ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
巨大。
ビグ・ザムを筆頭にガンダム作品には、標準的なMSの大きさを遥かに上回る軌道兵器が登場する。
イアをコアに、この戦いで集められたデータを集約し、サーバーへの負荷を高めているこのデストロイガンダムもその内の一つだった。
「ビームが効かない……。なんで?」
「デストロイガンダムは陽電子リフレクターっていう鉄壁の防御がありますから、接近しないと有効打は与えられないっす」
ビームマグナムを直撃させても全く反応のないデストロイガンダムに首を傾げるヒメ。そんな彼女に説明しながら、ニャムが接近を試みるが四方八方からの攻撃が彼女を阻む。
「……とはいえ、これでは近付けないっすね」
デストロイガンダムの攻撃は勿論、周りに配置されたNPDの攻撃も厄介だ。
これまで同様に撃破しても直ぐにリスポーンする取り巻きに、イアを救うにはデストロイガンダムを撃破せずに戦闘不能にしなければならないというのも難しい。
「でも時間がないわねー、コレは……」
カルミアが目を細める。
弾け飛ぶ空間。
GBNの崩壊は既に始まっていた。
蓄積された戦闘データ。それを、一つの場所に集約させる。
今此処での戦闘や、宇宙でセイヤとキョウヤ達が戦っているそのデータがGBNのサーバーを侵食していた。
その膨大なデータがいつ破裂してGBNのサーバーを破壊するか、タイムリミットも分からない。
そしてそうなれば、この世界のデータ勿論イアという存在も消えてしまうだろう。
「宇宙に強いダイバーを集めて、このデストロイガンダムがGBNを破壊する時間を稼ぐ。それがセイヤの狙いだった訳だ」
全てはセイヤの思う壺。
今、チャンピオン達が彼と戦っているそのデータすらデストロイガンダムは収集し───このGBNのサーバーへの負荷として蓄積していた。
今更そんな事に気が付いた所で、宇宙に居るダイバーにはもう何も出来ないだろう。
これこそがセイヤの計画。
もし此処に居るのが、キョウヤ達のような凄腕のダイバーだったのなら話は変わったかもしれない。
しかし、それでも、今は彼等しか此処には居ないのだ。
「それでも───レイア、力を貸してくれ。アイツを止めさせてくれ、俺達に」
それでも───
「ジブンも、こんな所で終わりたくない。やっと、仲間と───友達とガンプラを楽しむことが出来るようになったこの世界を! 捨てたくない!」
「お姉ちゃんが好きな自分で居られる場所。お姉ちゃんが大切だと思う場所。……なら、私は守るだけ」
ニャーンXとバンシィがカルミアの背後に着く。
今、デストロイ計画を止められるのは此処に居る者達だけだ。
「待ってろイア、今助ける!!」
カルミアはレッドウルフの装甲をパージする。
レッドウルフに隠されたもう一つの顔。ガンダムmarkReVがその姿を表した。
「なんとかして突破口を見付けるか……」
スラスターを吹かせると同時にリフレクターインコムを展開するカルミア。
取り巻きが放つビームをリフレクターインコムで跳ね返しながら、装甲を脱ぎ捨てた分の機動力でカルミアはデストロイガンダムに肉薄する。
「助けに来たぜ」
「カルミア……!」
そこにイアは居た。
機体のコックピットの中。身動きは出来るが機体の制御は出来ない状態なのだろう。
接触回線でやっとカルミア達はイアの顔を久し振りに見る事が出来た。思っていたよりも元気そうだが、その表情は明るいとはいえない。
「ボクは───ボクが、GBNを壊しちゃうってセイヤが言ってた。……ボクを倒して! カルミア!」
「んな事出来るか。お前も、セイヤも、GBNもおじさんが救ってやる。その為に此処に来た!!」
ビームサーベルを振る。
真横から奇襲してきたのは、レイダー、フォビドュン、カラミティーというガンダムSEEDに登場するMSだった。
「邪魔をするな……!!」
両肩の隠し腕を展開しながら、ライフルを連射するカルミア。
ゲシュマイディッヒパンツァにライフルが曲げられたかと思えば、曲がったビームの先に置いたあったリフレクターインコムによって再びビームがフォビドュンを襲う。
