ! そもそもここは戦闘禁止区域だぞ!?」

 ビットをビームサーベルで捌きながら文句を漏らすロック。

 

 ふと思い出すのは、イアと一緒に居た時のバグである。

 戦闘禁止区域である筈のペリシアエリアで起きた戦闘。このバグの正体が似通った物だとすれば───

 

 

「お前らの狙い……イア? まさか───」

「お前はバカのくせに勘が良くて嫌いだよ……」

「アオト君!」

 ロックの横に立ちながら、ユメはアオトにライフルを向けた。

 

 ケイは今アンチレッドの数を減らしている。セイヤはカルミアとニャムが二人で応戦していた。

 今自分に出来る事はなんだろうかと、ユメは考える。

 

 思い出したのはつい数時間前のマギー達との戦いだった。

 

 一人を抑える役を減らせば、それだけ動ける人数が増える。今アオトと戦う役はロックよりも自分が適任だ。

 

 

「タケシ君! アオト君は私が抑える!」

「は? ユメ、大丈夫なのか?」

「タケシ君の方が敵を早く減らせる。今は、私がアオト君を止めればきっと皆が助かるから……。この人達のしたい事、私は分からないけど、イアちゃんが居なくなるのは嫌だ!」

「ユメカ……」

 彼女の言葉に、アオトは歯軋りをする。

 

 だけど、止める訳には───止まる訳にはいかない。

 

 

「分かった。頼むぜユメ! 俺はそこら辺の奴を全員薙ぎ倒しておっさん達の援護すれば良いんだな!」

「うん。ありがとう、タケシ君」

「ロックな!」

 言いながら、ロックは踵を返してケイの援護に回った。

 

 そういう命令なのか、ケイ達はセイヤと戦っている二人に近付けない。

 周りのアンチレッドをなんとか撃退して、セイヤを止める。今イアを守る為にユメ達がしなければいけない事はそれだけだ。

 

 

「アオト君、私ね……ガンプラバトルが好きになったよ。見てて楽しいだけじゃなくて、私もやりたいと思えるようになった!」

「……そうか。俺は、ガンプラバトルが嫌いだよ」

 ユメにシールドを向けるアオト。そこから放たれるビットと共に、ユメの脳裏に嫌な感覚が走る。

 

「ビットは囮……!」

 振り向いてビームサーベルを振り抜くユメ。

 

 その残光の後に、透明なパーツで作られたファンネルが爆散した。

 

 

「クリアファンネルが見えてるのか!? お前まで……才能で俺を惨めにするのかよ!! ユメカ!!」

「アオト君!? っう……」

 両足のビームサーベルを展開したアオトがユメに蹴り掛かる。重い斬撃を受け止めるユメは、同時に周りを確認した。

 

 アンチレッドのメンバー達にケイ達が負けている様子はない。数では負けていても時間をかければ負ける事はないだろう。

 問題は数人居る強敵がケイ達と戦う事だ。せめてアオトだけでも止めないといけないと、ユメは操縦桿を強く握る。

 

 

 

「私、この世界で夢を叶えられた。現実ではもう歩けない私だけど、この世界なら自分の足で立って歩ける。こうして空も飛べる。……この世界はとっても素敵な場所だよ! なんでアオト君は、そんな世界を壊そうとするの?」

「……そんな物はまやかしだ。ユメカ、お前はもう歩けないんだよ! 現実を見ろ。お前はもう飛行機のパイロットになるなんて夢は見れない。……誰のせいだ? 俺達だ! ガンプラなんかで遊んでいた! 俺達とガンプラのせいだろ!! 憎めよ、俺達を憎めよ!!」

「憎めないよ……」

「なんでだ!!」

「……だって、きっと私の足が事故で動かなくなったから私は今ここにいるから。私、GBNで沢山友達も出来て、新しい夢も出来た。スズちゃん達、カルミアさんにニャムさん……それにイアちゃん。皆大切な友達で、GBNは私にとって───」

「黙れ……。黙れ黙れ!! 間違ってる。そんなのは違う。俺は……俺は、そんな事で、許せるものじゃないだろ!! 俺は!!! ブレイクドラグーン!!!」

 イージスのスカートから分離したドラグーンがユメを包囲した。

 

 分かっていても交わせるものではない。そこにクリアファンネルが混ぜられているのなら尚更だろう。

 

 

 

「ユメ……!!」

「バカ、自分に集中しろケイ! 多分アイツらの狙いはイアを巻き込んだバグでGBNのデータをぶっ壊す事だ!」

 ピンチのユメに加勢しようとするケイに声を上げるロック。

 

 彼はこれまでの情報とアオト達の行動を元に、ある一つの仮説を打ち出していた。

 

 

「データを……?」

「イアのデータが膨大になっていくせいでこの前バグが起きたろ。ELダイバーは言っちまえばデータだ。記憶とか記録とか、そういうもんは俺達人間が頭に詰め込む代わりにイア達はGBNのサーバーに溜め込んでる。そのデータ量に耐えられなきゃサーバーはバグを起こす!」

「それじゃ、ELダイバーが行方不明になってるのって……」

「アイツらが誘拐したELダイバーをログアウト出来ないような場所に軟禁でもすれば、GBNのサーバーはELダイバー達のデータでパンパンになるだろ! なんで俺はこんな事にも気が付かなかったんだ!?」

 そうして行方不明───ログアウト出来なくなったELダイバー達のデータで埋め尽くされたサーバーは次第にバグを誘発させGBNのデータそのものが破壊されていく。

 

 壊れたデータは取り返しが付かない。それはセイヤがGBNから受けた仕打ちでもあった。

 

 

 沢山の人から大切な物が、場所が、人が奪われる事になるだろう。

 彼の復讐とするなら、これ程まで都合の良い展開はない。

 

 

「タケシって実は頭良いよな」

「うるせーよ!! ロックな!!」

「……絶対にやらせちゃいけない」

「そういう事! だからアオトはユメに任せて、今はこの辺の雑魚を片してからおっさん達の加勢が先決な!!」

 言いながらロックはビームサイズで敵を薙ぎ倒していった。

 

 戦闘禁止区域でバトルが出来るのも、セイヤが望んだバグの結果だろう。

 このまま彼らの計画が進めばGBNのデータはこの世界から失われるかもしれない。

 

 

「……そんなことさせない! ユメ、頼んだぞ……!」

 ケイもビームサーベルを抜いて目の前の敵を切り裂いた。

 

 

 

 この世界には大切な記憶があって、場所があって、夢があって、人がいる。

 

 

 

 絶対に失わせてはいけない。

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