ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
火花が散る。
ストライクBondの実剣と、サイコザクレラージェのヒートホークが何度も重なり合った。
「どうなってんだこの動きは……っ!」
ただ、そのサイコザクのヒートホークを持つマニピュレーターはスラスター付属のサブアームである。
サイコザクは背中を向いたまま、背後からの攻撃をサブアームの持つヒートホークだけで迎撃していた。
巨大なスラスターもあり図体の大きなサイコザクだが、最低限の動きだけで攻撃をいなされる。
「……緩い」
「くそ!」
それに、サブアーム一つで迎撃しながら他の三つのサブアームで違う武器を向けてくるのだ。
一体手元でどういう操縦をしたらそんな動きが出来るのか。ケイは目を細めて一度離脱する。
「……どういう操縦技術だ。近付いても全部追い払われる」
建物の影に隠れて一度息を整えながら、ケイはサイコザクの動きに困惑していた。
「……アンジェの作ってくれたサイコザクは、私の───」
三つのサブアームでザクマシンガン、ザクバズーカ、ビームバズーカを構える。其々が的確に向けられて、市街地は火の海と化した。
☆ ☆ ☆
大きなモニターに戦局が映る。
その部屋にはバトルで機体が撃破されて脱落したトウドウ、アンジェリカ、ニャムが居た。
「フォースバトル、落とされてもここで観戦してるだけでも面白いっすねぇ」
「このゲームの良い所ですわね」
さっきまでお互いを襲っていた彼女達だが、自分の役割が終われば同じゲームをプレイする仲間である。
簡単に打ち解けて、モニターのバトルに没頭していた。
「戦局をどう見る?」
「数的にはこっちが有利っすけど、スカイグラスパーとストライクの損傷的に厳しいような気もしてるっす」
トウドウの問い掛けにニャムはそう答える。
「あら、まるでまだ勝ち目があると言いたげじゃない」
そしてニャムの答えに、アンジェリカは含み笑いを乗せながら口出しをした。
「ケイ殿はアレでしぶといっすよ。……しかし、あのサイコザクは凄いっすね。いくらGBNのMS操作が簡略化されているとはいえ、腕とサブアーム四本を同時に操るのは並大抵の技術ではないっすよ」
「スズは特別ですのよ」
小さな声でそう返事をするアンジェリカ。さっきまでの態度と違うので、ニャムは首を横に傾ける。
「改造ガンプラキラー」
「ニャムっす」
「……ニャム。リユース・
「サンダーボルトのサイコザク、あの機体の元になったMSが運用しているシステムっすよね」
トウドウの問い掛けに得意げに答えるニャム。自慢ではないが、彼女はガンダム作品の知識だけは豊富だと自負していた。
「確かにモビルファイターのモビルトレースシステムや、阿頼耶識システム、サイコミュなんかはGBNではそれっぽく操作する事が出来る様になってるっすけども」
ガンダムの世界にはMSをボタンやレバーなどで操作する以外にも、自分の動きに合わせたり思った通りに機体が動くという操作方法もある。
リユース・P・デバイスは機動戦士ガンダムサンダーボルトに登場する同様のシステムで、パイロットの脳から発せられる信号を電気的に駆動系に伝達する事によりMSを自分の手足のように操縦する事が可能なシステムだ。
ガンダムUCに登場するインテンション・オートマチック・システムよりは、鉄血のオルフェンズの阿頼耶識システムに近いだろう。
「それでも、手足はともかくサブアームをあそこまで正確に……的確に操縦するのは至難の技っすよ。なにせ自分の身体には無いですからね、サブアームなんて」
しかもそれが四本だ。
「オルフェンズの三日月・オーガスだって、戦闘中ギリギリの所で攻撃を避けるシーンでマッキーに自分の身体には無い部分を突かれて被弾してますし。自分の身体と違う物を動かすって大変だと思うんすよね」
「自分の身体と違う物か……」
ニャムの言葉を聞いて、トウドウは少し表情を暗くする。自分が何か変な事を言ってしまったのかと、ニャムは「あ、あのー?」と首を傾げた。
「そもそもスズに取っては、MSの手足すら自分の身体と違う物ですわ」
「それってどういう───まさか!?」
言いかけて、ある可能性に気が付いたニャムは目を見開く。
「───スズは産まれつき手足が無いんですのよ」
「……なるほど、先天性四肢障害っすか」
それはユメカのように後天的───産まれた後に事故や病気で足が動かなくなったのではなく、産まれる前から手足そのものがなかったという意味だ。
個人の事情故にそれ以上何かを問い詰める気にはならなかったが、アンジェリカは優しい声でこう続ける。
