ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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トランザムインフィニティ

 カタパルトに足を乗せる。

 

 灰色だった機体に色が付き、GNドライヴが赤い光を漏らした。

 輝くツインアイの見詰める先。

 

 空は暗く、星の光に照らされて───

 

 一つずつ着いたランプがその時を知らせる。

 

 

「───ケイ、ストライクReBond! 行きます!!」

 ───ストライクReBondの初陣だ。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 フィールドは宇宙。

 リクが最初に感じ取った違和感は、星の光に混じった赤い光である。

 

 

「───赤いGN粒子。トランザムじゃない……擬似太陽炉!?」

 以前戦った時。

 

 ダブルオーストライクBondに装備されたツインドライヴは、ダブルオーガンダムが扱う純製の太陽炉だった筈だ。

 しかし、接近してくる新しいストライクが放つ光は、赤。

 

 擬似太陽炉。

 

 

「砲撃……!!」

 そんな事の理由を考えている暇もなく、リクのダブルオーダイバースカイへ放たれる砲撃。

 

 一本の青い光が、リクの機体を掠める。

 

 

「そう簡単に当たってはくれないよな!!」

 エクリプスを外したケイは不敵に笑いながら、X字のスラスターから火を出した。

 

 火力も機動力も、作った自分の想定以上である。

 それ以上に、自分の想定をさらに上回る強敵との戦い。ストライクReBondの初陣で、これ以上楽しい物があるだろうか。

 

 

「───擬似太陽炉とフルクロスに、多機能装備満載のフル装備か! 良い機体だね……!」

「これが俺の新しいストライク。……ストライクReBondだ!!」

「それでも、俺は負けない!!」

「俺は、今度こそ勝つ!!」

 お互いに両手に刃を構え、激突。

 

 GNソードIIIとクジャクは大型の武器だが、それを振り回せる程安定した出力と強度。

 それを成す為の操作技術とビルダー技術。

 

 

 純粋に。

 リクは目の前の男が怖くなった。

 

 こんなに面白いガンプラバトルをする人が、まだ知らない所にいる。

 GBNである程度名を上げた彼ですら、知らない強敵がいる事に、リクは笑みを隠せない。

 

 

「最高だ……!!」

 一旦距離を離し、射撃戦を展開するリク。

 

 交わせない攻撃をGNフィールドでやり過ごして、ケイはGNソードIIIとクジャクを射撃モードに換装。

 その両方で牽制しながら()()を狙った。

 

 

 

「───エクリプス!!」

「───アレを二本同時に撃てるのか……!!」

 放たれた二本のエクリプスを、ビームの間に入り込んで避けるリク。

 

 小型化していても、エクリプスの出力は改造前よりも遥かに高い。

 外に交わすのは困難だと察したリクは、二本の斜線にある僅かな隙間に機体を滑り込ませてビームの直撃を交わす。

 

 

「変態かよ……!!」

「こっちからも行くよ!!」

 初撃は一本だけを使い、相手を油断させてからの本命。ケイはこれで最低でも足一本は持っていくつもりだった。

 

 しかし、リクはほぼ無傷。

 大きく避けなければ交わせない筈の攻撃を最短距離で交わし、その起動には余力がある。

 

 

「詰められる……!!」

「その機体相手に離れるのは得策じゃない!!」

 エクリプスは勿論、クジャクも広範囲の射撃武装だ。GNソードIIIはともかく、ストライクReBondにはまだバタフライバスターもある。

 

 接近戦が弱い訳ではないが、遠距離戦では手数で叶わない。この数秒でそれを理解したリクは接近戦を主に置く事を選んだ。

 

 

 しかしそれこそ、ケイの望む戦場でもある。

 

 

 GNソードIIIとクジャクを剣モードに。

 圧倒的な射撃の手数を、武装換装をせずに接近戦用に切り替える事が出来る武器。

 

 クロスボーンストライカーの機動力とGNドライヴによる燃費、遠くの敵は圧倒し、近くの敵には全力で。これが、ケイのストライクReBondの戦場だ。

 

 

「対応が早い……!」

「まずは武器を壊す……!」

 しかし、接近戦はリクにとっても得意な距離である。どちらかといえば、至近距離での攻防はリクに分があるだろう。

 

