ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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赤い狼

 電話が鳴った。

 登録された電話番号ではない。仕事上、珍しい事ではないが電話を取る男は不敵に笑う。

 

 

「はいはい、こちら運送会社の───」

 そこまで言った所で、男は電話先の声に耳を傾けた。

 幼い、だけどしっかりした口調の女の子の声が聞こえて来る。

 

 

「───なるほどね。良いよ良いよ、おじさんに任せなさい」

 そう言って電話を切った男は、振り返って背後にいたもう一人の男に視線を合わせた。

 

 

「そんな訳で、都合良くおじさんはあの娘のフォースに接触する機会が出来た訳だけど?」

「そのままNFTで彼女達を俺の所まで連れて来い」

 椅子に座っているもう一人の男はそう答えて、部屋に飾られている写真を眺める。

 

 

「NFTで、俺の復讐を始める」

「……そんじゃ、おじさんは一旦ReBondに入って来ますかね」

 男が手に取ったガンプラは、まるで血のような赤色に染められていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GNソードとビームザンバーが重なり合う。

 

 

「クロスボーンガンダムのスラスターを着けたストライカーパック。ふへへ、初めて戦った時の事を思い出すっすねぇ!」

 バトル開始後、先に仕掛けて来たのはニャムのエクシアだった。

 

 彼女は細身故の機動力を生かして牽制射撃を潜り抜け、ケイのストライクBondに肉薄する。

 

 

「あの時も白兵戦でしたっけ……っ!」

 大振りにビームザンバーを振り抜いてエクシアを引き離したケイは、頭部バルカン───イーゲルシュテルンで牽制射撃をした。

 しかしニャムは怯む事なく、機体を横に逸らしながらビームサーベルを展開して再びストライクBondに接近する。

 

「横横横ぉ!!」

 謎の雄叫びを上げながらサーベルを振るニャム。ケイはクロスボーンのスラスターを巧みに駆使して姿勢制御だけでエクシアの攻撃を全て交わした。

 

「横って何!?」

「流石、クロスボーンのスラスター。機動力はエールに劣るも姿勢制御はピカイチっすねぇ!」

 しかし、とニャムはGNソードを前に突き出してストライクBondに突進する。

 

 

「離脱力がなければ、壁際に追い込むのは容易っすよ!!」

「───しまった、後ろはコンペイトウか!?」

 エクシアの猛攻の間に、気が付いた時にはソロモンの岩壁まで追い詰められていた。

 

 

 宇宙空間のバトルフィールドでは上下左右が滅茶苦茶になる。気を抜けば自分が今何処にいるのか分からなくなっていたなんてのは珍しい事でもない。

 

「……っ!」

 ソロモンを背後に逃げ場を失ったストライクBondに向けて、エクシアはその刃を振り下ろそうと肉薄した。その直後───

 

 

「ソロモンの方に逃げな、ケー君!」

 ───光がエクシアとストライクBondの間に割って入る。

 

 大型のビーム砲に攻撃を阻まれたニャムは機体を下げるが、ビームはゆっくりと薙ぎ払われてエクシアの足を掠めた。

 舌を巻いて「やってくれるっすねぇ」とビームが飛んで来た方角を睨むニャム。その方角から、大量のミサイルが飛んで来ているのが確認出来る。

 

 

「遅くなって悪いねぇ、なにせ年寄りは足が遅いもんだから」

 ミサイルを放った犯人と、愛機───レッドウルフは片手に大型のビームライフルを構えながらソロモンの近くまで辿り着いた。

 ケイのストライクBondはゆっくりとその機体に近付いて「助かりました、カルミアさん」と声を掛ける。

 

 

 ガンダムファンにとって赤い機体は無意識に高起動なMSだと認識してしまいがちだが、その機体の重厚感はそんな事を微塵も感じさせない。

 武器という武器を積んだ、全身武器庫。それが彼の機体の元となったドーベンウルフの特徴だ。

 

 

 以前戦ったメフィストフェレスのサイコザクレラージェに似た雰囲気は、ケイの中でどこか頼もしさがある。

 

 

「いいのよいいのよ。チーム戦だからねぇ。今のうちに体勢を持ち直しな。とりあえず、敵はまだ一機。相手をしてみようか!」

 言いながらカルミアはバックパックからさらにミサイルを発射した。

 

 十二発のミサイルが二手に分かれてエクシアを襲う。ニャムはGNソードをライフルモードに変え、ミサイルを迎撃しようと構えた。

 

 

「ミサイルだけだと思ったかぃ、嬢ちゃん!」

 レッドウルフのライフルが胸部のメガ粒子砲発射口と連結する。ジェネレーター接続により威力を増したビームライフル───メガランチャーがエクシアに向けて放たれた。

 

