ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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第三章──リーダーの資格【フォースメフィストフェレス】
フォースバトル


 鼻歌混じりに扉を潜る。

 どうも賑やかになってきた店内に、どこか懐かしさと寂しさの混じった感情がタケシの頭の中で渦を巻いた。

 

 

「繁盛してんなぁ」

「やぁ、タケシ君。今日もかな?」

 そんはタケシに、店長が静かに挨拶をする。彼の周りにはガンプラの作り方を教えて欲しいと小中学生が集まっていた。

 

「忙しそうっすね」

「あはは……そうだね。マシンなら空いてるから、使って良いよ」

「ういっす」

 店長に軽く手を振って挨拶をし、タケシは鞄から黒いガンプラを取り出してマシンにセットする。

 あの頃からずっと使い込んでいるデュナメスHellは、多少の改良もあり絶好調だ。

 

「ん? 今日もか」

 デュナメスから視線を少し逸らすと隣のマシンに座る別の客が視線に入る。最近この店の常連になった青年だ。

 チラッと視界に入るのは自分と同じ黒色のガンプラ。ただ、珍しい事でもないのでタケシは瞳を閉じる。

 

 

 その先はGBNの世界だ。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「フォースバトル?」

 首を傾げるユメに、ロックは「そうだ」と鼻息を漏らす。

 

 

「フォース同士で戦うチーム戦の事っすね。CPUではなく対人戦で、さらにチーム戦。GBNでも一番盛り上がってるバトルのルールっすよ」

「フォースバトルをガンガンやって、フォースランキングをガンガン上げる! それが今の俺達の目標だな」

「フォースランキング?」

 さらに首を傾げるユメ。その首が重力に引かれて倒れそうになる彼女を、ニャムは「おっと」と声を漏らして支えた。

 

「フォースごとにバトルの結果に応じてポイントが入るんすけど、そのポイントのランキングって事ですね。現在一位はAVALONってフォースっす」

「まぁ…… AVALONを抜くのはちょっと現実的じゃないけどな」

 苦笑いするケイに、ロックは「そんな事はない!」と詰め寄る。どこからそんな自信が湧くんだと、ケイは表情を痙攣させた。

 

「俺様がいればどんな奴が相手でも関係ないからな。目指せフォースランキング一位!」

「タケシ君張り切ってるなー」

「ロック!!」

「あははー、一位はともかく。このフォースランキングを上げる事が、GBNで有名になる一番の早道っすね」

 そう言ってからニャムは「まぁ……ジブンみたいに悪目立ちしようと思えばそれはそれで簡単なんすけど」と表情を曇らせながら言葉を漏らす。

 改造ガンプラキラー。今思えば確かに巷で噂になる程にはなっていたが、それは彼らが思う有名になるとは違う筈だ。

 

 

「という訳で、今日は初めてのフォース戦やってみましょうか! 申し込みは済ませておいたので」

「い、いつのまに……」

「い、今から!?」

 驚くケイとユメに、ニャムは「なんでも実践あるのみっすよ」と笑顔を漏らす。

 

 彼女の話によれば、掲示板にバトルのルール等を貼って対戦相手を募集する形で申し込みをしたらしい。

 もう少しで対戦相手との待ち合わせ時間で、場所は今ここだとか。少し急な事でユメは緊張で慌てふためいていた。

 

 

「───フォースReBondの方か?」

 そんな会話をしていると背後から一人の青年に話しかけられる。振り向いたその先にいたのは、短い黒髪と長めの赤いマフラーが特徴的な好青年だ。

 

「あ、はい」

「おう。俺がこのフォースのリーダー、ロック・リバーだ」

 そう言って青年に手を伸ばすロック。ニャムとユメは「いつのまにリーダーになったんだろう」「目立ちたがりなんすね」と内緒話を漏らす。

 

 

「そうか、今日はお手柔らかに頼む。……俺はノワール。フォース、メフィストフェレスのリーダーだ」

 そう言う青年の背後には、彼の仲間と思われるダイバーが三人立っていた。

 

