ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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ラストミッション

 空間が裂ける。

 

 

 伸ばさなかった手、掴めなかった手。

 

 その手で掻き分けるようにして進んだ道の先で───

 

 

 

「クジョウ……キョウヤ」

「セイヤ、君も大切な物に気が付けた。そうだろう?」

「けれど……もう、遅い」

 GBNの崩壊は始まっていた。

 

 暴走したデストロイガンダムは無限大に増殖し、この世界を覆い尽くそうとしている。

 

 

「いや、まだだ」

「なに……」

「ここには仲間がいる。沢山の仲間が。……GBNに集まった、我々の前に覆せない逆境等ない!!」

 言い切ったキョウヤは、コンソールパネルを開き、GBNの同志達と通信回線を同期させた。

 

 

「カツラギさん」

「───状況は把握した。彼が施したデータを膨張させる為の複製機能が暴走しているという事か。……今増殖しているデストロイガンダム、その全てに集められた戦闘データのコピーが集約されている」

 デストロイガンダムそのものが圧縮データの集合体となり、それをコピーして増殖する事で爆発的にデータを膨張させ、GBNのサーバーを破壊する。

 

 

 当初のセイヤの目的が、思っていた以上の成果を出し始めたという事だ。

 

 

「……GBNの運営」

 レイアを殺した相手。

 

 

 それでも、今は───

 

 

「俺は……どうしたら良い。どうしたら、この世界を救える。レイアが居た───いや、レイアが居る……彼女が大切に思うこの世界を……俺は、どうしたら救えるんだ」

「君には……謝らないといけないな。いや、今はこの世界を共に救ってもらいたい」

 そう言って、モニター越しのカツラギは一度目を閉じる。

 

 

 

「───ダイバーの諸君、聞いて欲しい。現在、GBNでは膨大なデータを持つデストロイガンダムが増殖し始めている。このまま放置すれば、この世界はサーバーがデータの重みに耐えられずに崩壊するだろう。……増殖するデータ、デストロイガンダムを破壊すればデータは消える。しかし、それだけでは足りない!」

 そう言って、カツラギは脳裏にこの世界で生まれた命の事を浮かべた。

 

 

 今も次々と産まれてくる新しい命、ELダイバー。

 

 始まりは確かにビルドダイバーズのサラだったのかもしれない、けれどその前にもきっと彼女達のような存在がいた筈だろう。

 

 まるで生き物の進化のように、NPDだったレイアに命が吹き込まれたように。

 

 現実にある遠い星の命が影響を受けるような、そんな神秘に塗れた命がここにあった。

 

 

 

 レイアも、イアも、その一人だから───

 

 

 

「───我々は、もう誰一人としてこの世界に生まれてくれた命を粗末にする事は許されない。ELダイバー、イアを救う。作戦はある!! 各自、奮闘してほしい!!」

 カツラギがそう言うと同時に、ダイバー達には作戦概要が添付されたデータがメッセージで送られてくる。

 

 

 内容は簡単だ。

 

 

『増殖したデストロイガンダムを全て撃破し、ELダイバーイアの駆るデストロイガンダムをそのコアを残して半壊させる』

 

 

 これが───

 

 

 

「───俺達の、ラストミッション!! ってな!!!」

 機体を持ち上げたロックがGNスナイパーライフルを連射する。

 

 周囲のデストロイガンダムは文字通り無限大で、今も増え続けていた。自分達が眺めているだけにはいかない。

 

 

「……機体の損傷が?」

 何故ロックが動けるのか。不思議に思ったケイだが、自分の機体の損傷が全て回復している事に気がつく。

 

 GBNのミッションスタートの鐘と共に、機体ステータスが全てリセット状態になったのだ。

 だから、これは文字通りGBNからのミッション。この世界を救う為の戦いが始まったのである。

 

 

 

「ケー君!!」

「分かってる。……やろう!! 皆!!」

「無茶苦茶だけど、やるしかないわなぁ」

「こういうのやってみたかったんすよね!! いやもう、全力でやりますとも!!」

 ReBondのメンバーが立ち上がった。

 

 

