ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
どこか遠目で二人を見ていた。
「ガンプラバトル……?」
「おう、ケイスケもやらねーか? 俺とアオトはめっちゃハマってるぜ」
楽しそうにガンプラで遊ぶ幼馴染みの二人。
物心ついた時から二人とは仲が良くて、よく一緒にガンプラを作って遊ぶ中である。
だけど、二人が新しく始めた遊びに少年は初め手を出さなかった。
ガンプラが本当に動いて、戦って壊れる。
昔からガンプラで遊んでいたから、壊れる事に慣れていないと言えば嘘になるが、だからといって自分からガンプラを壊そうなんて思えなかった。
「二人とも何してるの?」
「ガンプラバトル。ユメカもやるか?」
「私はやらないかなー。でも、なんかアオト君格好良いね!」
「な……」
ただ───
「もう一度聞こう……君は何の為にガンプラバトルをやっている!」
ただ───
「そうだよ。何度壊れたって、何度でも直せば良い。繋げば良い。だから───」
ただ───
「ケイは───ケイスケは、ユメカの事が好きだから、気を引くためにガンプラバトルを始めたんだ……」
「え、でもそれってユメちゃんは───」
「知らねーよ、二人して鈍ちんだからな。……だけど、あの事故があった。アオトが居なくなって、アイツは本当の所ライバルを失ったっていうかさ……。自分の気持ちとかに負い目を感じてんだよな」
ニャムの言葉を遮ってロックはそう言う。
そんな幼馴染み達に何も出来なかった自分が嫌で、ロックリバーが生まれた。
「
───ただ、少年は手を強く握った。
☆ ☆ ☆
「……そうだ、その君と闘いたかった」
「……俺は、別に格好付けてなんか」
ストライクBondとガイアトリニティが向き合う。
戦況としては残りのガイアトリニティが二機、ReBondはストライクBondとスカイグラスパーが一機ずつだ。
「ここで一つ身の上話をしよう」
アンディは操縦桿から手を離してそう言う。ケイは意味が分からずに眉間に皺を寄せた。
「実は僕はそこのリリアンとリアルで婚約していてね、次のNFTで優勝した暁にはプロポーズして結婚しようと思ってるんだ」
「はい!?」
突然の本当の身の上話に、ケイは驚いて目を丸くする。彼が何をしたいのか、まるで理解が出来なかった。
「何をゲームに真剣になってるんだって思うかい。ゲームに人生を賭けて、バカだと思うかい?」
「いや、それは……」
「かのアンドリュー・バルトフェルドはこう言ったな……戦争には明確な終わりのルールなどないと。だがこれはゲームだ。どちらかが滅びるまで戦う必要もない。……ならどうして戦う! 何の為に戦う! 真剣になるのが怖いのか? 真剣に戦って負けるのが恥ずかしいのか? なのに続ける理由はなんだ! 君は……誰の為に戦っている!!」
「俺は───」
「ケー君!!」
二人の間に入るようにスカイグラスパーがライフルを地面に撃つ。アンディは不適に笑いながらそれを軽々しく交わしてライフルを構えた。
「……何度も言ったぞ、これは敵情視察だ。僕は君の本気が見たいんだよ」
「ユメ!!」
「ケー君、荷物だよ!」
アンディのガイアトリニティのライフルがユメのスカイグラスパーを貫く。
しかし、同時にユメはスカイグラスパーが背負っていたスラスターと武器を下ろした。
ストライクBondのクロスボーンストライカーを。
スカイグラスパー撃破。
「……本気、か」
エクリプスストライカーを外しながら、ケイはユメからの贈り物を受け取って機体の武装を換装させる。
スカイグラスパーにマントを羽織らせる訳にもいかないので、試合の途中で換装する時にはマントはないが今は機動力が欲しい。ありがたい贈り物だった。
「多分、俺がガンプラバトルを始めたのはアンディさんの察してる通りですよ。……だけど、格好付けて本気を出してないつもりなんてないです」
「だが君は現に、明らかに動きがちがう時がある。まるで狂戦士のように」
「それは……」
言われてみると、どこか心覚えはある。
「怖いんだ……」
「怖いか……」
ただ、格好付けている訳ではない。怖いんだ。本気で相手を倒すのが。
「ケー君はどーしたのよ」
「アイツは多分、事故の原因は自分だって思ってるんだよな……。自分がアオトのガンプラを壊したから、親父さんがアオトのガンプラを投げて……って、おっさんに事故とか言っても分からないか」
ユメと一緒に観戦室にやってきたカルミアの質問に答えながら、余計な事を言ったと手を横に振るロック。
そんな彼の言葉を聞いてカルミアは「ふーん……なるほど」と目を細める。
「……アイツは元々他人の事に敏感な優しい奴だからな」
「ケイ殿……」
「ケー君……」
「でもアイツは、それ以上に負けず嫌いだ。だから───」
だから───
