ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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第五章──アンチレッド【ネクストフォースバトルトーナメント】
開幕NFT


 写真を手に取って覗き込んだ。

 

 

「触れるな」

 そんな声が聞こえて、写真を持った男はゆっくりと振り返る。

 

 

「この写真、妹さんに送ってたんだな。シャッチョサンよ、確か居たよね。妹さん」

「それが?」

 写真を手にした男の質問に「触れるな」と言った男は、目を細めて首を傾げた。

 その目は何処か虚を見ている。

 

 

「フォースReBondにその妹さんが入ってた。なんて奇怪な運命だこと。……なぁ、シャッチョサン。本当にやるのか?」

「関係ない」

 短い回答に、男は目を細めた。写真をゆっくりと元の場所に戻す。

 

 

「俺達のフォースの名前はアンチレッドだ。覚えておけ」

「……ほいほい。了解」

「……俺はGBNに復讐を果たす。それだけだ」

 その目はやはり、何処か虚ろを向いていた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 GBNの空に花火が上がっている。

 

 

 今日はNFT───ネクストフォースバトルトーナメントの開催日で、今日から二日間に渡り行わられるGBNの大きなイベントの日だった。

 

 ここ一年と半年以内に結成されたフォースのみが参加出来る大会で、注目されている新規フォースから無名の新規フォースまで様々なフォースが凌ぎを競い合う。

 

 

 そんなNFTの開会式会場に、フォースReBondの五人は立っていた。

 

 

 

「結局、あの赤毛の子が何だったのかは分からなかったなぁ」

「普通のNPDだったよね?」

 ロックとユメが、悩ましい顔でそんな会話をしている。

 

 前日。ベアッガイフェスで見付けたNPDは、ニャムが探している兄が写った写真に一緒に写っていた人物と同じ姿をしていた。

 しかしそのNPDは特にガンダムのアニメのキャラクターという訳でもなく、GBNがランダム生成したごく普通のNPDだという事しか分からない。

 

 メフィストフェレスのメンバーも彼女の事は知らず、カルミア以外の皆が首を傾げて悩んでいる。

 

 

「まー、分からない事を悩んでても仕方がないんじゃないかねぇ。今は目の前の事も重要でしょうよ、お兄さんを探すならさ」

 当日、ニャムの尋ね人の話を聞いたカルミアは手を広げてそう言った。彼のいう通り、今日はそのお兄さんやアオトを探す為にと目標を立てて進んできた彼等の晴れ舞台である。

 

「そ、それはそうですね」

「しかしこの写真の女の子がNPDだったなんて……変な話っすよね」

 口を尖らせるニャムに、カルミアは髪を掻きながら肩を叩いた。そうして彼女に視線を合わせ、こう口を開く。

 

 

「お兄さんが見付かれば、そんな悩みも晴れるってもんよ」

「それもそうかもしれないっすね」

 そうして話がついて、少しした所で会場が一斉に盛り上がった。壇上にMCが登場したのが見える。

 

 

 

「I would like if I may to take you……Oh、失礼! もしよろしければ、皆様方にこのネクストフォースバトルトーナメント───NFTをご説明させて頂きましょう!」

 赤いジャケットにピンクのシャツの目立つMCは、高々にマイクを上げながらそう語った。

 特徴的な左目のアイマスクと口髭。その姿は機動武闘伝Gガンダムに登場するストーカーそのものである。

 

 

「あ、ストーカーさんだ」

「今考えると凄い名前だよな」

「Gガンダム放送当時は、今お馴染みのストーカーという言葉は認知されてなかったらしいっすからね」

 ニャムの補足にユメとロックは感心して息を漏らした。そのストーカーの姿のMCはさらにこう続ける。

 

 

「そもそも二年前の事です。第二次有志連合戦後、GBNはさらなる盛り上がりを見せ新たなフォースが多数生まれました! ダイバー達は()()()()と呼ばれるプラモデルを駆り───戦って! 戦って! 戦い合わせ! 凌ぎを削っていたのです!!」

 MCの語りに周りはさらに盛り上がった。世紀末風味のダイバーが雄叫びを上げている。

 

 

「このNFTは、そんな活力に溢れる新フォースの戦いの場!! それでは!! 皆さんご一緒にぃ!!」

 MCはマイクとアイマスクを手に両手を広げ声を上げた。NFT開催の合図である。

 

