ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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アオトの本音

 雨の中。

 

 

 ケイスケは黙って前を歩くアオトに着いて歩いて行く。

 

 会話はない。

 きっと、今ここで何を聞いても答えてくれない気がした。

 

 

 ガンプラバトルをしよう。

 そう言ったアオトの言葉を頭の中で何度も繰り返した。

 

 

 町外れ。

 強い雨ではない。けれど、風が強くて傘を持ってきたがあまり意味はなかったらしい。

 

 濡れた身体を訝しげながら、ケイスケはアオトに着いて小さな工場に足を踏み入れる。

 

 

「ここは。……な───」

 ふと、電気が付いた。

 

 暗かった視界に現れる、一つの大きなマシン。

 

 

「───GPD」

 GBNが流行り、廃れていったケイスケ達の思い出。

 

 ガンプラを実際に動かしてバトルするガンプラバトル。そのマシンがそこには置いてある。

 

 

「ガンプラバトルをしよう、ケイスケ」

「……分かった」

 GPDは実際にガンプラが動いて、壊れたり、壊したりするゲームだ。

 

 ケイスケはアオトのガンプラを壊して、それから───

 

 

 

「アオト……!」

「……なんだよ」

「……壊れても、また治せば良い。そうだよな?」

 ケイスケの言葉にアオトは答えない。

 

 マシンの前に立ち、ガンプラを置いて、早く始めろと目で諭す。

 

 

 ダブルオーストライクBondを置いて。

 

 

 

 GPD Battle start

 

 そのゴングが鳴った。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 設定されたステージは孤島。

 

 

 戦闘に充分な余裕がある孤島を囲む水上エリアが特徴的で、奇しくもガンダムSEED内でストライクとイージスが最終決戦を繰り広げた場所に似たステージでもある。

 

 そしてその地に立つガンプラもまた、ストライクとイージスだ。

 

 

 

「……アオト、教えてくれ。GBNで何が起きてるんだ」

「俺は知らない」

「知らないなんて事ないだろ!」

 お互いに構えるストライクとイージス。

 

 やっと交わした会話も、アオトの感情は伝わってこない。

 

 

「友達が、GBNの中で一人で待ってるんだ」

「それはユメカやタケシよりも大切なのか?」

「……お前は俺の気持ちを知ってるのに、そういう質問は狡くないか?」

「……でもお前は、ユメカをガンプラと関わらせている。ガンプラはユメカの全てを奪ったんだぞ!!」

 ここに来てから初めてその感情が見える。

 

 

 GBNへの復讐を掲げるアンチレッド。

 そのメンバーにアオトが居る事に初めは驚いたが、実の所不思議に思うことはなかった。

 

 あの日。

 ユメカをトラックが弾いた事故の日、アオトがどれだけガンプラの事を呪ったのか分からない。

 タケシもあの日以来ガンプラに触れなくなって、ケイスケもガンプラに触れる機会は減っている。

 

 それぞれが多少の差はあれどガンプラへの気持ちが変わったのは確かだった。

 

 

 父親にガンプラを否定され、大切な幼馴染を傷付けたアオトの気持ちが分からない訳ではない。

 

 

 

「壊れても直せば良い……だと? ふざけるな!! もうユメカの足は治らないんだぞ!!」

「それでも……ユメカはちゃんと歩き出してる。その邪魔をする事はないだろ!!」

 ライフルを構える。

 

「そんなものはまやかしだって、何で分からないんだよ!!」

 先に動いたのはアオトだった。

 

 放たれたライフルを交わすケイスケ。ジャンプして上から放つライフルを、アオトも難なく交わしてみせる。

 

 

「GBNは現実じゃない。どれだけガンプラが傷付いても、ログアウトすれば直す必要すらない。取り返しのつくまやかしの世界だ! そんな物に囚われて! ユメカの未来に何が残るんだよ!!」

「ユメカは今を楽しんでるんだ!! ソレで良いだろ!! お前はただガンプラへの気持ちを整理出来ないから、周りにそうやって当たってるだけなんだよ!!」

 イージスは両腕のビームサーベルを展開し、ストライクはGNソードIIIと腰のビームサーベルを構えて二人は鍔迫り合った。

 

 想いをぶつけるようにサーベルを叩き付けるアオトの攻撃を、ケイスケは着実にいなしていく。

 

 

「違う!! 俺は!! 俺は……ガンプラを憎んでいる!! ユメカから全て奪ったガンプラを!! 父さんを苦しめたガンプラを!! お前が良い顔してるだけのガンプラを!!」

