ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
アラートが鳴った。
「敵!? ケイ達の所に居るんじゃねーのかよ!!」
聞こえたアラート音に舌打ちをしながら反応するロック。機体を背後に向けると、ニャムからの連絡通り四機の航空機型に変形したMSがこちらに向かってきている。
「回り込まれた……だと。ケイの方に現れたオレンジ色の奴は囮ってか!!」
ライフルを構え放ったが、四機の灰色の機体は一斉に散開してそれを避けた。
「なろぉ!!」
さらに連続でライフルを放つ。二機は上空に、残りの二機は低空に広がって攻撃に集中出来ない。
「ちょこまかとよぉ! だが、地面すれすれ飛んでる飛行機なら落としやすいぜ!!」
ロックは低空飛行をする二機に狙いを定めた。
MSならともかく、航空機の旋回性能で真っ直ぐに突っ込んでくる機体がビームライフルの狙撃を避けるのは難しい。
ロックは内心で「貰った!」と叫びながら、引き金を引く───その直後。
「変形した!?」
地面を低空飛行していた筈の航空機は、突然四足に履帯を持つMSへと変形する。
そのまま砂の大地を高速で移動する四本足のMSは、ロックの狙撃を難無く交わしてみせた。
「空飛ぶバクゥってかぁ!? この……落ちろっての!!」
さらにライフルを放つロック。しかしそれは全く当たらずに、敵の航空機型二機と四足歩行型二機に囲まれてしまう。
「なんなんだよちくしょぉぉおおお!!」
背中についている砲身から次々にビームを放つ四機の攻撃に、ロックのデュナメスHellはなす術もなく撃破されてしまった。
デュナメスHell撃破。
☆ ☆ ☆
モニターを見ながらニャムは唖然とする。
ケイとカルミアの所に現れたガンダムタイプのMS。そしてロックを倒した航空機型と四足歩行型の機体は、全て同じMSだった。
「ガイアトリニティ。三つの形態を持つ可変MSですわ」
「地上と空中、其々に特化した形態に変形出来る機構を持つガイアって事っすね……」
アンジェリカの言葉にニャムは唇を押さえながら眉間に皺を寄せる。
一瞬にして二機が撃破され、ReBondに残る戦力は三機のみになってしまった。ニャムは「これは……」と目を細める。
「……やられた」
「やられたな」
続いて撃破されて観戦室にやってきたロックにノワールが話しかけた。ロックは非常に気不味い表情で彼と視線を逸らす。
「……な、なんだよ」
「別になんでもないが? なんだ、慰めて欲しいのか?」
気不味そうなロックに対して煽るように言葉を漏らすノワール。ロックは唇を噛んで俯くが、そんな彼にノワールはこう続けた。
「お前達の目標はなんだ?」
「は? それは……有名になってアオトやニャムさんのお兄さんを見つける事だけど」
「勝つ事だけが前に進む方法じゃない。敗北から得るものもある。全ての事に学び、前に進める。それが俺達子供の特権だ」
笑いながらそう言うノワールの言葉に、ロックはガンダムUCに登場するとある人物の名言を思い出す。
「……結局人間ってのは大人も子供も間違えるってか」
「ジブンは結構好きっすよ、フル・フロンタルの名言」
「だけどよ、負けるのはやっぱり悔しいな」
「そうっすね」
モニターに戦火が映った。
「ユメちゃーん、到着までどのくらーい?」
「五分は掛かると思います!」
カルミアの問い掛けに返事をするユメ。
ロックが撃破された数秒後、カルミアとケイは冷や汗を流しながら武装を目の前のMSに向けている。
ガイアトリニティ。空陸特化形態を持つガンダムは、四足歩行型に変形し二人を翻弄していた。
「ロックが四機にやられたって事は、その四機がこっちに向かってくるって事か……っ!」
「そうなる前にユメちゃんが到着したとしても不利なのは変わんないけどねぇ。……流石に手負いのアレだけは落としとかないと!」
言いながら、カルミアはレッドウルフのミサイル砲門を全て展開する。
発射と同時にライフルを胸部メガ粒子砲と連結、スラスターを吐かせて機体を前に押し出した。
「ケー君はそこにいなよ! ……ま、この試合は別に負けても良いんだけどさ。格好だけつけとかないと信用されないもんねぇ」
小声を漏らしながら、メガランチャーの標準を合わせるカルミア。
「それにこのオレンジのが隊長機なら、これがフラッグ機かもね! これ落としたら勝ちかもよ!」
広範囲にミサイルを展開した事で、避けようとすればある程度動きを見切る事が出来る。
だから彼はわざと作った弾幕の穴にメガランチャーを向けた。
───しかし。
「避けない!?」
