ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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第十三章──閉された世界へ【届かない光】
閉された世界


 テレビのニュースが流れていた。

 

 

『───おそらくは、宇宙規模の超重力。超高圧下で発生した未知の反粒子による超空間放電、サージ現象の一種ではないかと』

 ニュースでは、世界各地で起こっている大規模な通信障害が報じられている。

 

 

 突如起きたGBNのサーバーエラー。

 それはGBNという小さな世界だけではなく、地球規模で広がる現象だった。

 

 

『その放電を受けて、通信機器や、コンピューターが使えなくなった、ということなんですね』

『おそらくは、はい。ですが、これほど大規模で強力な現象は、今までの記録にはありません』

 アンチレッドの強襲。

 

 イアが連れ去られようとした丁度その時、キョウヤ達が駆け付けるも───偶然か、GBNはサーバーエラーでケイ達は強制的にログアウトさせられる。

 

 

『つまり、人類がまだ経験したことがない災害ってことですか?』

『えぇ。解析と復旧には、早くとも数日。遅ければ数ヶ月に及ぶかと。はい』

 それから数日。

 

 

 インフラの復旧は進められているが、GBNはまだログイン出来ない日々が続いていた。

 あの後イアがどうなったのかは分からない。

 

 GBNの運営からデータの大きな破損はないというアナウンスはされているが、復旧してログインするまでイアと連絡をする事すら出来ない状態である。

 彼女が無事なのか気掛かりで仕方がない。

 

 

『この現象、遠い、この惑星が発生源とされていますが……』

『惑星1G1202C。光の速さで、三十年かかる距離にある星です。はい』

『じゃあ、これって、三十年以上前に発生して───』

 テレビの電源を切った。

 

 

 立ち止まっていても、何も進まない。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 学校帰り。

 

 

 ケイが車椅子を押しながら、ユメは車椅子の上で携帯端末の画面を必死に眺めている。

 普段なら会話を優先する彼女だが、今は状況が状況だった。

 

 

「どうだ? ユメカ」

「ニャムさんもやっぱりまだログイン出来ないって。ガンダムちゃんねるのスレッドも覗いてみたけどログイン出来てる人は居ないみたい」

 GBNのサーバーエラーは続いていて、全世界のネットワークエラーが解消されつつある今もまだログインが出来ない状態が続いている。

 

 近くに住んでいるカルミア達はともかく、しばらくの間ニャムとは連絡も取れなかったので彼女と再び言葉を交わせるようになった事だけは安心要素だった。

 

 

 しかしイアの安否は分からず、GBNにはいつログイン出来るようになるかも分からない。

 そして───

 

「タケシも親にすら黙って居なくなるし、どうしたら良いんだ」

 ───サーバーエラーが起きた後。

 

 

 何故かタケシが行方不明になってしまい、彼とも連絡が取れていない。

 

 何か事件に巻き込まれているのではないかと心配になるが、彼の両親に会いに行くと「大丈夫だろうから心配しないで」と言われるだけである。

 

 

 

「……寂しいね」

「……そうだな」

 なんだかGBNを始める前に戻ったみたい。ユメカはそう思いながらも、必死に携帯端末の画面と睨めっこを続けた。

 

 

「───ごめんね、ケー君。私今日病院に行かなきゃ」

「あ、そうか。着いて行こうか?」

「大丈夫。ヒメカが居てくれるし。ケー君は、今ケー君に出来る事をしなきゃ」

「そうだな」

 家の前まで来て、二人はそう言って別れる。

 

 

 GBNにログイン出来ない以上、イアの為に出来る事は限られていた。しかし、何も出来ない訳じゃない。

 心の中では二人共タケシの事を信じている。きっと、彼だって───

 

 

 

「───よっ、ニャムちゃん。元気してたー?」

「やっとお話しできましたね、カルミアさん」

 一方カルミア───カラオと、ニャム───ナオコはチャットアプリで久し振りに話をしていた。

 GBNで会えなくなってからネット環境がやっと繋がり、こうして声を聞くのも久し振りである。

 

 

「元気、というと私はカルミアさんの方が心配だったんです。……大丈夫ですか?」

「……んー、とりあえずは落ち着いたって感じかねぇ。そりゃ、当日は凄い取り乱したけど」

 GBNサーバーエラーによる強制ログアウト。

 

 現実の世界に戻ったカルミアは直ぐにログインし直そうとするが、その時には既にGBNのサーバーは停止していた。

 ログインどころかネットワークにも繋がらない。イアの安否に気が気でなくなったカルミアは仕事も放ってセイヤを探して車を走らせ続けたのである。

 

 

 しかし、思い当たる節のあるどこを探してもセイヤに合う事は出来なかった。

 

 GBNのエラーについて、初めはセイヤが何かをしたのかと思っていたが原因は遠い星からの電波だとテレビで聞かされて唖然としたのを覚えている。

 

 

「───偶然、だったんでしょうか?」

「全世界のネットワークエラー、遠い星からのサージ現象、セイヤがイアを連れ去ったタイミング。……正直、おじさんには皆目見当もつかないのよね」

 セイヤはあの時何かを言っていた気がするが、それがこの現象に関わっているとは考えにくい。

 そもそもGBNだけならともかく、全世界同時にネットワークエラーを起こすなんて事がセイヤ達だけの仕業だとは思えなかった。

 

