ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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全てを尽くして

 翼が舞う。

 

 

「レフト、ライト。回避運動任せる」

「滅茶苦茶攻撃くるけど!?」

「滅茶苦茶動くけど!?」

 サイコザクレラージェに合体したウィングゼロアビージを駆る二人は、そのまま回避運動に手一杯だ。

 

 機体が上下左右に揺れる中、スズは狙撃で確実に相手を減らしていく。

 

 

「なんで当てれるんだ、あの嬢ちゃん」

「お姉ちゃんが凄いって言ってたの、あの人だ」

 サブアームも合わせて五丁。さらにウィングゼロアビージの機体制御まで奪いバスターライフルを二丁。

 

 その全てを正確に敵に当て、道を切り開く彼女をアンジェリカとノワール、トウドウが援護する彼等の必勝戦法だ。

 

 

 彼女らの火力を全面に押し出し、切り開いた道をアンディの指揮の元、砂漠の犬と残存兵力が突き進む。

 

 そうすると、ついにデストロイガンダムが動き出した。ここからだ。

 

 

「言われた通り、やれば良いんですね」

「あぁ、任せたよ」

「はい」

 ヒメが目を閉じる。姉に頼まれた、姉の大切な、大好きなこの世界の為に。

 

 

「───もう一度、私に力を貸して。バンシィ!」

 NTーD。

 

 ヒメのバンシィが、緑色の光を放った。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ハイパービームサーベルがニャムの機体を切り裂く。

 

 

「ぬぅ……どうせサテライトキャノンは使えないっすよ!!」

 受け身を取りながら、右手に持ったビームサーベルを振り回すニャム。

 

 それを両足の隠し腕で持つサーベルで受け止め、セイヤは両手とシールドバインダーのビームサーベルをニャムに向けた。

 

 

「手数が違うんだよ」

「そんなもん見りゃ分かるんすよ!!」

 ビームサーベルを手放し、その右手を黄金に輝かせるニャーンX。

 

 拳から放たれた光が、サーベルの熱を奪う。

 

 

「シャイニングフィンガー? 違う……これは───」

「ゴッド……フィンガー!!!」

 放たれる熱に距離を取るセイヤ。それを見たニャムは、拳を引っ込めて力を溜めた。

 

 

「離れても無駄っすよ!!」

「良く出来たガンプラだ……」

 全身を黄金に輝かせ、月光蝶まで纏う姿は神々しい。

 

「奥義!! 石破……天驚拳!!!」

 そして、その拳が放たれる。MSをも凌駕する巨大な拳状のエネルギー。

 

 しかし、その攻撃はファーヴニルリサージェンスのハイメガキャノンに掻き消された。

 

 

 ビームの余波でニャーンXの左足が吹き飛ぶ。バランスを崩した彼女の機体に、セイヤが肉薄した。

 

 

「終わりだ。そこで見てろ!!」

「兄さんは……何も分かっちゃいないんですよ!!」

「ブラディ・シージか……」

 セイヤの頭上に現れる、吹き飛んだ筈のニャーンXの左足。

 

 放たれた赤いビームを軽く交わすセイヤだが、そのビームは百八十度曲がって再びファーヴニルリサージェンスを襲う。

 

 

「フレスベルグだろ。そんなもんが当たるかよ」

 放たれた時点でネタは割れていたのか。セイヤは機体を逸らして簡単に曲射を避けてみせるが───

 

「何!?」

「リフレクターインコムもあるんだよ!!」

 避けた筈のフレスベルグがリフレクターインコムにより反射され、三度セイヤを襲った。

 

 

 ムーバブルシールドでそれを防ぐセイヤの懐にビームサーベルを構えたカルミアのガンダムmarkReVが入り込む。

 

 

「貰う!!」

「舐めるな!!」

 肩のサブアームを展開するカルミア。しかし、セイヤの機体は実質六本の腕がある状態だ。カルミアは簡単に抑え込まれる。

 

 