 ぶつかり合うバスターソードとGNソードIII。

 相手の剣は一本。ならばとクジャクを振り下ろすケイだが、その刃をリクは足で受け止めた。

 

「足癖が悪いな!」

「どういたしまして!」

「褒めてない……!!」

 こっちは二本。しかし、リクの機体に刃が届かない。

 

 連撃は全て足や腕に阻まれ、着実に詰められていく。

 

 

 そしてケイが思わず振りかぶったクジャクの大振りをリクは見逃さなかった。

 体を捻って足でGNソードIIIを叩き割り、バランスを崩したストライクReBondの振るったクジャクを根本から切り飛ばす。

 

 これで接近武器は取ったと、リクはそう思った。

 しかし、ストライクReBondにはまだ二本のバタフライバスターがある。

 

 

「まだ武器がある!」

「流石に強いな……!」

「でも、一気に詰める!!」

 第一ラウンドはリクの勝ちだ。ダブルオーダイバースカイはほぼ無傷、ストライクReBondは武器を二つ失っている。

 

 それでも、絶対に勝てないとは思えない。思わない。

 

 

 遠距離戦ならこちらが有利だ。接近戦も十割負けている訳ではない。接近戦だけならロックやタイガーウルフの方が強敵だろう。

 

 

 リクの強さ。

 それは心の芯の太さだ。

 

 絶対に諦めない鋼の精神。ガンプラが好きだという気持ち。

 それはきっとチャンピオン───クジョウ・キョウヤにも劣らない物だろう。だからこそ、彼はサラを守り抜いた。

 

 

 なら、己に足りない物は何か。

 

 彼との戦い。その先に答えはある。

 

 

「使い慣れてるな……!」

「元々はクロスボーンガンダム乗りだからな!!」

 バタフライバスター二本に持ち替えたケイを、リクは中々捉えられないでいた。

 

 剣になる銃。

 その点ではGNソードIIIやクジャクも同じだが、このバタフライバスターはビームサーベルである。

 出力の調整による刀身の長さや熱量。その細かな変化を戦闘中にやってのけ、リクの攻撃は思った位置に届かない。

 

 GPDでは元々クロスボーンガンダムガンダムを使い、ザンバスターとビームザンバーを主力で使っていたケイにとっては、その意志を継ぐバタフライバスターこそが本気の武器ともいえる物だ。

 GNソードIIIやクジャクのように簡単には砕かせない。リクと互角の斬り合いを繰り広げ、ケイは一瞬の隙にリクのダブルオーダイバースカイを蹴り飛ばす。

 

 

「……っ、砲撃が来る!」

 揺れる視界。

 感覚だけでリクは回避行動を取った。

 

 このゲームは攻撃されればその攻撃がくる方角からアラートが鳴る。鳴り響くアラートに、リクは冷や汗を流しながら必死に機体の制御をした。

 

 

 だから、気が付かなかったのだろう。

 

 その鳴り響くアラートは、ただの投げられたアーマーシュナイダーだったという事に。

 

 

「……アーマー、シュナイダー」

 砲撃を交わす為、大袈裟に避けたその空間。

 

 一本の小さな刃がそこを通った。

 

 

「しま───」

「エクリプス……!!」

 気が付いた時にはもう遅い。

 

 中距離。

 放たれた光を交わすには短く、引き金を引けばその瞬間敵を葬れる距離である。

 

 

 ストライクReBondの両腰から伸びる砲身から放たれた光が、ダブルオーダイバースカイを包み込んだ───

 

 

 

「───流石に、落とせないか。……いや、ここからが本番だな」

 ───かのように見えた。

 

 

「───トランザムインフィニティ……!!」

 砲撃の光よりも早く、赤い光を纏うダブルオーダイバースカイが宇宙を駆け抜ける。

 

 TRANSーAM。

 

 

 平均三分。

 それが、このシステムに課せられた限界時間だ。

 

 

 シャフリヤール達トップビルダーの手に掛かれば、その時間は多少伸びる。

 しかし、それでもそれが五分や十分になったりはしない。

 

 限界時間。

 それはつまり、そのトランザム中に試合を終わらせるという意志そのもの。

 

 

「使ったな……!!」

「本気のバトルをしよう、ケイ!!」

 楽しい時間はあっという間だと、ケイは不敵に笑った。

 

 ここからが、本番である。

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