ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ファーヴニルリサージェンス

 二本のビームサーベルがセイヤのギャプランを貫いた。

 

 

「友情、仲間。あぁ、良いよな。凄いよ、お前らは───」

「セイヤ……?」

 悔しそうな声。

 

 聞き覚えのあるその声質に、カルミアは顔を落とす。

 GBNにレイアが連れ去られた時から、彼はずっと笑わなかった。

 

 こうして悔しそうな声すら漏らさなくなって、それからだろう。セイヤが壊れ始めたのは。

 

 

 彼は独りだ。

 レイアが居なくなってから、誰にも気を許さず、ずっと孤独に戦っている。

 

 だから、眩しい。

 

 

「───お前らは何も失ってない。だからそんな生ぬるい事が言える!! 今に分かるさ。このGBNが無くなれば、手足のないお荷物のお前も!! ガンプラを作る事しか能のないお前も!! こんなゲームにうつつを抜かしているお前も!!」

 どうしたって自分には届かない物だから。

 

「失えば分かる。自分には何もないんだと!! そうだ、俺にも何もない!! だから奪われた!! だからお前達も奪われる!! そういう物なんだよ!! 力のない奴は!!! 何も!!! 守れない!!!」

「なんですの!?」

「光が!?」

「二人共逃げ───」

 セイヤのギャプランは装甲をパージした。

 

 凄まじいプレッシャーが放たれる。まるで周囲の空間を破るような、歪な光。

 

 

「───ファーヴニルリサージェンス」

 ギャプランの頭が割れた。

 

 角が生えて、隠れていた()()()()()()()()が露わになる。

 

 

 その姿はZZそのもの。

 セイヤがレイアと会う前から使っていた機体。その改修型。

 

 

「セイヤの本気の機体、ファーヴニル……」

「ヘッジホッグ3って事すか!? ヴァルプルギスの!?」

 ガンダムヴァルプルギスに登場するZZガンダムのバリエーション機体。

 

 ヘッジホッグ3───ファーヴニル。そのカスタム機こそ、セイヤが本気で作った唯一のガンプラだった。

 

 

 

「スズ!!」

「くそ!!」

「アンジェ!! ノワール!!」

 アンジェリカとノワールの機体は何故かシステムエラーで動けなくなる。ビームサーベルに貫かれた筈のセイヤの機体は、貫かれた装甲部分をパージして無傷で現在だ。

 

 

「二人の動きが鈍く……。まさか、話に効いたチート!? ブレイクなんとかって奴っすか!?」

「違う。アレはグリプスの呪縛。あの機体そのものの能力でチートじゃない。……セイヤはそんな小細工を使わなくても、それくらいやってのける」

 アンジェリカが以前作成して美術館に飾ったことのあるオーヴェロンという機体にも同じシステムが搭載している。

 

 それは簡単に言えば呪いだ。

 近付いた相手の機体関節をロックし、動きを封じるという物。

 

 チートといえばチートかもしれない。

 しかし、この手の力をGBNで発現させるにはそれ相応の技術と───愛が必要である。

 

 

「この……!!」

「次はテメェだ偽物野郎。またバラバラに刻んで!! 無力感を感じさせてやる!!」

「兄さん!!!」

 サイコザクレラージェとファーヴニルリサージェンスの間に入るニャム。やっとアンチレッドのメンバーを振り切ったが、少し遅かった。

 

 いや、どうだろう。

 もし二人が倒される前に間に合ったとして、自分に何が出来ただろうか。

 

 

 

 兄が居なくなった時、何も出来なかった。

 

 独りぼっちが寂しくて、自分の意にそぐわないGBNのガンプラに苛立ちをぶつけていた。

 

 イアを連れ去られた時も、ケイが一人でアオトの元に向かってユメが泣いてる時も、自分は何も出来なかった。

 

 

 そんな自分に何が出来るだろう。

 

 

「ナオコ、邪魔だ」

「兄さん───」

 いや───

 

 

「───私、一人じゃなくなったよ」

「───ナオコ」

 ───自分一人じゃない。

 

 

 兄が残してくれた猫の家族とガンプラがある。

 

 不貞腐れていた自分を拾ってくれた仲間達がいる。

 

 その仲間達と積み上げてきた、GBNへの───ガンプラへの愛がある。

 

 

「だから!! 兄さんも一人にしない!! そんな凄いガンプラを作れる兄さんが、こんな事したらいけないんです!! 私が、兄さんを助ける!! 皆、力を貸して。私に───ニャムに、ジブンに!! 皆がくれたこの世界の!! このガンプラに!!」

 両手を広げるニャムのニャーンX。

 

 猫耳が特徴的な彼女の機体が、光の翼を広げながら黄金に輝いた。

 

 

「───ガンプラバトルネクサスオンライン!! ニャーンX!! ニャム・ギンガニャムが行くっすよ!!」

 ゴッドガンダムのハイパーモード、そして右腕のゴッドフィンガー。左腕にはサテライトキャノン。両足にはフレスベルグ。

 

 未だ改良中の、様々なガンダム作品の力を、仲間の力を集めたニャムの機体。

 それが彼女のニャーンX。

 

 

「邪魔をするな!! ナオコ!!」

「兄さん!!」

「ダメだ、近付いたら……!!」

 接近するニャム。

 

 ファーヴニルリサージェンスから放たれた光が彼女の機体を取り巻こうとした時、光の翼───月光蝶がその光を弾き返す。

 

