ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
地上とも宇宙とも違う空間に、光が差す。
「味方に当てないでくれたまえよ。各自、一斉射撃!! 突撃部隊の道を開ける!!」
ロンメルの指揮する砲撃部隊による攻撃で、針の穴のような抜け道を作る。
進行すれば進行するほどその穴も細くなるが、そこからは突撃部隊に任せるしかない。
それに、戦力を二つに分けた事で防衛そのものも困難だ。無限に増え続けるデストロイガンダムが、砲撃部隊を少しずつ削っていく。
「スズさん……!!」
ヒメの目に映る、MSサイズのデストロイガンダム。
スズのサイコザクレラージェに突撃するソレがビーム砲を構えた刹那───
「───オラァ!!」
ロックのサバーニャHellがソレを叩き切った。
「危ねぇな!! 避けようとしろよ!!」
「……私は狙撃に集中する。仲間の事……お前の事も、信じてるから」
「ま、まぁ? 俺様が居ればなんとでもするが? いやそうじゃなくない!?」
「お兄さん……結構頼もしいですね」
「まぁなぁ!!! いやそうじゃなくない!?」
そんな三人を見ながら、アンジェリカはこんな状態なのに微笑ましく思う。
「……任せた、タケシ、ヒメちゃん」
「ロックな!!」
「お姉ちゃんのライバルに頼まれた……! 頑張る!」
少し前なら、スズがフォースメンバー以外と話す事すら珍しいと思っていたに違いない。
「あのスナイパー凄いな!」
「俺知ってるぜ。NFTとか最近のデカいイベントでめっちゃくちゃ活躍してたサイコザクだよ!!」
「かっけぇなぁ……教えてもらいてぇ!!」
「……そこ、話してないでさっさと射て!!」
「「「は、はい!!」」」
それが、今はこうして沢山の人と話をしているのだ。
「私、やはりGBNが好きですわ」
「そうだな……。だから、俺達は乗り越える」
サーベルでデストロイを切り裂き、頭を蹴り飛ばしながらノワールはアンジェリカと背中を合わせる。
「今は耐える。仲間を信じてな」
「ですわね!!」
この世界の命運を、信頼たる仲間に託して。
☆ ☆ ☆
針の穴は少しずつ小さくなっていた。
「道を開けろ!! ハイメガキャノン……!!」
セイヤのハイメガキャノンがその穴を少しだけ広げる。
まるで細くなっていく洞窟を潜り抜けるように、戦局を見渡しながらアンディはデストロイガンダム本体への道を探った。
「大佐の舞台から離れれば離れる程、援護も届かなくなる……。さーて、ここからは消耗戦だぞ……!!」
既に部隊の三割は撃破されてしまっている。
デストロイガンダム本体に近付くにつれて、分裂体の数も増えていっていた。
「このままでは届かないか……」
それら全てがレイドボスのような耐久を持っている。キョウヤすらも、表情を濁らせていた。
「───いや、届かせる!!」
「ヒロト!?」
ヒロトのコアガンダムmarkⅡが突然部隊を離れる。
それに追従する、彼の仲間。
「───コアチェンジ!!」
「「「───リライジングゴー!!」」」
メイ、カザミ、パルヴィーズの機体と合体したヒロトのコアガンダムはリライジングガンダムとしてガンプラ四つ分のエネルギーを集約した。
機体を黄金に輝かせ、放たれたグランドクラスキャノンが針の穴のようだった包囲網に大きな道を作る。
「行ってくれ……!!」
部隊を離れてしまったヒロト達を囲むデストロイガンダム。彼等はもうここまでだが、四人の力で大きく道が開いた。
「突撃するぞ!! どんな犠牲を払っても、我々は届かせなければならない。全力を尽くせ!!」
アンディの指示で部隊が動く。
「ユッキー、俺達も!」
「うん!」
「私達もいっくよー! お腹ビーム!!」
「少しでも多くの仲間を、前に!!」
「私達が……道を開く!!」
フォースビルドダイバーズ。
「続きなさい!! イアちゃんや彼女の事は、ケイちゃん達に……」
マギー。
「ケイ君、もう少しだ。我々が道を開く! 各機、フォーメーションデルタ!!」
「ケー君、アオト君!! お願い!! イアちゃんを!!」
砂漠の犬、ユメ。
「くそ、ここまでか。……いや、あのガキとチャンピオンだけでも向かわせれば、レイアは救われる。ここは……俺が───」
「いや、行くのは君だ」
ハイメガキャノンで全てのエネルギーを使い果たしてでも、道を開けようとするセイヤを止めたのはキョウヤだった。
「クジョウ……キョウヤ」
「君が、彼女を助けるんだ。ここは我々に任せて欲しい」
言いながら、キョウヤはセイヤの周りにいたデストロイガンダムを撃破していく。
「さぁ、彼女の元へ!!」
「そうです!! ここはジブン達が!!」
「いけ、セイヤ。俺達の分も……イアに───レイアに伝えてくれ」
