ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
宇宙。
「MAは全て破壊した、GBNの観測でもフィールドに異常発生した機体はない。……なのになぜ、バグが消えない」
クジョウ・キョウヤは破壊したMAの眼前で固まっていた。
仲間達の活躍で、地上と宇宙───合わせて九機のMAは破壊された筈である。
しかし、GBNのサーバーエラーは直らない。
それどころか、今まさに悪化して来ているともいえるようだ。
世界が、割れていく。
「───消えないさ、憎しみはな」
「君は……」
そんなキョウヤの前に、セイヤのファーヴニルリサージェンスが現れた。
彼の機体は禍々しい程の光を放ち、その憎しみの呪いをGBNに放出し続けている。
「セイヤ……」
「よう、チャンピオン。遊びに来たぜ」
「君を倒せば、このバグが治る……なんて事はないんだろうな」
その禍々しい光はバグではない。
セイヤがガンプラに込めた憎しみと呪い。
その想いが、彼のファーヴニルリサージェンスを突き動かしているのだ。
だからそれはブレイクデカールのようなチートによる力ではない。
GBNのサーバーへの負荷により、多少の影響はある。しかしそれは、セイヤ本人の本当の力そのものだ。
「……素晴らしいガンプラだと、思うよ」
「チャンピオンに褒められるなんてな。光栄だ。……消えてくれ、チャンピオン。俺の計画の為に」
言いながら、銃口を向けるセイヤ。
すかさず反応して、機体を翻そうとするキョウヤだが───しかし、セイヤの放ったライフルはチャンピオンのAGE2マグナムの脚部を擦る。
「───っ、駆動系が……麻痺している。機体が重い!!」
「グリプスの呪縛だ。流石はチャンピオンの機体、その辺のボンクラが作った機体とは違って直ぐに動けなくなる事はないな……だが、これで俺でもお前と対等に戦える!!」
接近。
両手に持ったハイパービームサーベルが、キョウヤのサーベルに受け止められた。
「見くびってもらっては困るな……」
「なんだと……」
「私は、既に全てのダイバーと対等だ!! そして、その上で、このチャンピオンの称号を得ていると自負している!!」
セイヤの機体を弾き飛ばすキョウヤ。
そして放たれたライフルはIフィールドに弾かれるが、防御の隙にキョウヤのAGE2マグナムはスラスターを吹かせてファーヴニルリサージェンスの懐に入り込む。
「宇宙世紀の大型MSの弱点はその大きさそのものだ!!」
「懐に入れば勝てると思ったか、チャンピオン!!」
展開される両膝の隠し腕。
しかし、機体の形状を見て隠し腕に気が付いていないチャンピオンではない。
「オーヴェロンの隠し腕。勿論分かっているさ! そして、それを超えてこその勝利を見据えている!!」
「目に見える物だけで語るから、お前達は何も見えていないと言われるんだよ!!」
「何!?」
突如四方八方からロックオンされた警告音が鳴り、キョウヤは変形して一気に距離を取った。
そのキョウヤの機体を
「ファンネルだと!?」
「流石だ、チャンピオン。素晴らしいよ、お前は。きっとお前程強ければ、俺も守れたんだろうな……レイアを」
キョウヤを取り逃し、ファーヴニルリサージェンスの背部やシールドバインダーに収容されるファンネル。
隠し腕やムーバブル・シールド・バインダーだけではない。ファンネルまで用意されている機体の完成度にキョウヤは唖然とした。
「……なるほど、ファーヴニルにオーヴェロン、ディマーテル。三種のグリモアの力を打ち消す事なく繋ぎ合わせた最高の機体だ」
「この世界で一番強い男に褒められた所で、それは皮肉にしか聞こえないんだよ」
「皮肉さ。……それほどの力を持ちながら、君は!!」
「それでも、守れなかった。だから! 壊すんだよ!! 憎しみを流し込め、ファーヴニルリサージェンス!!!」
セイヤの機体から放たれる波動。
