ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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赤いギャプラン

 不安定なビーム射撃が空間を稲妻のように走った。

 

 

「ビームマグナムがバグってんのか!?」

「GBNのサーバーエラーが大きくなってるんだ」

「ヒメカ……」

 ケイ達三人の前に立ち塞がるヒメカ。

 

 彼女の使う赤く塗られたバンシィは、以前ケイ達と一緒に作ったガンプラだろう。

 

 

 いつかヒメカともGBNを遊びたい。

 オフ会の時にそう思ったユメの気持ちは、こうして望まない結果で叶うのだった。

 

 

「……お姉ちゃんは、私が守るんだ!!」

「二人共、ヒメカの事は任せて行って!」

「マジ?」

 唐突なユメの提案にロックは困惑する。

 

 確かに、こんな所で足踏みをしている場合ではない。

 けれどあの仲良しなヒメカとユメカを戦わせるのは違うし、そもそもロックは何故ヒメカが突然アンチレッド側に居るのかが理解出来ていないのだ。

 

 

「良いのかよ、ユメ」

「……私、ヒメカとちゃんと喧嘩した事ないんだ」

「だったら尚更───」

「だから、喧嘩してくる」

 強い意志でそんな言葉を漏らす。ロックも、それ以上何か聞く事はなかった。

 

 

「分かった。行くぞタケシ!」

「ロックな! ユメ! 目一杯喧嘩してこい!」

「うん!」

 二人は彼女に背中を向け、ケイは「頑張れ」とだけ言葉を落とす。

 ユメは首を縦に振って、何も言わずにヒメカのバンシィに顔を向けた。

 

 

「ケー君、タケシ君。……後はお願い」

 見つめ合う姉妹。

 

 

「私が、お姉ちゃんを助けるんだ」

「ヒメカ。喧嘩、しよっか」

 二人の想いが交差する。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 光が宇宙を包み込むように広がっていた。

 

 

「後退は禁止ですわよ!!」

「分かってるけどもねぇ……!!」

 ケイ達が帰ってくる道を開けておく為、戦場のど真ん中で終わらない戦いを繰り広げるカルミアやアンジェリカ達。

 

 スズの狙撃にカルミアとニャムの火力。

 近距離はアンジェリカとノワールが担当し、防衛戦をなんとか維持している。

 

 

 しかし、敵は所謂無限湧きだ。

 どれだけ減らそうが敵はやってくる。かといって無視すれば、敵は増え続ける一方だ。

 

 少しでも均衡が崩れれば、この防衛戦は一気に傾く。

 

 

 気を抜けない。

 そんな状態で、これ以上厄介な相手が増える事を懸念していない訳ではなかった。

 

 

「───この肉付き、さっきまでとは違う!」

 ノワールが気付く。

 

 明らかにこれまでとは違う動きをする相手が、彼らの前に現れた。

 

 

 

「赤いギャプランですわね? 少しゴツい気がしますけど」

「なんだって!?」

 アンジェリカの言葉に、カルミアは目を見開いて彼女の言葉通りの機体を探す。

 

 しかし、そんなカルミアの前にナイチンゲールという機体が立ちはだかった。

 

 

「カンダさん、邪魔をしないで下さい!!」

「サトウか!! くそ!!」

 大型MSナイチンゲール。

 

 劇場版ではなく、小説版の逆襲のシャアでシャア・アズナブルがサザビーの代わりに駆る強力な機体である。

 その機体に乗っていたのはカルミアのかつての中間。セイヤがレイアと出会う前から仲間だった、サトウだった。

 

 

「邪魔をするなってのはこっちの台詞だサトウ。なんでこんな事をする! 分かってるだろ、今のセイヤはおかしい!!」

「そんな事は分かってますよ!! けど、もう止められないでしょ!! 誰も、セイヤさんを止める権利はないでしょ!!」

「サトウ!!」

 ファンネルを飛ばしながら、カルミアのレッドウルフとぶつかり合うナイチンゲール。

 

 互いに展開した隠し腕でビームサーベルを振りながら、至近距離でお互いに放ったビームライフルが二人の機体の肩を掠める。

 

 

「ニャムちゃん!! お嬢が言ってるギャプランはセイヤの機体だ!! 三人をフォローしてやってくれ!!」

 自分は今すぐには動けない。

 

 だから、ニャムにそう頼むカルミアだが───

 

 

「そ、そうは言っても……この人達、まさか!?」

 そんなニャムも、アンチレッドの手練れ数名に囲まれて動けない状態になっていた。

 

「セイヤの奴、戦力を削ってくるつもりか!? なんで、こんな所に」

 ケイ達が倒しに行ったMAの他にも、この宇宙にはMAが四機も放たれている。セイヤがこんな場所に出てくるとは、カルミアは思ってもいなかったのだ。

 

