ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

30 / 171
砂漠の犬

 五つのモニターが光る。

 

 

「うーん、今日も珈琲が美味い」

 湯気の立ちのぼるコーヒーカップを片手に、一人の男がモニターを眺めていた。

 

「全身武器倉庫、一回の戦闘で装備を使い切らない程に武器を積み込んだ赤いドーベンウルフ。リーダー機、狙撃機と思わせて接近戦の得意なデュナメス。支援機、文字通りのスカイグラスパー」

 男はモニターに映っている映像を見ながら、それぞれを見比べて言葉を漏らす。

 

 

 モニターにはフォースReBondのメンバー達のバトルが映し出されていた。

 

 

「改造ガンプラキラー、使う機体は試合によって様々なオールラウンダー。そして───」

 その視線は、真ん中に設置されたモニターに真っ直ぐに向けられる。

 

 

「───換装機、スカイグラスパーと併用で力を発揮するストライク」

 男はコーヒーカップを机に置いて、前のめりになってモニターを眺めた。

 

 

「……ストライクか」

「楽しそうね、アンディ」

 男の背後から近寄ってきた女性がそう言うと、男は「そう見えるかい?」と不敵に笑う。

 

 

「彼は少し僕に似ていると思うんだよね」

 コーヒーカップを再び手に取る男は、美味しそうにそれを飲み干して笑ってみせた。

 

 

「……僕は今年のNFTで必ず優勝する。その為ならなんだってするさ」

「えぇ。頑張って」

 二人は抱擁を交わして笑い合う。

 

 

 モニターにはゴッドガンダムと対峙するストライクBondの姿が映っていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GBN。カフェレセップス。

 

 

「よーし、揃ったな」

「どもどもー、間に合ったかね」

 ロック、ユメ、ケイ、ニャムの四人が集まる机に一人の男が遅れてやって来る。

 

 昨日の模擬戦を経てReBondの仲間入りを果たしたカルミアは、頭を掻きながら「遅れて悪いねぇ、おじさん社会人だから」と頭を下げた。

 

 

「いえいえ、ジブン達がちょっと早めに集まってただけっすから」

「若者は元気ねぇ。……それで、今日は他のフォースと模擬戦だっけ?」

 カルミアの問い掛けに、ロックが「おうよ。期待してるぜおっさん」と答える。

 その隣でケイとユメも「宜しくお願いします」と声を揃えた。幾分か警戒は解けているようで、カルミアは少し安心する。

 

 昨日GBNからログアウトした後にヒメカに事情を聞いた所、彼の事は「たまたま知り合ったおじさん」と言っていた。

 女子中学生が偶々知り合ったおじさんの連絡先を知っているのはどこか怖い話ではあるが、ヒメカはしっかりしているので大丈夫だろう。

 

 ユメカに対しては少しだけ後ろめたそうにしていたのが気になるが。

 

 

「そいで、そのお相手さんはどちらさんで?」

「あー、それなら───」

「やーやー、揃ってるね。ReBond諸君」

 カルミアの質問にロックが答えようとした矢先、彼等の机の前に一人の男が現れて口を挟んだ。

 

「改めまして。僕が今回君達の相手をする砂漠の(けん)のリーダー、アンディだ。こっちは副リーダーのリリアン」

 アロハシャツのその男はコーヒーカップを片手にもう片方の手を上げて挨拶をする。

 続けてアンディに紹介された長い髪の女性が「ハァイ」と返事をした。

 

 その後ろには彼の仲間と思われる三人の男が立っている。

 

 

「先日の約束通り、NFTの練習模擬戦としてイベントと同じルールで戦う……それで構わないね?」

「おうよ。前回ベスト4の力、存分に見せてもらおうか」

「元気な少年だ。……あぁ、胸を借りるつもりでかかってきたまえ」

 そう言ってアンディとロックはお互いに握手をした。二人はその後細かいルールの調整をして別れる。作戦会議の時間だ。

 

 

「フィールドは砂漠、ルールはフラッグ戦。NFTではフラッグ機体は試合開始ギリギリまで決める時間があって、毎回変えられるらしいぞ」

 アンディから聞いた話をそのまま伝えるロック。彼の言葉を聞いて、ユメは唇を押さえて目を細める。

 