「NFTで優勝して結婚する、そう言った僕の夢を壊すのが怖いか。だから本気で戦わないと?」
「それは……」
「なら君達は負けても良いのかね。自分達が勝つ目的が、相手に劣っていると認める気か?」
「な……」
「君が本気で戦った改造ガンプラキラーとのバトルの時、君は相手の勝つ目的を認めながらも自分の意地を見せた! 今の君にはその意地はないのか! 少年!!」
MS形態のガイアトリニティがサーベルを持ってストライクBondに襲い掛かった。
「……っ!」
スラスターを反転させて後退するケイ。
アンディは深追いせずにライフルを連射するが、ケイはクロスボーンの機動性を活かしてなんとか攻撃を交わす。
───な、何すんだよ父さん! ───
───こんな物もう直したってな! なんの意味ないんだ! ───
───プラモ、車に轢かれちゃう……っ───
いつかの光景が頭を過った。
何かを壊すのが怖い。
誰かが守ろうとした何かを、誰かが守った何かを、元に戻らなくなってしまうのが怖い。本気で戦うのが怖い。
「目を背けるな!」
アンディが叫ぶ。
「戦いは非情だ。何かを守る事は、何かを守らないという事に他ならない。君が守りたい物はなんだ! これは戦争ではないが戦いだぞ、少年!! 君の守りたい物はその程度の物か!!」
「そんな事……っ!!」
「ならば戦え!! 守りたい物の為に───どちらかが滅びるまでな!!」
四足歩行形態に変形、ストライクBondに強襲するアンディ。無限軌道が砂を巻き上げながら、翼と頭部にサーベルを展開したガイアトリニティが大地を賭けた。
「俺は───」
───でも、なんかアオト君格好良いね! ───
───そうだよ。何度壊れたって、何度でも直せば良い。繋げば良い───
「───だから、ケイスケは負けない」
「───俺は、貴方に勝つ!!」
ケイの頭の中で何かが弾ける。
「……俺にだって、守りたい物があるんだ!!」
後退しながらザンバスターをアンディのガイアトリニティに向けるケイ。しかしやはり、放たれたライフルはガイアトリニティの機動力をとらえる事は出来なかった。
「そうだ戦え! そして君の本当の強さを見せてみろ!! 君の戦う理由で僕を超えて見せろ!! リリアン!!」
「後ろを取るわ!!」
二機のガイアトリニティがストライクBondを挟み撃ちにする。サーベルを構えて正面から突撃するのはアンディだ。
「ニャムさん、カルミアさん……タケシ、ユメ───アオト」
一瞬だけ目を瞑る。
脳裏に映ったのは仲間達の姿と、大切な友達だった。息を飲んで瞳を開ける。
彼のガンプラを壊したのは自分だ。幼馴染みの夢を壊したのも、友達との時間を壊したのも自分だ。
負けず嫌いなのもある。本当に彼女の事が好きだったのもある。
だけどそれが理由で全てを壊して、そんな自分が嫌になった。
「でも、だからこそ勝たなきゃいけない。何度でも直せば良い───そうだよな、アオト!!」
ライフルを地面に向ける。アンディは「遅いぞ!」とストライクBondに肉薄した。
同時に真下の砂に放たれたライフルが砂漠の砂を巻き上げる。砂埃に巻き込まれたアンディは目を見開いた。
「これが狙いか……っ!」
「……落ちろ!」
砂埃に足を取られたアンディのガイアトリニティにザンバスターを向けるケイ。しかし、直後にアラートが鳴ってケイは舌を鳴らす。
「アンディ!」
砂漠の犬副隊長、アンディの婚約者であるリリアンのガイアトリニティが背後から突進してきた。
ケイはスラスターを起用に調整して、機体をその場でバク転させる。そうしてリリアンの上を取ったケイはザンバスターで彼女の機体の翼を撃ち抜いた。
「きゃぁ!?」
「リリアン!」
「胴体から逸れた……くそ!」
「凄まじい動きだ……。リリアン、援護を!」
リリアンの前に出るアンディのガイアトリニティは人型に変形してビームサーベルを構える。
明らかに今までとは違う動きにアンディは冷や汗を流した。
「ここまでとはねぇ……」
「はぁ……はぁ……」
「だがその集中力がいつまでもつかな!」
ライフルを放ちながら突撃するアンディ。さらにリリアンの援護射撃を交わしながら、ケイはあちこちに表示されるモニターに目を向ける。
「相手は二機、機動力で負けてるから攻撃が追いつかない。───追い付かないなら!」
攻撃を交わしながらケイはアンディのガイアトリニティにライフルを向けた。勿論、防戦一方のケイとは違い攻めているアンディには攻撃を避ける余裕がある。
左に機体を逸らすアンディ。ケイはそれを見てから、標準よりも大袈裟にライフルを逸らして引き金を引いた。
照準の先には何もいない。しかし、その刹那に攻撃を避けようと左に機体を逸らしていたアンディの機体が射線上に入る。
追い付かないなら、追い越せば良い。ライフルは俗に言う偏差射撃で、アンディのガイアトリニティの右腕を貫いた。
「何!?」
「次は外さない!」
