ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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フォースReBond

 隣の部屋から唸り声が聞こえた。

 心配になったヒメカは、姉であるユメカの部屋に向かって扉をノックをする。

 

 お風呂上がりに部屋に戻ってから「う〜ん、うーん」と唸っていたユメカだが、ヒメカのノックには「ヒメカ? 入っていいよ」と普通に返事が返ってきた。

 

 

「お、お姉ちゃん……大丈夫?」

「え? 何が?」

 心配そうに言葉を漏らすヒメカだが、当のユメカはあっけらかんとした表情で首を傾げている。

 そんなユメカを見てヒメカのも首を傾げた。さっきまでの声は幻聴か何かだったのだろうか。だとしたら心配されるのは自分である。

 

「えーと、お姉ちゃんの部屋から苦しそうな声が聞こえてきたから……」

「あー。あはは、実は悩み事があってね」

 苦笑いしながらそういうユメカに、ヒメカは「お、お姉ちゃんの為なら相談に乗るよ!」と前のめりになった。

 しかしそんなヒメカを見ても、ユメカの表情からは苦笑いが消えない。一体どうしたのかとヒメカは不安げな表情を見せる。

 

 

「いやぁ……実はね───」

 そして語られるユメカの悩みに、ヒメカはただただ大きな溜息を吐くのであった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 時は遡り───数日前。

 

 

「フォース名、ですか?」

「はい。フォースを結成するにあたって、チーム名みたいな物を決めて登録する必要があるんすけど。御三方はもうフォース名は決まってるんすかね?」

 ニャムの加入により着実とミッションをこなし、遂に全員がDランクに到達したその日の事。

 

 ニャムからの質問にユメは頭の上にクエスチョンマークを掲げて、ケイとロックは口を開けて固まってしまう。

 

 

「あ、これ何も考えてなかった奴っすね」

「そ、そ、そ、そんな事はないぜ。もう既に俺様が最高の名前を考えてる」

 明らかに挙動不審なロックだったが、彼が決めているならそのフォース名で登録するだけだ。そんな思いで、ユメとケイは彼が考えたというフォース名を聞くことにする。

 

GALAXYROCK(ギャラクシーロック)銀河で一番格好良い俺」

「「「却下で」」」

 同時に断る三人。ロックは泣いた。

 

 

「なんでだよ!」

「いやなんでそうなったんだよ」

「ちょっと恥ずかしい」

「ダサいっす」

「女子二人辛辣過ぎない?」

 自分の意見を全否定されたロックは「ならお前らはどんな名前が良いんだよ」と半目で問い掛ける。

 ここで決めたフォース名は、これから先アオトやニャムの兄に届かせる物だ。適当に名前を決める訳にもいかない。

 

 

「ジブンはお邪魔させてもらってる身なので、おこがましい意見は出せないっすよ」

「ダサいって直球で言うのはおこがましくないのか!?」

「うーん、でもチーム名って考えるの難しいね」

「そうパパッと決められる物でもないしな。時間も時間だし、今日はログアウトして明日までに皆で考えてくるってのはどうだ?」

 悩む三人の前でケイがそう提案をする。

 

 その場で誰かが良い案を出せる訳でもなく、とりあえず四人はケイの案に乗ってログアウトしたのだった。

 

 

「───それで、そのフォース名を考えてたんだよね」

「へー」

 ユメカが経緯を話すと、ヒメカは頷いてホッと溜め息を吐く。

 姉が何か苦しんでいるのではないかと心配していたので、大事ではなくて安心した。

 しかし大好きな姉の悩みとあらば、放っておくヒメカではない。彼女は部屋には戻らずに、姉の隣に座り込む。

 

 

「ヒメカは何か良い名前思い付かない?」

「うーん……。えーと、レジェンドお姉ちゃん!」

「タケシ君レベル!?」

 ところが結局、姉妹二人で一晩考えたのだがあまり良い名前は思い付かなかった。他の三人はどんな名前を考えてくるだろう。

 

 不安半分期待半分。そうして眠りについて、次の日がやってきた。

 

 

 

 土曜日。

 せっかくの休日なので午前中からプラモ屋に集まった三人は、見慣れないというか懐かしい光景に少し驚く。

 

「俺以外の客がいるなんて……」

「失礼だよケー君」

「俺が通うようになってから結構客来てるぜ。ふ、俺様目当てかもな」

 三人の他に、お客さんが五人ほどプラモデルを見ていたのだ。この店が賑わっている光景はどこか懐かしく感じる。

 

「あはは……GBNのマシンを買ってからお店の評判とプラモ講座の募集もあってね」

 そう説明する店長はなんだが忙しそうだが、表情は柔らかかった。

 

 

