ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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有効射程(キリングレンジ)49.8km

 彩鮮やかな五機のMSが並んで砂埃を上げる。

 

 

「───我等フォース七色の七連星! 見せてやるぜ、レインボーストリームアタックを!!」

 その五機が、一斉に獲物を構えて直進した。七色というが五機しかいないので二色足りないのはルール上仕方がないだろう。

 

 

 NFT───ネクストフォースバトルトーナメントのルールは五人一チームのフラッグ戦だ。

 

 

 

「ケイ殿、三時の方向から敵が五機並んで来るっす!」

「こちらユメ、目視でも確認したよ! 画像送るね!」

「こいつぁ、なんかカラフルなドムだな」

 ユメのスカイグラスパーが空中から撮影した画像を見て、カルミアは苦笑いをする。色々なフォースが参戦しているのは良い事だ。

 

 

「───気の毒だが、負ける訳にはいかんのでね」

「ケイ、敵が来るぞ!」

「分かった。引き付ける!」

 ロックの言葉に、ケイは機体を前に出してスラスターを吹かせる。

 

「一人で出て来るとは愚かな事よ! お前ら、あの白いのにレインボーストリームアタックを仕掛けるぞ!!」

 姿を見せたストライクBondに、相手のフォースのリーダーは不敵に笑いながら声を荒げた。

 

 

「貰った! レインボーストリームアタック!!」

「五機しかいないのにレインボー!?」

 五機の重量MSが一斉にケイのストライクBondに向かって突進する。ケイは後ろに跳びながらライフルを放った。

 

 

「貰ったぁ!!」

「七機いたらヤバかったけど!!」

 後退するストライクはギリギリの所でドムの攻撃を躱していく。そして、ある程度後退した瞬間───ドム達を背後からビームが貫いた。

 

 

「───何!?」

「いけ、皆!!」

 ケイのストライクBondを囮にして、五機のドムを背後からReBondのメンバー達が攻撃する。

 背後からの攻撃に反応が遅れたフォース七色の七連星は、体制を立て直す間もなく全滅した。

 

 

 

 WINNER FORCE ReBond

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 歓声が上がる。

 ネクストフォースバトルトーナメント───NFTはケイ達の想像以上の盛り上がりを見せていた。

 

 

 無名フォースの筈のReBondの戦いだが、観客ステージの盛り上がりは予想以上である。

 

 

「こりゃ、優勝すれば有名になるなんて目標は一発だな」

「優勝しちゃうっすか? 優勝しちゃいましょうか?」

「お疲れだな、ReBond」

 そんな観客ステージの盛り上がりにはしゃぐロックとニャムの後ろから、ファースメフィストフェレスのメンバーであるトウドウが声を掛けてきた。

 

 

「トウドウさん」

「まずは一回戦突破おめでとう。良いバトルだった。次はうちのフォースのバトルだ、一緒に見てくれないか? 暇なんでな」

 手を上げて挨拶をするケイに、トウドウは中指で眼鏡を押さえながらそう提案する。

 

 

「勿論。一緒に見させてください」

 同時にスクリーンモニターが光り、フォースメフィストフェレスのバトルが映し出された。

 対戦相手のフォースはジム頭系統のモビルスーツを扱う、GMの逆襲という名のフォースである。

 

 

「始まったか」

「勝てよ、ノワール」

 スクリーンを注視するトウドウの横で、ロックは横目でスクリーンを見ながらそう呟いた。

 あの日の決着を着けるには、お互いに二回ずつ勝たなければならない。

 

 スクリーンの中で、ノワールの迅雷ブリッツが発進する。続くアンジェリカとスズのアストレイゴールドフレームオルニアス、サイコザクレラージェ。

 さらにそれに続くのは、二機のSDガンダムだった。

 

 

「あの頭の大きい可愛いのはなんだっけ? GBNでもたまにみるけど」

「SD、スーパーデフォルメ……ガンダムっすね。その名の通り二、三等身にデェフォルメされたMSで可愛くて女の子にも人気なんすよ」

 ユメの疑問にニャムはそう答える。勿論SDにもガンプラは存在していて、GBNで遊ぶ事も可能だ。

 

