ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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サバーニャHell

 宇宙の戦闘は想像よりも過酷な戦況を強いられていた。

 

 

「───なんなんすかこの数は!!」

 上下左右。何処を見ても敵。敵。敵。

 

 宇宙空間に出た瞬間、撃墜されるシャトル。

 

 

 地上からの増援の半分はそうして撃破され、敵の数は増えるばかり。

 

 

 

「なんでこんなに敵が出てくる訳よ。本当にアンチレッドだけか? 絶対NPDもいるでしょ!!」

「バグで色んなミッションが同時進行されてる事になってる。……アンチレッドの人達と一緒に、確かにNPDも混ざってるみたいっすよ」

「それに、地上にいたアンチレッドの戦力が宇宙に出てきてるんだ。……初めから地上は時間稼ぎだったって事なんだと思う」

 ニャムとケイの言葉を聞いて、カルミアは目を細める。

 

 

 確かに、セイヤはそういう事をする男だ。

 そんな事を思い出して苦笑いするが、笑っていられる状態ではない。

 

 

「撃破されたら宇宙にまた戻ってこられるかも怪しいよね……?」

「そうだな。一旦引こう。ヒロト達にもそう伝え───」

『ReBond! 聞こえるか。そっちに大部隊が向かった。引いてくれ!』

 言おうとした瞬間。

 

 非常に焦ったようなヒロトの声が通信で聴こえて来る。

 

 

 大部隊が向かった。

 そんな言葉に、四人はどうもピンとこない。

 

 

「何言ってんのよ。もう既に大群だって。現状でもう戦力差はざっと40対1って感じでしょうが」

「ヒロト達と分散される前もこんな感じだった筈だけど……」

「今より沢山来るって事?」

「あはは、そんなー、まさかー。今でも相当ヤバいっすよ?」

 苦笑いを零しながら、ニャムはレーダーに映る敵影が急激に増えている事に気が付く。

 

 

「……ヤバいっすよ?」

「なんじゃこりゃぁ!?」

「ケー君!!」

「に、逃げろ!! 逃げろ逃げろ逃げろ!!」

 慌ててスラスターを吹かす四人。

 

 ケイ達の元にはレーダーを覆い尽くす程の敵が迫ってきていた。

 

 ア・バオア・クー攻略戦やヤキン・ドゥーエ攻防戦を連想出来る程の敵の数。

 いくら相手がNPDやゲームに恨みを持って真剣にプレイしていないアンチレッドのメンバー達でも、数が違い過ぎて戦いにならない。

 

 

「くそ、このままじゃ……」

「囲まれちゃう!」

「ニャムちゃんサテキャ!!」

「月が地球の反対っす!! というか、サテライトキャノンでなんとかなる数じゃないっすよコレ!!」

 まるで四人を囲むように、数百の相手が迫って来る。

 

 もし今撃破されれば、この大量の敵がマスドライバーから登って来る援軍を次々と撃破してしまう筈だ。

 もう宇宙には戻ってこれない。

 

 

 既にGBNの空間にはヒビ割れが発生し始め、あちこちでバグが発生している。

 

 セイヤの思惑。

 膨大な戦闘データによるGBNの崩壊は今まさに成し遂げられようとしていた。

 

 

「ケー君、どうしよう……。どうしよう……」

「俺達に出来る事は……ないのか」

 操縦桿を強く握る。

 

 アオトが居なくなって、イアが居なくなって、タケシも居なくなって。

 いつかまた皆で笑い合える時がくると信じて、壊れてもまたいつか直せば良いと信じてここまで来た。

 

 

 けれど、これじゃ───

 

 

「───待たせたな、野郎共!!! 俺様が来たぜ!!!!」

 ───ぜったいぜうめいの中、唐突にそんな声が聞こえてくる。

 

 通信モニター。

 そこに映るのは、懐かしい幼馴染みの姿。

 

 

 

「ロッ君!?」

「ロック氏!?」

「タケシ君!!」

「タケシ!!!」

「ロックだって言ってんだろうがぁぁあああ!!!」

 ReBondリーダー、ロック・リバー。

 

 ───壊れていた何かが、動き出した。

 

 

「ロック・リバー、目標を───乱れ撃つぜぇ!!」

 唐突にケイ達の背後から放たれる連続射撃。()()()()()()()()()()()

 

「……な、なんだ今の!?」

「……タケシ君がやったの?」

 数にして数百機。

 

 途方もない数の敵が、一瞬にして半分以下に減らされたのだ。

 

 

 

「よ! 待たせたな」

 ケイ達の元に現れるロック。

 

 彼が駆る機体はいつもの漆黒に染まるデュナメス───ではなく。

 