ガイアトリニティはメガランチャーの射程には入らずに、ミサイルに直撃する。爆風が砂を巻き上げて、オレンジ色の機体は炎に包まれた。
「やったか……?」
「ケー君、そいつはフラグって奴よ」
着地したレッドウルフは砂埃にライフルを向ける。同時に、砂埃の中から放たれたライフルがレッドウルフのライフルを貫いた。
「うぉ?」
誘爆するライフルを手放しながら、カルミアは砂埃の中に視線を向ける。
「……オレンジじゃない?」
しかし、砂嵐の中で人型のMSに変形しライフルを構えていたガイアトリニティの色はオレンジ色ではなくて灰色になっていた。
「そうか、フェイズシフト装甲だ……っ!」
「なるほど、隊長機じゃなかったって事ね。つまり、この相手さんは俺達を足止めしてロッ君を倒す為の捨て駒って訳だ」
ケイの言葉に、カルミアは口笛を吹いてから口角を吊り上げる。ニャムの散り際の攻撃はしっかりと狙い通りオレンジ色の
「……アレが、地味に面倒」
「全部が同じ機体故に、狙いを定められない。そして機体の特徴を活かして作戦を立てるフォースのリーダー、アンディの指揮力があのフォースの強みだ」
観戦室でスズとトウドウが、一年前の砂漠の犬とのバトルを思い出しながら言葉を漏らす。
一見ふざけているように見えた敵将だが、その指揮能力と采配は去年のNFTで第七機甲師団のロンメルにも匹敵すると噂された程だ。
「さて、ReBondの新メンバーとストライクの子がどうするか…… 見者ですわね」
「ケイ殿……」
戦況が動く。
「カルミアさん! 敵が!」
アラートが鳴った。バッグモニターに航空機型の機体が四機映る。
「おっとコレは……。ユメちゃんは間に合いそうにな───あら」
そしてカルミアが背後に気を取られた隙に、前方にいた筈のガイアトリニティが飛び出した。
「来るか……っ!」
ビームサーベルを構えながらケイのストライクBondに突撃するガイアトリニティだが、ストライクに肉薄した次の瞬間、地面がビームを六連射して機体を爆散させる。
ガイアトリニティ(一機目)撃破。
「じ、地面がビームを……」
「インコムを置いといたのよ。地上じゃ飛ばせないからね。……ま、この状況なら相手さんはどっちがフラッグ機か分かってらーな」
「なるほど……」
感心するケイに、カルミアは「敵さん来るわよ」と機体を反転させた。
航空機型が四機。ライフルを失ったレッドウルフだが、ライフル一つ失った程度で全身武器庫のこの機体が火力を失ったとはいえない。
スラスター付属の肩部ビームキャノン、胸部メガ粒子砲、ビームハンド、頭部バルカンを斉射するレッドウルフ。
ケイもヴァリアブル・サイコ・ライフルとブラスターカノンを連射し、ガイアトリニティを牽制する。
「散開して回避! 各機フォーメーションD、敵を撹乱する!」
「やっぱりさっきのはリーダーのあの人じゃない、でもリーダー機はどれだ……フラッグ機は!」
アンディの掛け声に合わせて、四機のガイアトリニティは四足歩行形態に変形。無限軌道で砂漠の大地を縦横無尽に駆け回った。
「斉射!!」
さらにアンディの掛け声でガイアトリニティ全機がストライクBondに砲身を向けてビーム砲を放つ。
「……っ」
ケイはスラスターを吐かせて上昇し、それを避けた。しかし、そうするしかないとはいえ囲まれている状態で足場を失うのは悪手でしかない。
「隊長、コイツは貰いです!!」
「くそ!」
近くにいたガイアトリニティが飛び上がり、背面の翼にビームサーベルを展開させる。
ニャムを襲ったそのサーベルがストライクBondを切り裂こうとした次の瞬間、ストライクとガイアの間にカルミアのレッドウルフが割って入った。
サーベルがレッドウルフを切り裂く。
「カルミアさん!」
「なんだコイツ、硬過ぎる……っ!」
「装甲を舐めるなよ───落ちろ!!」
斬撃を耐え切ったレッドウルフはガイアトリニティを両腕で掴むと、胸部メガ粒子砲を放った。
爆散するガイアトリニティだが、爆風からストライクを庇うように着地したレッドウルフに残り三機のガイアトリニティから砲撃の雨が降る。
「……っと、おじさんはここまでか」
ストライクBondを突き飛ばしたレッドウルフはライフルに焼かれ爆散した。
レッドウルフ、ガイアトリニティ(二機目)撃破。
「これで三対二、しかし後続のスカイグラスパーはまだ来ない。実質三対一だ! 仕留めに行くぞ!」
「オーケィ、アンディ」
「了解です! 隊長!」
三機のガイアトリニティが再びケイのストライクBondを囲む。ヴァリアブル・サイコ・ライフルを連射するが、無限軌道による砂上での機動力を捉える事は出来なかった。
