ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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届いた想い、届かせる気持ち

 光が見えた。

 

 

 生まれた時、初めに見えた光。

 

 データの海を泳いでいた。何もなくて、上も下もなくて、それは宇宙よりも広い1と0の世界。

 

 

 この世界を埋めていくように、その光は広がった。

 

 

 

「───楽しかった。だから、どんなに悲しくても、辛くても、嫌でも。この世界がなくなって、皆が一緒に居ないのは嫌だ。……僕は、皆が笑ってるのが大好きだったから」

 どれだけ壊れたって、直せば良い。

 

 

 

 この世界がなくなったら、もう治せないから。

 

 

 だから───

 

 

「───だから、俺は諦めない……!!」

「───ケイ!? ユメ!?」

 放たれたハイメガキャノン。

 

 その光とデストロイガンダムの間に、ケイのストライクReBondとストライカーパックとしてのユメのデルタストライカーが立つ。

 

 

 

 盾も何もない。ボロボロの機体で。

 

 辛うじて前面に展開したGNフィールドでデストロイガンダムを守ろうとしていた。

 

 

 

「……ケイ! ダメだよ、無理だ! それに、これ以上戦闘データが蓄積されたら、GBNがもたない!!」

「そんなの知るか!!!」

「ケイ!?」

 機体が歪む。嫌な音を立てながら、二人の機体がバラバラになっていった。

 

 

「壊れても、治せば良い……ずっとそう思ってた。でも、アオトと話してやっと分かったんだ。……治らない物も、戻らない物もあるって。GBNは大切だ……でも、だけど、俺達はそれよりも、GBNで楽しかった時間が大切なんだ。……イアを……大切な仲間を諦める事なんて!! 出来ない!!」

「でも!! 僕がいたらこのGBNは……!! なくなっちゃうんだよ!? どうせ、僕も消える……だったら!! セイヤさんが動けないウチに、僕を消さないと!! ダメだよ!!」

 今イアを守っても、このままGBNが崩壊すれば彼女も一緒にこの世界のデータと共に消えてしまう。

 

 

 ケイのしている事は、なんの合理性もない事だった。

 

 

 

 イアだけが消えれば、GBNは救われる。

 それはユメのようにGBNを拠り所にしている人達を救う事にもなる筈だ。

 

 今ここでイアを守っても、GBNはそのうち崩壊するだろう。

 そうなれば、守った筈のイアの命も何も残らない。

 

 

 

 選択肢なんてない筈だ。

 

 けれど、どうしたって諦められない。

 

 

 

「全部、手放したくない。俺は強欲だから、楽しかった時間も、場所も、友達も、全部大切だから。……全部諦められない。無駄だって分かってても、嫌なものは嫌だ!!」

「そうだよ!! 私達は、子供で……わがままだから!!」

 GNシールドにヒビがはいる。

 

 

「あぁ、そうだな。俺達はガキだ!! 大人の事情とか知るか。GBNとか知るか。俺は!! 仲間を助ける!! それだけだ!! シールドビット!!」

「俺達子供はすぐに間違えるんだ。……だから、許して欲しい。父さん、セイヤさん……。ブレイクバリアビット!!」

 ケイ達の機体をロックのシールドビットとアオトのブレイクビットが包み込んだ。

 

 

 光が弱くなる。

 

 

 

「俺のファーヴニルリサージェンスのハイメガキャノンを、それも暴走寸前で暴発したこの威力の攻撃を……受け切るのか」

「これが子供達の力って事よ、セイヤ」

「ジブン達にはない力、ですね」

 ビームは拡散し、弾かれて、次第にその威力を失っていった。

 

 

「綺麗……」

 まるで花火のよう。

 

 ヒメの目に映るゲームの世界の光景は、本当の世界の花火にも負けない輝きを持っていた。

 

 

 

「ケイ……ユメ……」

「助けたぞ、イア!!」

「イアちゃん、そこから出よう!!」

「で、でも……GBNが!!」

 ハイメガキャノンを耐え切ったボロボロの機体。

 

 しかし、GBNはその膨大なデータ量に圧迫される形で崩壊を始めている。

 そのデータの集合体であるイアとデストロイガンダムがこの世界から消えない限り、その崩壊は止まらない。

 

 

 

「これが望みか、セイヤ……」

「兄さん……」

 どのみち、イアに助かる道はなかった。

 

 

 このままGBNと共に、子供達の夢と共に、彼女もまた───レイアのように消えるしかない。

 

 

 

「───セイヤ」

「───レイア……。そう、か。俺は……まだ、ガキだったんだな。ガキのままで……いれたんだな」

 デストロイガンダムに近付くセイヤ。

 

 そんな彼の前に立ちはだかるように、ケイが必死な表情でボロボロになったストライクReBondを立たせる。

 

 

「何をする……気ですか?」

「GBNの崩壊を止める」

「セイヤさん……?」

 このままいけば、セイヤの望み通りこの世界は崩壊する筈だ。

 

 

 しかし、あのままセイヤがレイアやイアに導かれるままにハイメガキャノンを放っていれば、この世界は救われただろう。

 

 けれど、セイヤはそのどちらも望まなかった。そのどちらも望んだ。

 

 

 それでもイアを助ける為にケイが取った行動は、GBNの崩壊を防ぐという目的から見れば相反する事だっただろう。

 

 

 ───否、それは違った。

 

 