 

「───サバーニャ?」

「そう、ガンダムサバーニャHell。ロック・リバー様ただいま参上、ってな」

 彼が持ってきた機体は、漆黒に染まるデュナメスを継ぐ機体───ガンダムサバーニャ。

 

 二本のGNスナイパーライフルと腰回りを覆うシールドビットにライフルビットが特徴的な機体だ。

 どうやら相当カスタムされているようで、見た目だけでもサバーニャとは少しかけ離れて刺々しい。

 

 

「てか、あのロック氏が狙撃で敵を倒したって事すか!?」

「修行してきたって事ね。いや、流石我らがリーダーよ。良いところに現れるじゃない」

「タケシ君、状況は掴めてる?」

「おう。任せろ、とりあえずMAぶっ壊せば良いんだろ。んで、まだイアは出て来てないから多分アンチレッドは隠し球がある」

 言いながら、ロックは更にGNスナイパーライフルを乱射。敵の数を一気に減らしていく。

 

 その背後からも、援護射撃が増えて来た。どうやら援軍が来たようだ。

 

 

 

「───フォースメフィストフェレス、ただいま見参ですわー!」

「ロックから事情は聞いた。遊びじゃなかろうが、俺達はいつでも真剣に取り組むがな」

 フォースメフィストフェレスのメンバー勢揃いでの援軍。

 

 彼等の元で修行と、有名なビルダーでもあるアンジェリカの元で作り上げた新しいガンプラ。

 イアが連れ去られたからこれまで、力不足を痛感したロックが着けてきた力は伊達ではない。

 

 

「タケシは私が育てた」

「ロックだって言ってんだろうが!!」

「あ、あはは。……てかスズちゃん、その装備……」

 遅れてやってきたスズのサイコザクレラージェを見て、ユメは目を丸くする。

 

 両手に二本、さらにサブアーム四本全てにビームスナイパーライフルで合計六丁のスナイパーライフルを持ったスズ。

 これが相手になると思うとユメはもう相手が気の毒だなとすら思えた。誰が避けられるんだ、と。

 

 

「こういう戦いは援護は任せて私は本気で攻撃だけする。……ユメは、新機体か」

「うん! デルタストライカー!」

「……これ終わったら、お手合わせ願う」

「勿論! 負けないよ!」

 機体の拳を合わせる二人のライバル。

 

 言っている間にも、ロックが前に出ながら敵の数を減らしていいっていた。

 

 

 

「なんだあのサバーニャ!」

「このままじゃまずいな。アレを叩くぞ! 狙撃機体なら、近付けば怖くねぇ!!」

 アンチレッドのメンバー達は次々と機体を撃破していくサバーニャに作戦を邪魔されるのを恐れ、それを撃破する魂胆を立てる。

 

 セイヤからアンチレッドへの指示は一つだ。

 全力で敵の邪魔をしろ。戦いが長引けば長引く程、戦闘データは溜まりサーバーに負荷を掛けられる───と。

 

 

「やっちまぇ!!」

「ロック氏!!」

 囲まれるロックのサバーニャHell。

 

 

 しかし、ロックは不敵に笑う。

 

 

「死ぬぜ、俺に近付く奴は。……ソードビット!!」

 展開されるシールドビット。

 

 その中に内装された───本来のサバーニャではライフルビットである筈の武装が宇宙を舞った。

 

 

 その()が近付く敵を切り刻んでいく。

 

 

「サバーニャにソードビットだと!?」

「そんなんで変わるかよ! 結局オールレンジ攻撃なら、近付かれたら終わりだ!」

 ソードビットを避け、サバーニャHellの懐に入り込む三機の機体。

 

 振り下ろされる刃はしかし───GNスナイパーライフルから展開された鎌状の刃が受け止め、一瞬にして三機はその()()()()()()()()にバラバラにされた。

 

 

「俺に接近戦で勝てるわけないだろ、モブ共が」

「な、なんだこいつ!?」

「離れても近付いても勝てる気がしねぇ!!」

「あの人本当にロック氏なんすか!?」

「ニャムちゃん……」

 本来の近接戦闘技術に加え、狙撃をこなせるようになったロックに唖然とするニャム。

 

 

 しかし、彼女も初めから分かっている。

 

 

 ロック・リバーはとても頼りになるReBondのリーダーで、皆を先導してくれる凄い人だって。

 

 

 

「やっと、戻ってきたな」

「おう。寂しい想いさせたな。……さて、俺様が来たからにはもう安心だ。反撃行くぜぇ!!」

 合流したメフィストフェレスのメンバーと共に、ケイ達は前進した。

 

 この世界を、イアを救うために。

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