「俺一人じゃ無いんだよ!!」

「兄さん!!」

 下から潜り込むニャムのニャーンX。それのは別に、分離した右腕が背後からセイヤに襲い掛かった。

 

 

「───どれだけ来ようが同じ事だ!!」

 ヘッジホッグが火を吹く。

 

 背部バインダーの砲台、ファンネル、まるでブレイクバースト中のイージスブレイクが全身からビームを放つ時のように。

 チートなしでもこの機体は全身が武器であり、ヘッジホック───針千本の名は伊達ではない。

 

 

 ファーヴニルリサージェンスを中心に全方位に向けて放たれたビームが二人の機体を貫いた。

 

 力量も、ガンプラの性能も違い過ぎる。

 

 

「機体制御……くそ!!」

「カルミアさん!!」

「よそ見するなニャム!!」

 カルミアの怒号で振り向くと、六本のビームサーベルがニャムに降り掛かる寸前だった。

 

 やられる。

 そう思った刹那、リフレクターインコムと通常インコムがセイヤとニャムの間に割って入った。

 

 

「邪魔だ」

「お前は自分の妹の言葉すら聞かなくなったのかよ!! セイヤ!!」

 手足もボロボロの機体が前にでる。セイヤはそんなカルミアを足蹴りで一蹴した。

 

「邪魔だと言っただろう」

「兄さん!!」

「ナオコ、お前には分からないさ。大切な人を失った気持ちが。……ここでお前達がやられようが、お前達は死ぬ訳じゃない。……けどな、レイアは違ったんだよ!!」

「そんな事……分かってます。でも、私達も───ジブンも、イアちゃんが大事なんです。だから、それを奪うのはやめて欲しい」

「分からせてやるって言ってんだよ。俺の気持ちを!!」

「分かってると言ったでしょう!!」

 両手足を分離させ、セイヤの周囲を囲む。

 

 

「私も失ってるんですよ!! 兄さんを!! 優しくて、格好良かった兄さんは、私の側に居てくれない。今こうして……私の事をいじめてくる!!」

「ナオコ……」

「辛いの分かってないのは、兄さんです!! 私はずっと探してたのに……私はずっと!!」

 引き金を引いた。

 

 しかし、全てのパーツをセイヤはビームサーベルで切り捨てる。

 

 

 そこに、もうあの優しい兄は居なかった。

 

 

「ニャムちゃん……」

「帰ってきてよ!! そんなに辛いなら、家族の所に帰ってきてくれれば良かったじゃない!! 私は……ずっと待ってたのに!!」

「……っ、だ……黙れ。黙れぇ!! お前に何が分かる。ガンプラを楽しんで、仲間が出来て、俺の事なんて忘れてこのGBNを楽しんでたお前に!!」

 振り下ろされるビームサーベル。もうニャムに反撃の手はない。

 

 

「セイヤ!! お前自分が何してるのか分かってんのか。レイアはもう居ないんだよ!! それじゃ、お前が今一番守らなきゃいけなかったのは誰だよ!! その子だろ、お前の大切な妹だろ!! 俺に沢山妹の話をしてくれただろ。なぁ!!」

「うるさいんだよ、お前も。お前に分かるのかよ、好きな人が居なくなった人の気持ちが。心に開いた穴が、お前みたいに!! ヘラヘラした奴に分かるのかよ!!」

「……っ、そんなもん」

「分からねぇからそうしてられるんだろ!! お前らはそうだ!! ナオコ、カンダ!!!」

 機体を持ち上げ、ハイメガキャノンを構えるセイヤ。

 

 

「っ、逃げろニャム。まだお前はセイヤと話さなきゃ───」

「そんなの、カルミアさんも同じですよ!」

「消えろ」

 放たれるハイメガキャノン。

 

 二人を包み込もうとする光。

 

 

「シールドビット!!」

「エクリプス!!」

 その光を、シールドビットが一瞬足止めし、砲撃が相殺する。

 

 