「くそ……」
「君はこれまで本気で勝とうと思った事があるかね?」
「はい?」
突然、ケイのモニターにアンディが通信を入れてくる。しかし、彼の言葉の意味がケイには理解出来なかった。
「どういう意味ですか……」
「君のGBNでの戦闘を見させて貰った、敵情視察って奴だ。勿論君だけを見た訳じゃない。ただ僕は、君が気になった」
敵の攻撃が少しの間止まった事に少し安堵しながらも、ケイはアンディの言葉に目を細める。
自分の事が気になった。
不可解な言い回しで、理解が追い付かない。
「本気で勝とうって……俺はいつでも真剣に───」
「本当にそうかな。君はどこか冷静ぶって、格好を付けてるんじゃないか? 真剣に、心からバトルに燃えたことはあるのか!?」
再び、ガイアトリニティからの砲撃が始まる。三機の攻撃を辛うじて避ける事はするが、このままでは攻撃もままならない。
「心からバトルに……」
「そうだ、君はどこかで格好を着けている。心のどこかで自分の熱にセーブを掛けている。どうだ、違うかね……少年!」
ガイアトリニティの一機がMS形態に変形しサーベルを構えて肉薄してきた。
ケイはイーゲルシュテルンを放ちながらヴァリアブル・サイコ・ライフルを盾にサーベルをいなす。
同時にガイアトリニティはフェイズシフト装甲を展開。灰色の機体はオレンジ色に塗られ、イーゲルシュテルンをいとも簡単に弾き返した。
そうして振られたサーベルがストライクの左肩を切り裂いて、ブラスターカノンの砲身が斬り飛ばされる。
「この……隊長機か!」
ライフルを一つ手放して、腰にマウントされたビームサーベルを抜いて振り払った。
アンディのガイアトリニティはそれを軽々と交わして四足歩行形態に機体を変形させる。ライフルはただ砂漠の砂を焼き、アンディは「凄まじい火力だ」と不敵に笑った。
「俺は手を抜いてなんか……」
「そうさ、君は手を抜いていない。でもどこか一歩引いている。君のGBNでの初めてのバトル、諦めるのが早過ぎたのではないかな? メフィストフェレスでのバトルも、決して自分では決めようとしなかった。そして決定的なのがフォース内の二対二のバトルの時、あの時君はデュナメスに取り合わなかった! 他のバトルもそうだ! CPU戦でも、君はどこか引いて熱くなれていない!!」
「貴方に何が分かるって言うんですか……っ!」
ライフルとブラスターカノンを連射する。しかし、ガイアトリニティの機動力に狙いが追い付かない。
「分からぬさ、人は己の知る事しか知らぬ。おっとこれはクルーゼの台詞だった。気を取り直してもう一度聞こう……君は何の為にガンプラバトルをやっている!」
「何の為にって───」
「ケー君!」
撃ち合いの最中、遅れてきたスカイグラスパーが空中からミサイルを発射した。援護射撃の間に、ケイは少し距離を取って態勢を持ち直す。
「そうだ、君は───」
ガイアトリニティの一機がスカイグラスパーに砲身を向けた。ケイを助けようと必死になっていたユメはロックオンされているのに気が付くのが遅れて悲鳴を上げる。
「隊長、スカイグラスパーを落とします!」
「うわぁ!?」
「ユメ!!」
ストライクBondが飛び出した。しかし、その眼前にMS形態のガイアトリニティがサーベルを手に立ち塞がる。
「退けぇ!!」
「───君は彼女の為にガンプラバトルをしている!!」
立ち塞がるガイアトリニティに、ケイはストライクの肩でタックルを仕掛けた。
「ほぅ……っ!」
仰反るガイアトリニティを無視して、ケイはスカイグラスパーに砲身を向けるガイアの足にビームサーベルを投擲する。
「止めろ!!」
さらに地面にライフルを放って砂をめくり上がらせて、スカイグラスパーを狙っていたガイアをひっくり返した。
「……そして君はGBNで一度だけ本気になった事がある。あの改造ガンプラキラーが駆るゴッドガンダムとのバトルだ。その時の戦いっぷり、まさに狂戦士と呼ぶに相応しい」
ひっくり返って仰向けになったガイアトリニティをその足で踏み付けて、ヴァリアブル・サイコ・ライフルを突き付けるストライクBondを見ながらアンディは口角を吊り上げる。
「そうだ、その戦いっぷりだ……」
引き金を引いた。ガイアトリニティの胴体に穴を開けて、砂と炎が巻き上がる。
ガイアトリニティ(三機目)撃破。
「……そうだ、その君と闘いたかった!」
「……俺は、別に格好付けてなんか」
少年の頭の中で、何かが割れかけていた。
ランチャーストライクの再現がしたかった。
最近暑いですね。流行病と熱中症にはお気をつけて!読了ありがとうございます!