それが、キョウヤのAGE2マグナムを抑え込む。
「なんというプレッシャーだ……」
「堕ちろ!! チャンピオン!!」
放たれるライフル。
機体が思うように動かない。
しかし、突如AGE2マグナムの前に二機のMSが現れ、放たれたライフルがセイヤのライフルを相殺した。
「……なんだ」
「───これ以上、壊させない」
「───これ以上、奪わせない」
「───リク君……ヒロト!?」
キョウヤの前に現れた二つのMS。
それは、二つのビルドダイバーズ。この世界を救った、少年二人の機体。
「ビルド……ダイバーズ」
セイヤは憎しみの限りの強さで操縦桿を握る。
二年前。
GBNを救ったのは、一人の少年とELダイバーの少女だった。
あの日、セイヤがどれだけGBNへの憎しみを増加させたか分からない。
レイヤは救わなかったのに、サラというELダイバーだけが救われた。
しかしそれは、ヒロトも思う所があった事である。
ヒロトもまた、この世界で出会った人の少女を失っていた。
その少女は世界がサラを救う前に、この世界を救う為に自ら消えることを選ぶ優しい女の子で。
少年は深く傷付いて、立ち直るのにとても時間が掛かってしまったが───今、彼はここに居る。
彼女が守った世界を、守り切る為に。
「キョウヤさん!!」
「あぁ、頼もしい限りだ。……セイヤ、私達の布陣は完成した!」
二人だけじゃない。
リクの、ヒロトの、GBNの仲間達で宇宙に登った者達がセイヤを包囲していた。
その中で、セイヤは独り。
孤独の内で、彼は笑う。
「そうだよ……そうだ。そうこなくちゃなぁ! 悪者を倒す為、お前達はここに集まった。素晴らしい!! それこそが力だ。仲間、友情、守りたい大切な物を守る為に、お前達はそうして力があるから、戦える!! 俺にはそれがなかった!!」
守れなかった。
どれだけの事をしても、あの時、守らなければいけない物を。
「だから俺は壊すんだ!! 俺は弱い。見せ付けるな!! お前達の強さを!! お前達の力を!! 弱い俺を、寄ってたかって、絶望を見せる。俺に無かった、俺が失った物を見せる!! クガ・ヒロト!! お前は分かる筈だ!! 失った者の気持ちを!! ミカミ・リク!! お前も分かる筈だ!! 失うかもしれないという恐怖を!! クジョウ・キョウヤ!! お前も分かる筈だ!! ガンプラは楽しい……それなのに!! それなのに、俺は!! そのガンプラに裏切られた!! 分かるか? 俺の、この絶望。この呪いが、お前達に、分かるか? 分からせてやる。なぁ……これが!! 俺の奪われた世界への、復讐だ!! この世界の終わりを見届けろ!! ブレイクバーストぉおお!!!」
ファーヴニルリサージェンスを包み込む禍々しい光が、一瞬でこの宇宙を包み込む。
「なんだ!?」
「ブレイクデカール……」
ブレイクシステムを使わずして、チャンピオンの機体すら足を止めて見せたセイヤの機体の力。
それが、ブレイクシステムによりさらに悍ましい程の力を持ってこの世界を包み込まんと放たれた。
空間が割れ、世界が歪んでいく。
「こんな……力が」
「ダメだ、これ以上されたらGBNが!!」
「……っ。止める!」
ヒロトがコアガンダムの換装形態───アースリィガンダムのライフルを放った。
ライフルはファーヴニルリサージェンスの足を直撃するが、爆散した筈の足は直ぐに修復される。
「何……!?」
「避けるまでもない」
放たれるライフル。
その一発がハイメガキャノンのような威力の攻撃を、ヒロトは避けきれずに機体の左腕をそのまま全部持っていかれてしまった。
「……全員で掛かってこい。チートでもなんでもいい。俺は、何もかもを捨ててでも、この世界を終わらせる」
「セイヤ……」
数百機。
GBNの有志全てを相手に、臆さないセイヤとダイバー達が睨み合う。
「……さぁ、始めようか。GBNのダイバー。この世界の終わりを」
しかし、それこそがセイヤの目的とは知らずに。