「私が彼女に出会ったのは、日本のガンプラコンクール作品発表の時でした。あ、これでも私ガンプラ天元流の創始者の娘ですのよ」
「……知らない流派っすね」
「ふ、フランスでは有名ですのよ!? パリの美術館だって私のガンプラが飾ってあるんですから!」
どうやら海外の人らしい。半目のニャムに顔を赤くするアンジェリカだが、一つ咳払いをして話を続けた。
「スズはお父様の知り合いの娘さんでした。彼女を始めて見た時の私自身の失礼な態度は今でも覚えていますわ……」
表情を暗くしてそう語るアンジェリカ。想像してみるが、ニャムも自分がどんな反応をするかは分からない。
「……でも彼女は違った。私のガンプラを見て目を輝かせていた。彼女は私の不甲斐ない態度を気にせずに、私のガンプラを凄いと言ってくれた。……本当に強い子ですのよ」
「スズにとっては手足が四本になろうが六本になろうが十本になろうが関係ない。サイコザクの手足からサブアームまで、全てがアイツにとって自分の身体には無い物だからな」
アンジェリカとトウドウの言葉に、ニャムはモニターに映るサイコザクに視線を移す。
間違いなく、彼女は強敵と言って差し違えない。ただここに居る自分には、彼を応援する事しか出来なかった。
「───アンジェの作ってくれたサイコザクは、私の本当の身体より自由だ」
サブアームを駆動させ、背後に回るストライクBondにザクマシンガンを向ける。
ストライクのフェイズシフト装甲が攻撃を弾くが、いくらGNドライヴが動力源でも攻撃を受け続ける事は出来ない。
「近付けない……けど、離れたら狙撃か」
一度壁に隠れて、ケイはサイコザクレラージェに視線を移した。
その両腕には常にビームスナイパーライフルが握られている。隙あらば狙撃してやろうという意思が見て取れた。
「なら、中距離射撃戦だ」
ケイはGNソードIIをライフルモードに変形し再びサイコザクの背後に回り込む。
ザクマシンガンが反射的に放たれるのと同時に、ライフルの引き金を引いた。
「そこだ!」
「……甘い」
サイコザクは動かない。しかし、バックパックに隠されていた五本目のサブアームが展開する。
そのサブアームの先にはバックパックの横に装備されていた大型のシールドがマウントされていた。
GNソードIIから放たれたビームライフルはそのシールドに直撃する事はなく、ビームは歪んで曲がる。
「五本目!? しかもあのシールド……フォビドゥンのか!!」
ガンダムSEEDに登場するゲシュマイディッヒ・パンツァー。ビームを曲げる盾だ。
さらに六本目のサブアームがもう一つの盾を構える。ケイは頭を抱えて苦笑いをした。
「どうするんだよアレ……」
攻撃は弾かれるし、こっちはフェイズシフト装甲でもそう長くは持たない。
ガードされるだけならともかく同時に攻撃という動作もあのサブアームを全てちゃんと使いこなしている証拠だろう。攻略難易度はとても高そうだ。
「……虎の子を使うしかないか。まずはあのシールドをどうにかする!」
言いながら、再びケイは建物の影から飛び出る。幸いなのはサイコザクから襲って来る事はない事だ。
それはきっと彼女が仲間を信じているからだろう。自分が負けなければ、仲間が敵を倒して助けに来てくれると信じているから余計な事はしない。
「……単調」
ザクマシンガンとビームバズーカがケイのストライクBondに向けられた。ザクマシンガンだけならともかく、ビームバズーカの直撃は致命傷である。
「……落ちろ」
静かに引き金が引かれた。マシンガンとビーム砲がストライクに向かっていく。
「GNフィールド!!」
同時に、ストライクを粒子の壁が包み込んだ。高濃度GN粒子のシールドである。
粒子の壁がマシンガンとビーム砲を防いだ。距離を殺して、GNソードIIを振り被る。
「うぉぉおおお!」
「……まだ」
ヒートホークとGNソードが混じり合った。その間にも、サブアームがストライクにザクバズーカとザクマシンガンを向ける。
「───トランザム!!」
TRANS-AM
ストライクBondを赤い粒子が包み込んだ。高濃度GN粒子を一気に開放し、その機動力は三倍に跳ね上がる。
「くらえ!!」
神速の斬撃がザクマシンガンを持ったサブアームを切り飛ばした。同時に弾切れになるまで放たれたイーゲルシュテルンがザクバズーカを吹き飛ばす。
次はシールドだ。そうやって意識を切り替えた次の瞬間、機体が大きく揺れる。
「ぬわ!?」
「……お前!」
スズはザクバズーカを持っていたサブアームでGNソードIIを受け止めて、先端を切り飛ばされたサブアームでケイのストライクBondを突き飛ばした。