 

「あの二機はこの前会ったレフトとライトか」

「二つ共ウイングゼロのSDだな」

 ケイとロックは二つの機体を見比べながらそんな言葉を漏らす。二人の機体はどこか似通った黒いガンダムタイプのSDの機体だ。

 

 

 特徴的なのはそれぞれ左右に一つずつ生えた翼。新機動戦記ガンダムWの劇場版に登場するウイングガンダムをデフォルメした機体は、まるで片翼の堕天使のような姿をしている。

 本来白色の機体が黒く作られているのは、彼女達らしいカスタマイズだと納得した。

 

 

「ウイングゼロアビージL、R。あの二人こそ俺達のフォースの秘密兵器だ。いや───スズの、と言った方が正しいかもしれないがな」

「スズちゃんの……?」

 トウドウの言葉にユメは首を傾げる。一体どういう意味なのか。

 

 

 戦闘が始まった。

 ステージは市街地で、スズのサイコザクレラージェがいつかのロックのように高台を取る。

 その高台を守るように、レフトとライトのウイングゼロアビージLとRが左右に展開した。

 

 残るノワールとアンジェリカの迅雷ブリッツ、アストレイゴールドフレームオルニアスが索敵として市街地を直進する。

 

 

 

「作戦としては定石ねぇ」

「高台を初めに取ったあのスナイパーか……怖」

 うんうん、と頷くカルミアの横でロックは顔を青くしていた。

 

 メフィストフェレスの恐ろしさを彼等はよく知っている。画面では対戦相手のGMの逆襲が市街地に戦力を分散させていた。

 

 

「お相手の機体はジムカスタム、ジムキャノン、ジムスナイパーにブルーディスティニー1号機とペイルライダー。見事にジム頭揃いっすね」

「相手にもスナイパーか」

 GMの逆襲の機体を見て、ケイはメフィストフェレスとのバトルを思い出す。あの時は自分達が高台を取れた。

 

 ただ、それがもし逆だったら───

 

 

 

「見て、二機が固まってる近く!」

「ノワールか!」

 ユメが指差すモニターには、ジムキャノンとブルーディスティニー1号機が映っている。

 その二機に接近するのはノワールの迅雷ブリッツだった。

 

 

「───こちらノワール、敵二機を捕捉した。敵機を追い込む」

 敵の二機を見付けたノワールはミラージュコロイドを展開。スラスターを吹かせ、二機に急接近する。

 

 

 

「なんか音がしないか?」

「あぁ。だが、不用意に動くな。敵のスナイパーに狙い撃───」

 ジムキャノンのパイロットが言い掛けた瞬間、その機体をビームライフルが貫いた。

 そして同時に現れるノワールの迅雷ブリッツ。ブルーディスティニー1号機のパイロットは表情を歪める。

 

 

「なに!? どこから!?」

「───まずは一つ」

「こいつか!!」

 倒れるジムキャノンの横で、ブルーディスティニー1号機の頭部が赤く光った。機体はガタガタと音を上げながら、ジムキャノンの頭を鷲掴みにする。

 

 

「何をする気だ……」

「やられたならくれてやる!!」

 そのままジムキャノンを投げ付けるブルーディスティニー1号機。ジムキャノンは建物に叩きつけられ爆散した。

 爆風に飲み込まれるノワールの迅雷ブリッツだが、その機動力を発揮してなんとか体制を立て直す。

 

 

「やる……!!」

「奇襲なんてやってくれたな!!」

 ブリッツを追い掛けるブルーディスティニー1号機。ノワールは辺りに視線を移して、少しだけブルーディスティニーを引き付けてから上にジャンプした。

 

 

「逃すか!!」

 追い掛ける為にスラスターを吹かせるブルーディスティニー1号機。機体が周りの建物を飛び越えたその瞬間───

 

