ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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想いよ届け

 デストロイガンダムには超大型のドラグーンシステムが搭載されている。

 

 元々の図体から繰り出される強力なエネルギー砲に加え、その防御力もさることながら数多のビーム砲を装備した両腕をドラグーンとして射出する事で火力と手数───そして死角のない射程を手に入れているのだ。

 

 

 そんなデストロイガンダムのドラグーンシステムを、GBNのNTーDは無効に出来る。

 

 ヒメのバンシィの活躍により、デストロイの攻撃力は半減したといっても良かった。しかし───

 

 

「───デストロイの正面に入るな! そこは間合いだ!!」

「ぇ、ちょ!! うわぁ!?」

 デストロイのスーパースキュラに飲み込まれ、爆散するサンドロック。

 

 近くにいて砲撃の余波でバランスを崩したキマリスヴィダールがツォーンmarkⅡに吹き飛ばされる。

 

 

「くそ、貴重な戦力が。その場限りのチームで統率が取れなければ、攻略に時間は掛かる……だが!!」

 放たれたビーム砲を変形しながら交わし、ビームライフルを叩き付けるアンディ。

 

 デストロイガンダムがその衝撃で揺らいだ。確実にダメージは与えている。このままいけば倒す事は出来るかもしれない。

 

 

 しかし、それは邪魔が入らなければの話だ。ケイやユメ達が来なければ、カルミア達の足止めでは足りずにセイヤが彼等を止めたかもしれない。

 

 

「……っ、時間が。私の援護は良いから皆もアレを!」

「そんな事言ってもこの数ですわよ!? 今スズの狙撃がなくなったら、それこそ前線が崩壊しますわ!!」

 メフィストフェレスも動けない。

 

 ケイ達がやられれば、次やられるのは───

 

 

「───ヒーローは、遅れてやってくる!!」

「ロック……!!」

 マックナイフに背後から襲われそうになったノワールの迅雷ブリッツの背後を取り、マックナイフを斬り飛ばす一機の黒いMS。

 

「乱れ打つぜぇ!!」

 彼等メフィストフェレスの衣装にも似たその機体は、ライフルを構えて周囲の敵を殲滅する。

 

 

「タケシ……」

「ロックな!! 俺とスズで道を開く、お前らはデストロイを頼むぜ!!」

「スズ……さんだ」

「だがお前、ケイ達は……」

「俺はアイツらを信じる。そんで、お前達の事も信じる。……そんだけだ!!」

 再びリスポーンする敵機体を狙撃するロック。

 

 彼が居ればスズの護衛も問題ない。何故なら彼はこうして狙撃をしているが、近付かれた方が強いからだ。

 

 

「俺は約束を果たして戻ってきた、だから……アイツらもそれを果たす」

 そして、セイヤを止めるのは───

 

 

「……頼んだぜ、ケイ!!」

「……タケシ達を信じて、俺達はこの人を止める!!」

 ケイ達幼馴染み。

 

 

 

「───力のない奴には何も守れないんだよ!!」

 ハイメガキャノンが放たれる。

 

 その出力はストライクReBondのエクリプスすら遥かに凌いでいた。

 それでいてその高威力ビームを放出しながら機体の姿勢制御をこなすセイヤ。それで何が起きるかといえば、ハイメガキャノンが曲がってくるという事である。

 

 

「避けられない……!!」

 TRANSーAMはもう二度使ってしまった、余力はない。

 

「ケイスケ!!」

 そんなストライクReBondを、変形したイージスブレイクが掻っ攫うようにしてハイメガキャノンの射程から逃れた。

 

 再びMS形態に変形したイージスブレイクは、ブレイクファンネルと共にビームライフルをファーヴニルリサージェンスに向けて放つ。

 

 

「ボケッとしてるな! あの人を止めるんだろ。何か手はないのか? お前の力はそんなもんか!!」

「言ってくれるな……アオト。泣いても知らないぞ!! ユメ!!」

「うん!!」

 ケイに呼ばれて、機体を変形させたユメが近寄ってきた。

 

 集まったなら纏めて吹き飛ばせば良い。そう思い、セイヤは再びハイメガキャノンを構える。

 

 

「来るぞ!!」

「あの出力のビーム砲を連射出来るのか……!!」

「ケー君、行くよ!!」

 その背後で、ユメのデルタストライカーが再び変形し始めた。

 

 しかし、それは航空機形態からMS形態への変形ではない。

 

 

 武装を収納し、スラスターを集約。OOのオーライザーのように機体が腰から半分に折れて()()()()()()()()()の接続部分が現れる。

 

 

 ストライクReBondはクロスボーンのX字スラスター付きのストライカーパックを外した。

 

 そしてそのまま、ストライカーパックとなったユメのデルタストライカーを()()する。

 

 

 

「デルタストライクReBond!!」

 ツインロングレンジフィンファンネル、ビームマグナムやシールドミサイル。

 

 デルタストライカーの武装を受け継いだストライクReBondの新たなる姿。その機体が、アオトのイージスブレイクの前に出た。

 

 

 