 

 

「───聞きました? ノワール、スズ」

「あぁ」

「聞いた」

 そして、メフィストフェレスの三人の前に、一機のMSが現れる。

 

 赤いギャプランのような機体。

 

 

「……あの時の雪辱を果たす時が来た」

「……まだGBNにしがみついついていたか。また、地獄に叩き落としてやる。お前は何も出来ないんだってな」

 ギャプランのパイロット───セイヤは、不敵な笑みを浮かべながらムーバブル・シールドの銃口をスズのサイコザクレラージェに向けた。

 

 間髪入れずに放たれたのは、スズの狙撃である。

 しかし、六発放たれたビームスナイパーライフルは全てギャプランに届かずに拡散してしまった。

 

 

「Iフィールドですの!?」

「厄介な」

 放たれるメガ粒子砲。スズはそれをゲシュマイディッヒパンツァで弾くが、相手にもビームは効かないらしい。

 

「ならば実弾をくれてやるだけだ!」

 言いながら、ノワールはランサーダートを発射する。実弾武装までは防ぎようがないのか、セイヤはそれをシールドで弾き返す。

 

 

「接近する」

 その隙にミラージュコロイドを展開したノワールとアンジェリカの機体がセイヤの機体を挟み込んだ。

 しかしセイヤはそんな二人に見向きもせず、スズに接近しようとスラスターを吹かせる。

 

 そんな事を許すノワールとアンジェリカではない。

 その姿を表して、左右から挟んでビームサーベルをセイヤは向ける二人。だが、突然バックパック背後に装備されていた砲身が二人にむけられ砲撃を放った。

 本来のギャプランにはないバックパックの砲身は四本。まるで針千本(ヘッジホック)である。

 

 

「この機体……まさか!?」

「ギャプランじゃないのか!?」

 アンチレッドの機体はただ赤く塗られた機体が殆どだ。それは、これまでセイヤが見せてきた機体も同じである。

 

 しかし、この機体は何かが違うような気がした。

 すくなくとも、アンジェリカには心当たりがある。

 

 

「ソイツはセイヤの本気の機体だ! ギャプランなんかじゃない! 逃げろ、やられちまう!!」

「余所見をしないでください、カンダさん!!」

 セイヤを止めたいが、サトウに邪魔をされてカルミアは動けない。

 

 ニャムも同様。

 このままでは、NFTの時のように再び彼はスズを傷付けるかもしれなかった。

 

 

「スズ!!」

「……また壊してやるよ、偽物が」

 ギャプランが()()()()ビームサーベルを構える。

 

「私のサイコザクレラージェは……偽物じゃない」

 そんな彼の前で、スズはバックパックをパージして手に持っていたビームスナイパーライフルを投げ捨てた。

 そして、腰にマウントしてあったヒートホークを二本構える。

 

 

「この世界でせっかく手に入れたタコみたいな数の手足を捨てて、本物の俺に勝てると思ってるのか?」

「やってみろ」

 振り下ろされるハイパービームサーベル。

 

 スズはそれを左手のハートホークで受け止め、右手のヒートホークを横払いにギャプランの脇腹に掠らせた。

 回避行動を取らされたセイヤは眉間に皺を寄せながらも、冷静にもう一本のハイパービームサーベルを抜く。

 

 

「生意気なんだよガキが! またバラバラにしてやる!!」

 振り下ろされる二本のビームサーベル。

 

 スズはそれを受け止めきれず、サイコザクレラージェの右腕が斬り飛ばされた。

 

 

「そうだ、それがお前にはお似合いだ。……認めろ、この世界は偽物だと。お前は何者にもなれないんだと!!」

「……そうだ、私には確かに手足がない。けれど───」

「何!?」

 機体を捻り、ギャプランを蹴り飛ばすスズ。

 

 腕一本を持っていかれてバランスを崩そうが、そんな事はスズには関係ない。

 

 

 バックパックすら外し、軽くなったサイコザクレラージェはさらに彼女の思い通りに動く。

 ロックから学んだ格闘戦もお手のものだ。

 

 

「なんだ……今の動きは!?」

「───けれど、私には仲間がいる。ライバルがいる……友達がいる。それは、私のこの手足と違って!! 偽物じゃない!! アンジェ!! ノワール!!」

「くの……クソガキ!!」

 蹴り飛ばされてバランスを崩したセイヤのぎゃの背後から、アンジェリカとノワールの機体がビームサーベルを構えて現れる。

 

 バックパックの砲身も間に合わない。

 

 

「これが!!」

「俺達の!!」

「力ですわ!!!」

 二本のビームサーベルが、セイヤのギャプランを貫いた。

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