ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
数日前。
「───知らない人について行かない。当たり前の事です。……人呼びます、よ」
ヒメカは学校の下校中、一人の男に話しかけられていた。
「しっかりした子だ。……なら、君の姉が今どんな状態なのかも分かっているな?」
「お姉ちゃん……が?」
男───セイヤは不敵に笑いながらこう続ける。
「私は君の姉、キサラギ・ユメカちゃんの下半身不随と電脳空間の関係について研究している医者だ」
「お医者さん……」
警戒しながらも、ヒメカはセイヤの話に耳を傾けた。
姉が最近良く転ぶのは何か理由がある。
もしかしたら、姉の身体が大変な事になっているかもしれない。
そんな不安に、姉が大好きなヒメカは耐えられなかった。
「───全て、GBNが良くないんだ。全世界でGBNのために苦しめられている君のお姉さんのような子供を救う為に、君に少し協力して欲しい」
「……GBNは、お姉ちゃんの───敵」
怪しいだとか、危ないとか、いけない事とか、そんな事は関係ない。
大切で、大好きなお姉ちゃんの為ならなんでもする。
それが彼女───キサラギ・ヒメカなのだから。
☆ ☆ ☆
戦況は拮抗していた。
「───乱れ撃つぜぇ!!」
ロックのサバーニャHellが敵を減らしながら先行する。
しかし、それでもMAに近付こうとすれば近付こうとする程に敵の数が増えていった。
このまま近付けたとしても、いずれ囲まれてしまうだろう。
それに、敵がNPDだけではなくアンチレッドのメンバー達が増えてきた。
地上にいたアンチレッドの部隊が集結しつつある。このままではジリ貧ではなく、削り取られていく気すらした。
「MA一機に辿り着くのにこんなへばってたら持たねぇぞ!?」
「ロッ君の火力でなんとか押し切れてるけど、このまま行ったら戻ってこれそうにないでしょこれ」
MAから球形に展開される部隊。
それを掻い潜りながら進めば、MAには辿り着けるかもしれない。
しかし、もしそれでMAを倒せたとしても、無事にこの空域を離脱するのは困難だろう。
「ぶっちゃけ、MA一機でも破壊出来るならやられても良くね? 撃破ペナルティがある訳でもないだろ。アンチレッドの相手してるのが俺達だけって訳でもねーし」
ロックの知る限りではタイガーウルフやクジョウ・キョウヤのような手練れもこの戦闘に参加している筈だ。
彼等のような実力者達なら、きっともっと上手くやるだろう。
なら自分達は上手くやらなくても良い。泥臭くても、少しでも現状を打破出来れば、それで良い───
「───けど、イアがまだどこに居るか分からないんだ」
───なんて事は、ない。
彼等の目的はイアを救う事だ。
それを成すまで、リタイアは出来ない。今地上に戻されたら、また宇宙に上がれる保証はないのだから。
「なら、私達が撤退ラインを支えますわ!」
アンジェリカはビームライフルを乱射しながらそう提案する。
「俺達が道を開け続ける。MAを倒したら、お前達が帰ってくるこの道を」
戦力ここに残す事で、撤退する道を作っておくというのがアンジェリカの提案だ。
しかしそれは、戦地のど真ん中で耐え続けなければいけないという事になる。
「んな事出来んのか!?」
「誰があなたのガンプラを作ったと思っていますの? というか、甘く見られた物ですわね。そもそも、私はあなた達だけでMAが倒せるかどうかの方が心配ですわ!」
「言ってくれるじゃねーか! やったろうじゃん!?」
機体の拳を合わせるロックとアンジェリカ。
「ただ、メンバーチェンジだ。おっさんとニャムさんはここの防衛に加わってくれ。その代わり、トウドウさんとレフトライトをくれ。一旦突破の機動力が欲しい」
「了解ですわ。トウドウ、レフト、ライト、よろしくて?」