「じゃあどうしてまだガンプラを作ってるんだよ。どうして俺と今こうしてガンプラバトルをしてるんだよ!! ソレはお前が、ガンプラをまだ好きだからじゃないのか!? お前はただ、感情を吐き出したいだけなんじゃないのか!?」

 サーベルを弾き、ケイスケはイージスの左腕を斬り飛ばした。

 

 そのままイージスを蹴り飛ばすと、ケイはGNソードIIIをライフルモードにしてその銃口を向ける。

 

 

「戻ってこいアオト。また皆でガンプラをやろう! タケシもユメカも、俺も! お前の事を待ってる!」

「嘘をつくな……。いや、そうだよな」

「アオト……?」

「お前にとって俺は、その程度の人間なんだ。俺が戻ってきた所で、お前はなんとも思わない」

「……何を言ってるんだよ」

「そうだろ!! お前は強いもんな!! 俺が戻った所で、ユメカはお前の物でしかない。俺の気持ちは空のままだ!! 狡いんだよお前は!! そうやってお前とガンプラは俺から全部奪うんだ!! ムカつくんだよ!!」

「アオト……」

 その気持ちを二人は知っていた。

 

 

 幼馴染みの女の子。

 

 彼女の事が好きになって、お互いその気持ちは分かっていて。

 

 

 だから、タケシが始めたガンプラバトルに初めは無関心だったケイスケもアオトに負けないように始めたのである。

 ガンプラの事は知らなくても、バトルを楽しそうに見るユメカな事が好きだったから。

 

 ───だからそれは全部、好きな女の子に振り向いてもらう為だ。

 

 

 

「そうだよ、全部言い訳に過ぎない。俺はあの日! ユメカが怪我をしたのはお前のせいだと思ってるんだよ!! お前が俺のガンプラを壊さなければ、ユメカは怪我をしなかった!!」

「……っ、それは!!」

「お前が弱いから? そう言いたいんだろ。だから俺はお前が嫌いなんだ。ユメカに怪我をさせたくせに、それでもユメカの気持ちはお前に向いたままだ!! そんなお前が許せないんだよ。そうだ……これは俺の復讐なんだ。ガンプラへのじゃない、お前への復讐なんだよ!! ケイスケ!!」

 変形。

 

 スキュラを放ちながらストライクに突進するイージス。

 ケイスケはそれを避けながら、イージスにライフルを直撃させる。

 

 

 

「そうやってお前は!! 弱い奴を見下して、好きな女の子に靡いてもらって!! 気持ち良いだろうな!! ガンプラが楽しいだろうな!!」

「アオト……そんな、俺は───ユメカだって!!」

 変形。

 

 サーベルを振るが、その右腕はケイスケに切り飛ばされた。

 

 

 アオトの言う通り。

 

 ケイスケはアオトより強い。

 

 

「ガンプラバトルの勝ち負けだけが、ユメカの気持ちだと思うなよ!! 俺だってユメカの事が好きだ!! だけど、その為だけにガンプラバトルをしてる訳じゃない!!」

 ユメカに見て欲しいから、その気持ちも本当だろう。

 けれど、ライバルに負けたくない。その気持ちだって、ケイスケの中では本物だった。

 

 

 ガンプラを通して、GBNを通して出来た沢山の仲間。

 

 動機は不純だったかもしれない。

 

 

 けれどガンプラが好きで、ガンプラバトルが好きで、そんな気持ちは───この気持ちは嘘じゃないと言い切れる。

 

 

「お前とバトルするのも楽しかったんだよ、アオト!!」

「強い奴が……勝てる奴だけが!! そういう事を言えるんだよ!! ソレを今から証明してやる!!」

 両腕を失ったイージスから赤いオーラが漏れ始めた。

 

 光は斬り飛ばされたイージスの両腕まで伸び、その光が斬り飛ばされた筈の両腕を持ち上げて元あった場所へと繋いでいく。

 

 

「な───」

「ブレイクシステム……」

 GPDはガンプラが実際に動き、実際にダメージを負うシステムだ。

 

 しかしそれなのに、アオトのイージスは両腕がしっかりと繋がれて元に戻っている。

 バトル中ならGBNでもそんな事は起きない。ターンタイプのナノシステムを遥かに凌駕した現象だ。

 

 

「……何をしたんだ?」

「ブレイクデカールを知っているか?」

「GBNで流行ったチートだろ。……お前、まさか!?」

「あぁ、これはその応用。セイヤさんが俺の復讐の為に与えてくれた力。GPDでも、GBNでもこの力が有ればお前に勝てる!! ケイスケ!!!」

 完全に機体が修復されたイージスが、ケイスケのストライクBondに突撃する。

 

 

 

 ───その怒りの刃がついにケイスケのストライクBondへと届いた。

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