ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

154 / 171
侵食される世界

 空の色は光の色。

 

 

 その光を包み込むのは、闇の色と表せば良いのだろうか。

 

 闇が、世界を覆い尽くしていく。

 

 

「セイヤ……これは、なんだ!?」

「俺の呪いだ、と言いたい所だが。違うな。GBNの崩壊が始まってるんだろ。グリプスの呪縛がバグって範囲がイカれてきてる……なるほど、でもそうだな。やっぱり、これは俺の呪いなんだ!! 俺が果たした、GBNへの復讐!! その始まりのなぁ!!」

 この空間で唯一動けるのは、セイヤのファーヴニルリサージェンスただ一機のみだった。

 

 バグにより膨張したグリプスの呪縛が、この宇宙を塗り替えていく。

 

 

 呪いだけが、侵食した宇宙。

 

 

 収縮される光は、ファーヴニルリサージェンスにのみ集まっていった。

 

 

 

「全て、闇に葬ってやる」

「おいセイヤ!! 待て!! くそ、待てよ!! 動け、動けよmarkReV!!」

「何故動かんジ・Oとか言ってる場合じゃないっすけど、これは……。兄さん!!」

「……ここまでか。ユメ、タケシ達はどうなった?」

 チャージが完了する。

 

「さようならだ、この世界の秩序諸共、消えて地上から空を見上げる事だな!! この世界が崩壊していく様を!!」

「セイ───」

「ハイメガキャノン!!!」

 ファーヴニルリサージェンスの額から放たれるメガ粒子砲。

 

 それは、その場にいた何もかもを巻き込んで蒸発させる勢いで放たれた。

 

 

「なんだ? 光───」

「何々!?」

「何が!?」

 トウドウ達も。

 

 

「……お姉ちゃん」

 ヒメカも。

 

 

「タケシ!!」

「くそ……こいつは、そもそも避けれないだろ」

 ケイもロックも。

 

 

 

 消える。

 

 

 全て。

 

 

「……っ、ふふ。はは……あっははははは!! はーっはっはっは!! 終わりだよ……。そうだろ、レイア。もう直ぐ、会いに行ける」

 現実世界のログインマシン。

 

「今、そっちに行くから。この世界と共に……」

 そこで彼がGBNにログインする中。

 

「レイア……」

 彼が座る机の上には、大粒の涙が流れて水溜りを作っていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ReBondフォースネスト。

 

 

「ケー君!!」

「ユメカ……!! それに、え? もしかしてヒメカなのか……? そのハロ。そして後一人、誰?」

「私はヒメカじゃない!!」

 GBNにログインしたユメの前に、撃破されてフォースネストに戻ってしまったケイ達が現れる。

 

 サトウの言っていた通り、間に合わなかったらしい。

 

 

「あん? じゃあ誰だよ」

「お兄さんには関係ないです」

 ユメが連れてきたハロは、ログインの初期設定を終わらせ───アバターの構築が完了してその姿を変貌させていった。

 

 黄色のハロだった人物は、短い金髪の女の子に変身する。

 

 

「私はヒメ。と、通りすがりのダイバーです!! お姉ちゃ───ユメちゃんの友達で!! えーと!! なんか!! 役に立てたらと思って!!!」

「と、言う事で」

「ヒメカちゃん……いや、ヒメちゃん!! 歓迎するっす!! 歓迎するっすよぉ!! お久しぶりっすねぇ〜!!」

 泣きながら()()に抱き付くニャム。

 

 ヒメは苦笑いしながら「どうも……。というか! それどころじゃないですよね!」とニャムを突き放した。

 

 

「GBNを救うんでしょ!」

 腕を組んでそう言うヒメ。

 

 しかし、彼女の言葉に誰もが下を向く事しか出来ない。

 

 

「でも、俺達は───」

 もう空には上がらない。

 

 制空権は既にアンチレッドに奪われている。

 それに、戻ったとして近付けば機体が動かなくなる───しかもあの範囲で、だ。

 

 自分達に出来る事なんて、もうない。

 

 

「俺達は? 何? お兄ちゃん言ったよねガンプラが好きだって。好きなもの、諦めるの? 好きなもの諦めるような人なんて知らない。そんな人、いつかお姉ちゃんの事だって諦める。そんな人に!! お姉ちゃんはあげない!!」

 そう言ってヒメは大声でケイの言葉を遮る。

 