ロックの提案を聞いたアンジェリカの言葉に、三人は短く返事をした。
短い間だがアンジェリカ達の元で過ごしたロックだからこそ出来る采配に違いない。
「おっさん、ニャムさん! 良いか? 俺達の帰ってくる場所を作っといて欲しい!」
「任せてちょーだい」
「了解っす!」
「……流石、だな」
そんな会話を聞きながら、ケイは安心したような溜息を漏らす。
「ケー君?」
「いや、タケシって本当こういう時のまとめ役凄いよなって。アイツがリーダーで、本当に良かったよ」
「うん。そうだね! よーし、私達も頑張ろう!」
二つの舞台に別れ、行動を開始するケイ達。
「……ユメ、行ってこい」
「うん。スズちゃん、援護お願いね!」
「MAまでなら、射程圏内だ」
スズとロックの一斉射撃で開いた道を、ReBondとメフィストフェレス混合部隊が直進した。
「おっしゃ行くぜお前ら!! 乱れ撃つぜぇ!!」
「エクリプス!!」
「「ツインバスターライフル!!」」
前方の敵を薙ぎ払いながら直進する六機のMS。
しかし、残ったアンジェリカ達と離れれば離れる程、敵の数はやはり増えてくる。目標であるMAはまだ目視で確認出来ない。
「くそ、やっぱ近付いたら増えるわな」
「───ここから先は通せんぼうだぜ!!」
「───お前らにこのゲームはクリアさせねぇ!!」
更に増える敵の戦力。
赤く塗られたガブスレイとグフイグナイテッドがロックに襲いかかった。
「謎の手練れだしよぉ!!」
アンチレッドにも、強いダイバーは居る。
その力が及ばなく、挫折した者。その力を認められなかった者。
GBNを恨む彼等の理由とまた、様々だった。
「タケシ!」
「ロックな!! ここは俺がなんとかする。ケイはMAを頼む!」
「そんな、タケシ君……!」
「───馬鹿かお前は。ここは俺達に任せろ」
急速変形。
トウドウはタケシと鍔迫り合う二機のMSにタックルを決めて、サバーニャHellを自由にさせる。
「トウドウ……!」
「トウドウさん……!」
「レフト、ライト、手伝え。この辺りの手練れをなんとかする」
グフイグナイテッドを蹴り飛ばし、ライフルを連射するトウドウ。
シールドでそれを防ぐグクの傍らで、ガブスレイが変形しながらトウドウにライフルを放った。
それを、トウドウの前に出たレフトとライトがウイングゼロアビージの翼で防ぐ。
そしてカウンターで放たれたバスターライフルはしかし、ガブスレイに交わされてしまった。相手もただのGBNアンチプレイヤーではない。
「僕達に任せてよ!」
「僕達に任せといてよ!」
「ここは俺達が防ぐ。MAまで後少しだ、行け!」
「トウドウ……。分かったぜ、ここは任せた! 行くぞ、ケイ、ユメ!」
「頼みます」
「三人共、無事で……!」
ロックを先頭に、二人は続く。
「───何? この感じ」
そして、そんな三人の前に次に現れたのは、一機の赤いMSだった。
上下等存在しないこの宇宙から、まるで振ってくるように両手を広げて現れるMS。
その機体は頭部に生えた一本角を開き、ジムなどに見られるバイザーカメラからツインアイを持つ二本の角が着いた───ガンダムへと変身する。
「───赤い」
「───ユニコーン」
ケイとタケシの言葉を聞いて、ユメの頭に電流が走った。
記憶が流れる。
それは、ケイとユメ───そしてヒメカと見たガンダムUCという作品。
そしてその作品を見ながら三人で作ったガンプラ。
楽しい記憶。
妹はガンダムに興味がないけど、その日だけは一緒に楽しめた、嬉しい記憶。
「───バンシィ」
ユニコーンガンダム二号機。黒き獅子バンシィ。それは、その全身を赤く染めて。
そのパイロット───ダイバーは───
「……ゲームの時間は終わりだよ、お姉ちゃん」
「ヒメカ、なの?」
───ユメカの妹、ヒメカだった。