そのままビームバズーカをストライクの胸元に押し付ける。
「この距離で打つ気か!?」
咄嗟に腰にマウントされたビームサーベルを取り、地面を切って目眩しをしながら距離を取った。ビームバズーカはブリッツに切り飛ばされた方の腕の辺りを通過する。
あの時斬られずに腕がもう一本残っていたらもう少し攻めれたかもしれないが、ケイは「とりあえずよし」と口を開いた。
市街地から離れるように移動しながらサイコザクに背中を向けて、GNフィールドを展開する。
「追って来るか、狙撃してくるか。今の粒子貯蔵量で作ったGNフィールドでライフルを防げるか……。そして───」
ある意味でこれは賭けだった。そして、彼はその賭けに勝つ。
「……背中を見せる、なら」
スズはシールドを保持したサブアームを機体後方の地面に突き立てた。
そうして機体を固定して、残りのサブアーム二本と腕でビームスナイパーライフルをしっかりと構える。これが彼女の狙撃精度の秘訣だ。
「……フィールドは落とし切れない、から」
引かれた引き金。一筋の閃光は一寸の狂いもなく目的を打ち抜く。
「マジかGNドライヴをこの距離で……っ!」
───ストライクBondのGNドライヴを。
GNフィールドを貫通はしても機体を落としきるまではいかないと考えたスズはストライクBondのGNドライヴの片側を狙い撃った。
これでストライクの動力源は半減。トランザムはおろかGNフィールドはもう使えないだろう。
ゆっくりと高度を落としていくストライクBondを見ながら、スズは勝ちを確信してストライクの攻撃に微動だにとて動かなかったサイコザクの足を持ち上げた。
あとは瀕死のストライクと何処かに墜落したスカイグラスパーを落とすだけである。
「……アンジェ、私は出来るよ」
私は何も出来なかった。
手も、足もない。
何もかも、誰かにやってもらわなければ生きていく事すら出来ない。
そんな私を変えてくれたのはガンプラ。
この世界で私は自由になれる。アンジェが作ってくれた凄いガンプラで、私はなんでも出来るんだ。
だから───
「……見付けた、ストライク」
市街地の外を囲む森でゆっくりと歩いていたストライクを見つける。
スズはビームバズーカとGNソードIIライフルモード、ザクマシンガンを構えながらスラスターを吐かせて距離を潰した。
「……もう、落ちろ!」
「……くっ!」
損傷により機体から煙を漏らしながら、ストライクは一気にスラスターを吐かせる。
今度は市街地に戻るようにストライクBondは再び空を飛んだ。しかし、もうGNフィールドもトランザムも使えない筈である。
左右によく動きながら市街地を目指すストライクを見て、スズは小さく溜息を吐いた。
「……私が外す訳がない」
サブアームとシールドで機体を固定する。どれだけ動こうが、射線上に入った敵なら外す訳がない。
そう思いながらいつものように引き金を引いた。同時に、今日この日に生まれて初めて狙撃を外した事を思い出す。
「───撃て!! ユメぇぇえええ!!!」
「───ブラスターカノン!!!」
「───ぇ」
一筋の閃光がストライクを貫くと同時に、
「やった!」
「……こんな、場所に」
驚いて目を見開く。モニターには、背後で不時着して砲身だけを自分に向けたスカイグラスパーが映っていた。
このスカイグラスパーは自分の狙撃を避けた所か、こんな所で私を落とすなんて。
ふと思って、スズは笑う。……世界は広いな。
「……倒しちゃった?」
ストライクBond、サイコザクレラージェ撃破。
「ケイ、やったのか」
「……スズが相打ちか」
残る機体は迅雷ブリッツ、デュナメスHell、スカイグラスパー。
戦況
フォースReBond
ケイ ストライクBond ×サイコザクレラージェと交戦。撃破
ロック デュナメスHell ○迅雷ブリッツ、と交戦中
ニャム グフカスタム ×ゴールドフレームオルニアス、サイコザクレラージェとの戦闘で撃破
ユメ スカイグラスパー △狙撃により大破。不時着。飛行不可能。サイコザクレラージェを撃破
フォースメフィストフェレス
ノワール 迅雷ブリッツ ○デュナメスHellと交戦中
アンジェリカ ゴールドフレームオルニアス ×グフカスタムのの戦闘で撃破
スズ サイコザクレラージェ ×ストライクbondと交戦。スカイグラスパーの攻撃で撃破
東堂 クランシェアンドレア ×グフカスタムとの戦闘で撃破
フォース戦も残り一話になります。最後のバトンは残ったリーダー対決です!!
流行病が深刻化していますが、体調にはお気を付けてお過ごし下さい。