「ReBondに負けてはられませんわ!! イアちゃんを救うのは私達、メフィストフェレスですわよ!!」

「……何があろうと関係ない。私は、アンジェの敵を狙い撃つ」

「僕は姉さんの援護!」

「僕も姉さんの援護!」

「状況を分析する、まずは手当たり次第やるぞ」

「よし。……フォースメフィストフェレス、行くぞ!!」

 続くメフィストフェレス。

 

 

「アンディ」

「分かってるよ。さーて、僕達も格好良い所見せないとねぇ。ガイアトリニティ各機、フォーメーションE。突っ込むぞ!」

 砂漠の犬。

 

 

「リク!」

「うん。俺達も行こう、サラ!」

「行くよー! フォースビルドダイバーズ!」

「カザミ、援護しろ」

「おいおいまたこんなんかよ!! 良いけどな!!」

「俺達も行こう」

「お姉ちゃんの助けになるなら、私も……やる!」

「セイヤさん……カンダさん……。いや、俺も!!」

 様々なフォースの、個人のダイバーが、戦場を駆け抜ける。

 

 

 

 

「それにしても、敵が多いだろうがよ!!」

「ちっちゃなデストロイとか居るっすもんね! どうしたものか───うわぁ!?」

「ニャムさん!!」

 増殖するデストロイガンダムはバグにより大きさも様々だ。

 

 MSサイズになったデストロイガンダムも多いが、それはそれで機動力を得た分厄介である。

 

 

 そんなデストロイガンダムが放ったビームが、ニャムの機体に掠った。バランスを崩したニャムを様々な大きさのデストロイガンダムが囲む。

 

 

「やば───」

「何してるナオコ……機体をバラせ!!」

 飛び込んでくるそんな声。

 

 訳も分からずに、ニャムは言われた通りにターンX特有の機体分離で攻撃を避けた。

 

 

 その脇で───

 

 

「───兄さん!?」

「───これが、俺の罰なのか。消えろ!!」

 セイヤのファーヴニルリサージェンスが放ったハイメガキャノンが小さなデストロイガンダムを三機焼き払い、近くにいた大型のデストロイガンダムにハイパービームサーベルを叩き付ける。

 

 そのまま変形し、背部の砲身のビーム砲でデストロイガンダムを薙ぎ払うセイヤ。

 

 その圧倒的な強さにケイ達は冷や汗を垂らした。

 

 

「これが……セイヤさんの実力」

 それ程までの力があって、守れないもの。

 

 ケイは拳を強く握る。

 

 

「セイヤさんの気持ち、やっぱり分からなくはないんだよな」

「ケー君……」

「俺も、もし……もし大切な人が居なくなったら。あの時……もしそうなってたら、ガンプラを許さなかったかもしれない」

 あの日。

 

 ユメは死んでいてもおかしくなかった。

 

 

 もしそうなっていたら、ケイもアオトやセイヤと同じようにしていただろう。

 

 

 彼は間違っているのは確かだ。

 

 

 けれど、彼が間違っていなかったのも、確かであって欲しい。

 

 

 

「セイヤ!!」

「カンダ、手伝ってくれ……。俺は、レイアを守りたい……。もう、失いたくないんだ」

「分かってるのか? このバグが収束すれば、レイアはまた消える……。俺が言うのもなんだけど、お前の目的は───」

「思い出したんだよ……いや、思い出させられた」

 ずっと頭にあったのは、連れ去られる時のレイアの辛そうな表情で。

 

 

 けれど、久しぶりに聞いたその声は、見たその顔は、この世界を一緒に楽しんでいた彼女のままだったから。

 

 

「レイアとの時間は……最高に幸せだった。楽しかった。それを……やっと思い出せた。もう、忘れたくないんだ」

「セイヤ……」

「だから、俺は!! 俺が間違ってた事なんて、初めから知ってる。だから……こんな、ガキみたいな……頼む……!! カンダ!! 誰も俺を許さなくて良い。レイアと……最後に……別れの挨拶がしたいだけなんだ……!! 俺の事はどうしてくれても良い。アイツが守って欲しいといった世界を!! 俺は壊したくない!!」

 この世界を壊そうとしたのは自分である。

 

 

 ここに来て、どんな理由であれ、自分のその責任から逃れる事なんて出来ない。

 

 

 けれど、初めから間違っていた。

 

 

 レイアはこの世界を恨んでいなくて、自分達に楽しんで欲しいと願っていた、それなのに、彼女の気持ちを裏切った自分が許せない。

 