「どうかしたか? ユメ」

「フィールドは砂漠って事は、もしかして相手の人達に有利かも? だってほら、フォース名が砂漠の……だし」

 初めて見たガンダム作品、ガンダムSEEDを思い出しながら彼女は顎に手を当てた。

 

「確かに、バクゥやラゴゥが出て来てもおかしくないっすね」

「こっちは砂漠戦の戦力としては心許ないか……。俺は……初めにエクリプスストライカーを着けて出るから、ユメはクロスボーンストライカーで頼む」

「今回はちゃんと途中で換装出来る様に落とされないようにしなきゃ……」

 ユメはメフィストフェレス戦を思い出してそう言う。今回は砂漠戦故に、ストライクの柔軟性は大切だ。

 

 

「フラッグ機は誰がやるんだ?」

「おじさんのはフラッグ機には向いてないかな。年寄りは足が遅いもんで」

「いざというときの回避性能、防御性能が求められるっすね。個人的にはケイ殿のストライクっすけど」

 ロックの問い掛けにカルミアは首を横に振って、ニャムはケイのストライクを指名する。

 

 大切な役目だが断る理由はない。これで、後は作戦を決めるだけだ。

 

 

「それじゃ、作戦っすけど───」

 

 

 

 十分後。

 

「あら、もう始まってるようですわよ」

 試合開始直後、まだ誰の機体も撃破されていないが観戦室に男女四人がやって来る。

 

 事前に招待や登録がされていれば他のフォースのバトルを観戦する事が出来るのだが、ReBondと砂漠の犬のバトルを観戦しに来たのはフォースメフィストフェレスの四人───アンジェリカ達だった。

 

 

「敵情視察を快く受け入れてくれるとはな。さて、新しいメンバーの機体はドーベンウルフか」

「……スカイグラスパーもストライクも前と武装が違う」

 アンジェリカの隣でトウドウとスズがReBondの機体を見ながら言葉を漏らす。

 

 

「お前がフラッグ機をやるなんて事は流石にないか、ロック」

 黙ってついて来たノワールは、モニターに映るデュナメスHellを見て不敵に笑った。

 

「そろそろぶつかり合いますわ」

 砂漠の犬の機体がモニターに映る。四人は真剣な表情でモニターを見始めた。

 

 

 

 

「こちら南側、ユメ。敵の機体確認出来ないです」

「こちら東側、ニャム。同じく敵影なしっす」

 砂漠上空をユメのスカイグラスパーと、もう一機の航空機が飛んでいる。今回のニャムの機体は可変機らしい。

 

 

「こちらロックリバー。おっさんとケイの所も異常なしだ」

 岩壁の上から砂漠を見下ろすロックが返事をした。フィールドには今彼の正面3キロ先にケイとストライクBondとカルミアのレッドウルフが立っている。

 そしてそれぞれ別方向でユメとニャムが空中から索敵中だ。フィールドは砂漠といっても岩場や基地の跡地等があって隠れる場所も豊富である。中々索敵もうまくいかないようだ。

 

 

「ユメ達は大丈夫かな……」

「そうもそわそわしなさんな、ケー君。君はフラッグ機なんだから、ジッとしてるのも作戦の内よ」

「そ、そうですね……。ていうかそのケー君ってやめてください」

「え、ユメちゃんにはいつも呼ばれてるじゃないの」

 カルミアに諭されて一度深呼吸をするケイ。

 

 

 そうして彼は、バトルが始まる前の作戦会議を思い出す。

 

 

 

「フラッグ戦において重要なのはアタッカーとディフェンダーっす。アタッカーは敵軍のフラッグ機の撃破、ディフェンダーは自軍のフラッグ機の防衛が任務っすね。フラッグ戦はフラッグ機が落とされればその時点で試合終了なので、こうやって攻守でチームを分けるのが一般的な作戦っす」

「その場その場でも変わってくるけどねん。臨機応変ってのも大切よ」

 ニャムの説明にカルミアが付け足して、聞いていた三人は頷いた。

 

「そこで、まず前半戦はジブンとユメちゃんがアタッカーを務めるっす」

「え、私……?」

 そしてニャム提案した作戦にユメは首を傾げる。彼女の機体は機動力こそあるが、敵を倒す事に対しては向いていないし自信もなかった。

 

