ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
嬉しかった。
「貴方、私達のフォースのリーダーをやりなさい!」
「本当に俺で良いのか?」
俺を信用して、彼女がそう言ってくれている。
「貴方が良いのですわ」
伸ばされる手を、俺は取った。
「俺なんて……勝つのに焦って仲間を危険に晒したのに」
「そうやってチームを想いやれる貴方には、リーダーの資格がある。そして、勝利に貪欲なその静かな熱さが……私には足りていませんでしたの」
彼女はそう言って俺を引き寄せる。認められる事が嬉しかった、彼女達に必要とされているのが嬉しかった。
「私はお父様のガンプラ天元流を輝かせて魅せるバトルを見たい。その為に、貴方の力を貸して下さい……ノワール」
「……あぁ、約束する。俺がお前を、お前達を───」
☆ ☆ ☆
建物が二つに裂かれて崩れ落ちる。
今までそこに居た筈の迅雷ブリッツの姿が見当たらない。
「チッ、電池切れか」
エネルギーが切れてビームが消えたビームサーベルを収納しながら、ロックは辺りを見渡した。
「何処から来やがる……」
相手のミラージュコロイドと機動力、そして市街地という地の利に苦戦を強いられる。
自分の集中力が切れるのが先か、武器が全部壊れるのが先か、どちらにせよ考える限り良い未来は待っていなかった。
「落ちろ……っ!」
「後ろか!」
気配を頼りに、背後から攻撃を仕掛けてきたブリッツに体を向けGNフルシールドを向けるロック。
ノワールの迅雷ブリッツは両腰にマウントされた武器を両手に、ビームと実弾を同時に放つ。
「のわぁ!?」
「浅いか」
迅雷ブリッツのメイン武装は、本来のブリッツの武装であるトリケロスをベースに作られた一対の武器だ。
対装甲ブレードや
二つで───双攻盾システムトリケロス・ツヴァイ。
「んなろぉ!!」
ブリッツに向けてGNソードを投げ付けるが、ノワールはトリケロスからブレードを展開してそれを弾く。
そんなブリッツに向けて肉薄しながら、ロックはデュナメスHellのGNフルシールドを開いてビームサイズを手に取った。
「貰ったぜ!!」
「まだだ!」
完全に間合いに入ったデュナメスだが、ノワールは背後に左腕を向けて左腕に装備されたクローアームを射出。建物を掴んだクローを引き戻す事で機体を一気に後退させる。
「車輪だけじゃなくてそうやって移動してた訳か……だがな、アンカーはお前だけじゃねーぜ!!」
後退したブリッツの背後には、ついさっきロックが投げ付けたGNソードが突き刺さっていた。
その先端にはワイヤーが繋がっていて、デュナメスHellがそれを引くと建物が大きく崩れていく。
「なに!?」
危うく押し潰される所にいたノワールは前に跳んで建物の崩壊を回避した。しかし、それは同時に自らデュナメスに近付くという事である。
「今度こそぉ!!」
「……っ!」
ビームサイズとブレードが重なって火花が散った。ミラージュコロイドによる高速戦闘と奇襲が迅雷ブリッツの強みではあるが、接近戦ではロックのデュナメスHellが上を行く。
「───それでも、負ける訳にはいかない!」
大きく弾いて、ミラージュコロイドを展開。その機動力を生かして、一気に離脱した。
「ちょこまかとよぉ! 何処に行きやがった! 正面から来やがれ!!」
「馬鹿正直に敵の間合いで戦う必要はない」
中距離の建物の影からライフルを構えるノワール。ビームと電磁砲を放つが、ロックはそれを交わしながら再び迅雷ブリッツに突撃する。
「いい加減に!!」
「甘い!!」
続けて、トリケロスからランサーダートが放たれた。GNフルシールドも貫通するだろう威力を待つ武装に、ロックは少し突撃を躊躇った。
その一瞬の隙にトリケロスツヴァイを連結、二つの銃口に加えてランサーダート等迅雷ブリッツ全ての武装がデュナメスHellを捉える。
「ヤベ」
「落ちろ」
斉射。
ビームライフル、実弾、電磁砲、ランサーダート、全てがデュナメスを襲った。咄嗟に展開したGNフルシールドはバラバラになり、デュナメスHellは爆煙を上げながら地面を転がる。