「平日はタケシ君しか来ないからマシンも足りてるけれど、今日みたいに三人で集まって来てくれる日は事前に予約してくれた方が安心するかもね」

 そういう店長の視線の先では、さっそく他の客がマシンに座っている。

 座っているのは赤いマフラーの青年だ。その特徴的なマフラーにタケシは見覚えがあった。

 

「……なるほど、これまで隣町でしかログイン出来なかった人がここに集まるって事か」

 タケシは隣町でGBNにログインしていた時、そのマフラーの青年を何度か見かけていたのである。

 納得したような表情で首を縦に振るタケシを見て、ケイスケとユメカは目を見合わせて頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。

 

 

「さて、俺達もログインしようぜ」

 そんな二人を他所にタケシがマシンに座る。続く二人を見送るように店長は「いってらっしゃい」と声をかけた。

 

「楽しんで」

 店の喧騒が遠くなる。次に聞こえてくるのは、GBNの世界の音だ。

 

 

 

 GBN。カフェレセップス。

 

「ん〜、今日もコーヒーが美味い」

 ガンダムSEEDに登場するとあるキャラクターを意識してそう言うニャム。それに気が付いたユメは「あ、レセップスってそういえば砂漠の虎の船の名前だ」と思い出したように呟く。

 

 

「そうっすよそう。いやー、SEEDって懐かしいっすよねぇ」

「ニャムさんて何歳なんすか?」

「女性に年齢を聞くとモテないっすよ、ロック氏」

「───ハッ!?」

 頭を抱えるロック。そんな彼を無視して、昨日一度区切った議題が再び交わされた。

 

 

「御三方は何か良い案は思い浮かびましたか?」

「私は何も……。ごめんなさい」

 素直に謝るユメの隣で、ロックは首を上げて「やはりギャラクシーロックか」と微笑む。

 

「それはない。……とは言っても、俺も何も考えてないんだよな」

 苦笑いするケイは「逆にギャラクシーロックもありか……」と目を細めた。

 

 

「あははー、やっぱり一晩一人で考えただけじゃ難しいっすよね。そうだと思って、ジブンは参考になる資料を見つけて来たっすよ」

 そう言いながらニャムはコンソールパネルを開いて三人に見せる。

 

 そこには、なにやらチーム名のような物が沢山並んでいた。

 

 

「これは?」

「ここにあるのは全部、今現在GBNで活動しているフォースの名前っす。前回のガンプラフォースバトルトーナメントの出場フォースから適当に持ってきただけっすけどね」

「なるほど、他の人のフォースの名前を参考にしようって事か」

 ニャムの考えが読めたケイは感心した声を漏らす。彼の言葉に「そういう事っす」と胸を張るニャムはパネルに並ぶフォース名を一つ指差した。

 

 

「例えばこれ、第七機甲師団。渋いフォース名っす。ロンメル隊とも呼ばれてる、GBNでは有名なフォースっすよ」

「確かに聞いた事あるな」

「格好良いね!」

 聞き覚えのある名前に頷くケイの隣で、ユメは好反応を見せる。タケシは「08小隊とか好きそうだな……」と呟いた。

 

 

「別方向で行くなら……これっすかね。アークエンジェルス。ユメちゃんはSEEDのアークエンジェルは覚えてるっすか? その船の名前をもじったフォース名っすね。可愛らしくていいと思うっすよ」

「あー、スカイグラスパーとかストライクの母艦だ! マリューさんの船! 確かにそうやってもじるのも面白そうだね。ニャムさんはSEED見たの?」

「そりゃ勿論っすよ。良いっすよねSEED! 初代無印ガンダムを感じさせるストーリー展開からの物語の作り方というか、MSのバリエーションやキャラクター同士の設定なんかも───」

「はいストーップ!! 今はフォース名を決める時だっての!! てかいつのまにかお前ら仲良いな!!」

 暴走しそうになったニャムをタケシが止める。ニャムは苦笑いしながら「す、すみません」と謝った。

 

 

「気を取り直して……百鬼、AVALON(アヴァロン)なんかはシンプルで格好良いと思うっすよ」

「んじゃ、LOCKとかシンプルで良くね?」

「どうしても自分の名前をいれたいのか」

「いや、俺が今言ったのは石のROCKじゃなくて、鍵のLOCK。エルオーシーケー、ロック。オーケー?」

「意味は?」

「このチームの鍵は俺様ロックというダブルネーミング」

「さーて次のフォース名は、と」

「ちょっと! 華麗にスルーしないで!!」

 ニャムの対応に泣きそうになるロックだったが、それを見てケイとユメは微笑んで笑い合う。

 

 新しい仲間とこうして話すのが今は面白かった。

 