「とりあえず紹介するな。この小さいのはスズ、眼鏡がトウドウ、それでこのこは───」

「アンジェリカですわ。気軽にアンジェとお呼びになって」

 ノワールの紹介から飛び抜けて、金髪縦ロールの少女が胸を張って挨拶をする。

 

「……スズ」

「トウドウだ。宜しく」

 続いて白髪の小さな女の子と、眼鏡の青年が自己紹介をした。

 

 

「ケイだ。宜しく」

「ゆ、ユメってい、ぃ、ぃいい、いいます!」

「ニャムっす。今日はお手柔らかに」

 続いてケイ達も挨拶をする。そんなニャムの顔を見て、眼鏡の青年───トウドウが目を細めた。

 

「改造ガンプラキラー」

「ギクッ」

 その名を聞いて表情を痙攣らせるニャム。しかしトウドウは爽やかな笑みで彼女の目を真っ直ぐに見る。

 

 

「最近話を聞かないと思っていたが、そう言うことか」

「トウドウ、いったいどういう事かしら? 私にも分かるように説明をしなさい!」

 アンジェリカの言葉に面倒臭そうな表情を見せるトウドウ。それを見てノワールは苦笑いを見せ、ニャムはホッと溜め息を吐いた。

 

 

「ルールは掲示板にあった通り、フィールドは先決め重力下ランダム。殲滅戦で良いか?」

「おうよ」

 ロックの返事を聞いて、ノワールはコンソールパネルを開く。バトルフィールドを決めるページに移り、ロックと確認しながらフィールドを決めた。

 

 

 

「市街地か」

 ランダムで選ばれたステージは市街地。フィールドの高低差は少ないが建物の多いステージである。

 各フォースの出撃位置は東西南北四種類。これはコイントスで勝利した側から好きな位置を決めるルールだ。

 

「よし、勝った」

 コイントスに勝利したロックは西側の出撃位置を選択する。これはニャムと話し合った結果だが、出撃位置の近くに高台がある事が決め手となった。

 

 

「悪いスズ、西側は取られた」

「……無問題」

「ルールは決まりましたわね! 作戦会議よ!」

「それでは、作戦会議時間は十分としてバトルを始めよう」

 フォースメフィストフェレスの四人は東側を選択して、各自作戦会議をする時間に入る。

 

 十分後には自動的にフィールドに転送されて、バトルスタートだ。

 

 

 

「き、緊張するな……」

「別に負けてもペナルティがある訳じゃないっすから。気楽にやりましょう」

「いや、俺は勝つぞ。初フォースバトル、必ず勝ち取ってみせるぜ」

「頼もしいな」

「そうっすね」

 やる気満々のロックを見てケイとニャムは少し感心する。そんな三人を他所に、ユメは一人だけ何か考え事をしていた。

 

 

「やっぱりユメも緊張してるか?」

 挨拶をする時にとても声が震えていたのを思い出して、ケイは笑いながらユメに声を掛ける。

 

「……あ、いや。違うの。さっき相手の人達が去り際に話してた事思い出して」

 しかし、ユメはそう言いながらコンソールパネルを開いてバトルフィールドのマップを確認した。

 

 

「どうかしたんすか?」

「さっき、リーダーの人が小さな子に、西側は取られたって謝ってたの」

「確かにそうっすね。ジブン達はロック殿がスナイパーっすから、西側を取って近くの高台に陣取るのが良いかと思───あぁ、なるほど」

 言っている途中で何かに気がついたのか、ニャムは目を見開いて手を叩く。

 

「あ? どうかしたのか?」

「タケシ君、気をつけて欲しい。多分ね、相手のチームにもスナイパーがいると思うんだ」

 ユメのその言葉にロックとケイは驚いた。確かによく考えれば、さっきの会話からもその可能性は高い。

 しかしその事に一番早く気が付いたのがユメだった事に二人は少し恥ずかしくなる。

 

 

「よく気が付いたな」

「えへへー、たまたまだよ」

「……なるほどな。となれば、俺達は有利を取ったって訳だ」

 敵スナイパーの動きを制限できた事、そしてなにより敵にスナイパーがいるという情報を得た事は大きい。

 

 

