ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ブレイクシステム

 ブレイクデカール。

 

 

 二年前、GBNでとある人物がGBN崩壊を目論み、その時の計画で使用された不正ツールである。

 

 ガンプラに使用し、システムに介入してガンプラの性能をシステム以上の物にするチート行為。

 そしてブレイクデカールによるデータ破損でGBNを崩壊させるというのが当初の計画だった。

 

 

「───シバさん、あんたには失望した」

「……そうか。もう続けても無駄だって分かれよ、お前もな」

 当然その人物の目論みに加担していたセイヤがブレイクデカールのシステムを保有していたのは、いうまでもないだろう。

 

 

「……俺は、必ず復讐を果たす」

 既にブレイクデカールは修正パッチが開発されていて使用しても意味がない。

 しかし、そのブレイクデカールを参考に別のシステムを作る事は可能だった。

 

 ブレイクシステム。

 それが、セイヤが作り出した新しいブレイクデカールである。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 何度捌いても、攻めを崩さなかった。

 

 

 ブレイクシステムを発動したアオトのイージスは、何度腕を切り落とされても足を砕いても再生する。

 本来傷付けば治らない筈のGPDで、彼の機体はシステムを無視しているかのような挙動を繰り広げていた。

 

 

「なんだ……この力!? 本当にこれが……GPDなのか!?」

 ケイスケもGPDのプレイは久しぶりである。

 

 しかし、機体の操縦そのものはGBNとは変わらない。

 現に普通に戦っていれば、既にアオトは三回は負けている筈だ。それでも、彼の機体はピンピンとしている。

 

 

「狡いんだよ!! 狡いんだよ!! お前はそうやって、力があるからって!!」

「この……!!」

「もっと俺に力を……。お前に勝てるような、力を!!」

「アオト!! 俺は!!」

「お前の話なんて、聞くものか!!! ブレイクビット!!!」

 突き出されたイージスのシールドから放たれたビットがストライクBondを囲んだ。

 

「ここは地上フィールドだぞ!?」

 重力下でのオールレンジ攻撃。彼のイージスがおかしくなっている事だけは分かる。

 

「……っ、GNシールド!」

 ストライクBondを包み込むGN粒子の盾。

 

 しかし、そのシールドを貫通して、ストライクBondの左腕が削り取られた。

 

 

「ブレイクファング!!」

「くそ……!!」

 体勢が崩れた。アオトは畳み掛けるように、ブレイクドラグーンとブレイクファンネルを展開する。

 

「クリアパーツのファンネルと機動力重視のドラグーン。……ここまで凝った改造して、それでもガンプラが嫌いだって。……違うか、お前が嫌いなのは───」

「……そうだよ、ケイスケ。俺は───お前が嫌いなんだ」

 放たれる光。

 

 ストライクBondは少しずつ削り取られていった。ケイスケの戦意と共に。

 

 

「俺は……皆と楽しく……ガンプラがしたかっただけで───」

「お前の自己満足で、俺はお前に全てを奪われた」

「俺は……ユメカにも、アオト達にも楽しんで欲しくて───」

「お前がユメカに良いところを見せたいだけで、何も考えずにいたからユメカは全てを奪われた」

「俺は……ガンプラが好きで───」

「お前はガンプラが好きなんじゃない。ガンプラが強いから、ユメカに見てもらえる自分が好きなだけなんだ」

「俺は───」

「ケー君は!! 皆の事が大好きなんだよ!!」

 突如、そんな声が二人の間に割って入る。

 

 同時に、イージスをストライクBondとは逆方向からのビームが襲った。

 

 

「……何?」

「……ユメ……カ?」

「ケー君立って!! アオト君に話さなきゃ行けないこと、もっと沢山ある筈だから!!」

 ユメカのデルタグラスパーがGPD内で飛び回る。

 

 ストライクBondの背後まで回った彼女の機体は、装備していたクロスボーンストライカーをパージした。

 

 換装する。

 

 

「……ユメカ。……うん、分かった!」

 走った。

 

 想いを繋ぐ為に。

 

 

「近付かせるかよ。ブレイクビット、ファング、ファンネル、ドラグーン!!!」

 アオトのイージスから一斉に放たれるオールレンジ攻撃。

 しかし、ケイスケはクロスボーンストライクBondの機動力を活かしてその攻撃を全て交わしながらイージスに接近していった。

 

 

「早い!?」

「まだお前に言ってなかった事があったな、アオト」

「くそ!! ブレイクシステム、フルバースト!!」

 イージスを赤黒いが包み込む。

 凄まじいプレッシャーを放つ機体の前身から、夥しい量のビームが放たれた。それはもう、ガンプラバトルの公開ではない。

 

 

「……っ!」

「ケー君!!」

 そんなケイスケの前に、ダブルオーストライカーを装備したユメカのデルタグラスパーがGNフィールドを使って立ち塞がる。

 トランザムまで使い、なんとか攻撃を防ぎ切ったが彼女のデルタグラスパーはもうボロボロだった。

 

