ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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今は前に

 カラオとケイスケはヒメカの前で土下座していた。

 

 

「……お姉ちゃんを? 雨の中連れ出して? 冷たい工場の床に? 寝かせた?」

「「ヒッ」」

 アオトとのバトルの後。

 

 ユメカを連れて、彼女の家に帰ると雨で濡れていたり汚れている彼女の姿を見て妹のヒメカは顔に青筋を浮かせながら腕を組んで土下座している二人を見下ろす。

 

 

「何の為に?」

「それは……その」

「えーと……あの」

「い、良いから! 良いからヒメカ! 私が頼んだ事だから!!」

「お姉ちゃんはお風呂。……自分で全部やって。出てくるまでこの二人は正座させておくから」

「これもしかして私も怒られてる?」

「今日は何も手伝わないから。お姉ちゃん、全部一人でやって」

「はい!!」

 ヒメカの逆鱗に触れた三人は、その日合わせて三時間程説教を受けるのだった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GBNのサーバーが復活する。

 

 

 アオトとの戦いの数日後、ついにGBNにログインする事が出来るようになった。

 満を期してロックを除いた四人はGBNにログインをする。

 

 しかし、ログインした彼等が見たのはアンチレッドのメンバー達に襲われてボロボロになったフォースネストそのままの光景だった。

 

 

 

「───完全にあの後直ぐ、って感じですね」

「やっぱり、イアちゃん居ないね」

 フォースネストそのものは運営やマギーに相談して、直ぐに元通りに出来るようである。

 

 他にもGBNには色々なバグの名残が残っているようだが、全体的に見てプレイなどに支障をきたすサーバーエラーは存在しないと公式が発表していた。

 

 

 居なくなったELダイバー達を除けば。

 

 

 

「───なるほど、そんな事が」

「そうなんよぉ。もう本当、ヒメカちゃん怖くてさー」

 フォースネストは一日で元通りに修正される。しかし、そこにイアの姿はない。

 

「あはは。あんまりガンプラばかりで身体を大切にしないなら、また怒るからねって言われちゃいました」

「姉想いの本当に良い妹さんっすよね、ヒメカちゃん。また会いたくなってきましたよ」

 日付が進むも、運営やマギーの話ではイアの居所は分からないという事だった。

 

 データの海の中。

 彼女は今も存在しているのかどうかすら分からない。GBNにログイン出来たとはいえ、やれる事がない完全な詰み状態である。

 

 

「そうですね……。また……」

「ユメちゃん……」

 アレからロックとも会っていなければ、イアの手掛かりはまるでない。

 

 いつも通りガンプラを───GBNを楽しみたい。

 そんな気持ちだけが先走って、どこに手を伸ばせば良いのかも分からなかった。

 

 

「私、GBNのサーバーが治ったら全部元通りになるって思ってた……。イアちゃんはここに居て、遅いぞーって頬を膨らませて、タケシ君も帰ってきて、また皆でGBNで遊べるって……」

「……ジブンも、同じです」

 タイガーウルフやマギーと戦い、もっと強くなりたいという気持ちでGBNがまた楽しくなって。

 

 それなのに、イアが連れ去られたと思えばGBNはサーバーエラー。

 タケシは顔を見せなくなって、アオトが顔を見せたかと思えば彼は話を聞いてくれなくて。

 

 

 何もかも嫌な方向に進んでいく。

 彼女達はただ、GBNを楽しみたいだけなのに。

 

 

「───またガンプラバトルしたり、皆と話したりしたいな」

「ケー君?」

 ふと、ケイが漏らした言葉にユメ達は首を傾げた。

 

「……今、俺達に出来る事ってなんだろうって思ってさ。イアはきっと無事だ。今はサーバーが復活したばかりで、きっと迷子になってるだけだから。……いつか絶対に見付かる。だから、俺達は俺達に出来る事をしたい。GBNのサーバーが元に戻っても、それは変わらないと思うから」

 真っ直ぐに前を向いて。

 

 いつも通りの彼の顔に、ユメ達はお互いの顔を見合わせて笑い合う。

 

 

 そうこなくちゃ。

 誰かがそう言った気がした。

 

 

 

「───って、訳で。呼んでみたよ!」

「ケイ、久し振り!」

「リク!?」

 少し経って。

 

 ReBondのフォースネストに、ビルドダイバーズのリクとサラ、ユッキーとモモがやって来る。

 どうやらユメがモモに連絡を取ってくれたらしい。

 

 ユメがガンプラバトルだけでなく、イアの事も話したいと言うとリク達は心良く足を運んでくれたようだ。

 そうなればと、カルミアはアンディを呼び、ニャムはアンジェリカを呼んでフォースネストが賑やかになる。

 

 やはりGBNはこうでなければ、と誰もが思った。

 

 

「───なるほど、行方不明のELダイバー。心配だね」

 リクにイアの事を話すと、彼はサラを少し横目で見てからそう答える。

 

 彼にとってサラは特別な存在だ。それは、ELダイバーだからというだけではない。

 もしサラが連れ去られ、行方不明になれば自分も気が気でなくなるだろう。彼はそう思って目を細めた。

 

 

「他にも、行方不明になってる子が多いって」

「え!? そうなの!? サラちゃんが無事で良かったけど……他の子も心配だね」

 サラの言葉を聞いて、モモはネットの書き込みを調べ始める。行方不明になったELダイバーの数は十人。多くはないが、少ない数字でもない。

 