 

「ふっふっふっ、前半戦の話っす。とりあえず戦闘が始まったら相手を見つける所からスタートしないといけないので……今回は空を飛べるジブンとユメちゃんにその適性を見出したんすよ」

「なるほど、索敵だね」

「そうそう。そして、敵を見つけ次第敵の情報を見てからアタッカーを入れ替える……という作戦っす」

 だから、それまでの防衛は残りの二人で。ニャムはそう付け足して、詳しい位置取りの話に入る。

 

 

 場合によってはケイ自身がアタッカーになる事もあり得る作戦だ。臨機応変、フラッグ戦に必要なのはその言葉に尽きるだろう。

 

 

 

「敵は砂漠の犬。……やっぱり、ラゴゥとかなんですかね」

「さーねぇ。案外全く違うかもよん?」

 周りを警戒しながらケイの口から漏れた言葉にカルミアが笑いながら返した。

 

 フォース砂漠の犬。あのメフィストフェレスを初戦敗退させたチームだという事もあり、緊張で手が震える。

 

 

 それでも今は勝つしかない。勝って前に進んで、アオトのいる所まで───

 

 

 

「敵発見!」

 通信でそう声を上げたのはニャムだった。

 

 レーダーに敵影を感知したニャムは舌を巻きながら「よーしよし」と不敵に笑う。作戦通り───そう思いながらレーダーに再び視線を向けたニャムは表示される項目に驚いて眼を見開いた。

 

 

「ロックオン……? ジブンが狙われてる? この高度っすよ!?」

 相手は地上にいると思い込んでいたニャムは、ジブンが攻撃のターゲットにされている事に気が付いて慌てて操縦桿を握る。

 

 地上からの長距離射撃が可能な機体か、それとも───

 

 

「……うわ」

 二つ目の嫌な予感が的中して、ニャムは唇を噛んだ。

 

 

 

「すみません皆さん。ジブン死にます」

「ニャムさん!?」

 彼女の言葉にユメが驚きの声を上げる。そんなニャムの視界には、五機の航空機が映っていた。

 

 

「相手は五機編成の……多分変形機っす! 今ジブンの居るポイントで遭遇。相手さんの作戦は五機纏まって動く事だった……ジブン、もしかしなくても戦犯なのでは!?」

「あの機体はデータにないな。改造ガンプラキラーだ! ここで落とすぞ!」

 フォース砂漠の犬のアンディは、見付けたニャムをみて口角を吊り上げる。

 

 

 彼等の機体は殆どが同じ姿をしていた。

 唯一大きな違いを挙げるとすれば、五機の内一機だけがオレンジ色に塗られているという点だろう。

 残りの四機は灰色の機体で、五機ともが航空機形態のMAに変形していた。ただ、ニャムにも元になった機体が分からない。

 

 

「灰色の機体の中にオレンジが居るっす。多分それが隊長機!!」

 ニャムは操縦桿を引いて全速力で離脱しようとする。

 

「ガンダムエアマスターについてくる……。これはやっぱり戦犯やらかしたのでは!?」

 彼女の機体は砂漠の犬の五機に追い付かれない速度で飛行するが、一向に引き離せる気配がなかった。

 

 そうなれば後ろを取られている以上無事に仲間の所に戻るのは不可能だろう。

 ニャムは覚悟を決めて機体を上空に持ち上げた。

 

 

「こなくそぉ!! やってやろうじゃないっすか!!」

 言いながら、彼女は自分の機体を変形させる。

 

 

 背中の翼はMA形態から引き継ぎ、飛行能力の高さをそのまま人型形態に変形。その機体は、ライフルを二本持ちガンダムタイプの顔を向かって来る五機の編隊に向けた。

 

 

 

「機動新世紀ガンダムXより、ガンダムエアマスター! ニャム・ギンガニャムがお相手するっす!!」

 ライフルを連射するのは、ガンダムXに登場するMSエアマスター。

 作中でも屈指の機動力を持っている可変機であるが、機体の軽量化の為に武装が少ないのも特徴である。

 

 