 

「何……!?」

「その光とて、人類の技術の結晶! グリプスの呪縛なら、月光蝶による文明のリセット効果で無効に出来る!!」

「お前……!!」

 ゴッドフィンガーとハイパービームサーベルがぶつかり合った。

 

 この間合いに入れるなら、後は格闘戦で叩けば勝てる。

 

 

「兄さん。確かにコレはゲームっすよ!! だから、現実程理不尽じゃない。でも、確かに理不尽はある。兄さんがその理不尽に晒されて、傷付いたのは分かるっす」

「お前に何が分かる!!」

「分かるっすよ!! ジブンも一人にされた。大切な兄さんが居なくなって、寂しかった!!」

「くっ……!!」

「そうして不貞腐れて、ジブンもこのGBNで他人に迷惑を掛けた。けれど!! そんなの間違ってるって教えてくれた人が居た!! だからジブンは今ここに居る。兄さんにも分かって欲しいから!! だから、今ここで、私は兄さんを倒す!! 答えて下さいニャーンX。ここにはケイ殿達と、皆と戦ってきた時間と!! (ジブン)が居る!!!」

「舐めるなぁ!!」

 ニャーンXを弾き、蹴り飛ばすセイヤ。

 

「私達は、ここにいる。確かにここに居るんだ。……ここで得た物は、偽物なんかじゃない!!」

 振り上げられるハイパービームサーベルを受け止めるスズ。

 

 ファーヴニルから放たれた空間の裂け目を、ニャムは機体の体制を直しながら月光蝶で弾いた。

 

 

 

「……二人でやるか」

「頼りになるっす!」

「たがが二人で、俺に勝てると思うなよ」

 禍々しいオーラを放ちながら、二本のハイパービームサーベルを構えるセイヤ。

 

 

 

 そんな光景を尻目に、カルミアは沈黙している。

 

 

「カンダさん、なんで本気で戦わないんですか」

 彼と戦っていたサトウはカルミアにそう問い掛けた。

 

 サトウ本人は本気でカルミアを倒そうとしている。しかし、サトウは彼の実力を知っていた。

 自分がどれだけ頑張っても、カルミアには勝てない。

 

 

 それどころか、瞬殺されてもおかしくないと思っている。

 

 それにカルミアは、サトウが見る限りレイアが居なくなってから()()()()()()本気で戦っていない気がした。

 

 

 

 NFTで彼が裏切った時も、大型イベントの時も、数多さえイアが連れ去られた時も。

 

 

「もしかして、俺達を裏切った事すら……嘘だった? 本当は、俺達の仲間だった! そういう事なんですか? カンダさん!」

「……そう、思うか?」

「はい。カンダさんもGBNを恨んでる。それだけは! 俺も知ってる。ガンプラのせいで女の子を轢いて、レイアも居なくなって、カンダさんがGBNを、ガンプラを恨んでない訳がない!! カンダさんも、俺と同じな筈なんだ!!」

 サトウは機体の両手を広げてカルミアのレッドウルフに近付く。

 

 

「そうでしょう! カンダさん!!」

 サトウはカルミアの弟子のような男だった。

 

 トラックの運転も、ガンプラも、バトルも。

 カルミアはサトウの事を弟のように可愛がりながら育てていたのを思い出す。

 

 

「俺は、皆が好きだった」

 セイヤが立ち上げた会社の仲間も、ゲームで集まったGBNの仲間も。

 

 レイアも。

 

 

「……そうだよ、俺達は仲間だ。大切な仲間だ。ダチだ。セイヤも、お前も!! 会社の仲間も、アンチレッドの奴らも、レイアも!!」

「カンダさん……!! だったら一緒に!! GBNを───」

「イアも!!!」

「───カンダ……さん?」

「仲間なんだよ、皆!! イアも、ケー君もロッ君もユメちゃんもニャムちゃんも!! 妹ちゃんや、他のフォースの子も。皆!!! ガンプラが、ガンダムが大好きな仲間なんだよ!!! 俺は、大人なんだ。おっさんなんだ。良い年したおっさんなんだよ!! そんな仲間を見て微笑ましいって思って……何にも取り柄とかなくても、なんとか守ってやりたいと思う!! 仲間なんだよ!!!」

「だったらどうして!! 本気で戦わないんですか!!!」

 ぶつかり合った。

 

 サーベルがレッドウルフの装甲を燃やす。

 

 

「守りたいなら戦えば良いじゃないですか!! なんでこんな所で、俺なんかと話してる。あんたはいつもそうだ!! 中途半端で、フラフラとどっかに行って、適当なんだよ!!」

「……そうだよ、適当だ。俺は、何にも芯がない。本当に悪いと思ってるよ、サトウ」

「この……裏切り者が!!! なんで!!! なんで!!! なんで戦わないんだよ!!!! カンダさん!!!!」

 振り下ろされるビームサーベル。

 

 それを、機体の装甲で受け止めるレッドウルフ。

 

 

 いかな装甲の厚いレッドウルフでも、高出力のビームサーベルを受けきる事は出来ない。

 装甲が割れた。機体が貫かれようとする。

 

 

「そんなもん決まってるだろ……。お前も、俺が守りたい仲間だからだよ!!!」

「は───」

 ジェネレーターが誘爆した。

 

 二人の機体を、炎が包み込む。

 

 

 

 赤い装甲が、宇宙に弾けた。

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