ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ReTRANSーAM

 自分より強い相手に勝つ為には、自分が相手より有利な状態を作る事が前提である。

 

 

 サイトウ・ケイスケという少年はその事を子供の頃から分かっていた。

 

 

 

 小学生の頃。

 GPD以外にもガンダムの対戦ゲームは沢山ある。

 

 その中の一つで、対戦中に覚醒というシステムを使えるゲームがあった。

 覚醒中はゲームで使う機体の機動力や火力が強化される。そのシステムを使っている時だけは、相手より遥かに有利な状態を作る事が出来るシステムだ。

 

 

 ケイスケは出来るだけその覚醒というシステムを相手より多く使い、相手より長く使う、そして相手には無駄にさせる。

 そうして自分が有利な状態を作る事が得意だった。

 

 

 

 今思えば───

 

 ユメのデルタグラスパーお披露目の時、ロックに先にTRANSーAMを使わせるという作戦は彼の手癖だったのかもしれない。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 トランザムインフィニティ。

 

 

「一気に行くよ!!」

 リクの想いを体現した、ダブルオーダイバースカイ専用のトランザムである。

 

 

「ここで真正面から付き合う程、俺は猪じゃないからな……!」

 スラスターを全力で吹かせ、距離を取るケイ。

 

 しかし、トランザムの機動力を超えることは出来ない。すぐに追い付かれ、高速の斬撃がケイのストライクReBondを襲った。

 

 

「───TRANSーAM!!」

 刹那。

 ストライクReBondを赤い光が包み込み、機体は最高の機動力と出力を得る。

 

 二人の刃が高速でぶつかり合った。

 

 

「ケイとのバトルは面白いよ!!」

「それは光栄だな……!!」

 前回も、前々回も、ケイはリクに敗北している。

 

 最たる理由はともかく、その敗因の一つに接近戦の熟練度があった。

 

 

 リクはバスターソードだけではなく、ビームサーベルや脚まで使った多彩な攻めを見せてくる。

 ケイもそういう事が出来ない訳ではないし、小細工は彼の十八番だ。

 

 しかし違う。

 

 

 リクのそれは、小細工抜き。正真正銘真剣勝負の柔軟な戦闘技術。

 

 

 ケイの小細工がダメという訳ではない。

 

 

 しかし単純に───

 

 

 

「───強い」

 ───リクのソレが、ケイのソレを上回っていた。

 

 

 彼に小細工は通用しない。

 

 少し離れてエクリプスを撃つ振りをし、バタフライバスターをライフルモードで乱射するも射撃前に看破され回避される。

 

 隠し球のビームサーベルも、バタフライバスターを一つ犠牲にして煙幕の中からの斬撃も。

 読みではなく、動体視力で対応されていた。全て見てからの反応。不意打ちや小細工が通用しない。

 

 

「スポーツとかやってる?」

「サッカーを少し!」

「なるほど」

 足蹴り。

 

 ソレそのものの威力にプラスして、ダブルオーダイバースカイの足には蹴りを強化する装甲が付属している。

 納得の威力にケイは舌を巻いた。

 

 

 楽しいな。

 

 

 けれど、小細工はまだある。

 

 

 

「トランザムの時間もない……一気に決めるよ!!」

「それはこっちもだ!!」

 リクのダブルオーダイバースカイのトランザムはストライクReBondのソレよりも遥かに出力が高い。

 

 それもその筈だ。

 ケイのストライクReBondの太陽炉はそもそもが擬似太陽炉。純正のそれには持久力も出力も劣る。

 

 

 そしてツインドライヴ。

 

 ケイの太陽炉は今、一つしか稼働していない。

 

 

 この()()()は一発勝負。

 

 

 使用していない太陽炉による、もう一度のトランザム。勝負を決めるのは、そこだ。

 

 

 

「今!!」

「……耐えろ!!」

 右足を斬り飛ばされて。

 

「ここで!!」

「……耐えろ!!」

 左肩を潰されて。

 

 

「一気に!!」

「耐えろ!!!」

 リクのバスターソードがストライクReBondの頭を貫き、機体がよろめく。

 

 トランザム終了間際。

 

 

「───決める!!」

 リクのバスターソードを、粒子の光が包み込んだ。

 

 

 必殺の一撃。

 

 

 GBNというゲームが、ダイバーとガンプラの気持ちを一つに集約した文字通りの必殺技。

 

 

 

「「俺の勝ちだ……!!」」

 二人の声が響く。

 

 振り下ろされる光の剣(ハイパースカイザンバー)

 

 

 刃はケイのストライクReBondを捉えるも、GNフィールドに阻まれた。

 

