ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
カツラギに呼び出されたキョウヤは唖然としていた。
「───これが、一人の力で作られたシステムだというのか?」
「GBN全土に配置された九つのMA。連れ去られたELダイバーをコアにして動くそれは、戦闘データを収集してサーバーに負荷をかけ続ける代物らしい」
動き出したアンチレッド───セイヤがGBNに放った九つのMA。
それら全てにコアとして配置されているのは拉致されたELダイバー達であり、バグによりログアウトを封じられたELダイバーはGBNのサーバーにそのデータを蓄積していく。
「どうしてもログアウト出来ない」
「先日のヒトツメの件、もしかすればELダイバーの正体は……という話を覚えているか? キョウヤ」
「ELダイバーの種になった可能性のある、外惑星の電子生命体。ヒトツメのボス、アルスの主の話か」
「もし本当に───いや、これは事実として三十光年先の星とGBNが繋がった。そのデータの壁を隔てる事になれば、ログインもログアウトもない……ただそこにある世界が広がっているという事になる」
GBNと繋がった現実の世界。
そこにあるものは現実にもGBNにも存在する事になり、ログアウト以前にそもそもこの世界に存在している事になる。だから、ログアウト出来ない。
「イア君はまさか……」
「その話は後だ。まずは、彼等の計画を止める算段を立てなければならない」
「純粋にMAを撃破すると、コアになっているELダイバーはどうなる?」
「解析の結果、どうやらMAがELダイバーと裏世界……そしてGBNのサーバーを繋いでいる形になっているようだ。MAさえ破壊すれば、ELダイバーは解放される」
「イア君は?」
「彼女は九つのMAの中には居ないようだ」
カツラギの言葉に、キョウヤは訝しんだ。
彼女がログアウト出来なかったのは、現実と繋がったGBNで二つの世界と同化していたからだろう。
どちらの世界にも既に存在している彼女が、ログアウト出来るという合理はない。
そんな不確かな存在である彼女は、GBNのサーバーに大きな負荷をかけている状態だ。
以前起きたバグのように、彼女はGBNのサーバーにとって大きな負荷になっている。
そんな彼女を、GBNの崩壊を目論むアンチレッドが使わない訳がない。現に彼女は攫われているのだ。
「何か、まだ手を残しているのかもしれない。……カツラギさん、とりあえず私はMAの撃破に向かう。全体の指揮を頼みたい」
「勿論だ。……しかし気を付けろキョウヤ」
「何を?」
不思議な事を言われ、キョウヤは珍しく目を丸くする。
GBNチャンピオン。最強の男クジョウ・キョウヤが気を付けろと言われたのだ。
何を言われるのかと、キョウヤは目を細くする。
「MA一機にタイガーウルフが敗れた。……アレは只者ではない」
「そんなバカな……」
その忠告は、キョウヤにとっても信じられないものだった。
☆ ☆ ☆
ネコミミの付いたターンXが出撃する。
「ニャム・ギンガニャム!! ニャーンX!! 行くっすよ!!」
ネコミミがかなり特徴的だが、細部まで作り込まれたニャムのオリジナルガンプラがReBondのフォースネストから出撃する。
並んでカルミアのレッドウルフ、ケイのストライクReBond、そして───
「ユメ、デルタストライカー! 行きます!!」
───デルタカイをミキシングしたユメの新しいガンプラが追従した。
特徴的なロングレンジファンファネル一対を筆頭に、ビームマグナム等火力重視の装備を持つ彼女の新しい機体にはストライカーパックの接続システムはない。
ユメが自分の力を最大限に発揮出来るように。
そんな想いで作られたこのガンプラには、しかしそれでもケイと
「さて、現状はどうなってるのよ」
そんなデルタストライカーはカルミアのレッドウルフを乗せても飛行出来る程の出力がある。
三人はログインして早々に、GBNでの戦況を調べ始めた。
「大気圏中にはディビニダドが二機、レグナントとエクストリームガンダムが一機ずつですね。残りは全て宇宙なので、システム的にはマスドライバーを使わないといけないかもしれないっす」
「テレポート出来ないの? GBNなのに」
「運営からのメッセージだと特殊移動禁止のスペシャルミッションって事になってるっすね。しかも出撃位置はフォースネスト限定。多分大人の事情というか、兄さん達が意図的に起こしたバグでエリア間の接続が切れているからだと思いますけど」
「と、なると近くのマスドライバーを目指すのが先決かね。マギーさんらの話だとイアだけはまだ見つかってないんだろ? おじさん達に出来るのはMAの攻略だが、多分地上より宇宙の方がおじさん達は自由にやれるし」
ユメの新武装ロングレンジふぃんふぁんねるもそうだが、カルミアの機体も宇宙戦の方が力を発揮しやすい。
それともう一つ。
カルミアが目指そうとするマスドライバー基地の近くには、件のディビニダドが構えていて他のダイバーの宇宙進出を防いでいるような形になっていた。
「───ここのMAを叩いて宇宙に上がる。そういう段取りで行くっすよ」
「そうしましょうや。二人もそれで良いか?」
「はい。……ユメ? どうかしたのか?」
カルミアの言葉に返事をしたケイは、黙って着いてくるだけのユメが気になってそう問い掛ける。
「やっぱりヒメカちゃんの事が心配か?」
「───ぇ、あ、うん。それは勿論、そうだけど。多分ヒメカは、自分が危ないと思ったらちゃんと出来る子だから実はあんまり心配してないんだよね。きっと、セイヤさんは本気でGBNが私に悪いと思ってて、ヒメカもそう思っちゃってるから協力してるだけで、セイヤさんがヒメカに酷い事をするとは思えないから」
「ユメ……」
セイヤは悪い事をしようとしている、という事はユメも承知の上だ。
けれど、イアを連れ去られた時の彼の言葉を思い出す。
──強さだけじゃ、守れないんだよ──
彼は誰かを守ろうとする事が出来る人だ。
だから、本気なのだろう。
「……私はセイヤさんの事、信じてる。だって、カルミアさんの友達で、ニャムさんのお兄さんなんだよ? 本当に悪い人じゃない。だから、ヒメカは大丈夫。もしヒメカが今GBNに居るなら、私が説得する」
「流石ユメちゃんですね。でも、何か悩んでいたようですが?」
「タケシ君、結局合流出来なかったなって」
ユメの言葉に三人は少し黙り込んだ。
あの日から、結局彼は一言もReBondのメンバーに声を掛けていない。
アンジェリカ達が心配するなとは言っていたが、それでも───
「───いや、タケシは来るよ。アイツは遅刻はしても、約束は絶対に守る奴だから」
「……だよね。そうだよね!」
「だから俺達は、タケシが到着した時にアイツにばっか良い想いさせないように頑張ろう」
「うん!」
今は信じて進む。自分達が為すべきと思った事を為すために。
「見えてくるっすよ!」
「アレは……ディビニダド。いや、大きい」
「1/144じゃないでしょアレ!! 1/100よ!! セイヤの野郎そんな所でズルしやがって!!」
ReBondのフォースから一番近いマスドライバーへと接近すると、一機のMAが視界に入る。
漫画機動戦士クロスボーンガンダムに登場する木星帝国が誇るMAディビニダド。
その異様な姿と、スケール違いにより本来よりも巨大な機体も相まってディビニダドが周囲を攻撃する光景は恐ろしいものだった。
「───ほんじゃ、やりますか」
「皆さんにジブンの新しい力を見せるっすよ!」
「私も! 頑張るね!」
「……よし、やろう! 皆!」
セイヤを止める為の戦いが始まる。