ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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手に入れた未来

 刑務所の面会室。

 

 

 アクリル板越しに、カンダ・カラオは、椅子に座って男に語り掛ける。

 

 

「お前、本当に色々やってたのな。セイヤ」

「……まぁ、な」

 髪を短く切って、囚人服姿でしかし───吹っ切れた表情のキムラ・セイヤが顔を上げた。

 

 

「器物破損に不法侵入、データの云々かんぬんに……これ、ヒメカちゃんの誘拐の事ユメカちゃん達が黙っててくれてなかったら本当にどうなってたか」

 小さな声でカラオがそう言うと、セイヤは「俺はその罪も償いたかった」と少し俯く。

 

 

「あの子達の気持ちを無下にする気か?」

「いや、そういう訳じゃ……。悪いな、カラオ」

「あ?」

「あいつらの事、お前に頼んで」

「おじさん、一応社長だからね。いやー、良いよ? 社長って響きさ」

「似合わないな」

「んだとこの野郎」

 セイヤは様々な罪で書類送検され、今はこの刑務所で過ごしていた。

 

 その罪を償い、表に出た時。

 

 

 あの世界にもう一度行って、彼女の墓に花を添える。それが、今のセイヤの目標だ。

 

 

 

 半年前。

 

 

 GBNで起きたデータの暴走事件。

 

 主犯であるセイヤは様々な罪と、()()()()()()()からの減刑の署名と共に、法律による処罰を受ける事を受け入れる。

 

 

 GBNはあの後、直ぐに復旧する事が出来た。

 

 世界が崩壊しそうになったという事も忘れられたように、世界中の様々なダイバーが今日もあの世界で笑顔を見せている。

 

 

 

「……なぁ、カラオ」

「ん?」

「俺は何を間違えたんだろうな」

「……なんにも、間違えちゃいない。俺達はレイアに伝えたかった、それだけだろ?」

「……あぁ」

 その手は届いた。

 

 

 あの時伸ばせなかった、掴めなかった手を、セイヤは掴んだのだ。

 

 

「んじゃ、また来るぜ」

「あぁ。今度は……GBNの……仲間の話も、もっと話してくれよ。……あの子にもよろしくな」

「おぅ」

 片手を上げて、カルミアはその場を去る。

 

 

 彼は今、トラックの運送会社を設立しその社長をやっていた。勿論運送するのは、ガンプラである。

 

 アオトの家であるプラモ屋のバイトは辞めてしまったが、あの店はお得意さんとして今も付き合いが深いようだ。

 

 

 

 

「───ガンプラをお届けに来ました!!」

「どもー」

「やぁ、カラオ君。サトウさんも。お疲れ様。運転疲れたでしょ? 休憩していくかい?」

「それじゃ! お言葉に甘えて!」

「おいサトウ。お前なぁ」

「いやいやカンダさん! 安全運転には休憩は大切ですよ!!」

「まー、言うようになったなぁ、この坊主」

「あっはっは!」

 サトウは昔のようにトラックの運転をしている。

 

 今や新入社員の教育係にもなっていて、少し生意気になったとカラオは溜息を吐くのだった。

 

 

 

「───あ、父さん。新しいガンプラ来たんだね。……あ、サトウさんにカラオさん。おはようございます」

「よー、アオトッチ。今から学校?」

「はい。……そうだ、今日はどうしますか?」

「おじさんちょっと仕事が忙しいもんで遅れるからデイリークエストだけ先やっといてくんない?」

「俺も今日は店が忙しそうだし、ケイスケ達に頑張ってもらおうかな」

 不敵に笑いながらそう言うアオトに、彼の父は「GBNやってきて良いんだよ?」と声をかける。

 

 しかし、アオトは首を横に振った。

 

 

「GBNも大切だけど、父さんの手伝いもしないと。大丈夫だって、別に今更ケイスケもそんな事で怒らないよ」

 アオトはあの事件の後、ケイスケ達と和解してフォースReBondに所属している。

 

 

 実家にも戻って、こうして家の仕事の手伝いをしている彼の表情は穏やかだった。

 

 

「そっか。ありがとうね、アオト」

「うん。それじゃ、行ってきます」

 失った時間を取り戻すように、彼も今はこうしてガンプラと向き合えている。

 