目を細めてライフルを握る。しかしアンディも馬鹿ではない。狙撃制度が上がったのなら、接近戦を仕掛けるだけだ。
「高速戦闘を行うガイアトリニティの動きに着いて来られるかな!」
変形。今度は四足歩行形態ではなく、航空機形態。
アンディのガイアトリニティは高速で旋回してストライクBondの背後を取る。
そしてライフルを向けられた直後、機体を再び四足歩行形態に変形させて急降下で攻撃を避けた。
「釣られた!?」
「貰った!!」
肉薄。回転しながらビームサーベルを叩きつけ、ストライクBondのスラスターの一部と右腕をザンバスターごと切り飛ばす。
だが同時にギリギリ発射が間に合ったライフルがガイアトリニティの左翼を吹き飛ばしていた。苦笑いするアンディだが、彼は不適に笑う。
「……勝ったな」
二機の間にストライクの右腕が落ちた。
「君の機体に残された武装はアーマーシュナイダーとイーゲルシュテルンのみだ。腰のビームサーベルはアーマーシュナイダーと一本ずつの装備だったからね」
アンディはケイの戦いを研究している。彼の機体に残された武装は全て実弾兵器で、ガイアトリニティのフェイズシフト装甲を抜く事は出来ない。
「パワーが……」
それに加えてストライクBondは長丁場の戦いとスラスターへの被弾でエネルギーを使い果たしていた。
ストライクBondのフェイズシフト装甲はダウンして、機体の色が落ちていく。残された武装では相手の機体のフェイズシフト装甲に太刀打ちできない。
「これはゲームだから投降しろとは言わない。それに本来ならそちらの台詞の筈だからね。……いや、本気の君と戦えて光栄だったよ。次はNFTで会おう! リリアン、援護しろ!」
「了解よ、アンディ!」
リリアンの砲撃と同時にアンディのガイアトリニティは突進した。
「……負けない」
負けたくない。
勝負に勝ちたい。
───もう一度聞こう……君は何の為にガンプラバトルをやっている! ───
───でも、なんかアオト君格好良いね! ───
「俺は───」
クロスボーンストライカーをパージする。ストライカーは背後からのライフルに対して盾になるように爆散し、その衝撃も利用してストライクBondは地面を蹴った。
腰部のアーマーシュナイダーを左手に構え、ガイアトリニティに正面から突進する。
「───勝つんだ!!」
「───無駄だ!!」
二人の機体がぶつかり合った。しかし、フェイズシフト装甲を持つガイアトリニティに今のストライクの攻撃は通らない。
加えてガイアトリニティは右腕と左翼こそ失っているが武装は健在である。サーベルがストライクBondの動体を切り裂こうとするのを、ケイはなんとか足で押さえて止めていた。
「そのままパワーが上がってしまえば君の負けだぞ!」
「まだ……だ!!」
ケイは自分の機体がバラバラになっていくのも気にせずにちからずくでガイアトリニティを押し返す。
しかしそんな事をしたってなんにもならない筈だ。目的は? アンディは少し考えて、一つの答えに辿り着く。
「まさか───」
ストライクBondはガイアトリニティを、丁度先刻向き合っていた中央まで押し出した。
その場所には、切り落とされたストライクBondの右腕が───ザンバスターごと落ちている。
「いっけぇ!!」
そしてケイは、アーマーシュナイダーを投げ付けてザンバスターの砲身を切り飛ばした。
ザンバスターはバスターガンとビームザンバーの複合武器である。
この武器の砲身を切り飛ばせば、そこにあるのは持ち手であるビームザンバーだ。
ケイはガイアトリニティと自分の機体の真下にあるビームザンバーに足を伸ばす。接触回線で、ビームの刃を展開。
アンディのガイアトリニティを、地面から生えてくる形でビームザンバーが貫いた。
「罠……だと。右腕はくれてやったと……そういう事か」
「新しい仲間が教えてくれたんだ、武器にはこういう使い方もあるって!」
カルミアが使ったインコムの罠を思い返しながらそういう。
「確かに……俺は少し引いてバトルをしてたかもしれない。何かを壊すのが怖かったから。だけど……あなたの言う通りだ」
「ふ───」
「俺は仲間の為に戦う。その為なら……戦える!!」
アンディのガイアトリニティが誘爆して、ケイのストライクBondは爆風で吹き飛ばされた。
ガイアトリニティ(アンディ機)撃破。
「───良いバトルだった。だが、君の負けだ」
「───っ!?」
しかしバトルは終わらない。
これはフラッグ戦である。どちらかのフラッグ機が撃墜されない限り、勝負は終わらない。
「フラッグ機じゃない……しま───」
「終わりよ」
リリアンのライフルがストライクBondを貫いた。
ストライクBond撃破。
WINNER FORCE 砂漠の犬
戦闘シーンを書くのは難しいですね!
これにてVS砂漠の犬決着?どうなってしまうのか。
読了ありがとうございました!