 

「ガンプラファイトォォ!! レディィィゴォォォッ!!!」

 掛け声に合わせる参加者のダイバー達。その中にニャムとユメとケイも混ざる中、ロックは壇上に現れる一人のダイバーに視線を移した。

 

「あれは───」

「さてさて皆さん、バトル開始の前に! 今回は特別ゲストをお招きしました!! GBNのチャンピオンオブチャンピオン!! クジョウ・キョウヤ!!!」

 MCの紹介に手を振る一人の男。

 

 金髪で長身のイケメン。ガンダムのアニメに出ていてもおかしくない容姿のその男の名はクジョウ・キョウヤ。

 

 

 フォースランキング1位AVALONのリーダーにして、チャンピオンの称号を持つ現GBN最強のダイバーである。

 

 

「───第二回NFTに参加する皆、おはよう。今日はゲストというより、一傍観者としてこの場に立つ事にした。ここに居るだけでも感じる、君達の熱い魂をどうか! 今日明日のバトルにぶつけて欲しい!」

 クジョウの台詞に会場は一段と盛り上がって熱狂の渦を巻いた。

 

 

 

「あれが……チャンピオンか」

「あの人に勝てば簡単に有名になれるんじゃね?」

「あはは、それが出来たら苦労しないっすよ」

 言いながら、ReBondの五人はトーナメントバトルが行われる各会場に向かって歩く。

 

 NFTのルールはトーナメント形式。まずはAブロックとBブロックに別れ戦い、各ブロックの勝者同士で決勝戦を行うものだ。

 

 

 発表されたトーナメント表を見に歩いていると、ケイ達の前にフォースメフィストフェレスの面々が歩いてくる。

 

 

「ついにこの日が来ましたわね!」

 そういうアンジェリカは、腕を組みながらトーナメント表を見た。

 

 ReBondとメフィストフェレスは同じBブロック。それに、近いところに名前が書いてありロック他数名が口角を吊り上げる。

 

 

 参加チームは全63チーム。6回戦で優勝チームが決まるバトルだ。

 

 フォースReBondとメフィストフェレスは、順調に勝ち上がれば三回戦目のベスト8を巡る場で戦う事になる。

 

 

 

「俺達と戦うまで負けるなよ」

「ハッ、こっちの台詞だぜ」

 ノワールとロックが視線の間で火花を散らした。

 

「……次こそ落とす。だから、私の前に立って」

「うん。私もまたスズちゃんと戦いたい!」

 スズとユメもお互いを意識して、ついにこの時が来たんだと一同に心臓が高鳴る。

 

 

 そんな中でカルミアだけが、トーナメント表を見ながら目を細めていた。

 

 

「───残念ながら、それは難しいね」

 小声を漏らす彼の視線の先にあるのは、勝ち続ければメフィストフェレスと二回戦で当たるチームの名前───

 

 

「……本当にやるのか、シャチョサンよ」

 ───フォース、アンチレッド。

 

 

 

「いやぁ、これは幸運と呼ぶべきか残念がるべきかな」

 そんな二つのフォースのメンバーの間に、アロハシャツとグラサンの男が割って入ってくる。

 

 ケバブの男───砂漠の犬リーダー、アンディだ。

 

 

 

「アンディさん!」

「砂漠の(いぬ)!」

(けん)だ」

 ケイとアンジェリカの言葉に片手を上げるアンディは、表示されているトーナメント表を眺めながら自分の顎を触る。

 

 フォース砂漠の犬はReBondやメフィストフェレスとは違うAブロックに配置されていた。

 

 

「君達と同じブロックにならなかったのは残念だよ。もし当たるとすれば決勝……それもどちらかとだけになるからね」

「決勝に行くのは私達ですわよ」

 アンディの挑発めいた言葉に、アンジェリカは不敵に笑いながら答える。

 

「ジブン達も負けないっすよ!」

 やる気を出すニャムは拳を持ち上げて声を上げた。

 

 

 Aブロックの優勝候補は言うまでもなく砂漠の犬である。

 Bブロックの勝者が、このフォースと戦いになる筈だ。そのフォースはReBondか、メフィストフェレスか。それとも───

 

 

 