 

「頼む……!! カンダ、皆……。この俺の……惨めな願いを───」

「何馬鹿なこと言ってんだ。ねぇ、大将! ケー君! 俺達のやる事なんて決まってるよなぁ!?」

「俺達は初めから!!」

「そのつもりだ!!」

 放たれるGNスナイパーライフルとエクリプス。

 

 取り残しを、ユメのロングレンジフィンファンネルとニャムのフレスベルグが焼いていく。

 

 

「お姉ちゃん!!」

「セイヤさん!! カンダさん!!」

「ヒメ! よーし、一緒に行こう!!」

「うん!!」

「サトウ……。手伝ってくれるのか?」

「当たり前じゃないすか。俺達……仲間ですよ?」

 集まってくる仲間達。

 

 しかし、戦局は良いという訳ではない。

 

 

 無限に増殖するデストロイガンダム。

 

 そして───

 

 

 

「───何が、頼む!! だ!!」

「───GBNを壊そうって言ったのはアンタだろ!! 自分だけ好きな女の子の為に格好つけようだと!? 反吐が出るぜ!!」

 ───アンチレッドの残党。

 

 この世界を壊そうとしていた、セイヤの仲間達が彼等を阻もうとしていた。

 

 

 デストロイガンダムだけでも厄介だが、彼等はデストロイと違って肉入りのダイバーである。

 自動操縦のデストロイとは厄介のベクトルが違った。

 

 

「……そうだよな、お前らの復讐は終わっていない。勿論、それは俺もそうだ。けどな───」

 目を開き、銃口を向けるセイヤ。

 

 ファーヴニルリサージェンスのツインアイが赤く光る。

 

 

「───俺は始めから何も変わっちゃいない。俺の邪魔をする奴は、誰だろうが潰す」

 アンチレッドの赤いトールギスIIIとキマリスヴィダールが、セイヤの機体を挟んだ。

 

 同時に迫る二機。

 しかし、その二機はファーヴニルリサージェンスに近付くにつれて動きが鈍くなる。

 

 

「グリプスの呪縛……!! な、舐めるな!! 俺たちだって、元はGBNで上を目指していたんだ!!」

「それにこっちにはアンタが配ったチートもあるんだよ!! ブレイクシステム、起動!!!」

 GBNへの恨みを持つもの全てがセイヤと同じ気持ちではない。

 

 

 自分の力を認められなかった者、仲間との絆を失った者、色々な感情がぶつかって、合わさって、彼等は大きくなった。

 

 

「……そうだな、俺もだよ」

 ブレイクシステムで強化された二機を両手一つずつで止めると、両膝の隠し腕で掴んだビームサーベルでソレを切り刻むセイヤ。

 

 一瞬。

 同時に攻めてきた他のアンチレッドの機体も、背後のバインダーやムーバブルシールドのライフルで撃ち抜く。

 

 

 

「邪魔をしたいならそうしろよ。俺はずっとそうして来た。……GBNは……自由だからな。そうだろ、レイア……」

 正しさも、間違いも、全部受け止めた。

 

 

 初めから自分の事は許していない。だから、今更何をしても誰かに許されようとは思わない。

 

 

 

 けれど、彼女の気持ちに応えたいから───初めから、セイヤにとってはそれが全てだったから。

 

 

 

 

「───こい、俺の復讐の亡霊共。全部俺が消してやる」

 圧倒する。

 

 

「つ、強過ぎるだろ……。本当にチート使ってないのかよ」

「それでも、守れない者があった……」

 もしものことを考えて、手を強く握った。

 

 

 

「俺達も頑張ろう。……イアを、この世界を守る為に!!」

「おうよ!!」

「うん!!」

 幼馴染みのアオトとも分かり合えて、カルミアやニャムの大切な人とも話せて。

 

 あと一歩。

 

 

 最後の一歩を、踏み間違える訳にはいかない。

 

 

 

「ケイ……ユメ、たけし……アオト───セイヤ、皆……」

 デストロイガンダムの中で、イアとレイアはこの世界が崩れていくのを眺めている事しか出来ない。

 

 

 

 最後の時間が刻一刻と迫る。

 

 

 世界の終わりが始まろうとしていた。

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