ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
前に立って歩くのは、いつも彼だった。
周りの事にあまり興味がない二人を外に連れ出すのも、何か新しい事を始めるのも。
「ガンプラバトル?」
「おう、お前らガンプラ好きだろ。だからよ!」
彼が前を歩いてくれたから、そんな彼に着いて前に進める。
そうだ、今だって───
☆ ☆ ☆
火花と爆炎が舞った。
迅雷ブリッツのブレードが、機体の右腕を斬り飛ばす。その機体は───
「……何?」
「タケシ、大丈夫か?」
───ケイのストライクBondだった。
「作戦……いや、違う」
一度距離を取るノワール。そんな彼の前では、ロックのデュナメスHellを庇うように右腕を斬り飛ばされたストライクBondが立っている。
「ケイ……」
「ったく、いつもいつも勝手に突っ走りやがって」
苦笑いしながらそう言うケイだが、特に困った様子でもなく慣れた様子だ。いつものように笑いながら、ロックのデュナメスHellを残っている左腕で立ち上がらせる。
「仲間に迷惑を掛けている事が分かったか?」
それを見てノワールは冷たく言い放った。唇を噛むロックだが、彼がその口を開く前にケイが口を開く。
「迷惑なんて思ってない」
ハッキリとそう言うケイの言葉に、ノワールは少し驚いて固まった。
どう考えてもあのデュナメスの突撃は、リーダーにあるまじき身勝手な行動である。
それなのに目の前の少年はなんの迷いもなく即答で答えたのだ。驚かない方が難しい。
「タケシは───ロックはリーダーだからな。いつも俺達を引っ張ってくれる……。アオトの事も、フォースの事も……だから俺はコイツを信じる!」
ストライクBondは片手で剣を構える。警戒して構えるノワールだが、レーダーに反応があって直ぐに視線をズラした。
「───それに、あながちさっきの突進は悪い事ばかりじゃない。なぁ、ニャムさん!!」
「呼ばれて出て来てニャム・ギンガニャム! 華麗に参戦っすよ!!」
「トウドウを倒した奴が戻ってきたのか……っ!」
フォースメフィストフェレスの三人の背後から、ニャムのグフカスタムが現れる。
これで市街地内で三対三の状況が作れた。狙撃手を囲めた事は、深追いして突撃したロックの手柄でもある。
「こっちは白兵戦特化三機体、そっちはスナイパーが一機。この状態を作れたのはタケシのおかげだ!」
「ロックな!?」
いつもの調子でツッコミを入れるロックは、ビームサイズを一度しまいビームサーベルを二本構えた。
「なるほど、元々あのデュナメスはスナイパーじゃなかったという事……。ふむふむ、中々面白いですわ!」
「……それでも、アンジェの作ってくれたサイコザクの方が強い」
スズはサブアームを動かし、バックパックの武器にそれを伸ばす。
「待てスズ。……アンジェ、グフを突破してスズと後退だ。ストライクとデュナメスは俺が相手をする」
しかし、ノワールは戦おうとするスズとアンジェを制してそう言った。
「……確かにしてやられたが、ここで戦いに乗るのは不利だ」
「それが分かっていて逃すと思ってるっすか!」
言いながら、ニャムは相手の作戦が固まる前に先手を打つ。グフカスタムの盾に装備されたガトリングが、サイコザクレラージェに向けて火を吹いた。
「そうなると思いましたわ!」
サイコザクの前に出ながら、盾を構えてアンジェリカのアストレイゴールドフレームオルニアスがガトリングを防ぐ。
「スズ!」
「……道を開けろ」
弾丸を弾くアストレイの背後で、サイコザクが四つのサブアームを展開。スラスターに装備されていたザクバズーカとザクマシンガンを二つずつ構えて引き金を引いた。
「流石にそれは無理っす!」
冷や汗を流しながらニャムは建物の影に飛び込む。そうして空いた道に、アンジェリカとスズは全速力で駆け出した。
サイコザクの巨大なスラスターが火を吐く。余波で巻き上げられた岩盤が目眩しになり、ニャムは二人をすぐに追うことが出来なかった。
「す、すみません。逃げられたっす。直ぐに追撃に入ります! そのブリッツはお二人に任せても宜しいですか?」
「俺達は大丈夫だけど、ニャムさんは?」
「任せて下さいっす! この雪辱、このグフカスタムで汚名挽回するっすよ!」
「ジェリドかよ不安になるんだけど」
ロックが若干小さくツッコミを入れるが、彼女も分かって言っている筈なので問題はないだろう。
逃げた二機を追い掛けるグフカスタムを見送って、二人は残ったブリッツを正面に構えた。
「グフを追い掛けなくて良いのか? 言っとくがあのグフってかニャムさんは超強いぜ。……マジで」
「あの二人は負けない。……それよりも、今ここでお前達を止めるのが俺の任務だ」
