ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
爆炎に包み込まれる。
カルミアのレッドウルフから離れたサトウのナイチンゲール。
そのモノアイに映る姿。
「───やっと、本気を出してくれるんですね。カンダさん」
機体の装甲が剥がれ、レッドウルフの中に
サトウは知っている。
セイヤの本気の機体。
それがギャプランではなく、ファーヴニルだという事も。
カルミアの本気の機体。
それが下半身がジ・Oのドーベンウルフではなく───
「───ガンダムmark
「───サトウ、お前も……俺にとっては大切な仲間なんだよ!」
レッドウルフの中から現れたのは、ガンダムセンチネルに登場するガンダムmarkVのカスタム機。
カルミアがレッドウルフの中に隠していた奥の手だ。
しかし、これはカルミアが隠していたというと語弊があるだろう。
彼はその機体を封印したのだ。
セイヤやサトウを裏切って、GBNへの復讐から自らを断ち切る為に。
ただ、今はそんな私情を挟んでいる場合ではない。
自分の全身全霊を持って、セイヤを止める。
「いけ、インコム!!!」
レッドウルフから引き継がれた武装はライフルとこのインコムくらいだ。
重装備を捨て、身軽になった彼のガンダムmarkReVは機動力を活かしながらインコムで相手の周囲を囲む。
「大切だって!? 裏切り者が、よくもそんな事を!!」
ライフルを乱射するサトウ。
しかし、markReVが速過ぎて当たらない。直前まで戦っていた機体とはまるで性能が違い、サトウの感覚も逸れた。
「くそ!! くそ!!」
「サトウ!!」
ライフルを放つカルミア。
しかし、そのライフルは明後日の方に飛んで行く。
「外した───いや、違う。カルミアさんのインコムは!!」
「弾け───リフレクターインコム!!!」
サトウの機体から明後日の方角に飛ばされたライフルは、何かに反射してナイチンゲールの足を撃ち抜いた。
リフレクターインコム。
ビームを弾く武装をインコムにより射出し、変幻自在の射撃を可能にする武装である。
乱射。
弾かれて曲がったライフルがナイチンゲールを襲った。
なんとか反撃しようと放ったナイチンゲールのビームも、リフレクターインコムが弾いてしまう。
「くそ!! だが、ソイツの弱点は知ってる!!」
言いながら、サトウはmarkReVに肉薄した。
近付けばリフレクターは使えない。
こちらのファンネルも使えないが、ナイチンゲールには隠し腕がある。
「───俺の隠し腕がなくなったと思ったか?」
「───な!?」
四本のサーベル。
markReVの肩に隠されていた、ジ・Oの下半身の時とは別の隠し腕がナイチンゲールのサーベルを受け止めた。
「トーリスリッターの隠し腕!?」
「お前の知ってるあの時のままじゃない。俺だって前に進んでるのよ。……だから、俺は───お前やセイヤも救ってみせる!!」
ナイチンゲールの両腕と隠し腕を切り飛ばすカルミア。
そのまま蹴り飛ばされ、ファンネルでカルミアに反撃しようとしたサトウだが、ファンネルのビームは全てリフレクターインコムで弾かれてしまう。
「……やっぱ、あんた強いよ。なのに! なのになんで、俺達を裏切った!! あんたがいればセイヤさんだってもっと!!」
「そうかもな。寂しい想いさせたのは、多分そうだ。けれど、多分アンチレッドのままじゃセイヤを止められなかった。……いや、止めようともしなかった」
「それで良いじゃないですか。ガンプラに復讐する!! 何が間違ってるっていうんですか!! 俺達は、ガンプラに全部奪われたんですよ!!」
トラックで女の子を引いた。
サトウにとって、その原因が自分の運転の不注意だなんて事は初めから分かっている。
けれど、それでも、何かを憎まないと、自分が壊れてしまいそうで。
そういう自分を認めてくれた仲間が、本当にありがたくて、縋るしか無かった。そうじゃなければ、自分を恨む事しか出来ない。
「俺達がトラックで轢いた女の子はな!! ガンプラも、友達も、俺達のトラックすら恨んでなかった!!!」
「……っ。そんな……! 事!!」
