ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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終焉の引き金

 この時を待っていた。

 

 

「レイア、今……俺は復讐を果たす。この世界を滅ぼしてな」

 六年間以上。

 

 セイヤの大切な物が奪われて、それだけの月日が経つ。

 当時サービスが開始されたばかりのGBNも、今はガンプラ───ガンダムのコンテンツとして大きく世に知れ渡る事になった。

 

 

 その中で、セイヤは失敗を重ねる。

 

 ブレイクデカールというシステムを作った男に詰め寄り、その思惑に乗った。

 NFTでダイバー達にトラウマを埋め込み、GBNから人を遠ざけようとした。

 

 彼に力はなかったのだろう。

 GBNという巨大なコンテンツへの復讐をする為には、彼は非力だった。

 

 

 しかし、皮肉にもGBNそのものが彼に力を与える事になる。

 

 

「───ELダイバー、か」

 GBNでガンプラをスキャンした時の余剰データの集合体。電子生命ELダイバー。

 

 彼等の持つデータ量は一つのゲームのサーバーには負荷が大き過ぎる代物だった。

 サーバーに負荷が掛かり、データにバグが生じる。

 

 

 運が良く、セイヤが辿り着いたその先で。

 

 彼はGBNの外から来た存在に力を借りる事が出来た。

 ヒトツメ───アルスと呼ばれたその者は、ガンプラの民───GBNのダイバーを殲滅する事が目的である。

 

 

 目的の一致。

 

 それにより手に入れたのは、ゲームのデータを裏から破壊する技術。

 

 

 

「───デストロイ計画。始動」

 GBN全土に雷鳴が轟いた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 土曜日の朝。

 

 

「ヒメカー。ねぇ、ヒメカー。……あれ?」

 朝起きて、妹の名前を呼ぶユメカ。

 

 いつもならすっ飛んでくる妹が、返事もない事にユメカは首を傾げる。

 頼りにし過ぎてついに呆れられてしまったのかもしれない。ヒメカに限ってそれはないと分かりつつも、ユメカは若干の不安を覚えながらベッドの上を転がった。

 

 

「……やっぱり、一人で座るのは大変だなぁ」

 GBNと違って現実では自分で座る事も難しい。

 

 起き上がった彼女は携帯端末を取って、何か連絡が来てないか確かめる。

 

 

「……ヒメカ?」

 一件。

 寝ている間に入っていたメッセージを見て、ユメカは目を丸くした。

 

 

『お姉ちゃん、私はGBNを楽しんでるお姉ちゃんが好き。だけど、GBNはお姉ちゃんの足をもっと悪くしちゃうんだって聞いたから。もうGBNをするのはやめて欲しい』

 

 

「……なんで?」

 ヒメカの言っている事が分からない訳ではない。現にユメカはGBNをプレイしている時の感覚が残っていて現実で転んでしまう事が良くある。

 ただ、ヒメカはこんな事を突然メッセージだけで言う妹ではない。そんな事はユメカが一番分かっていた。

 

 

「ヒメカ……」

 電話をする。

 半分はその電話に出てくれない気がしていたが、その電話が繋がってユメカは一旦安堵した。

 

 

「ヒメカ、メッセージの事───」

『お姉ちゃん。私が、お姉ちゃんを守るから。このお医者さんが、お姉ちゃんをGBNから守るって言ってたの。だから、私がGBNを壊してくるね』

「───ぇ、何言って……るの? ヒメカ」

 いつも通りのヒメカの声。

 

 しかし、電話の向こうで、聞き覚えのある声が漏れてくる。

 

 

『それじゃ、ヒメカちゃん。俺達と共にGBNを破壊しよう』

 何処かで聞いた声。

 

 直ぐにその声の主が頭の中に浮かんだ。

 

 

「セイヤさん!? セイヤさんなの? ヒメカと一緒にいるの? なんで? ねぇ、ヒメカ、待って───」

 電話が切れる。

 

 直ぐに掛け直しても、その電話にヒメカが出る事はなかった。

 

 

 

「───さぁ、お姉ちゃんを守る為だ」

「お姉ちゃん、さっき先生の名前呼んでた。やっぱり、()()()()()はお姉ちゃんの知り合いなんだね」

「……あぁ、俺はユメカちゃんの足を良く出来る先生なんだ。その為には、まずGBNを破壊しないといけないんだよ」

 そう語る男───セイヤは、ヒメカにGBNのログインマシンを渡す。

 

 病院でユメカの容態が悪くなっているかもしれないと聞かされたヒメカに、悪いのはGBNなんだと言い聞かせるのは簡単だった。

 

 しっかりしているようで彼女はまだ中学生なのである。

 そんな幼気な少女の背後で不敵に笑う男の顔を、ヒメカは見る事もなくGBNにログインした。

 

 

 