 

 

「ビルドダイバーズ、虎武龍、アダムの林檎……どれもビシッと決めてんなぁ」

「アダムの林檎はマギーさんのフォースなんだっけ? あの人らしいね」

「俺達らしいフォース名……か」

 ユメの言葉にケイが唸る。

 

 自分達らしさとはなんだろうか。アオトやニャムの兄に届くような、そんな名前が良いと考えていた。

 そこに自分達らしさをどう足せば良いのか分からない。

 

 

「俺達の乗ってる機体にあんまし共通点とかないしなぁ……。ニャムさんなんか毎回違うガンプラ持ってくるし」

 ここ数日、Dランクを目指してニャムとミッションをこなしていたのだが、その全てで彼女は違うガンプラを使っていたのを思い出しながらロックは唸る。

 

「例えば全員ソレスタルビーイングの機体を使ってるとかだったら、ソレスタルなんとかって手もあったろ? ケイとユメは一応ストライクとスカイグラスパーだからアークエンジェル隊みたいに出来るけどな」

「ふーむ、ストライク……ストライク。そういえば、ケイ殿のストライクの名前、ストライクBondでしたよね。どうしてその名前にしたんすか?」

 ニャムはロックの言葉で思い出したようにケイにそう問い掛けた。

 

「え、えーと……。木工用ボンドからですね」

「どこからツッコンで良いのか分からない解答が出て来たっすね……」

 苦笑いしながら答えるケイに釣られて表情を痙攣らせるニャム。どこから木工用ボンドが出て来たのかまるで分からない。

 

 

「まだ私達が小学生だった頃、ケー君とタケシ君とアオト君でよく遊んでたんだけどね。遊んでて壊れたガンプラをよくアオト君がボンドで治してくれてたんだ」

「なるほど、子供の頃ならではっすね。ユメちゃんありがとうっす」

「えへへー」

「んー?」

 仲良く話す二人を見て、ロックは首を横に傾ける。女子同士とはいえ、いつのまにそんなに仲良くなったのか。

 

 

「二人共、夜に通話しながらGガンダムのアニメ見てたんだってさ」

 そんなロックの様子に気が付いて、ケイが小声で説明を入れた。

 

「なるほど……。てかなんでGガンダム」

「ニャムさんと初めて会った時ゴッド乗ってたから」

 彼がユメに聞いた話では、ここ最近の夜はニャムの解説を聞きながらガンダムのアニメを見ることにしているらしい。

 手始めにGガンダムを見始めていると聞いた時は驚いたが、仲間の二人が仲良くなるのは良い事である。

 

 

 

「ところで、Bond───ビーオーエヌディーには接着のボンド以外にも結ぶとか、絆って意味もあるっすよね」

「確かに」

 ユメに続いて男子二人も頷くが、それ以上は言葉が出てこなかった。三人はニャムの言葉を待って、彼女に視線を集める。

 

 

「そんなBondから取って、ReBond(リボンド)なんてフォース名はどうっすか? 意味は再び結ぶ……うーん、再び結ぶ絆って感じで」

「再び結ぶ……」

「絆……」

 ニャムの提案に、ケイとロックは口を開けて固まった。その視線はどこか遠くを見ていて、ニャムは若干の手応えを感じる。

 

「最近ユメちゃんと夜に結構通話してるんすけどね、その時にアオト君という少年の話を聞いたんすよ。ケイ殿や皆の思いをフォースの名前に込めるなら、こんな名前もありかなと思ったんすけど」

「格好良いじゃねーか」

 ロックは鼻息を鳴らしながらそう返事をした。彼の返事にユメは笑顔でニャムとハイタッチをする。

 

 

「ReBondか……」

「ケー君?」

 一人どこか遠くを見ながら言葉を漏らすケイを見て、ユメは首を傾げた。

 ただ、不満そうという訳ではなくて。今はここにいないもう一人の幼馴染みに話しかけているような、そんな表情である。

 

 

「再び……結ぶ、か。良いな」

 ‪──そうだよ。何度壊れたって、何度でも直せば良い‬──

 

 いつかのアオトの言葉を思い出して、ケイは笑った。

 

 

 

「そうだ、何度でも───」

「ふむふむ。それじゃ、フォースの名前は決まりっすね!」

「うん、そうだね。ReBondかぁ、良い名前だと思う!」

「さて、ここからやっと俺様の名がこのGBNに轟いていくんだな!」

 決意と目標を手に、少年達は新しい居場所と共に───

 

 

「───繋ぐんだ」

 ───前に。




ガンプラバトルを……しような!
という訳でフォース名も決まったし、次回からバンバンフォースバトルして行きますよ!もう二十話超えたけど!
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