「ひ、ヒメカ……っ!!」

「ヒメカ……。いや、そうだよな。ヒメカ、いや……ヒメのいう通りだ。こんな所で諦められない」

「ケー君……」

 顔を真っ赤にするユメを他所に、ケイはコンソールパネルを開いで現状を確認し始めた。

 

 

 やれる事なんてない。

 

 違う、やれる事を探す。

 

 

 GBNのサーバーエラーで何も出来なくなった時だって、彼等はそうして来たのだから。

 

 

 

「───で、その不審者は誰?」

 ずっと気になっていた事を、ロックがついに口にした。

 

 成り行きでついて来たサトウだが、確かにこれは居心地が悪い。

 

 

「いや、えーと……俺は」

「ありがとうな、サトウ。ユメカちゃんを助けてくれたんだろ?」

「それは……その。これは、大人の責任、だから」

「あぁ。だから、ありがとう」

「なんだ? おっさんの知り合い?」

「お姉ちゃんを轢いた人」

「マジかよ」

 ヒメにそう言われて、ロックは目を細める。

 

 アンチレッドの人間がユメカを助けたというのだから、どう反応したら良いのか分からない。

 

 

「サトウ、お前は何も知らないんだよな?」

「……何も、なんて事はない。けれど、俺が知ってるのはもうセイヤさんがやり終わった事だけだ。運営の想像通り、俺達アンチレッドの根本の目的はELダイバーをコアにした強力なMAとの戦闘データでGBNのサーバーを壊す事。レグナント、ディビニダド、エクストリームガンダムディストピアフェイズ、そしてデストロイでな」

「デストロイ!?」

 サトウの言葉に、カルミアは目を丸くした。

 

 

「おい、ケー君」

「デストロイなんて、GBNに現れてない。GBNに現れたのは、その三機が三機ずつの九機だけだ」

「何? でも、セイヤさんは十機で……デストロイ計画だって」

「ほんまる……って事すか!?」

「セイヤはまだ何か隠してる。そもそもあんな状態で俺達にちょっかいをかけてくる事がおかしいんだ。それこそ、俺達を放っておけばチャンピオンとかがMAを破壊してくれる」

 カルミアの言う通り。

 

 ケイが調べたデータでは、宇宙のMAも既に全滅が確認されている。

 

 しかし、バグは治らない。

 

 

 セイヤが隠している、最後の鍵。そのデストロイこそが、計画の柱。

 

 

「イアは……そこにいる」

 MAが全て破壊されたというのに、イアは戻ってこない。

 

 最後の一機。

 そのコアにされているというなら、全てが納得のいく事だ。

 

 

「けどよ、どこに居るんだよそのデストロイは? 地上にも宇宙にも居なかったんだろ?」

「ロック氏にしてはまともな意見を言いますね……。その通りっすよ。どこに隠してあるって言うんすか?」

「今めっちゃ失礼な事言ったよね!? いやでも、隠してある……か!! それだぜニャムさん!!」

「はい?」

 突然叫ぶロックに目を丸くするニャム。

 

 ロックは続けて、こう口を開く。

 

 

「裏世界! だろ、デストロイの───イアの居場所。あんたらアンチレッドが隠れ家にしてたな! あんたなら分かるんじゃないか? 裏世界の出入り口」

「そうか……セイヤさんはデストロイをあえて出撃させなかった。……あぁ、俺は分かる。俺達が裏世界に作ったフォースネストの入り口が」

「それはどこだ!?」

「ここの下、だよ」

 静かに答えるサトウ。

 

 一瞬静まり返った一同は、あまりにも衝撃的な発言に目を丸くして固まってから「「「えぇぇぇぇえええええ!!!???」」」と一斉に悲鳴のような絶叫を上げるのだった。

 

 

 

 裏世界。

 

「……イア、これが終わったら、俺と友達になってくれ。今は苦しいかもしれない。けど、セイヤさんがきっと君を救う。……そして、俺達は裏切り者に制裁を与えるんだ。俺達から全てを奪ったガンプラに、ケイスケに!!!」

「……アオ、ト。……辞めよ……う? そんな事……!!」

「そんな事? 変な事言うなよ、イア。……これはお前の為なんだ」

「アオト……?」

「アイツは他人から全部奪うんだ。……ユメカから足と、夢を。……俺からガンプラを、父さんを、ユメカを!! 絶対に!! 許さない!!」

「キミは……そんなに、ケイの事を憎んで……」

 空間が歪んでいく。

 

 

 その時は、刻一刻と過ぎ去ろうとしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。