「───ヒメカが、えの、あの、えっと! セイヤさんに、なんか! どうかして! えっと!!」

『落ち着けユメカ。とりあえず落ち着け』

『セイヤにヒメカちゃんが連れ去られたって事か? 携帯のGPSとかで場所は探せるかもしれないけど……。いや、セイヤの事だから電話した後適当なところに携帯捨ててるかもな』

『なんで兄さんがそんな事をしたんですか? そもそも、ユメカちゃんに電話する理由も分からないっすよ』

 ヒメカに電話が繋がらなくなった後、ユメカはReBondのグループチャットに慌てて三人を集める。

 

 ユメカもナオコが言う通り、セイヤがヒメカを攫った理由がさっぱり分からなかった。

 

 

『少しでも戦力が欲しかったって変な話じゃないだろうな。……セイヤはGBNを楽しんでる奴全員に復讐したいってなら、ユメカちゃんも例外じゃない』

『つまり?』

『ユメカちゃんの大切なヒメカちゃんが、セイヤの計画に加担したって事実が欲しいんだろうよ。話を聞くに、電話に出たのはユメカちゃんの口からアイツの名前を出す事でヒメカちゃんを信用させるって手口な訳』

「そんな……。ひ、ヒメカは大丈夫なの?」

 ユメカの震えた声に、カラオは少し考える。

 

 気休めを言う事も出来るが、今はそれが得策という訳ではない。

 

 

『……セイヤが小さな子供に手を出すような人間じゃない事だけは願いたいが。そもそもアイツの目的はGBNへの復讐だ。ヒメカちゃんが怪我をしたり酷い目にあったりなんて事はない筈』

 そう言い切って、カラオは「ただ」と付け加えながらこう話を続けた。

 

『───ただ、ヒメカちゃんは何も知らない。ユメカちゃんの為にセイヤがGBNへの復讐を果たす手伝いをする事になる。もしこの世界からGBNを本当に無くしてしまったとして、ヒメカちゃんはユメカちゃんから大切な物を奪ったって現実を叩き付けられる事になる。きっと、優しいあの子は傷付くだろうな』

「そんな事させない!!」

 強い意志で声を上げるユメカ。

 

 

 しかし、現に事は動き出している。

 

 

『ヒメカちゃんまで使おうとしてるって事は、セイヤが動き出したって事だ。……もうGBNで何かしてるかもしれ───』

『本当に何かしてるっすよ!! 皆さん、これ見てください!!』

 カラオの言葉を遮って、グループチャットにスクリーンショットを貼り付けるナオコ。

 

 そこには、GBNの至る所で暴れ回るMAの姿が映し出されていた。

 

 

 

 ディビニダト、エクストリームガンダム、レグナント。

 三種のMAがGBN上の至る所で暴れている。

 

 スレッドには先日のヒトツメ襲来イベントの続きか、等様々な憶測が語られていた。

 その中には、フォースネストのデータが消し飛んだという報告もある。

 

 

『先日のヒトツメの時は、結局兄さんが動いてるような感じはありませんでしたけど』

『GBNの至る所でバグが起きてるって。……これは一体なんだ? 何が起きてるんだ?』

『何かしてる、ってのが正しいか。良く分からんけど、このMAがバグの発生源なのは間違い無いだろうな』

「待って、メッセージが来てる」

 話している間に、ユメカ達の携帯端末にGBN運営からのメッセージが入ってきた。四人は一斉にそのメッセージを開く。

 

 その内容は───緊急イベントミッションGBNに現れたMAを撃破せよ───という内容はだった。

 

 

 

『どう思うよ』

『どう考えても臭いっすよ』

「あれ? またメッセージ。……マギーさんから?」

 運営からのメッセージの直ぐ後に、フォースのグループチャットにメッセージが届く。

 

 その送り主はマギーだった。

 

 

 

 挨拶は抜きで単刀直入に話すわ

 

 アンチレッドが動き出した。彼等は九つのMAにELダイバーを組み込んで、戦闘データを収集してる

 ELダイバーを介してその戦闘データをGBNのサーバーに送り付け、サーバーをパンクさせるのが彼等の目的を簡単に説明したものよ

 

 

 あなた達にも協力して欲しい。きっと、イアちゃんも何処かにいる筈

 

 

 

「ケー君!」

『分かってる。ユメカのガンプラも用意出来たしな』

『むしろ、この時を! この瞬間を待っていたんだって感じっすよね! ジブンも抜かりないっすよ!!』

『……やっと出てきたと思ったら尻尾どころか中身までぶちまけてるじゃないの。……今度こそ止めてやらないとね』

 四人は言いながらGBNへのログインの準備をする。

 

 

 事情を知っている者も、知らない者も。

 

 運営や名だたるダイバー達の呼び掛けに数多のダイバー達がGBNにログインし始めた。

 

 

 

「───そうだ、集まれ。そしてお前達がトリガーを引くんだ。このGBNの終焉のな」

 そう言いながら、セイヤは操縦桿を握る。

 

 この世界を終わらせる為に。

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