 連射したライフルは先頭にいたオレンジ色の機体の翼を穿つが、撃破とはいかなかった。

 そして、離脱するオレンジ色の機体以外の四機がニャムのエアマスターに襲い掛かる。

 

 

「ひぇぇ!?」

 機体の翼の前縁にサーベルが展開された四機の機体が、次々とニャムのエアマスターを切り刻んだ。

 

 

「……無念。しかし、もしかしてあの機体は───」

 四機の灰色の機体の攻撃で、ニャムのガンダムエアマスターは爆散する。

 

 

「よーし、上々だ。各機フォーメーションE、次の敵を仕留めるぞ!」

 オレンジ色の機体と合流した四機は、再び編隊を組んで砂漠の空を駆けた。

 

 

 

 

「───ニャムさん! ダメだ……やられたっぽいぞ」

 表情を痙攣らせるロックは、ニャムが最後に送ってきた通信を眺める。

 

 敵は可変機で、オレンジ色の機体一機と灰色の機体四機。内オレンジ色の機体の翼は被弾。

 

 

「オレンジが隊長機なら、それがフラッグ機か? だとしても、ニャムさんの死は無駄にしないぜ」

「死んではないけどな……。とにかく、ニャムさんが飛んでた東側に注意しよう。そこから敵が来る筈だ」

 ロックにツッコミながら、ケイはニャムが居た方角に機体の頭を向けた。

 

「対空監視は任せろ。ユメ、戻ってこれるかー?」

「今急いで戻ってるよ!」

 ロックの言葉にユメが返事をして、それを聞いたロックはGNスナイパーライフルのスコープを覗きながら舌を巻く。

 

 

 ライフルの先───東側にはケイとカルミアが居て、敵が来たら先にケイとカルミアが遭遇してしまう位置だ。

 しかし、高台に居れば遠くまで見渡せる。今ここを動くのは自分の役目じゃない、ロックはそう考えて自分の眉間を抑えた。

 

 

「俺はリーダーだからな……。しかし、敵さん遅くねーか?」

「ロック、敵が来たぞ!」

「は!?」

 突然の通信にロックは驚いて唖然とした声を出す。対空監視は怠っていない。見ている方角だって間違えていない筈だ。

 

 

「敵さん、地上から来やがった。が……一機だけみたいよ?」

 続くカルミアの言葉に釣られてロックはスコープを地上に向ける。

 

 

 そこには確かに一機のMSが砂の大地を走っていた。

 四足歩行の足に車輪を付けて、砂を巻き上げながら走るMSの姿が。

 

 

「ニャムさんは航空機型の可変機に襲われたんじゃなかったのか!?」

 その姿を見て唖然とするロック。ただ、一機だけというのも気になる。

 

 

 

「ったく、とりあえずこっちはこっちで敵さん迎撃するかねぇ。下がってなケー君!」

 カルミアは現れた一機のMSにビームライフルを向けた。

 

 砂漠を車輪で走る四足歩行のMS。

 一見ガンダムSEEDに登場するラゴゥやバクゥのようだが、ニャムが言っていた事がどうも気になる。

 

 

「吹き飛びなぁ!」

 ライフルを放ち、同時にバックパックからミサイルを連射するカルミア。ライフルは避けられたが、ミサイルが追撃して敵の機体を襲った。

 

「……ビンゴ───ん?」

 砂埃が晴れて、その中から機体が歩いて来る。

 

 

 

 

 オレンジ色のMS。

 背中に背負う翼の片側にダメージがあるようだが、それ以外にダメージは見られない。

 

 

 それよりも───

 

 

「ガンダム……」

「あれは───」

 ───その機体は四足歩行の姿ではなく、二本の足で立つオーソドックスなMSの姿をしていた。

 

 

「───ガイアガンダムか」

「───お見せしよう、僕らの機体。ガイアトリニティの力を」

 フォース砂漠の犬。激戦が走る。




居るんだよGBNには。アニメキャラになりきっちゃう人が。

ついに三十話!!
そんな訳で始まりましたフォース砂漠の虎ならぬ砂漠の犬ののバトル。早速ニャムさんのエアマスターが撃破される怒涛の展開です。エアマスターファンの人はごめんなさい……。


次回もお楽しみに!読了ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。