「手掛かりは?」

「アンチレッドってフォースの人達に連れ去られた後、この前のサーバーエラーが起きて……。サーバーが治っても、イアちゃんどこにも居なくて……」

 ユッキーの問い掛けにユメがそう答えると、カルミアが「GBNの運営も行方不明のELダイバーを見付けられてはないみたいよ」と付け加えた。

 

 

「それについて、関係あるのか分からないんですけど……。サーバーエラーが戻った後、気になる記事を見付けましたわ。今日はこれについて話したくて」

「気になる記事?」

 アンジェリカは大きなコンソールパネルを開くと、そこに一つの記事を表示させる。

 

 

 その記事にはビルドダイバーズというフォースが、GBNの公式からは公開されていないストーリーミッションというミッションに挑み、最終ステージに手こずっているから意見をくれという記載がされていた。

 

 

「ビルドダイバーズ?」

「僕達じゃないけど……?」

「ストーリーミッションってなんだろうね」

 その記事の内容にリク達は首を傾げる。確かにアンジェリカが気になっている点はそこでもあるが、一番の疑問点は他にあった。

 

「あなた達ビルドダイバーズは結構有名なフォースなので、態々名前をパクってるのは……まぁ、何か理由があるとして。……このストーリーミッションの録画時間、丁度サーバーエラーが起きる直前だったらしいんですのよ」

「あの直前か……」

「何も関係がない、とは言い切れないと思って一応。……あとこの、別のビルドダイバーズという方々が今度ストーリーミッション攻略の為のイベントバトル擬きの参加を募集してましたわ」

 ストーリーミッションの内容を見る限り、特にサーバーエラーやELダイバーの行方不明とは関係がなさそうではある。

 

 しかし、可能性がまったくゼロという訳ではないなら頭の中に入れておいた方が良い。

 

 

 それに、記事に書いてあるビルドダイバーズのメンバーの一人はケイ達も知っている───イアを初めて見つけた時に共に彼女を追ったELダイバーメイだった。何か運命的な物を感じる。

 

 

 

「サーバーエラーをやったのはセイヤ達じゃないって事なのかねぇ。そもそもアイツ、おじさんが居た時もそうだけどハッキングとかそういうのは下手だったけどねぇ。……でも、ケー君曰くブレイクデカール擬きみたいな真似までしてたんでしょ?」

「ブレイクデカール……」

 ブレイクデカールに着いてはリク達も何か思う所があるらしい。彼等が考える素振りを見せる傍ら、アンディが思い出したようにこう口を開いた。

 

「君達は僕の頭が吹っ飛んで火事になったの、覚えてるかい?」

「言い方」

「NFTの時ですわよね?」

 アンジェリカの言葉に「そう、それの話」と頷くアンディ。

 

 

 曰く、あの時のGBNログインマシンの爆発の理由が警察の調べでやっと分かったらしい。

 

「───あの爆発、システムハックだとかウイルスだとかそういう難しい物じゃない。ただの遠隔操作だったらしいんだよね」

「どういう事ですの?」

「僕の機体が爆発した瞬間に事故が起きて、一時GBNは()()()()()()()()が蔓延してるって噂が立ったけど……そんな物は無かったって話さ。簡単に言えば、僕のログインマシンはリモコンで爆発するように出来ていたって訳」

 アンディの言葉にここにいる者達は目を丸くする。

 

 

 GBNで機体が爆発するとログインマシンが爆発するという話の正体がリモコンという原始的な物だった方に驚きを隠せなかった。

 

 

「待てよ……おじさん達がやってた仕事って───」

「そう、勘がいいねぇ。カルミア君が前やってた仕事、ガンプラ系の運送会社でしょ? ログインマシンの運搬とかもしてたんじゃないの?」

「ウチの会社でリモコン爆弾付けて、それを全国に配ってたって訳? おじさんそんなの聞いてないわよ」

 頭を抱えるカルミア。

 

 セイヤはそんな事をしてまで───というよりも、そんな事ですらカルミアには教えてくれなかった程に周りを信用していなかったのだろう。

 それが少し、カルミアは辛かった。

 

 

「───だから、彼等にGBNのサーバーどころか全世界のサーバーに影響を与えるような事は出来ないと僕は見ているよ。……だからこそ、さっき話にあったブレイクデカール擬きはビックリしたけどね。……彼等の上に何かがいる、そんな可能性も考えられるけど」

 ただ、それ以上の事は分からないし憶測でしかない。

 

 

 アンチレッドの事に対してそれなりに分かってきたが、まだ分からない事の方が多いのが現状だった。

 

 

 

「ともあれ、手待ちかねぇ」

「せっかく来てくれて情報も貰ったのに、申し訳ないっす」

「いえいえ。それに俺は、ケイとバトルする為に来たんで」

 カルミアとニャムに謝られるリクは、首を横に振ってから強い眼差しをケイに向ける。

 

「ユメちゃんから、新しいガンプラを作ったって聞いたよ。俺も今ダブルオーダイバーを強化したくて、何か刺激が欲しいって思ってたから」

「リク……。よし、分かった。やろう」

 二人はそう言って腕を組んで、バトルのルールを決め始めた。

 

 

 立ち止まっていても何も進まない。今はとにかく、前に───

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