 

 

「───なんだと!? 今日は滅茶苦茶強いレイドボスに挑戦するって言っただろ!?」

「───良いだろ別に!! 家の手伝いなんだから!!」

 ───そして学校が終わった後。帰り道。

 

 アオトとケイスケは喧嘩をしていた。

 

 

「そ、それはそうだけど……!! いや、それを先に言えよ!! お前は言い方が悪いんだよ言い方が!!」

「普通に今日遅れるって言っただけだろ!!」

「なんで遅れるかを言ってないだろ!! それと言うのが遅いんだよ!! 学校でいうタイミングあっただろ!!」

「なんでお前に俺の用事を態々全部言わないといけないんだよ!! お前は俺の親か!?」

「違うわ!! なんでお前なんかの!!」

 朝からギャーギャーと騒ぐ男二人を他所に、そんな様子をニコニコ見ていたユメカの車椅子を後ろからタケシが押す。

 

 

「あ、タケシ君。おはよう」

「ロックな。……何やってんだこのバカ二人」

「うん。仲良しで良いねぇ」

「バカ三人だったな。お前にはアレが仲良しに見えるのか」

 半目でケイスケとアオトを眺めるタケシ。

 

 

 アオトが帰ってきてからというもの、ずっとこの調子だ。

 

 けれど───そう、ずっとこの調子なのだ。

 

 

 確かに、ユメカの言う通り仲が良いのかもしれない。

 

 

「お前が───」

「お前は───」

「タケシ君はさ……」

「あ?」

 そんな二人から目を逸らして、ユメカは車椅子からタケシを見上げる。

 

 

「今、楽しい?」

「……そうだな。賑やかで……昔みたいで、楽しい」

「えへへ、私も」

「もうなんでも良いわ。とりあえずこのバカ二人の喧嘩止めてくれ」

「リーダーの仕事だよ」

「こういう時だけ!!」

「いやいや、いつも頼りにしてます」

 苦笑いしながら、タケシは二人の間に入って喧嘩を止めた。

 

 そんな光景が、ユメカには眩しく見える。

 

 

 

「お前ら良い加減に───」

「なぁ、ユメカ!! アオトが悪いよな!?」

「おま……ユメカに聞くのはズルだろ!!」

「んー、どっちもどっち!」

「「そんな……!!」」

 笑い合った。

 

 

 ずっと目指していた景色が、ここにあるから。

 

 

 

「───お姉ちゃん、病院寄って行くんでしょ?」

「うん。それじゃケー君、タケシ君、また後でね」

 帰り道の途中。

 

「俺も店を閉めたら行くから!」

「うん。アオト君も、また後で!」

 ヒメカと合流したユメカは、GBNにログインする前に病院に向かう。

 

 

 いつもの定期検診。

 

「───よし、特に異常はないね。このまま見守っていこう」

 異常がないのは良い事だ。

 

 

 何も変わらない日常。

 

 変わってしまった時、夢が見れなくなった時、ずっと変わって欲しいと願った日々もある。

 ずっと一人で泣いていた。外に出すのも怖くて、一人で抱え込んで。

 

 

 でも、今はなんとも思わない。

 

 

 また別の夢を見れたから。それに───

 

 

 

「お姉ちゃん、私ゲームのお勉強してるんだよ」

「え? ゲーム? お医者さんじゃなくて?」

「うん。んー、えーと、お医者さんのゲームっていうのかな。仮想空間での脳から身体への伝達を現実のソレに応用して身体が不自由な人の身体を───」

「あーよく分からない! よく分からないけど凄いって事は分かったよ!? すごいね、ヒメカ」

「うん! だから、今日も帰ったらお姉ちゃんとGBNでお勉強するの。勿論、お姉ちゃんと遊ぶのも大事だけど!」

 車椅子を押しながら、ヒメカは笑顔を漏らす。

 

 

 ヒメカも、アオトと同じく正式にフォースReBondの仲間としてGBNを楽しんでいた。

 

「今日はね! 新しいガンプラ作ったんだよ!! GBNのお友達に手伝ってもらったの!!」

「本当? すごい楽しみ」

 今や姉妹揃ってガンプラに夢中である。

 