「……お前が守りたかったのは、この世界でもELダイバーの命でもなんでもない。……お前の信念、お前の世界だ」

「……っ」

「どのみちこのまま行けば、GBNは崩壊してそのELダイバーも消える。そんな事は分かってる筈なのに、お前はそれを否定した。ガキだから、何も分かっていないからだ」

「それは……」

 ケイは間違っている。そんな事は分かっていた。

 

 

「けど───」

「───けど、それで良いんだ。ガキは……子供は、自分の世界を守らないといけない。俺もそうだった。俺は、GBNなんて初めからどうでも良かったんだ。レイアの事だけを……自分の事だけを考えてた」

「セイヤさん……」

「アイツが……レイアが望むなら、俺はそれで良い。またレイアに会えた……また、話せた。GBNなんてどうでも良い。お前がそこにいるなら、俺はそれを守るだけだ。また話せなくなったとしても、俺はずっとお前を……愛してる」

 セイヤのファーヴニルリサージェンスが、デストロイガンダムのコックピットに触れる。

 

 

 

「今からデストロイのデータ連携を解除する。そうすればサーバー負荷は激減して、GBNの崩壊は防げる筈だ」

「ありがとう、セイヤ」

「そうしたら、またお前と話す事も出来なくなるな」

「でも、私はずっと見てるよ。セイヤの事」

「俺も……出来る限り直ぐにここに来るよ。レイア」

 パスコードを入力して、決定ボタンに手を掛けた。

 

 

 これで、GBNの崩壊は止まる。

 

 

「俺の復讐は……何の意味もなかった。お前がここにいる。俺はコイツらと同じガキだから……たったそれだけの事で、良かったんだよ」

「セイヤ」

「レイア……」

「私も、あなたを愛してる」

 ボタンを押した。

 

 

「さようなら」

 そんな声が、木霊する。

 

 

 

 セイヤがデストロイガンダムに施した、戦闘データの蓄積機能が解除された。

 

 不必要なデータは消去されて、GBNのサーバーも安定する筈である。

 

 

 

「セイヤさん……」

「勘違いするな。俺は、自分の守りたい物を守る為にずっと行動してきた。それだけだ……。……だから、罰は受ける。俺がやって来た事を許せない奴も居るだろ」

 セイヤは沢山の人を傷付けて来た。

 

 

 GBNへの恨みから、復讐の為に何でもしてきたのである。

 

 

 

「そうだねぇ、とりあえず……僕も怪我させられたし? その辺でケリをつける為にも、一度飲みに行くとか? どうよ」

 アンディがセイヤにそんな事を言った。

 

「……何考えてんだ、あんた」

「僕達は仲間だ。良くも悪くも、ガンプラが大好きで仕方がなかったね」

「そうですわ。私も、あなたにはガツンと言いたい事がありますし! 負けっぱなしは癪に触りますの。バトルしましょ、色々落ち着いたら」

 サーバーエラーの数が減っていく。

 

 

 圧迫され、振動までしていた世界が落ち着きを取り戻そうとしていた。

 

 

 

「……ま、そういう話は後だろ。セイヤ、レイアに一旦お別れを言おうぜ」

「カンダ……」

「そうっすね。ジブン達は、いくらでも兄さんを待ってますから。ほら、彼女が待ってますよ」

「ナオコ……」

 振り向く。

 

 錆び付いて、崩れていくデストロイガンダム。

 

 

 そのコックピットに手を伸ばした。

 

 

「レイア、最後に───」

「セイヤ!! ダメ!!」

「───あ?」

 光が、ファーヴニルリサージェンスを包み込む。

 

 

 放たれる光、それは、デストロイガンダムが放った砲撃だった。

 

 

 

 同時に、加速的にGBNの世界が崩れて行く。

 

 

 地面も空も空間も何もない。歪んで、崩れて、何もかもがなくなっていった。

 

 

 

「な、なんだ……? 俺はデストロイを止めた筈だ……」

 Iフィールドでなんとか機体の損害を抑えたセイヤの前に、信じられない光景が映る。

 

 

 まるで時間を早送りで巻き戻しているかのように、機体が再生するデストロイガンダム。

 

 それと同時に、世界は急速に崩れ始めていた。

 

 

 

「収集した膨大なデータが暴走してるんです……。このままだと、私達のデータがこの世界を飲み込む事になる……」

 レイアのその言葉を頷けるように、周囲にデストロイガンダムが増殖していくのが彼等には見える。

 

 膨大なデータと共にGBNを飲み込む勢いで、その数は無限に増え続けようとしていた。

 

 

 

「まずいぞ……これは」

「ど、どうしたら止められるんですの!?」

「ボクを消すしかない……!! 皆、早くボクを!!」

「そんな事出来るかバカ!! 何か考えろ……何か!! くそ!!」

「レイア……」

「イア……」

 渦のように。

 

 

 世界が収縮されていく。

 

 

 

 その世界の端で。

 

 もはや上も下も何もない世界の端で、何かが光った。

 

 

 

「───よく、彼を止めてくれた!!」

 AGE2マグナム。

 

 GBNチャンピオン、クジョウ・キョウヤがその機体と共に現れる。

 

 

「チャンピオン!?」

「……ここから先は、総力戦だ!! GBNの未来と、夢と、命の為に!!!」

 そして、彼に続く───名だたるダイバー達。

 

 

 否。

 この世界を愛する沢山のダイバー達が、この空間に集い始めていた。

 

 

 

「この世界を……救うぞ!!」

 暴走するデストロイガンダム。

 

 

 

 

 

 対するは───GBNの仲間達。

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