「合体か。くだらねぇ、一緒に消し炭になれ!!」

「「GNフィールド!!」」

 放たれるハイメガキャノン。

 

 しかし、その砲撃は強固なシールドによって塞がれる。

 

 

「今の砲撃を耐えた……。そうか、二機分の出力を有しているのか。……俺の前でイチャつきやがって」

「だから泣いても知らないって言っただろ!!」

「い、イチャ……イチャついてないよ!?」

「あの二人はなんで漫才してるんすかね……」

「分からん……。てか、来るぞ!」

 ニャムのカルミアはほぼ満身創痍で戦えるような状態じゃない。

 

 

 ケイ達が三人だけでセイヤを止めなければいけない以上、状況は苦しい筈だ。

 

 

 

「……消えろ」

 再び放たれるハイメガキャノン。そうなんども止められるような物でもない。

 

 ケイとアオトは散開してそれを交わす。

 

 

「挟み込む!!」

「分かった!!」

「ブレイクファング!!」

「エクリプス!!」

「フィンファンネル!!」

 ブレイクファングとビームライフル、エクリプス、そしてロングレンジフィンファンネルがセイヤを囲んだ。

 

 

「ほざくな」

 放たれるハイメガキャノンに吹き飛ばされるファング。同時に放たれたケイ達のビーム砲は、機体から球状に拡散されてしまう。

 

 

「GNフィールド?」

「いや、違う」

「Iフィールドか。……なら!! 接近する!!」

 セイヤに肉薄するアオト。

 

 ブレイクドラグーンを展開しながら両手足のビームサーベルを巧みに駆使した連撃を、セイヤは両手とムーバブルシールドのサーベルでいなしながら隠し腕でドラグーンを斬り飛ばした。

 

 

「手数が違う……!」

「アオト!!」

 それに続くケイとユメ。大型サーベルを展開して浮遊するロングレンジフィンファンネルとストライクReBondのサーベルがセイヤを背後から襲う。

 

 

「無駄だ」

 アオトを弾き飛ばしながら、後方にも砲撃を放つセイヤ。フレスベルグのように追従するビーム砲を、ケイは引き付けてギリギリのところで交わした。

 

 

「早いな……」

「デルタストライカーがなかったら避けれなかった……。なんて精度なんだ」

 ユメのデルタストライカーは軽装備の代わりに機動力に特化した機体である。

 

 その機動力を得たストライクReBondがやっとの事でしか攻撃を交わせない。

 

 

 交わされたことに少し驚いていたが、セイヤにはまだ余力がありあまっていた。このままなら、いつ落とされてもおかしくない。

 

 

「兄さん……」

「くそ、セイヤ!!」

 満身創痍のカルミアが援護射撃をするが、セイヤは彼に見向きもせずにアオトを詰める。

 

 

 

「……っ」

「アオト、俺に逆らうな。お前は俺と同じ筈だろう。GBNを、他人を、憎んで憎んで憎んで……お前に戻る場所なんてない!! そうだろ!?」

「……俺は、確かにそうでしたよ。ケイスケが憎かった、GBNが憎かった……今だって気持ちの整理が付いてない!! けど!! 俺にはまだ守りたい物がある!! それはセイヤさん、あなたも同じ筈だ!!」

「黙れ……。俺にはもう、何もないんだよ!!」

 アオトのイージスブレイクを地面に叩きつけるセイヤ。

 

 構えられるハイメガキャノン。横からビームサーベルだけを持って突進してきたカルミアの機体を、セイヤは頭を動かさずにバラバラにした。

 

 

「お前の目的は……そうやって子供を痛ぶる事か!? 違うだろ!! 守りたかった物があったからだろ!! やってた事は確かに良くない事だった……けどよ、俺達みたいにGBNで何かを失った人達を守りたくて動いてたんだろうがよ!! サトウはな……それでも、自分で気が付いたんだ。ガンプラをトラックで運んでいった先で笑ってた子供達の事を!! お前は忘れちまったのか!? 俺達が笑顔にさせてた子供達の事、お前が救おうとした仲間の事、お前が大好きだったレイアだって!! この世界で生まれた子供みたいな……命なんだぞ!!」

「お前に何が分かる、カンダ!! 子供だと? 大人だの子供だの、何が違う!! 俺は奪われたんだよ!! 俺が!! 俺が奪われたんだ!! 大人だから我慢しろとでもいうのか!? 子供だから守らなければならないというのか!? なら何故だ!! 何故その子供であるレイアや、アオトのようなガキが傷付く!! 大人も子供傷付いてるんだ。……俺も!! 何もかも、失ったんだよ!!」

 弩号と共に放たれるハイメガキャノン。

 

 カルミアの機体をその光が包み込もうとした時、セイヤの機体を羽のような光が包み込む。

 

 

「月光蝶……ナオコか」

「兄さん、私達は大きな子供なんです……。良い歳になってプラモで遊んで……でも、それでも良いって思っています。楽しい事は楽しいし、悲しい事は悲しくて、仲間と共有すれば良い。……けれど、それでも、やっぱり私達は何処かで大人として振る舞わないといけないんですよ。私達は沢山遊んで、本当の子供達より楽しい事も悲しい事も知ってるから……子供達に、もっと楽しんで欲しい。悲しい思いをして欲しくない。……だから兄さんはガンプラ関係の仕事をし始めたんでしょ!? だから、アンチレッドを作ったんでしょ!?」