「あなたが行ってください!! セイヤさん!!」
キョウヤ、ニャム、カルミア、サトウ。
想いが繋がり、道が開いた。
「───イアは!?」
「ケイ、こっち!! あのガンプラが……呼んでる!」
「サラ……!!」
サラの機体が指差す先。
膨張し、本来のそれを遥かに超える巨大さを手に入れたデストロイガンダムがケイ達の前に立ち塞がる。
大量の戦闘データを増幅させ、今にも破裂しそうなその機体は、この世界の今そのものにも見えた。
「今行くぞ……。俺が、道を開ける!! トランザム!!」
ケイのストライクReBondが赤い光を放つ。
エクリプスを乱射し、バタフライバスターとGNソードⅢを振り回しながら開く道。
その針の穴のような道をセイヤのファーヴニルリサージェンスとアオトのイージスブレイクが突き進んだ。
「ケイ!!」
イアの声が届く。
それと同時に、彼女をコアにしたデストロイが放った砲撃がケイの機体を光で飲み込んだ。
「───まだ……だぁ!!」
GNシールドすら貫き、ストライクReBondは半壊してトランザムも終了する。
さらに繰り出される追撃。
「───ReTRANSーAM!!」
二回目の光がストライクReBondを包み込んだ。
交わしてエクリプスを放つ。デストロイの両腕を光が貫いた。
「いけ!! アオト!!」
「分かってる!! 俺が、イアを連れ戻す!!」
「セイヤさん!! お願いします……!!」
傍を見て言う。
セイヤは分からなかった。
彼等が自分を許した理由が。自分を恨まなかった理由が。
だけど、やっと分かったかもしれない。
「お前は初めから───」
「え?」
「……いや、なんでもない。任せろ」
「はい!!」
───初めから、彼等は自分のことを恨んですらなかったのだろう。
ただ、同じゲームを楽しむ仲間が苦しんでいて、それを助けたい。そういう気持ちだったんだ。
ようやく、理解出来た。
「ブレイクビット!!」
「ハイメガキャノン!!」
ハイメガキャノンがデストロイガンダムの両足を焼き切って、ブレイクビットが全身を貫く。
しかし、ゼロ距離まで近付いた二人の目の前に───デストロイの機体からまるでスライムのように湧き出てくる小さなデストロイガンダムが何機も達は下がった。
「邪魔だ!! どけ!! ブレイクファング!! ブレイクドラグーン!!」
放たれるイージスブレイクの武装がそれらを焼く。
「セイヤさん!!」
「レイア……」
コックピットの前に立つセイヤ。その周囲を大小様々なデストロイガンダムの腕が囲んだ。
セイヤは両手両膝両シールドのサーベルでそれを叩き切り、その手を伸ばす。
あの時、伸ばせなかったこの手を。
「レイア!!」
「セイヤ!!」
二人の手が、繋がった。
瞬間。
それを察知したカツラギは、セイヤのファーヴニルリサージェンスからデストロイガンダムにデータを流し込む。
内蔵データを整理し削除するアンチウイルス。
これでデータの暴走増殖は終了し、大量の戦闘データも抹消される筈だ。
レイアの存在と共に。そして、イアだけがそこに残るだろう。
「レイア……ずっと、伝えたい事があったんだ」
「なに? セイヤ……」
「すまなかった……。お前を……助けられなかった」
それだけが伝えられたら。
この地獄のような数年も、意味があったのかもしれない。
彼女が居なくなって、何もかもを失った気持ちになった。そしてそのまま、本当になにもかも失うところまで来てしまった。
そんな自分に、また、彼女が教えてくれる。
教えられてばかりだ。貰ったばかりだ。
それなのに、助けられなかった。
「───違うでしょ、セイヤ」
「……何が、違うんだ。俺は!!」
「私も、沢山もらったよ。何も分からなかった気持ちが……自分が、命だと教えて貰った。……大好きを、教えて貰ったんだよ!」
「レイア……」
生まれた時。
何も覚えていない。何もない。
彼女は始め、ただそこにあるだけの存在だったのだろう。
NPDとして、埋め込まれたデータのまま動く中で、ポッカリと開いた
その穴を埋めてくれたのはセイヤだった。教えてくれたのはセイヤ達だった。
「今度は、私が教えてあげたい。この世界は……楽しいんだって! 私はこの世界が好きだから! あなたと会えた、この世界が好きだから!」
「……俺も、好きだよ。大好きだ」
「うん」
涙が頬を伝う。
その時───
「「セイヤさん!!」」
少年二人の声が、彼を現実に突き戻す。
セイヤのファーヴニルリサージェンスを飲み込もうとする光。
デストロイがその機体そのものからデータをエネルギーとして放出し、全てを飲み込もうとしていた。
機体が吹き飛ぶ。まだデータ消去は済んでいない。そうでなければ、セイヤはここにはいない。