対するノワールのブリッツは、彼の言葉と同時にその姿を景色と同化させていく。
「大口叩いて逃げる気かぁ!?」
「タケシ違うぞ、気を付けろ……っ!」
赤いマフラーが市街地で舞った。
「重力下であの巨大なスラスターの推力を考えると、推進力の限界値と歩行速度を考えるに───ビンゴ」
一方でニャムは、戦線を離脱したサイコザクを目視で補足する。サイコザクは北側に迂回して、東に向けて歩いていた。
「ロック氏の離れた高台を取る気っすね。……そうはさせまいが、さーてどう攻めるか。あと一機の姿が見えないのは不安要素っすけど」
ニャムは唇を舐めながらモニターの表示に目を移す。
「ミノフスキー粒子濃度は濃いっすね、レーダーでは見付かってないでしょう。風も……向かい風。奇襲するにはもってこい、と」
口角を吊り上げて、ニャムは勢いよく操縦桿を倒した。スラスターを吹かせ、建物を何軒も飛び越えて一気に距離を縮める。
「貰ったっすよぉ!」
「……来た」
狙いはスナイパー、サイコザクレラージェ。ヒートサーベルが火花を散らした───が、しかしサーベルは見えない壁に防がれていた。
「なんですとぉ!?」
「───ミラージュコロイドですわ!!」
見えない壁───サイコザクとグフカスタムの間にミラージュコロイドを展開して隠れていたゴールドフレームが姿を表す。
「奇襲がバレていた!?」
「そっちが追ってくるのはお見通しですわ! トウドウに勝った人ですもの、そう簡単に逃げ切れるとも思っていません事よ!」
シールドをなぎ払い、グフカスタムを振り払うアンジェリカ。
ガトリングを構えるニャムだが、ゴールドフレームのシールドに装備されたライフルの銃口を向けられて直ぐに建物の影に隠れた。
「奇襲失敗……これは二機撃墜は難しいかもしれないっすね。ロック氏、合流出来そうにありません。ジブンは死に場所を見付けたっす。……なんちって」
冷や汗を流しながらも建物の影から機体の頭だけを出して、モノアイをゴールドフレームに向けるニャム。
アンジェリカのゴールドフレームオルニアスは、サイコザクレラージェを背中にシールドを建物の影に向けている。
彼女のゴールドフレームに装備されているシールドは、攻盾システムトリケロス。
アンチビームシールドの裏側にビームライフルやビームサーベル、貫徹弾───ランサーダートを装備した複合装備だ。
それを左右対称に二つ装備。四枚の羽のようなマガノイクタチも相まって、重々しい雰囲気が漂っている。それはまるで、楽園を追い出された堕天使のよう。
「……チームメフィストフェレス。恐ろしいっすね」
「さて、奇襲も失敗したあなたに勝ち目はありませんわ! そんな所に隠れてないで、泣いて喚いて逃げるが良いのですの!」
スピーカーでニャムに聞こえるように話すアンジェリカ。しかしニャムは口角を吊り上げて笑っていた。
「───ひー、ふー、みー、と。避けるべきは三つ。……確実に一機!」
一度目を閉じて深呼吸してから、ニャムは建物の影を飛び出してガトリングを構える。
これにはアンジェリカも驚いたが、直ぐにビームライフルとランサーダートを斉射。グフカスタムのガトリングの弾はビームと貫徹弾に全て掻き消された。
そのビームはシールドで弾くが、貫徹弾がグフカスタムの頭の半分と脇腹の半分を吹き飛ばす。
しかし尚も直進するグフカスタムに、流石にアンジェリカは怖気付いた。
「突貫してくる気ですの!?」
「フハハハハ! 怯えろぉ! 竦めぇ!!」
直ぐにマガノイクタチからアンカーを射出するが、ニャムはアンカーが当たったガトリングをパージして突貫する。
「止まらないと……そういうのは、自棄と言うんですわよ!!」
トリケロスからサーベルを展開し待ち構えるアンジェリカだが、その時点でニャムの算段は決まっていた。
「一つ!!」
ヒートサーベルを構えるグフカスタム。
原作。機動戦士ガンダム第08MS小隊にこのようなシーンがある。
グフカスタムに乗るパイロット、ノリスは自軍撤退の障害となるガンタンクの撃破の為に自らの命を掛けてこれを成した。
自機と交戦中の相手に撃たれる覚悟で任務を全うした彼の漢気を称賛する声が多い事は言うまでもない。
「この……っ!!」
トリケロスのビームサーベルが振られた次の瞬間、ニャムはサーベルではなく腕部に装備されたマシンガンをゴールドフレームの背後にいるサイコザクに向ける。
「勝ったっす!」
───しかし。
「───させませんわ」
アンジェリカは突然トリケロスのビームサーベルを収めて、背中のマガノイクタチを展開した。
「……なっ!?」
グフカスタムはサーベルを受ける事なく、ゴールドフレームに捕まる形でその動きを止める。