「……やり過ごされたか」
「……くっそ、パワーダウンか。こっちも……あっちも、首の皮一枚繋がっただけかよ!!」
辛うじて撃破されなかったデュナメスHellだが、機体は大ダメージを受けて動くのがやっとという状態だった。
対して迅雷ブリッツは大きなダメージもない。
「だが、終わりだ」
そのまま、ノワールはライフルの連結を解いてビームライフルを連射する。ロックは建物の影になんとか逃げ込んで、ビームの直撃を防いだ。
「ここに来ても堅実ですかこの野郎。最後は接近して格好良く決めるとかない訳?」
「私情に流されてチームの敗北に繋がるミスをする奴に、リーダーの資格はない」
「喧嘩売ってんのか!?」
「そのつもりだが?」
電磁砲が建物を吹き飛ばす。建物の崩壊に巻き込まれそうになったロックはビームサーベルを構えてブリッツ前に立った。
「お前達の敗因は、お前をリーダーにした事だ。お前が一人で突っ込んで来た事でストライクは被弾し、グフカスタムは罠に掛かった。初めてのフォース戦なら仕方がない。……だが、次からはリーダーを変える事だな」
トリケロスツヴァイをデュナメスHellに向けるノワール。ロックは俯いて、操縦桿を強く握る。
その身体は震えていた。
「俺は……」
自分のせいでバトルに負ける。GBNで有名になって、アオトやニャムの兄に名前を轟かせる約束が遠退くかもしれない。
「……俺は───」
「しっかりしろロック!」
「───ユメ?」
聞こえて来たのは、バトルフィールドに唯一残っている仲間の声だった。
「リーダーでしょ」
「……でも、俺は」
「タケシ君なんだよ」
「……何が?」
「いつも私達を引っ張ってくれるのは、タケシ君だった。ケー君達をガンプラバトルに誘ってくれたのも、フォースで有名になろうって道を作ってくれたのも! そんなタケシ君が迷わないでよ!」
ユメの言葉に、ロックは前を向く。ライフルが向いていた。咄嗟にレバーを引いて攻撃を避ける。
「落ちろ……っ!」
「くそ……っ!」
攻撃を避けるので手一杯だ。奥の手はあるが、機体も限界で使える時間は限られているだろう。きっと一秒も保たない。
自信がなかった。
「ロック・リバーは!」
「……っ」
目を見開く。
そうだ、俺は───
「クールで格好良い男なんでしょ!!」
───俺は。
「俺は───」
───あの時、何も出来なかった。
ユメカがトラックに跳ねられた時、ケイスケやアオトが必死になって病院に電話したり彼女に声を掛けている間。
俺は怖くて、何も出来なくて、そんな自分が嫌になる。
何も出来ないなら、何もしなければ良い。何かを失うのが怖い。なら、何も失うものを持たなければ良い。
アオト達から距離を取って、自分からすら距離を取って。
でもそうしていたせいで、アオトまで失った。ユメカが夢を失って傷付いてる時、何もしてやらなかった。ケイスケが一人で悩んでいる時、助けてやれなかった。
それでも一人で逃げ続けていた俺を、ケイスケもユメカも怒らない。それどころか、また一緒に遊ぼうと誘ってくれる。
そんな二人に報いたかった。
「───俺は、勝つぜ。だって、ロック・リバーはクールで格好良くて……強い男だからな」
「───俺は負けない。仲間の為に」
トリケロスからブレードを展開しデュナメスに接近する。戦闘を長引かせて、相手にチャンスを作らせない為に取った行動だ。
しかしそこはデュナメスHellの間合いである。それも、ノワールは承知の上だった。
「俺はリーダーとして、アイツらを連れて行くんだ!」
「俺もリーダーなんだよ!!」
ブレードとビームサイズが重なり合う。押し合いは迅雷ブリッツが制して、デュナメスは壁に激突させられた。
「お前にリーダーの資格はない!!」
ブレードを振り上げる。何処か熱くなっている自分に気が付いた。
目の前の男が昔の自分に似ていたからかもしれない。
メフィストフェレスのリーダーになる前、自分も勝ちに焦って敵の中に突っ込んだ事がある。
その結果、今の彼と同じような状態になった事もあった。