「ダメだ、やっぱりボクごと撃って!! セイヤさん、レイアとのお話はできた! 僕も彼女も、覚悟は出来てる!!」
「「イア!!」」
「ごめん、ケイ……アオト。皆に宜しく!」
目を映る。
この距離でセイヤが攻撃すれば、いかなデストロイガンダムといえど一撃だ。
彼のファーヴニルリサージェンスはそれ程の力がある。
「───ダメだ!!!」
しかし、セイヤがそう叫んだ。
「セイヤ……」
「このガキ達は俺なんだ!! 昔の、GBNを楽しんでいた、俺なんだ!!! ゲームで大切な仲間を失うなんて事、あっちゃいけない。そんな事は!! 俺が一番分かってる!!」
データエネルギーでファーヴニルリサージェンスのムーバブルシールドが吹き飛ぶ。
装甲が割れ、見窄らしい姿になって───それでもセイヤのファーヴニルリサージェンスはその手だけは離さなかった。
「聞こえているだろ運営!! コイツを助けろ!!! 俺がやった事だ。全ての罰は俺が受ける。だから!!! コイツだけは助けろ!!! それが……俺の復讐だ!!!」
掴めなかった手をようやく掴んだのだから。
離さない。離してなるものか。
「残り50%だ!! 耐えてくれ!!」
カツラギのそんな声が響く。
「───当たり前だろ」
「セイヤ!!」
「俺とファーヴニルリサージェンスだぞ。お前達と作り上げた、俺の機体が……こんな事で!! 負ける訳ないだろ!!」
吹き飛ばされそうになっていた機体がスラスターを吹かして持ち直した。
機体が揺れる、ガタガタと、操縦席にエラー警告が鳴り響く。
「知るか……負けるかよ!! 負けてたまるかよ!!」
セイヤとレイアの脳裏に、光が響いた。
───いつかの記憶が過ぎる。
「出来た!! これが、俺の新しい機体だ!!」
「シールドが着いたZZだね!」
「そうだ! けど、それだけじゃないぞ。これまで沢山得た経験から、沢山の機体のパーツを使って作り上げた俺だけの機体だ!」
元々使っていたZZをベースにファーヴニルとしてリメイクしたセイヤの機体。
そこにオーヴェロンやディマーテル等の機体の力を集約した、彼の傑作だった。
「オーヴェロン! セイヤの事ボコボコにした機体だったよね!」
「ボコボコにしたとか言うなよ!」
「セイヤが負けるなんて、私ビックリしちゃった」
「……そうだな。この世界には、強い奴が沢山いるんだ。俺はまだまだ……強くなれる」
「うん。そうだね……。あ、機体の名前はなんでいうの?」
「ん? あぁ……そうだな───」
「───うん、格好良いね」
ファーヴニルリサージェンス。
復活。蘇生。
そんな意味を込めたのはなんでだったか。
何度負けても立ち上がる。弱い自分を知ったから。立ち上がれるように。
───再び、立ち上がれるように。
「また立つのに、遅くなっちまった。だけど!! また立てた!! お前のおかげだ、レイア、ファーヴニルリサージェンス!! 俺を導いてくれ!!! また、あの景色を───」
デストロイを掴んでいた手が吹き飛んだ。
直ぐにもう片方の手でデストロイを掴む。
けれど、エネルギー波は次第に強くなっていった。
「───ファーヴニルリサージェンス!!!!」
機体の目が赤く光る。
まだ、立てるから。まだ───
もう片方の腕も飛んで、セイヤは機体で体当たりした。片足が吹き飛んで、チリになる。
「75%!!」
「セイヤ!!」
「うぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」
機体が砕けていく───その時。
「「セイヤさん!!」」
満身創痍のストライクReBondとイージスブレイクが同時にセイヤの機体を押した。
二人の想いが、ファーヴニルリサージェンスを伝ってデストロイガンダムに繋がる。
「85%!!」
「セイヤ!!」
「兄さん!!」
「ケー君、アオト君!!」
カルミア達が───
「我々も行くぞ!!」
「各機援護しろ!!」
「リク、行って!!」
「ヒロト!!」
「「分かった!!」」
クジョウ・キョウヤ、アンディ、リク、ヒロト───
「95%!!」
「ケイ達の邪魔はさせねぇ!! 狙い……撃つゼぇ!!!」
「……どれだけ遠くても、届かせる」
「お姉ちゃん……!!」
援護しているロック達───
「98%……!! 行けるぞ!!」
「レイア……最後に、言わせてくれ」
その手を伸ばして、セイヤは口を開いた。
「───ありがとう」
「───うん、セイヤ。ありがとう」
光が世界を包み込む。
100%
MISSION COMPLETE
来週の土曜日と日曜日の更新で最終回となります。約三年のお付き合いありがとうございました。
もう少しだけ、彼等彼女等の物語をお楽しみ下さい。