ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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宿命

 機体に乗り込んで初めて感じたのは違和感だった。

 

 

「シールドビットが使える?」

 自分の機体の武装欄を確認すると、地上では使えない筈の武装が使用可能になっている。

 

「おじさんもインコムが使えるぞ」

「私も、ロングレンジフィンファンネルが……」

 ReBondフォースネストの地下に存在していた裏世界。

 

 アンチレッドの巨大地下基地となっていた底では、重力フィールドにも関わらず無重力フィールド限定武装の仕様が可能になっていた。

 これも裏世界特有のバグなのだろう。

 

 そうなると、イアが乗っているというデストロイが動いたときに相手もソレを使ってくるという事だ。

 バグを良いとは言えないが、こちらに都合が良いことばかりではないという事だろう。

 

 

 それに、オールレンジ攻撃の事を考えるとどうしてもアオトの顔が頭に浮かんだ。

 

 

「いる、かもな」

 ケイはふとそんな言葉を漏らす。主語がないそんな言葉だったが、ロック達はその意味がなんとなく分かった。

 

 

「こっちだ。この先に格納庫が───」

 先行するサトウの搭乗機体はビギナギナII。丸鋸の着いた尾っぽのような特徴的な左腕を持つ赤い機体である。

 

「───なんだ!?」

 そんなビギナギナIIが角を曲がった次の瞬間───機体の左脚をビームが貫いた。

 

 

 ジャンプしてその場から離れるサトウ。彼が離れた次の瞬間、機体の居た場所を何もない空間からビームが貫く。

 

 

「違う、クリアファンネル……か」

 何もない───は、語弊があるかもしれない。

 

 そこには透明な素材で作られたファンネルが停滞していて罠として張り巡らされていた。

 

 

「……アオト」

「裏切り者がいるな」

 曲がり角の奥。

 

 一機のMSがケイ達を出迎えるように立っている。

 

 

 イージスの改良機。

 

 その名もイージスブレイク。盾と破壊の名を冠するガンダムだ。

 

 

「なるほど、本当にセイヤさんは俺の事も信用してなかったんだな。アオト君がここに居るなんて、俺は知らなかった」

「当たり前だ。きっと、セイヤそんは俺の事も信じてない。……けれど、別にそれで良いじゃないか。GBNを壊せるなら!!」

 クリアファンネルがケイ達を囲むように放たれる。

 

「アオト!! 話があるんだ!!」

「聞く気はない!! 消えろ、忌々しいガンプラと一緒に!!」

 放たれるクリアファンネル。ケイ達は散開して、地下基地の建物を遮蔽にしながらファンネルを避けた。

 

 

「アオト君だけか? サトウ、セイヤがここに起きそうな奴なんて分からないよな」

「俺には皆目見当もつきませんよ。もう、セイヤさんが何を考えてるのか……俺にはさっぱりで」

 それでも、ガンプラが憎い。その気持ちで集まったのがアンチレッドである。

 

 

 そもそも初めから、彼等に仲間意識なんてなかったのだ。それでも、カルミアやサトウはセイヤの事を大切な仲間だと思っている。

 

 

「何処で歯車が狂ったんだか。……ケー君!! ここは任せても?」

「カルミアさん……。はい!!」

 二人はそれ以上言葉を交わす事なく、ケイとユメとロックが他のメンバーを守るように立ち回り始めた。

 

 今はアオトよりイアの方が大事である。

 しかし、彼を止めなければこの先には進めない。

 ブレイクシステムを使われたら、撃破しても復活してしまう以上、彼を止める役目が必要だ。

 

 

 それをこの三人に託す。

 

 

「お姉ちゃん?」

「ヒメ、お願い。私達はアオト君と話したいから、カルミアさん達を助けて欲しい。きっと、ヒメは皆を助けてくれるって信じてるから」

「……うん。分かった。お姉ちゃんがそう言うなら、私はそうする!」

「こっちよヒメ様。風穴を開ける。突っ込むぞ!!」

 レッドウルフがメガランチャーを放ち、サトウを先頭にニャムとカルミアとヒメが突き進んだ。

 

 そうはさせまいとブレイクビットを飛ばすアオトだが、ビットはユメにライフルで落とされる。

 

 

「よう、アオト。久し振りに遊ぼうぜ」

「アオト君、今度こそ私達の話を聞いて欲しい」

「お前を止めて、連れ戻す。また前みたいに、皆で遊ぶんだ。壊れても、直せば良い。……俺は、お前の言葉を信じるぞ!! アオト!!」

「全部壊してやる。直せないくらいに、全部だ!!」

 思いの丈を前に。

 