だから、この男には負けてはいけない。
「───うるせぇ!!」
GNソードを投げ付けるロック。しかし、ノワールはそれを軽く避ける。
アンカーで戻って来る事も忘れていない。背後にも視線を送りながら、ノワールはブレードを振り下ろした。
「俺は……俺はアイツらを連れて行くんだ!」
「……なろぉ!!」
ロックはアンカーを引いてGNソードを回収する。それをノワールは振り下ろしたブレードで切り落とした。
いつかの約束の為に。今ここで、過去の自分を倒す。
「俺だってなぁ!!」
ロックは腰にマウントされたビームサーベルを、マウントされたまま展開した。ビームが正面に向かって突き出し、迅雷ブリッツの左腕を焼き切る。
「……っ!?」
ブレードの着いたトリケロスツヴァイの片割れが誘爆し、ノワールは急いで距離を取りながらライフルとランサーダートを構えて放った。
ロックはビームライフルをビームサーベルで弾くが、ランサーダートがデュナメスHellの右腕を吹き飛ばす。
「この……っ!!」
「俺だって、リーダーなんだよ!!」
右腕がバラバラに砕けた事も気にせずに、ロックはブリッツの懐に潜り込むように突進した。
ノワールはトリケロスにマウントしておいたビームサーベルを展開してそれに応戦する。
「不甲斐ない奴かもしれねぇ、身勝手で、大人しくないくせに……大切な時に何もしなかった臆病者だったかもしれねぇ!!」
連撃。
ビームサーベル同士がぶつかり合った。
動きは圧倒的にブリッツの方が良く、デュナメスはもうボロボロで動いているのが不思議なくらいである。
それでも、鍔迫り合いで押しているのはロックのデュナメスHellだった。
「だけど、そんな俺をアイツらは連れ出してくれた!!」
「トランザムをしている訳でもないのに……何故だ」
自分が押されている。
そう気が付いた時には、隙を突かれてトリケロスをビームサーベルで切り飛ばされていた。
だが、負ける訳にはいかない。
トリケロスの誘爆に紛れ、ノワールはミラージュコロイドを展開する。
武器は殆ど破壊されたがデュナメスも満身創痍だ。攻撃を当てる事が出来れば勝てる。
「負けない……俺は、お前に勝つ!! そして俺はアイツらを───」
デュナメスの右腕を吹き飛ばしたランサーダートを拾い上げ、ミラージュコロイドと機動力による奇襲を仕掛けた。
「だから今度は俺が───」
背後からの奇襲。満身創痍のデュナメス。
TRANS-AM
迅雷ブリッツが手に持ったランサーダートを振り下ろそうとした直後だった、デュナメスHellが全身から赤い粒子を放出する。
奥の手のトランザム。しかし、大破したデュナメスにトランザムを維持する力は残っていなかった。
一瞬。
ほんの一瞬のトランザムによる出力で、デュナメスはランサーダートを避けて迅雷ブリッツの背後を取る。
「───今度は俺が、アイツらを連れて行くんだぁぁあああ!!」
「───俺はアイツらを高みに連れて行く!!」
ノワールは迅雷ブリッツの掌でランサーダートをひっくり返して、背後のデュナメスに向けて突き立てた。
同時にロックのデュナメスHellはビームサーベルで迅雷ブリッツを切り裂く。
お互いの武器は相手に致命傷を与えるのに充分なダメージを与えた。
ほんの少しの間を置いて、二人の機体が所々から火を上げる。次第に機体が誘爆し、二人の機体は同時に爆散した。
迅雷ブリッツ、デュナメスHell撃破。
「タケシ君……」
残存機体、スカイグラスパー。
BATTLE END
WINNER FORCE ReBond。
フィールドが崩れて行く。勝者として残った少女はただ一人、満足げに空を見上げていた。
「いやー、負けましたわ。負けました」
これ以上ない笑顔でそういうのは、フォースメフィストフェレスのアンジェリカである。
その後ろで頬を膨らませているスズは、苦笑いしているケイをずっと睨んでいた。
「……次はない」
「……あ、あはは」
「いやー、ケイ殿の作戦には驚いたっすよ。まさに使える物は使う! そんな精神っすね!」