 けれど、そのおかげで彼のイージスに肉薄する程接近出来る。

 ユメカは最後の力を振り絞って、再びストライカーパックを換装した。

 

 

 ダブルオーストライクBond。

 

 その機体のGNドライヴが、再び近い光を放ち出す。

 

 

「───Re:TRANSーAM」

「くっ!」

「アオト、俺はな───」

 その拳が、イージスを捉えようと光った。

 

 

「───お前に負けた時、毎回凄い悔しくて泣いてたんだよ」

 しかしその拳は届かない。

 

 

 再び放たれたビーム。

 システム等関係ない攻撃が、ケイスケのストライクBondを貫く。

 

 

 

「……そうかよ」

 機体が動かなくなり、GPDはシステムを終了した。

 

 

 アオトは振り向いて、背後で待機していたトラックに乗り込もうと歩く。

 

 

 

「ユメカ!! カルミアさんも!?」

 GPDのマシンの近くには、知らない間にユメカが倒れていた。

 

「私の事は良いから! アオト君が! カルミアさんにもそう言ったから!」

 ユメカは現実では立てない。立ってプレイをするこのゲームをどうプレイしていたのかと思ったが、カラオに抱っこされていたらしい。

 

 ユメカの視線の先には、アオトが乗ろうとしているトラックがある。そのトラックに乗っているのは、ケイスケ達は顔を知らないセイヤだった。

 けれどカラオはその顔を知っている。だから、ユメカは「私の事は良いから」とカラオにトラックを追うように言ったのだ。

 

 

 雨の日の工場の床は冷たくて、でもユメカはきっとカラオに必死な顔でそう言ったのだろう。

 そうでなければ、こんな冷たい床にカラオがユメカを置いていく訳もない。彼女の気持ちが伝わってきた。

 

 

「ごめん、ユメカ……!」

 せめてもと、ハンカチを放り投げるようにユメカに渡してからケイスケは走る。

 

 走った先で、既にアオトはトラックに乗り込んでいた。

 

 

「───おい、セイヤ!! 何が目的なんだよ。お前は何がしたいんだ!! 子供達から何もかも奪って、それでレイヤが救われるのかよ!!」

「アオト!!」

 二人の声に、誰も振り向かない。

 

 

「GBNのサーバーエラーはお前がやったのか!? イアはどうなったんだよ!! おい、セイヤ!! 聞こえてんのか!! おい!!」

「アオト……俺は!! 俺は諦めないからな!! 俺は、また皆と!! 壊れても……直せば良いって!! お前の言葉なんだぞ……アオト!!」

 トラックは動き出す。

 

 その中で、アオトは視線を工場の中に向けた。

 

 

 バラバラになったストライクBondとデルタグラスパー。

 倒れているユメカ。

 

 歯を食いしばる。

 

 

「一度叩きのめしただけじゃ、生ぬるいよな」

「……それでもお前はケイスケを見てるんだな、ユメカ」

「……()()()()()()叩き潰せ。そうして、あの男から全てを奪えば良い。それがお前の復讐だ、アオト」

「……はい、セイヤさん」

 走り去るトラックの中で、アオトはイージスのガンプラを力強く握りながらそう返事をした。

 

 

 

 古いGPDのマシンの上で、寄り添うように壊れたガンプラが倒れている。

 

 ユメカは一人。

 上半身だけでなんとか体を持ち上げようとして、そのガンプラに手を伸ばそうとした。

 

 

「……私が、私が歩けないから……ごめんね。ごめんね、皆」

 アオトの言葉を思い出す。

 

 あの日。

 事故が起きたのは、彼女が道路に飛び出したからだ。

 

 

 それはトラックの運転手でも、助手席に乗っていたカラオでも、ガンプラを投げたアオトの父でも、ガンプラの持ち主であるアオトでも、ガンプラを壊したケイスケでもない。

 あの日の事故は自分が悪い。彼女は今でもそう思っている。

 

 

 伸ばそうとした手は届かない。そんな事が悔しくて、ユメカは倒れ込みながら涙を流した。

 

 

「……ごめん、ユメカ。引き止められなかった」

「ユメカちゃんごめん!! 大丈夫か? いや、本当、ごめんよ……」

「ケー君……。カルミアさん」

 けど、手を伸ばす。

 

 その手を取ってくれた二人の手は暖かい。

 

 

「どうして此処に?」

「ケー君一人で行っちゃうって、ユメカちゃんが通話で泣きそうな声してるから。おじさんが一走りしてきたのよ。……間に合わなかったけどね」

「な、泣いてないです! 泣いてないです……!!」

「あはは……」

 だから今はこの、届く手を───

 

 

「ガンプラ、壊れちゃったね」

「……大丈夫。また、直せば良いから」

 ───もう少し伸ばせるように。

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