「それじゃ、どちらかとは決勝で会おう。楽しみにしているよ」

 そう言ってアンディはAブロックの会場へと歩いて行く。ReBondとメフィストフェレスのメンバーは、お互いに火花を垂らしながらBブロックの会場へと向かった。

 

 熱気が会場全体を包み込む。

 

 

 

「ReBond集合!」

 試合が始まる前に、ロックの掛け声で五人が集まった。大会に出る為の最低人数である五人。周りにはメフィストフェレスを含め様々なフォースのメンバーが集まっている。

 

 このダイバー達全てが、今から敵となるのだ。

 

 

「俺達の目標は有名になってアオトとニャムさんの兄さんを探す事だ。おっさんはなんやかんやで付き合ってくれてありがとな!」

「ま、おじさんは頼まれただけだから。それに……ここは心地良いしね」

 カルミアは視線を逸らして頭を掻く。その視線の先で、一人の男が笑っていた。

 

「ニャムさん、一番頼りにしてるぜ。今日もとびっきりのガンプラを宜しく!」

「任せて下さいっす。この日の為に丹精込めて作ってきた新作をお見せするっすよ!」

 ニャムはやる気十分といった表情で拳を上げる。これは期待できるとロックは笑った。

 

 

「ユメ、お前の好きなように飛べ。何も気負うことはねぇ! 俺様達が居る」

「うん、ありがとう。タケシ君」

「ロックな!!」

 ツッコンで、ロックはケイと視線を合わせる。

 

 

「ケイ、俺達は前に進むんだ。あの時から止まってる今を前にな。だから後の事は気にするな。全力で、全部壊す気でいけ! アイツが言ってたろ、壊れたって───」

「───直せばいい」

「おう!」

 二人の拳がぶつかった。

 

 

 

 

「作戦会議だ」

 少し離れたところで、メフィストフェレスのトウドウが声を上げる。

 

「少し早いんではなくて?」

「気合入れがしたいんだろう。円陣でもやるか?」

「……ち、違───わないが。とにかく話がある」

 ノワールの言葉に顔を赤くしたトウドウは、メンバーを見比べて一度咳き込んだ。

 

 

「スズ、いつも通りやれば良い」

「……分かってる」

 その眼光が光る。

 

 

「レフトとライト、お前達の活躍がスズをどう活かすかに関わってくる。ぬかるなよ」

「任せといてよ!」

「僕らにお任せ!」

 二人は左右の親指を立ててトウドウに挨拶をした。

 

 

「ノワール、俺は出れない。皆を頼んだぞ」

「当たり前だ。俺はこのフォースのリーダーだからな、参謀殿」

 ノワールはトウドウの目を真っ直ぐに見てそう答える。トウドウは最後にアンジェリカに視線を向けて、眼鏡のズレを直す仕草をした。

 

 

「我等が姫、存分に暴れてメフィストフェレスの───お前のガンプラが最高だと世界に証明してこい!」

「当たり前ですわ! 私のガンプラ天元流の力、世界に見せてくれましてよ!!」

 アンジェリカはそう言いながらトーナメント表を指差す。

 

 

「待ってなさいフォースReBond、砂漠の(いぬ)! 私達の雪辱を、今回こそ晴らさせてもらいますわよ!!」

 そうして高々と声を上げるアンジェリカ。その瞳は真っ直ぐで、とても眩しい。

 

 

 

「さて、遂にこの日だ。諸君、分かってると思うがこの大会は僕にとってとても大切なものである。奮闘してくれたまえ」

 別会場では、アンディがフォースメンバーに言葉を掛けていた。メンバー達は敬礼し、アンディとその隣に立つリリアンに視線を向ける。

 

 

「リリアン、この大会に優勝したら……結婚しよう」

「えぇ、アンディ。必ず優勝しましょう」

 二人の抱擁に、残る三人のメンバーは拳を強く握った。

 

 

 

 

 絶対に負けられない思いがある。

 

 

 

 

「……遂にこの日が来たぜ。GBNへの───復讐の時がな!!」

 ───それぞれの思いが交差する、NFTが幕を開けた。




リライズが面白過ぎて毎週が楽しみでならない。


作品はようやくNFT開幕に辿り着きました。実はここまでを二十話くらいで書き上げる予定だったんだけど、倍くらい掛かっているのはなぜ?
次回からもゆっくりと進んでいきます。読了ありがとうございました!
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