「狙撃で有利も取ったし、このロック・リバーに任せな」

 全力で良い声を出してそんな言葉を漏らすロック。三人は彼の狙撃技術を思い出して、やや不安気味にだが作戦を立てる事にした。

 

 

「とりあえず、相手のスナイパーの居場所を───」

 

 

 

 十分後。

 ストライクBond、デュナメスHell、スカイグラスパー、そしてグフカスタムに搭乗した四人が出撃地点から発進する。

 

「作戦通り、ロック氏は高台へ。ケイ殿はダブルオーストライカーを装備してロック氏の援護、ユメちゃんはエクリプスストライカーを装備して出撃して下さいっす!」

 市街地戦闘ではクロスボーンストライクの機動力は活かしにくい。近距離戦闘に重きを置いて、エクリプスストライカーはスカイグラスパーに装備させた。こちらも換装する事はないだろう。

 

「ニャムさんの機体は……えーと、ジン───じゃなくて、ザク?」

「この機体はグフっすね。正式にはグフカスタムっす」

 発進したのは淡い青色の機体だった。角の生えたザクにも見えるが、ザクとは違うのである。ザクとは。

 

 

 ガトリングが装備された盾と大型の実体剣───ヒートサーベルを手に地面を蹴るグフカスタム。今回のニャムの機体に、ケイとロックは満足げに頷いた。

 

 

「市街地戦でグフカスタムは心強いな」

「ニャムさんは俺の狙撃と挟撃の為に位置取り頼むぜぇ!」

 GNスナイパーライフルを構え、ロックは舌で唇を舐めながらそう言う。

 本人は狙撃の名手のつもりだ。銃口の先が日の光に反射して光った。

 

 

 

「───敵の狙撃手……見つけた」

 一方市街地内。黒いMSが一機、横に向けたモノアイを建物の影から西側に向けている。

 

「流石スズですわ。それでは、こちらも作戦通りに参りましょう! ノワール!」

「了解だ。スズ、他の敵の位置は?」

「……戦闘機が一機空を飛んでる。多分支援機」

「トウドウ、作戦は?」

「俺が強襲して敵を釣る。スズ、スナイパーの観測を頼む」

 フォースメフィストフェレスのメンバーは通信で作戦を立て、トウドウがそういうとスズはこくりと小さく頷いた。

 

 彼女の機体が少しだけ建物から出る。黒に混じるのはモノアイの色のみで、建物の影に紛れ遠くからその機体を識別するのは難しい。

 そのMSの両手には、大型のビームスナイパーライフルが構えられていた。

 

 

「行くぞ」

 そして、近くに隠れていたトウドウの機体が地面を蹴って市街地を飛び出す。そのまま空を飛ぶその姿は───

 

 

 

「───アラーム、敵。……戦闘機!?」

 ユメの視界にトウドウの機体が映った。その姿は、スカイグラスパーよりも一回り大きな戦闘機である。

 

「後ろを取られた……でも!!」

「スカイグラスパー、ストライカーパックを載せているな!!」

 トウドウの機体に装備されたライフルがユメのスカイグラスパーを捉える───その前に、スカイグラスパーに装備されたエクリプスストライカーが動いた。

 

 ストライクの肩に装備されるブラスターカノンが稼働して背後を向く。間髪入れずに放たれたビームはトウドウの機体を掠ってバランスを崩させた。

 

 

「───やる! ……っ、どこだ!?」

「後ろは取ったよ!」

 ユメはその一瞬の隙に、機体を宙返りさせてトウドウの後ろを取る。ブラスターカノンが反転し、後はトリガーを引けば倒せる距離まで追い詰めた。

 

 

「そこだぁ!」

「ユメちゃんストップ!! その機体から離れて!!」

 しかし、突然のニャムの通信でユメは操縦桿を勢いよく引き上げる。

 

 すると同時に。トウドウの機体が可変し始めた。彼の機体は戦闘機の姿からMSの姿へと変貌する。

 

 