 しかし、その大出力の刃を受け流す事は出来ない。何よりリクのダブルオーダイバーがそうであるように、ケイのストライクReBondもトランザム時間が限界である。

 

 

 トランザム中のGNフィールドでなんとか持ち堪えているこの現象。

 

 

 ケイは最大出力のGNフィールドを展開するのがやっとで、これ以上余力がない筈だ。

 

 

 だから、先に限界が来るのはケイで、この必殺技は通る。

 

 

 ───リクの中では、そう信じられていた。

 

 

 

「耐えられるかな!!」

「耐えられる。このストライクReBondなら!!」

 押し込む。

 

 オーバーロードは目に見えて明らかだった。

 

 

 ここから動ける道理がない。ここから立て直す事は出来ない。

 

 

 だから(それでも)───

 

 

 

「───ここだ。……答えろ、俺の声に答えろ!! ストライクReBond!!」

「まだ……耐える!? 違う……これは───」

 とっくの昔のトランザムは終了している。

 

 リクのダブルオーダイバースカイも、今は必殺技の余力をぶつけているだけの状態だ。

 しかし、殆どの力を使いきった相手を倒すにはその余力でも充分である。

 

 

 ───相手が疲弊しきっているのなら。

 

 

「───ReTRANSーAM」

 再び。

 ストライクReBondを赤い光が包み込んだ。

 

 

 

「二度目の……トランザム!?」

 ケイの最後の小細工。ツインドライヴに見せ掛けた、単一接続のトランザムによる、もう一つの太陽炉を温存するトランザム。

 

 出力は高い訳ではない。しかし、通常約三分のトランザム限界時間を倍に───自分が有利な状況を倍に。

 

 

「───耐えた!!」

 リクの必殺技を全て受け止め、ケイのストライクReBondは半壊した頭部のツインアイを光らせる。

 

 同時に。

 右肘部の接続ユニットに太陽炉を接続。

 

 

 トランザムの機動力で、ストライクが宇宙を駆けた。

 

 

 

「凄い……凄いよケイ! だけど、それでも、機体はボロボロの筈だ!」

 リクは構える。

 

 確かにダブルオーダイバースカイのトランザムは終了しているが、そもそもストライクReBondが負ったダメージは無視できるものではない。

 

 トランザム中でも限界性能を出しているとは言えず、大したダメージを負っていないダブルオーダイバースカイとほぼ大破しているトランザム中のストライクReBond。

 まだまともにやり合える性能差だ。リクは焦らない。まだ負けるつもりはない。

 

 残り三分。

 ここを耐えれば、彼の勝ちなのだから。

 

 

 しかし、ケイにはまだ隠し球がある。それも最大の、今日ここで決める為に、この瞬間の為に残しておいた必殺の一撃が。

 

 

 

「肘に太陽炉……何をするのか、見せてもらうよ! ケイ!!」

「行くぞ!! リク!!」

 振りかぶった。

 

 右肘に太陽炉が青く光る。その光が拳を包み込み───

 

 

「パンチ……!?」

 リクは咄嗟にバスターソードを盾に構えた。

 

 その刃に、ケイが拳を叩き付ける。

 

 

「───ReBondナックル……!!」

 打ち付ける拳。

 

 その拳は想いを貫き、再び繋ぐ為の力。

 

 

 これが、ケイの───ストライクReBondの、必殺技だ。

 

 

 

「……凄い」

「うぉぉおおおお!!!」

 その拳は───

 

 

「……俺の、負けだ」

 ───リクのダブルオーダイバースカイを貫き、勝利をその手に掴む。

 

 

 

 

 三度目の正直。

 

 Win ケイ ストライクReBond

 

 二度の敗北を経て、ケイが掴み取ったのは新しい力と、勝利だった。

 

 

 

 

「───負けちゃったね」

「でも、二人共───二人のガンプラも凄く……楽しそうだった!」

 ガンプラの声が聞こえる少女はそう語る。

 

 

 彼女には聞こえていた。

 ストライクReBondが、新しい力を喜んでいるのが。

 ダブルオーダイバースカイが、新しい力を欲しがっているのが。

 

 

「良い刺激になったんじゃない?」

「彼のストライク、凄かったね! リッ君!」

「うん。……俺も、もっと強くなれるかな」

 フォースReBondのメンバー達に褒め称えられるケイを遠目に見ながら、リクは明日に視線を向けた。

 

 次戦う時は、もっと───

 

 

 

 

 ストライクReBondの初陣は華々しい勝利を飾る。

 

 きっとこの機体なら、次こそはアオトに届かせて見せる───ケイは拳を明日に向けて、そう誓った。

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