「それは流石に当たったらヤバいっす!!」

 ニャムはミサイルの迎撃を辞め、ミサイル群に突っ込む形でメガランチャーを避ける。

 ミサイルの直撃は免れないがビーム砲に当たるよりはマシだ。

 

 

「良い判断……ん?」

 そのままミサイルが全て直撃するかと思いきや、遠方から連射されたGNスナイパーライフルがミサイルの大半を吹き飛ばす。

 

「ふぅ……助かったっす、ロック氏!」

 ニャムは冷や汗を拭きながら援護をくれた後方にいるロックにお礼を言った。

 

 

「ふ、俺はクールで格好良い男……ロックリバー。どうだニャムさん! 今のでおっさんのドーベンは蜂の巣だろ!」

「いや今のカルミア氏を狙ってたんすか? 一発も当たってないっすけど!?」

「なんだとぉ!?」

 ミサイル迎撃が偶然だった事を知りニャムは目を細める。しかし、結果はオーライだ。

 

 

「なるほどねぇ……だけど、レッドウルフの武器はまだあるぜぃ!」

 そう言う彼のレッドウルフのバックパックから、二本の砲身が飛び出す。まるでファンネルのように機体から離れていく砲身だが、ファンネルとは決定的な違いがあった。

 

 それは、有線である事。レッドウルフから離れていく砲身は、レッドウルフ本体とワイヤーで繋がっている。

 

 

「いきな、インコム!」

 準サイコミュ兵器、インコム。それがこのオールレンジ攻撃に使われる兵器の総称だ。

 

 

「次から次へと!」

 さらにビームライフルの追撃で、ニャムのエクシアは防戦一方になる。そんな彼女の隣を抜けた黒い機体───ロックのデュナメスHellはレッドウルフに向かって猛進した。

 

 

「そういうのは近付けば怖くねぇんだよぉ!!」

「させるかいな。ビームハンド!」

 対するカルミアのレッドウルフは、ライフルを持っていない左腕にビームサーベルを持たせて───その腕の肘から先を飛ばす。

 

「しゃらくせぇ!」

 ビームサイズを展開してレッドウルフの腕を弾いたロックは、懐に潜り込んで得物を振り上げた。

 オールレンジ攻撃は肉薄してしまえば自機に砲身を向けられなくなる為に使えない。その手の武装を持つ相手には接近する事は非常に有効である。

 

 

「貰ったぁ!!」

「残念、まだあるんだなぁ!」

 レッドウルフは左腕の隠し腕を展開してビームサーベルを展開。ビームサイズを振り上げたデュナメスHellの左腕を切り飛ばした。

 

「あぁ!?」

「隠し腕はまだあるよぅ!」

 さらにレッドウルフは股間のスカートから隠し腕を展開しビームサーベルを合計で四本構える。

 同時に振られたサーベルをロックはなんとか弾いて交わすが、距離を取らざるをえなかった。

 

 

「ジ・Oかよ!?」

「どうやら元になったドーベンウルフよりも色々積んでるみたいっすねぇ」

 インコムが回収され、猛撃をなんとか凌いだニャムはロックと合流する。

 

 

 サーベルを持った左腕が浮き、インコムを二発漂わせ、右腕には高出力のビームライフル、左腕と股下の隠し腕、バックパックのミサイル。

 それでもまだどこかに武器を隠し持っているのではないかと思える機体の重装感。それはまるで難攻不落の要塞のようだ。

 

 

 

「すみません、遅れました」

「いやいや、今から丁度良い所よ。……さて、続きをしようか」

 カルミアは目を細めて口角を吊り上げる。まず動かしたのはビームハンドで、サーベルを手に射出された腕がロックのデュナメスHellに真っ直ぐ向かった。

 

「しゃらくせぇ!」

 ビームハンドを弾き飛ばすロックだが、その間にケイのストライクBondが接近する。援護をしようとしたニャムのエクシアは、インコムとビームライフルの牽制に阻まれた。

 

 

「ロックの片腕を持っていくなんてな……」

 フォース内でも接近戦なら最強格であるロックに、不意打ちとはいえ接近戦でダメージを与えたカルミアの実力は確かだろう。

 そんな事を思いながら、片腕だけのロックにビールザンバーで斬りかかるケイ。対するロックは機体を赤く染めて迎え撃った。

 

 

 TRANS-AM

 

 

「トランザムか……っ!」

「片腕だけで充分だぜ!!」

 ダブルオーストライカーを装備していたら、同じくトランザムで対抗する事が出来たかもしれないが生憎そうはいかはい。

 機動力の増したデュナメスHellに、ケイは攻めていた筈が防戦を強いられる。

 

 