「MSに変身───いや、変形した!? きゃぁっ」

「引いて躱すか……やるな」

 手に持ったライフルをユメのスカイグラスパーに向けるトウドウ。距離を取ったおかげでなんとか交わせたが、あのまま突撃していたら撃墜されていたかもしれない。

 

 

「AGEのクランシェカスタムっすね! 中々見事な変形機構のお手前で!!」

「新手、改造ガンプラキラーか……っ!!」

 追撃しようとライフルを構えるトウドウの背後から、ニャムのグフカスタムが建物を蹴って跳び上がってきた。

 

 ヒートサーベルと、トウドウの機体からは膝に装備されたビームサーベルが重なり合って火花が散る。

 

 

「クランシェアンドレア、トウドウだ」

「機動戦士ガンダム第08MS小隊より、グフカスタム。ニャム・ギンガニャムがお相手するっす!!」

 二人の機体はそのまま地面に着地して構えた。お互いに間合いを図りどちらも動かずに止まっているが、一触即発の雰囲気である。

 

 

「ユメちゃんは作戦通りに! このクランシェはジブンが相手をするっす!」

「一番釣りたい獲物が釣れた。ノワール、プランAで行く」

 お互いに通信を送り、二人は目の前の敵を睨んだ。そして誰かが合図したかのように、二人は同時に飛び出し、刃が交差する。

 

 

 

「ニャムさん……。うん、私は作戦通りにしなきゃ……っ!」

 そんな光景を横目に、ユメは一度深呼吸して作戦内容を思い返した。

 

 

 

「ユメちゃんはフィールドの北と南を行き来しながら東へ少しずつ進んで下さいっす。東にいる敵のスナイパーの場所を確認する事が大切っすけど、真っ直ぐ進んでたら的っすからね」

 作戦会議でのニャムの言葉を頭の中で繰り返す。敵のスナイパーを探して、ケイやロックを動きやすくする大切な仕事だ。

 

「こうしてジグザグに動いていれば攻撃されても当たらな───んっ」

 そう言っている最中に、彼女の頭の中にまるで電流が走ったかのような感覚が過ぎる。

 寒気のような、何かに足を掴まれたような、そんな感覚。ユメは咄嗟に、何か意味があるわけでもなく操縦桿を捻った。

 

 

「───うわぁ!?」

 同時に閃光が走り、機体の左翼が爆散する。ビームの直撃、高速で空を飛ぶスカイグラスパーを捉えられた。

 

 

「狙撃された!? 動いてたのに。……でも、今のは───」

 バランスと推力を失い落下するスカイグラスパー。モニターはエラー表示で真っ赤になっている。

 

 

「ユメ!」

「ごめんねケー君、撃たれちゃった……。やられちゃってはないけど、もう飛べないかも! ストライカーも半分壊れちゃったし……」

 機体の高度が落ちていくのを見ながらユメはケイにそう通信を返した。このままでは良くて不時着、悪ければ墜落して撃墜である。

 

 

「ユメちゃん、不時着して撃破されない事を目標にして欲しいっす。殲滅戦は生き残ってる事が大切っすから。それに、残ってるストライカーを使う事があるかもしれないので」

「わ、分かった……けど───ううん。頑張る!」

 揺れる機体の操縦桿を必死に握った。嫌な汗が垂れる。

 

 

「さっきのは……。いや、今は操縦!」

 空を飛ぶのが夢だった。でも今は、もっと皆と───

 

 

 どうしてか、操縦桿を握る手が緩くなる。そのまま何かに導かれるように、彼女は無事に不時着した。




戦況
フォースReBond
ケイ     ストライクBond  ○
ロック    デュナメスHell  ○
ニャム    グフカスタム     ○クランシェアンドレアと交戦中
ユメ     スカイグラスパー   △狙撃により大破。不時着。飛行不可能

フォースメフィストフェレス
ノワール   ???        ○
アンジェリカ ???        ○
スズ     ???        ○
トウドウ   クランシェアンドレア ○グフカスタムと交戦中


今回からフォース戦の時は後書きに戦況を書いておきます。わかりやすくする為。

やっとこさ初めてのフォース戦です。チーム戦、どう書いていけばいいか悩みながら書いてあります。読了ありがとうございました!
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