「……遅いぜ、ロッ君隊長」

「……ケイ殿!!」

「ヒーローは遅れてやってくるってなぁ!!」

「ごめんなさい、遅れました」

 ロックとケイ、そしてユメの三人が合流して二人の前に立った。

 

 

「俺様が来たぜ。……もう、あの時みたいな負け方はしねぇ」

 銃口を向けるロック。

 

 そんな三人を見下ろして、セイヤは静かにこう告げる。

 

 

「雑魚が増えた所で、何も守れないんだよ。気持ちだけ強くても……何もな」

「兄さん……」

 まるで歯が立たなかった。

 

 それは、確かに事実である。三人の事を信じていない訳じゃない。けれど、それでも、セイヤの力は圧倒的だ。

 

 

「……デストロイは」

 カルミアは横目でデストロイの様子を確認する。

 

 アンディ達の作戦は順調なようだが、あと一歩の火力が足りずに押し戻されそうになっていた。

 せめてもう少しだけ戦力があれば、という苦しい状態だろう。

 

 しかし、時間さえ掛ければ彼等は果たしてくれる筈だ。それじゃ、どうやって時間を稼ぐか。

 

 

 

 問題はカルミアとニャムだけでは全く時間を稼げなかった事だろう。それに二人はもう戦えるような状態ではない。

 

 

 

「……足止め、私とケー君でしよう」

 ふと、ユメがそんな言葉を漏らした。

 

 

「ユメちゃん……?」

「お、おい。俺にこいつをぶん殴らせ───」

「多分タケシ君がこの中で一番火力を出せると思う。イアちゃんを助けて!」

 あと一歩。

 

 ロックの機体なら、その一歩を押し出せる。

 

 

 ユメはそう信じて、セイヤの機体にビームマグナムを向けた。

 

 

「……やろう、ケー君」

「……分かった」

「ったくしょうがねぇな!!」

 踵を返して、デストロイに向かうロック。しかし、セイヤは「行かせる訳がないだろ」と冷たい言葉を漏らす。

 

 

「まだアレには戦闘データを集めて貰わなきゃいけないんだよ。邪魔を……するなぁ!!」

 放たれるハイメガキャノン。ロックは回避しようとするが、セイヤはその類稀なる操作技術で機体をひねってビームを曲げた。

 

 

「嘘だろぉ!?」

「ロック氏!!」

「させない!!」

 クジャクとGNソードIIIを構えてセイヤに突進するケイ。ビームサーベルを構えて続くユメだが両足の隠し腕とハイパービームサーベルが二人を阻む。

 

 

「邪魔だ、消えろと言ってるだろ」

「嘘……」

「くそ……」

 そしてそれでも、セイヤの機体にはまだムーバブルシールドがあった。展開されるビームサーベルが、二人を襲う。

 

 一瞬でやられる───そう思った、その時だった。

 

 

 

「───ブレイクビット!!!」

 大量のビットがセイヤのファーヴニルリサージェンスを止める。

 

 

「……アオト?」

「イアは、お前達の他にやっと出来た俺の友達だ。俺はまだ……GBNへの気持ちの整理が出来たない。けど、セイヤさん! 俺は、あなたと一緒だ! あの子が……イアが大切だ! だから、あなたの邪魔をしても……友達を守りたい!」

 アオトのイージスブレイクがケイのストライクReBondの隣に立った。

 

 ケイは何も言わず、首を縦に振る。

 

 

「「あなたを止める!!」」

 二人の声が、重なった。

 

 

 

「……っ、はは。ははは……そうかよ。やれるもんなら、やってみろ!!!」

 大量のビームを放つファーヴニルリサージェンス。

 

 カルミアやニャムを瞬殺し、宇宙ではチートを使ってでもチャンピオンを止めた男を足止めしてイアを助ける。

 

 

「俺は壊す……この日を待ち侘びていたんだ!! この世界を!! この気持ちを!! 全て!! 破壊しつくせ!!! GBNが産んだ命と共に!!!!」

 不可能としか思えない。けれど、この三人と、いやロック達四人と───いや、GBNの仲間達となら、出来る気がした。

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