 

 

 そして───

 

 

 

「迷います。カラオさんに誘われてしまいましたが……北海道を離れるのは大変ですよ」

 ニャム・ギンガニャム───こと、キムラ・ナオコは悩んでいた。

 

 セイヤの事もあり「大学を卒業したら北海道を出てこっちで暮らさないか? おじさんがセイヤの代わりに面倒見るから」なんて事を言われているのである。

 

 

「ヤザンさんはどう思います?」

 ペットの猫にそう聞くが、ヤザンはいつも通り目つきの悪い目を真っ直ぐに向けてくるだけだ。

 

 

「……そもそも、面倒見るって。それってつまり……一緒に暮らしてくれるって事なんでしょうか。……え、それってつまり……? い、いやいや。あの人に限ってまさか……あは、あはは、あはははは……。いやいや」

 首を大きく横に振って。

 

 

「……ふ、深く考えるのは辞めましょう。そうだ! そろそろGBNの約束の時間でした!! 今日は色々張り切っていきますよ!! そうですとも!! ニャム・ギンガニャム!! 行っきまーすっす!!」

 GBNへと潜り込む。

 

 

 

 

 

 

 ───その世界は変わっていなかった。

 

 

 

 どこまでも広がっている空。宇宙。

 

 0と1だけじゃない、色々な想いが込められた世界そこにある。

 

 

 

 GBN。

 

 

「やっと来たなニャム! 待ちくたびれたぞ!!」

「少し考え事をしてまして。す、すみませんイアちゃん」

「しょうがないな、ニャムは。まぁ……ボクも今さっき()()()()してきた所なんだけどさ」

 そこで彼女は生まれた。

 

 

「アオト氏は?」

「家の手伝い。アオトの奴、一緒にログインしたいから待っててとか! 店の看板娘なんだから一緒に仕事しよって離してくれなくてさ!」

「それはそれは……大変なんですねぇ、微笑ましい」

「ドユコト?」

 今───イアはGBNの外で暮らしている。

 

 

 あの事件の後、GBNとの結び付きも揺らいだ彼女はそのデータを現実の世界へと移す事に成功した。

 

 

 そして今は他のELダイバーのように、現実の世界でガンプラの身体を手に入れて生きている。

 

 ちなみに、彼女の事を好きになったアオトと一緒に暮らしているのだが───特に進展はないようだ。

 微笑ましい、とニャムは笑う。

 

 

「ほら、レイドバトル行くぞ! ケイ! ユメ! ヒメ! タケシ! ニャム!」

 四人を引っ張るように、彼女は笑顔でフォースネストの奥に向かった。

 

 この場所で起きた幽霊騒ぎ。

 

 

 その出会いから、沢山の経験が彼女を形作っていく。

 

 

 

「待て!! 俺を置いてくな!!」

「おじさんも間に合ったー! やっぱレイドバトルの参加報酬は勿体ないわよねぇ。おじさん参戦!」

「もー、遅いっすよ二人共」

「なーんだよ、別に来なくて良いのに」

「まーまー、ケー君。皆で楽しむのが一番でしょ?」

「タケシさん、メンバー登録し直した方が良いですよ」

「ロックね!? ヒメ様までタケシ呼びすんのやめない!?」

 彼等は今日も───

 

 

 

「そんじゃ、行くか!! ロック・リバー!! ガンダムサバーニャHell!! 行くぜ!!」

「ニャム・ギンガニャム!! ガンプラバトルネクサスオンライン!! ニャーンXで行くっすよ!!」

「アオト。イージスブレイクリファイン……行く」

「カルミアだ。レッドウルフ……行くぜ!」

「ヒメ……ヒメカプル! 行きます!」

「ユメ! デルタストライカー! 行きます!」

「ケイ、ストライクReBond。行きます!!」

「イア! モビルドールtypeイア!! 行っくぞー!!」

 ───GBNを楽しんでいる。

 

 

 

 

「……どうかしたのか? イア」

「アオト……。いや、またこうして皆と入れるのが嬉しかってさ」

「今更……。いや、俺もだけど」

 止まってた時間が───やっと動き出したんだ。




次回最終回は翌日0時の更新になります。
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