 四人は昔のように向き合って、昔とは違う場所を見ながら歩き出した。

 そして、その道が再び交差する。この先でまた一緒に歩く為に。少年達は顔を上げた。

 

 

 

「良かったんすかね、三人に任せて」

「男の子ってのはね、殴り合って友情を深めるものなのよ。ユメちゃんもロッ君も居るし。心配はしなくて良いでしょ。……それよりも、コレよ」

 アオトのファンネルによる包囲網を抜けて、カルミア達は地下基地の最新部に辿り着く。

 

 

 建物の立ち並ぶ巨大な地下基地。

 

 その場所の中心に、デストロイガンダムが仁王立ちしていた。

 

 

 

「イアちゃん、なんでしょうか」

「多分な」

「俺の知る限りはデストロイガンダムは一機です。……俺の知る限り、ですけど」

 バトルフィールド一つ分。巨大なエリアの中央に位置するデストロイガンダム。

 

 まるでこうなる事を予知していたかのように、その周囲には見張りのNPD機体が何機も配置されている。

 

 

「あれ、なんです?」

 ヒメが目を凝らして見ると、デストロイガンダムはその足元から大量のケーブルに繋がれていた。

 

 そのケーブルからは電流や炎が溢れ出ている。電流ならともかく、燃えているのはおかしい。

 

 

「あれも、ガンダムのアニメにある奴なんです?」

「いや、そんな事はないっすね。ジブンにも分からないです」

 首を傾げるヒメにそう答えるニャム。

 

 ガンダムで彼女が知らない事を他の誰かが知る筈もない。ただつまり、それはセイヤの目的に関係があるという証拠でもあった。

 

 

「あのケーブルでELダイバーとしての負荷をGBNに与えてるって事、なのかねぇ」

 カルミアが目を細めてそう言うと同時に、彼等の周囲の空間が砕ける。

 

 こうしている間にもGBNの負荷は高まっているのかもしれない。立ち止まってはいられなかった。

 

 

「チャンピオンにメールは送ったが、返信はなし。運営からのメッセージだと、曰く今チャンピオン達は宇宙でセイヤとやりあってるらしいが……」

 確かにセイヤは強いガンプラファイターである。

 

 レイアの事がなければ、GBNでその名前を上げていた筈だとカルミアは確信していた。

 だから、きっとあのチャンピオンとも互角に戦える力があるというのは納得できる。ただ───

 

 

「……GBNが上手い奴等は殆ど宇宙に上がった筈だ。セイヤがソレ全部を一人で止めてるってのは、なんのバグよ」

 宇宙のMAを止めるためにタイガーウルフ達のような手練れのダイバーもチャンピオンと共に行動している筈だ。

 

 それら全てがぶつかって、セイヤは未だに負けていないのだという。

 

 

「バグ、なんでしょうね。二年前の有志連合戦では、ブレイクデカールを使っていたプレイヤーの機体は撃破されても復活するとかあったらしいですし」

「ともあれ、動けるのが今は俺達しか居ない以上。おじさん達でやるしかないのよね……トホホ」

「でも、ならなんで兄さんはジブン達を落として地上に戻し───」

「……来ますよ」

 ニャムの言葉を遮るように、ヒメが攻撃の反応を三人に伝えた。

 

 放たれるビームやミサイル。

 どうやら見張りにバレたらしい。

 

 

「───ったく、待ってろよイア。今助けてやるからな!!」

 言いながら、カルミアはミサイルとメガランチャーを放って飛んでくるミサイルを迎撃する。

 

 

「中身がイアならデストロイを撃破したらイアも死ぬ事になる。ちょっと痛い思いは我慢してもらうが、コックピットを叩かずに機体を止めるの優先で動くって事でいいかね? ニャムちゃん」

「そうしましょう。イアちゃんに何かあった嫌ですからね!」

 その間に四人は散開。

 デストロイガンダムの周囲を囲むように、NPDの機体を撃破していった。

 

 

「迎えに来たぞ、イア。レイアの呪縛をお前が受ける必要はない。……皆の所に帰ろう。おじさん達は、その為にここに来たんだから」

 レッドウルフがメガランチャーを放つ。

 

 デストロイガンダムが動き出し、そのビームはまるで見えない壁に吸い込まれるようにして消え去った。

 

 

「カルミア……。皆!!」

 イアが動く。

 

 その機体もまた、大地を揺るがして立ち上がるのだった。

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