「そういやあの日以来決着が付いてなかったなぁ!」

「ならここで決着を着けるか?」

「そうしようぜぇ!!」

「───って、俺がいうと思ったか?」

「───はぁ!?」

 突進してくるデュナメスHellに向けて、ケイは羽織っていたABCマントを投げ付けた。マントで視界を遮っている間に下に潜り込んで、イーゲルシュテルンで足を撃つ。

 

 

「お前はそういう奴だよなぁ!!」

 なんとかマントを取っ払ったロックは、真下に機体を向けてビームサイズを構えた。しかし、そこにストライクBondは居ない。

 

 

「……あれ?」

 宇宙空間において上下左右の感覚は簡単に狂ってしまう。

 クロスボーンストライカーの機体制御能力で既にデュナメスHellから距離を取っていたケイは、ロックの知らない間にニャムのエクシアと交戦していた。

 

 

 そうなれば手の空くMSが一機、この戦場にいる事になる。

 

 

「お別れよ、黒いデュナメス。バイビー」

 カルミアは胸部メガ粒子砲とビームライフルを連結させ、トリガーを引いた。

 

 

「何の光ぃぃいいい!?」

 メガランチャーがデュナメスHellに直撃し、ロックの機体は爆散する。

 

 

「ロック氏ぃ!」

「あと一機!」

「やらせはせん、やらせはせんっすよぉ!!」

 残る一機。ニャムのエクシアはストライクBondと斬り合いながらも、周りに浮かぶインコムを打ち壊し、トランザムを発動してケイを振り払った。

 

 

「カルミアさん、そっち行きます!」

「やらせはせんぞぉぉおおお!!」

 トランザムでレッドウルフに突進するニャム。カルミアはライフルを捨ててビームサーベルを手に取り、隠し腕と合わせて三本のサーベルでエクシアを迎え撃つ。

 

 

「……っとぉ、おぉ? やるなぁ」

 三本のサーベルでなんとか斬撃を捌こうとするが、トランザムの機動性には追い付かずに二本の隠し腕を斬り飛ばされてしまった。

 

 しかし、猛撃を仕掛けてくるニャムの機体を、横から飛んで来たビームハンドが捕まえる。

 つい先程飛ばしてロックに攻撃したが弾かれた腕が帰ってきたのだ。

 

 

「やらせはせーん!!」

 ビームハンドを切り飛ばすニャム。しかし、さらに射出された右腕のビームハンドがエクシアを掴む。

 そのビームハンドも切り裂いたエクシアだが、遂には隠し腕に両手を掴まれた。

 

 背中のビームキャノンがエクシアの足を吹き飛ばして、遂にニャムは抵抗出来なくなる。

 

 

「完敗っす。全身武器倉庫……隙がない」

「悲しいけどこれ、戦争なのよね」

 胸部メガ粒子砲がエクシアを吹き飛ばした。

 

 

 勝者、ケイ&カルミアチーム。

 

 

 

「お疲れ様! 宇宙戦ってすごいんだね。グルグル回って、上が下で下が上でもうよく分かんないの」

 バトルを終えて戻ってきた四人に、ユメは目を輝かせて話し掛ける。

 

「ユメちゃんも宇宙用のMAを使ったり、この際MSに乗り換えたりすれば宇宙戦も経験出来るっすよ」

「わ、私にあんなバトル出来るのかなぁ……。えーと、カルミアさん? も、凄かったです!」

「どもどもー」

 ユメの言葉にカルミアは頭を掻きながら手を上げた。

 

 

「よし、合格だな」

 確かに彼の実力は本物のようである。

 ヒメカとの関係はともかくとして、彼ならばメンバーとしても充分だとロックが考えた。

 

 

「ジブンも賛成っす。ケイ殿に引っ掻き回されたとはいえ、彼のレッドウルフの火力と弾幕が勝敗の決めてでしたっすからね。その二つとも、今の自分達にはない物ですし」

「ケイは?」

「俺も……まぁ、良いかな」

 出会った時の行動を少しだけ思い出して苦笑いしながら答えるケイ。当の本人は飄々な態度で立っていて、特に悪い人間でもなさそうである。

 

 

「ユメも良いよな?」

「うん。私は大丈夫だよ」

「んじゃ、決まりだな。おっさん、あんたはこれから俺達ReBondのメンバーだ!」

 格好を付けながらそう言って、ロックはコンソールパネルからフォースへの招待をカルミアに送った。

 

 彼は満足げな表情でその招待を受け取る。

 

 

「おじさん感激ぃ。そいじゃ、今後ともよろしく」

 こうして、ReBondのメンバーは五人になった。

 

 

 

 ネクストフォースバトルトーナメントまで、残り六日。




そんな訳で、新キャラ(?)カルミアの初陣と仲間入りでした。今後の活躍にも期待ですね!

読了共ありがとうございました!
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