「黙れと……言ってるだろうが。カンダも、ナオコも……なんで!! なんで知ったような事を!!」

 放たれるハイメガキャノン。しかし、ビームは月光蝶に拡散された。

 

 

「知ってるからだよ!!」

 ユメが叫ぶ。

 

 

「皆、セイヤさんの事知ってるからだよ。私はあなたの事は知らないけど……それでも、本当はあなたは優しい人だって分かる。アオト君やヒメカはあなたを信じてたもん。カルミアさんはあなたの本当に大切な仲間だった!! ニャムさんはあなたの本当に大切な家族だった!! 他のみんなも、GBNの皆も!! 私達も、イアちゃんも、レイアさんも!! 皆、あなたが大切だから!!」

「なら何故止める!! 俺が憎いからだろ!! 俺が邪魔だからだろ!! 俺が間違ってるから!!! そうだろ!!!!」

 構えられるハイメガキャノン。

 

 ロングレンジフィンファンネルが突撃して、両膝の隠し腕と共に爆散した。続けて月光蝶がセイヤの機体を絡めとるようにその光をファーヴニルリサージェンスに伸ばす。

 

 

「なんだ……機体が」

 カルミアのメガランチャーがムーバブルシールドを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 分からない。

 

 

 何故止める。そのくせ、語り掛けてくる。

 

 

 宇宙でもチャンピオン達は、セイヤを否定しなかった。何故。自分が悪なんて事は分かっている。

 

 何をしてもレイアは戻ってこない。この復讐に何の意味もない。これは子供の仕返しだ。

 

 

 そんな事は分かっている。

 

 

 だから、なんで、誰も自分を責めないのが分からない。

 

 

 

「俺を肯定するなぁぁぁあああ!!!」

 自分は悪だ。

 

 

 そうでなければ、レイアに合わせる顔がないじゃないか。

 

 お前を取り戻す為にこれまでしてきた事を肯定されてしまったら、もう誰にこの気持ちをぶつけたら良いか分からないじゃないか。

 

 

 

 辞めろ。辞めろ。辞めてくれ。

 

 

 

 俺を肯定するな。

 

 

 

「───仲間だから!!」

 ハイメガキャノンを構えるセイヤの正面で、拳に力を込めたケイが立つ。

 

 

「仲間……だと」

「カルミアさん達だけじゃない。……俺も、ユメも……タケシやアオト達……他のGBNのダイバー達も!! GBNでガンプラを楽しむ大切な仲間だ!! セイヤさんだって、そうだったんでしょ? 俺達と同じで……ガンプラが楽しくて、だけど……辛い事もあって」

 大切な幼馴染みはガンプラと関わって夢を失った。

 

 そうしてガンプラと関わるのが嫌になって、友達が一人遠くに行ってしまって。怖くなって距離を置く事も増えて。

 

 取り戻せない時間が沢山ある。あの時こうしていたらという後悔が沢山ある。

 

 

「それでも……俺は、やっぱりガンプラが好きだ!! ガンプラが好きな皆が好きだ!! 壊れてしまった物もある、壊れたら直せば良いって思っていたけど……取り戻せない時間や場所もある!! そうやって気付いたから、だから……もう大切な仲間が傷付いてるのは嫌なんだ!!」

 手を伸ばした。

 

 

 もう戻らない物がある。

 

 

 それだけはどうしようもなくて、だけど、だったら、これからどうすれば良いのか悩んでいた。

 

 

 

 夢を失って、それでも健気に前を向く少女がいて。

 

 大切な仲間を思って、ずっと我慢していた少年もいる。

 

 ずっと大切な気持ちを抱えたまま独りぼっちだった人や、葛藤の末に大切な仲間と別れた人。

 

 

 GBNに救われた人も、GBNを本気で楽しんでる人も、この世界には沢山の人がいて。

 

 

 

 

 セイヤという男も、ただ、その中の一人なんだと気付いたから。

 

 

 

「───だから、仲間だから……友達だから!! 殴ってでも!! あなたを止める。あなたを……何処かへは行かせない!! 皆の元に、帰らせるんだ!!!」

 振りかぶった。拳が光る。

 

 

 放たれようとするハイメガキャノン。その背後から、アオトが変形したイージスブレイクで機体にしがみ付いた。

 

 

「今だ!! いけ、ユメ!! ケイスケぇ!!!」

「ケー君!!」

「馬鹿なこの俺が……くそ、何が……何が仲間だ! 何が友達だ!! 俺のこの気持ちは……この想いは───」

「───届け!!!」

 放たれる拳。最後に残った片側のムーバブルシールドを吹き飛ばしながら、その拳が光を放つ。

 

 

「ReBond……ナックル!!!!」

 光が世界を包み込んだ。




ハーメルンでの今年最後の更新となりました。平常運転ですが、来年からも完結まで突っ走ります。

読了ありがとうございました。良いお年を。
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