「参考になった。今後の作戦展開に組み込む事も考えよう。真面目そうだが、まさかあんな手を使うとは」
「トウドウさんちょっと嫌味入ってないですか!? ニャムさんは俺の味方なんですよね!?」
フォースバトルが終わり、先に退場したメンバーはバトルモニターを見ながら談笑をしている。
これは戦争ではない、ゲームだ。
試合が終われば昨日の敵は今日の友である。
「……相打ちか」
「……負けた」
そんな中に、ロックとノワールが帰ってきた。
ノワールは静かにアンジェリカの元まで歩いて、頭を下げる。
「……すまない」
「良いバトルでしたわ、ノワール。謝らないで下さい」
「……あぁ、良いバトルだった」
「ふふ、熱くなってましたわね」
「あ、アレは……。……そうだな、熱くなっていた」
少し笑って、ノワールは振り向いた。
そして、ロックに手を伸ばす。
「お前の執念、見せてもらった。試合中は失言をしたな、お前は間違っていなかったよ。……完敗だ」
昨日の敵は今日の友だ。
周りの仲間も、お互いに見つめ合って笑い合う。
しかし、ロックだけは違った。
「……俺は、確かに熱くなってチームを危険に晒した」
「……ん?」
俯いて、震えるような声で言うロックにノワールは首を横に傾ける。
「リーダーとしてなってなかった、あんたの言った通りな。……俺の負けだ。勝てたのは、仲間の皆のおかげだ」
「……そうか───」
「だから、次は俺が勝つ!! 完全完璧に、このロック・リバー様がお前を叩きのめしてやる!! 次会ったときは覚えとけこの野郎!!」
ロックはそう声を荒げて、部屋を飛び出していった。
「えぇ……。お、おい……どういう意味だアレは?」
「あ、あはは……すみません」
「分からないんですの?」
謝るケイの後に、アンジェリカが不思議そうな表情でそう言う。
「ライバル宣言、ですわよ」
そう言うアンジェリカの表情はとても嬉しそうだった。競い合うライバルの出現、自分のガンプラを魅せる為の道にそれは欠かせない物である。
「ライバル……」
「……あれ? タケシ君は?」
最後に戻ってきたユメは状況を掴めずに、ただポカンとしていた。
「……次は外さない」
「え? え?」
ずっとケイを睨んでいたスズが、睨む相手を入れ替えたのはまた別の話である。
そしてGBNからログアウトしたタケシは───
「……次は勝つ。マジで勝つ。ぜってー勝つ」
「……よし」
願掛けのように言葉を並べるタケシの隣で、GBNにログインしていた青年がログアウトしていた。
青年の首には赤いマフラーが巻かれていて、その手が伸びる黒色のガンプラにタケシは見覚えがあって固まる。開いた口は塞がらなかった。
「……え」
「……ん?」
隣で立ち上がった青年の手には、ブリッツという機体を改造したガンプラが握られている。
赤いマフラーの巻かれたブリッツ。迅雷ブリッツが。
そして青年も、タケシの手に握られているデュナメスHellを目にした。
「よぅ、次会ったな」
青年はそれを見て、不敵な笑みで片手を上げる。
「お前かよぉぉぉおおおお!!!!」
タケシの絶叫は近所のケイスケやユメカの家まで聞こえたらしい。
初めてのフォース戦、見事に勝利。頑張ったねロック。
一度は書きたかったワンセカンドトランザムに、スカイグラスパーとクランシェの空戦シーン、グフカスタムの原作再現、個人的にオリジナルガンプラで一番好きなサイコザクレラージェの戦闘シーン全般と書きたかった事を書きたいだけ書いて長くなってしまいましたがなんとな書き切りました!
そんな訳で久し振りにお絵描きをしてきました。
【挿絵表示】
フォースメフィストフェレスより、スズとアンジェリカです。野郎二人を描く暇が無かったので、また今度描き足しておきます……。ガンプラも隣とかに描けると良いんですけどねぇ……。
アニメガンダムビルドダイバーズリライズの放送延期、凄い楽しみなタイミングで切られて気が狂いそうです……。
そんな訳で初フォース戦でした。次回からまた新しい展開になっていくので楽しんで頂ければ幸いです。読了ありがとうございました!