 

「いくらELダイバーの力を悪用したって、そこまでの事が出来るとは思えないのよね」

「そうですよね……」

「まぁ、エラーの事は置いといてよ。これは取り乱したおじさんなりに考えて動いた結果なんだけど、GBNの運営曰くデータの大きな破損はあり得ないとかなんとか。結局の所ゲームのセーブデータじゃないけど、ネットワークエラーの原因そのものはGBN外部の要素だからデータは消えていないとかなんとか」

「それじゃ、GBNの中でイアちゃんはまだ生きてるんすかね?」

「……多分、ね。他にも連れ去られたELダイバーとか、多分データ上は存在してる筈だけどサーバーが止まってる事がELダイバーに与える影響は分からない。おじさん達が今心配しても何も変えられないのよね」

 カラオは髪を掻きながらそう言って、小さくため息を吐く。

 

 落ち着いている、と言えばそれは嘘だ。

 イアの事がカラオは気が気でならない。当日の彼の荒れ具合を見たアオトの父親曰く、まるで別人だったとか。

 

 

「大切なんですね、彼女の事」

「んぁ? いや、そういうんじゃないからね」

「そうなんですか?」

「元々レイアと重ねてるってのは否定しないけど、そもそもレイアを好きだったのはセイヤだしな。……おじさんにとってイアはユメちゃん達と同じで、大人の俺が守るべき対象なのよ」

「なるほど……」

「今なんか安心した? あ、もしかして妬いちゃってたー? おじさんみたいなナイスガイを取られちゃうかもって」

「そ、そ、そ、そ、そんな訳ないですけど!!?」

「なんでそんな慌てるのよ!?」

 モニター越しに顔を真っ赤にする二人。少しだけ間を置いて、沈黙に耐えられなくなったカルミアはこう口を開く。

 

 

「……ま、その? なによ。……おじさんは大人だから。子供達の今を守るのが、今おじさんがやらなきゃいけない事だし。ニャムちゃんもおじさんにとってはまだ子供だからね」

「そうなんですか……。でも、私はカルミアさんには大人として見られたいですよ」

「……ん?」

「あはは。というか、チャットとはいえ素で話すのはなんか変ですね。ここはやっぱりニャムとして話すべきなんでしょうか?」

「……いやぁ、まぁ。……そうね、その方が今はおじさんも楽かも」

「なるほど。……それじゃ、そうさせて貰う()()()

 モニターに映る満面の笑みのナオコを見て、かは不敵に笑った。

 

 

 そうだ、今は笑おう。

 

 

 

 

「───悪化してるって……事ですか?」

「いや、以前とは少し違う反応があるだけで悪化したと言うのは軽率かな。悪い方向に進んでいると決まった訳じゃないよ」

 病院。

 

 インフラの整備が終わり、何かと忙しい施設もやっと通常通りの営業に戻ってきた。

 ユメカはヒメカの付き添いで、学校終わりに足のリハビリと健診を受けている所である。

 

 

 問診が終わって、ユメカはリハビリ中。

 

 その間に何故か呼び出されたヒメカは医者の先生にユメカの診断の話をされていた。

 

 

 

「ここ数年、リハビリを続けてもユメカちゃんの足が良くなる傾向はなかったんだけどね……。今日は反応がいつもと違ったんだ。ヒメカちゃん、少しだけ気を付けて様子を見てあげてくれないかな?」

「お姉ちゃん大丈夫ですよね……?」

「ごめんね、分からない。でもヒメカちゃんはしっかりしてるから、僕がここにユメカちゃんを呼ばなかった理由……分かるよね?」

「……お姉ちゃんを不安にさせたくない、から」

「うん。勿論ご両親にも後で連絡するけど、ヒメカちゃんが一番ユメカちゃんの事を考えてくれてるのを僕は知ってるから。ヒメカちゃんに、ユメカちゃんの事を頼みたい」

「……それは、勿論。……なんですけど」

 不安そうに下を向くヒメカ。

 

 医者の先生も姉が大好きな中学生の女の子に酷な事を言っている自覚はある。

 しかし人の身体は未だに未知数だ。特に脳と神経はまだ分かっていない事が多い。

 

 

 これまで歩けなかった人物が突然歩けるようになる事もあれば、その逆もある。

 数年前の事故の影響が突然大きくなる事も小さくなる事も、何も否定する材料がない。

 

 

「……お兄さん達にも、言って良いですか?」

「ケイスケ君達だっけ? うん。良いよ。助けてもらおう」

 医者は意外な顔をしてから、優しい顔になってヒメカの頭を撫でた。

 

 ユメカの事故の原因になった少年達を、ヒメカは嫌っていたと記憶している。

 どんな心境の変化があったのか。もしかしたら、ユメカの容体は良い方に傾いているのかもしれない。

 

 

 医者がそう思ったその時だった。

 

 

 

「───先生!! ユメカちゃんが!!」

「え?」

「お姉ちゃん……? お姉ちゃん……!!」

 看護師の言葉にヒメカと医者が走る。

 

 その先に居たのは、リハビリ中に転んで倒れてしまったユメカだった。

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