巨大な鉄槌を振り回すレイダーの両腕を切り飛ばして、カルミアは何事もなかったかのようにデストロイガンダムに視線を向けた。
「もう何も失わせない。失いたくないんだよ!! お前は、俺が助ける。待ってろ……イア!!!」
「カルミア……!!」
デストロイガンダムの武装に銃口を向ける。
コックピットを攻撃すればイアは死んでしまうかもしれない。何をしようにはまずはこの機体の動きを止めるしかなかった。
しかし、そんなカルミアを背後から数機のMSが襲ってくる。
「ディスティニー、レジェンド、インパルスかよ……! セイヤの奴、なんだかんだ言ってガンダムの事好きだよな!!」
SEEDDestinyに登場する機体がカルミアを囲んだ。三機はデストロイに構う事なくビームを放ち、それはしっかりとデストロイにも直撃する。
「わぁ!?」
「イア!! くそコイツら、分かってんのか分かってないのか!! この距離だとデストロイのリフレクターも反応しない。あー、くそ!! 離れるしかないってか!!」
「カルミアさん! 一旦戻って下さいっす!」
下手に今カルミアを援護すれば、デストロイに要らぬ直撃をしかねない。
余程腕に自信がなければ、デストロイ周辺での射撃戦は困難だ。
そう、余程腕に自信がなければ───
「───援護しますわ!! ReBond!!」
「───道は切り開く。お前達がわいけ!」
放たれるビームスナイパーライフル。
それは全て一撃でカルミアを襲っていた機体を貫き、デストロイには掠りもしない。
「メフィストフェレス!?」
「フォースメフィストフェレス、ただいま復活ですわ!! 宇宙ではコテンパンにされましたけど、せっかく戻ってきたのだから役割は果たしますわよ!!」
セイヤに撃破されて地上に
確かに宇宙ではキョウヤ達がセイヤに足止めを食らっている。
強いダイバーの足止め。確かにセイヤの目的はそれなのだろうが、きっと彼は勘違いしているのかもしれない。
GBNで無名ダイバーには何も出来ない、と。
だけど、そんな事はない。彼等は現に、今ここにいるのだ。
「メフィストフェレスだけじゃないぞ!」
アンジェリカ達に続いて、地上に戻っていたダイバー達が加勢に入る。
その中にはNFTや野良戦等で以前戦ったフォースメンバーも混ざっていた。
GBNの絆が、ここに集まり掛けている。
「皆来てくれたんすね!?」
「これが……GBNの、お姉ちゃんの仲間。……友達」
ヒメは姉が以前言っていた事を思い出した。
GBNは楽しい。沢山の人が、同じものが好きで、同じ場所に集まれる。
私はそんなGBNが大好きなんだ。
「……皆、このゲームが好きなんですね」
「ヒメちゃんは嫌いっすか?」
多くの加勢で、デストロイガンダムの周辺勢力は抑えられている。今ならデストロイの動きを止める事も難しくはないかもしれない。
いや、後は止めるだけだ。
「……私も、好きかもしれないです。だって……ほら」
ヒメは周りのダイバーを見渡す。
真剣に、それでもやっぱり楽しそうに、彼等はゲームをプレイしていた。
もしかしたら現状を理解していないプレイヤーもいるだろう。けれど、そうだとしても彼等全てが同じ気持ちで動いている事だけは分かるのだ。
ガンダムが好き。ガンプラが好き。
そんな気持ちが、周囲一帯に溢れている。ヒメはそう感じた。
「───皆、お姉ちゃんみたいに楽しそうだから。……だから、だったら、私は……お姉ちゃん達の笑顔を守りたい。うん、私は最初から、お姉ちゃんの笑顔を守りたかっただけだから。だから! 私は、お姉ちゃんが好きなGBNも……好き!」
「ヒメちゃん……。ありがとうっす。それじゃ、イアちゃんも救って! GBNも守って! ヒメちゃんも一緒にまた遊びましょう!!」
ヒメのバンシィを連れて、ニャムもカルミアの元に駆け付ける。
既にカルミアの援護をしていたサトウと合流し、彼女達はイアの意志に反して攻撃してくるデストロイガンダムの眼前に立った。
「……今助けるぞ、イア」
視界に浮かぶ、助けられなかった少女の顔を振り解く。
今度こそ、必ず───そんな覚悟と共にカルミアは引き金を引いた。