「ユメカちゃんはな、こんな俺にも優しかったよ。トラックの運転手さんは悪くないって。ガンプラも友達も悪くないって。自分が全部悪いって。高校生になったばかりの女の子がだぞ!! 夢だった飛行機のパイロットを諦めなくちゃいけなくなったのに、生きてるだけで不自由な身体にさせられたのに!! あの子は、俺の心配をしてくれた。セイヤの心配だってしてくれた!! あの子は言ったんだ。お前らがヒメカちゃんを攫ったのに、あの人達はきっと妹にひどい事だけはしないって。……こんな事してる俺や!! お前や、セイヤの事を信じてくれるような女の子だ!!!」
ナイチンゲールのコックピットを揺らしながら、カルミアはサトウに語りかける。
出会ったのは偶然だったかもしれない。
けれど彼女は、不貞腐れて復讐の事ばかり考えていた大人達よりも真っ直ぐに前を見て歩いていた。
こんなに情けない事があるか。
「そんな……バカな」
「頼むサトウ。……お前にしか頼めない事があるんだ」
「い、今更何を!! 俺はあなたの敵なんですよ!! 早く撃てば良いじゃないですか!!」
「サトウ!! 頼む!!!」
「カンダ……さん?」
「ユメカちゃんを助けてくれ……。俺達が全部奪ったあの子から、また何かを奪うなんて事、お前だってしたくないだろ!! お前が助けるんだ。俺達はなんの仕事をしてた!? ガンプラの運搬だろ。子供達の!! 夢を届ける仕事だろ!!! サトウ!!!!」
「……っ」
思い出す。
仕事が楽しかった日の事を。
ガンプラの運搬業者。
世界的なブームの中、誰もが愛するソレを世界に届ける仕事だ。
子供達に夢を届ける仕事。
ガンプラが届いて、買って、笑顔になる子供を見るのが好きだった事を。
「俺、は……」
「……頼む、サトウ。お前の運転、あの子に見せてやってくれよ。な?」
そう言って、カルミアはサトウの機体を離れる。
「俺は……俺、は……」
どのみちサトウの機体はもう動かない。なら、今はセイヤを止めるのが先決だ。
「───小賢しいんだよ!!」
セイヤのファーヴニルリサージェンス。赤く血塗られたようなファーヴニルはただ赤く塗られただけではない。
白のグリモア───オーヴェロンの脚部、膝の隠し腕も内蔵された彼のオリジナルのカスタマイズ機体である。
「───あの距離で戦ってグリプスの呪縛を喰らってない。……そうか、ニャムちゃんの月光蝶で抑え込んでるのか! やるじゃないの!!」
「……カルミアか。小賢しいのが増えたな」
セイヤとの戦闘に合流するカルミア。
既にアンジェリカとノワールは撃破され、スズの機体は軽くなっていた。
ニャムも無傷とは言えず、カルミアもこれ以上の奥の手は持っていない。
現状ここにある戦力だけで、セイヤのファーヴニルリサージェンスを止める必要がある。
さもなくば、先に行かせたケイ達が帰ってくる場所がなくなるからだ。
「カルミア氏!? なんすかその機体!!」
「え、あー、色々あって?」
「うっひょー! ガンダムmarkVじゃないっすか! そんなもの隠してたなんて!! 狡い、狡いっすよ!!」
「……あはは、いつものニャムちゃんでおじさん安心よ」
「……遊んでる場合じゃない」
スズの言う通り。
二人が話している間に、セイヤは頭部のハイメガキャノンのメガ粒子をチャージし終えていた。
いつでも放てるハイメガキャノンが、三人をロックしている。
「カンダ、三人になれば有利だと……本気で思っているのか? 三人なら俺に勝てると、本当に思ってるのか?」
「バカ言え。俺とお前の戦績はほぼ五分だったろうが。三人なら楽勝だ。……お前を止める、セイヤ」
「……舐めるな」
言いながら、ハイメガキャノンを放つセイヤのファーヴニルリサージェンス。
散開してそれを交わす三人だが、セイヤはファーヴニルの頭部と機体制御でハイメガキャノンをニャムのニャーンXに曲げ始めた。
「ちょ、ハイメガを曲げれる機体出力って!? うわ!?」
「ニャムちゃん!!」
直撃こそしなかったが、ニャムの機体は大きく損傷し───月光蝶が消える。
そうなれば、ソレが受け止めいた物が空間を支配するのも容易い。
「機体が……!!」
「くそ、グリプスの呪縛……!! なんだこの効果範囲は!?」
三人の機体の関節がロックされた。数十メートル離れていても、その力から逃れられない。
光が、宇宙を包み込んでいく。
「……これは俺の呪いだ。GBNへの呪いが、俺の力になる。レイアを奪われた憎しみを、この世界に流し込め!! ファーヴニル!!!」
ファーヴニルリサージェンスのツインアイが禍々しい光を放った。
宇宙に光が溶けていく。
まるで、この世界が泣いているように。