ニャムの予定ではそのまま機体を真っ二つにされてでも、後方のサイコザクを撃破する予定だった。
「し、しかし……この状態でマガノイクタチを使おうとも自分が生き残らなければ意味ないっすよ!」
直ぐに思考を切り替える。自分が撃破されなかったのなら、このままゴールドフレームを落としてしまえば良い。
マガノイクタチは、その武装で挟んだ機体を強制的に放電させエネルギーを奪う武装だ。
ならばその前に落とす。そう考えて、ニャムはグフカスタムの腕部マシンガンをゴールドフレームのコックピットに向けた。
「そこです!」
腕部マシンガンが火を吹く。ゴールドフレームの胸部は蜂の巣になった。
次はサイコザクだ───そう思って半壊したグフのモノアイに、ライフルを構えたサイコザクが映る。
「さぁ、スズ……やっておしまいですわ!」
「───狙い撃つ」
次の瞬間、一筋の光がゴールドフレームとグフカスタムを貫いた。
「……み、味方ごと」
「……初めから私達の目的は貴方ですのよ、改造ガンプラキラー」
「……ほぅ、なるほ───」
誘爆。
アストレイゴールドフレームオルニアス、グフカスタム撃破。
二機の爆発に市街地で火が上がる。爆煙の中でただ一つ、赤いモノアイだけが光っていた。
「ニャムさんがやられたぁ!?」
「あのニャムさんが……」
一方で迅雷ブリッツと交戦中のロックとケイは、ニャムからの通信が途絶した事に驚く。
敵も一機倒したようだが、彼女から送られてきた最後の通信にはスナイパーを取り逃がしたという連絡があった。
「これで二対二だな」
「今は一対二だけどな!!」
ブリッツに斬りかかるデュナメスだが、即座にミラージュコロイドを展開されて攻撃は空振りに終わる。
直ぐにその背後に現れ、ライフルを放つブリッツ。なんとかギリギリの所で交わすが、ブリッツの機動力に翻弄されていた。
「なんでそんなに早いんだよ!! 本当は二機居るとかじゃないだろうな!?」
「ブリッツの土踏まずに車輪が付いてる。……アレとミラージュコロイドで消えた所から直ぐに別の場所に移動して攻撃してきてるんだ」
そう言ってから、ケイは「それに」と言葉を付け足す。
「動力源は本来のブリッツみたいなバッテリーじゃなくて核エンジンだと思う。それと、ミラージュコロイド中もフェイズシフト装甲が発動してる」
「チートかよ」
本来ブリッツのミラージュコロイドはエネルギーの使用量も大きく、長時間の発動は不可能だ。フェイズシフト装甲との併用も本来は出来ない。
ここまで数分間戦闘を行ったが、ミラージュコロイド中にストライクのイーゲルシュテルンも弾かれている。
「でも、お前なら勝てるよな」
そこまで言ってから、ケイは含みのある言い方でそう言った。
「ケイスケ……」
「俺はスナイパーを倒してくる。ここで二人で戦ってたら、狙い撃たれて終わりだからな」
そう言ってケイのストライクBondは踵を返す。
「頼むぜ、タケシ」
「ロックだ」
心の中でだけ拳を交わして、デュナメスを背にストライクはスラスターを吹かせた。
「ストライクを止めないのには驚いたぜ」
「ここで一対一になる分には俺もスズも問題ないからな」
「信用してんだな」
「リーダーだからな。それに、スズが中破したストライクに負ける訳がない」
「ケイはこういう時、何をしてでも勝ってくる奴だ」
「……信用しているんだな」
「だってよ、俺もリーダーだぜ? 確かにあのスナイパーはやばいが」
「そうか」
「「だがな───」」
デュナメスとブリッツが構える。
「見つけたぞ、スナイパー!」
「……一人で来るなんて、あのデュナメスは見捨てられたか」
「俺はアイツを信じて、君を止めるだけだ。そうしたらタケシは勝ってくれる」
「……私が君を倒す。そして、デュナメスはノワールが倒す」
「「だって───」」
ストライクとサイコザクが構える。
「「「「───アイツはもっと強い」」」」
銃火が弾けた。
戦況
フォースReBond
ケイ ストライクBond △デュナメスHellを庇って中破右腕損壊、サイコザクレラージェと交戦中
ロック デュナメスHell ○迅雷ブリッツ、と交戦中
ニャム グフカスタム ×ゴールドフレームオルニアス、サイコザクレラージェとの戦闘で撃破
ユメ スカイグラスパー △狙撃により大破。不時着。飛行不可能
フォースメフィストフェレス
ノワール 迅雷ブリッツ ○デュナメスHellと交戦中
アンジェリカ ゴールドフレームオルニアス ×グフカスタムのの戦闘で撃破
スズ サイコザクレラージェ ○ストライクBondと交戦中
東堂 クランシェアンドレア ×グフカスタムとの戦闘で撃破
フォース戦も盛り上がってきました。こうして仲間に託す想いって格好良いですよね。次回からのそれぞれの戦いにもご期待下さい。