 

「───やれ、スズ」

「……沈め」

 一筋の閃光が煌めく。

 

「なん───うわぁぁ!?」

 ブルーディスティニー1号機を貫く光。機体は、パイロットが何が起きたか分からないまま爆散した。

 

 

 

「……ヤバ過ぎだろ」

「今建物の影から出た瞬間撃たれたっすよね? そもそも何キロ先の相手を狙撃してるんすか!?」

 モニターを見ていたロックは青ざめた顔で口を開けたまま固まる。ニャムの言う通り、ブルーディスティニー1号機は建物を飛び越えてから一秒もしない間に狙撃された。

 

 

「サイコザクレラージェの今の装備の有効射程(キリングレンジ)は49.8kmだ。あの程度の距離はまだアイツにとって近い」

「それ地平線まで余裕って事っすよね!?」

「旅客機が飛ぶ高度よりも上だ……」

 トウドウの言葉にReBondのメンバーは絶句する。そんな相手を敵に回して勝ったというのがにわかに信じがたい。

 

 

「それもサイコザクの装備での有効射程だ。スズに別の武装を持たせれば大気圏外射撃だってやってみせる。……そんな必要がないから、スズはアンジェリカの用意した最大の武器で最大の戦果を出す。それだけだ」

「リアルロックオン・ストラトスかよ……」

「……スズはお前達との戦いまでGBNで狙撃を外した事がなかった。だから、お前達との再戦に燃えてるんだろうな」

 ReBondとメフィストフェレスの戦いで、スズの狙撃をユメは紙一重で避けていた。ほぼ当たっていたし、墜落までしていたが彼女にとってはそれでも許せなかったのだろう。

 

 それ程の腕があるダイバーなのだ。

 

 

 

「スズ、追い込みましたわよ!!」

 アンジェリカが敵のジムカスタムを市街地より外に追い込む。彼女が言うが早いか、ジムカスタムのコックピットをビームが貫いた。

 

 

「……残り二機」

「スズさん、敵が近いよ!」

「スズさん、敵が来るよ!」

 サイコザクレラージェが鎮座する高台の下で待機していたレフトとライトは、スズにそう言いながら自らの機体の獲物を持ち上げる。

 

 片方ずつのバスターライフルを向けた先で、灰色の機体───ペイルライダーが建物の影から姿を現した。

 

 

「あのスナイパーめ、好き勝手やりやがって。俺が倒してやる!」

 ペイルライダーの頭部が赤く光る。ビームサーベルを構え、スラスターを吹かしながら脚部のミサイルを放った。

 

 

「レフト!」

「ライト!」

 二人は胸部マシンキャノンでミサイルを迎撃しながら飛び上がる。ペイルライダーの目的は狙撃手のサイコザクだ。

 

「スズさんはやらせないよ!」

「スズさんは僕達が守るよ!」

「SDがちょこまかと!!」

 ビームサーベルを二本構えて、二人のウイングゼロアビージに斬りかかるペイルライダー。

 

 

「「当たらないよ!」」

 しかし、二人の機体は急上昇してサーベルを避ける。その上昇性能に、ペイルライダーは追い付けなかった。

 

「スラスターの出力が!?」

「レフト!」

「ライト!」

 ペイルライダーの上を取った二人は、お互いのバスターライフルを合わせて二つの銃口を向ける。ツインバスターライフルが、ペイルライダーを貫いた。

 

 

 それを上から見ていたスズは目を細めて辺りを見渡す。この大会はフラッグ戦だ。

 敵機を四機倒したが、試合は終わっていない。残りの一機がフラッグ機という事だろう。

 

 

「残りの敵もスナイパー……」

 小声を漏らしながらライフルのスコープを覗いた。しかし、機影は見当たらない。

 

 

 

 

「もうこれはスズちゃん達の勝ちだね!」

「いえいえ……残るはジムスナイパーが一機ですが、多分相手さんは隠れて狙撃のチャンスを伺ってるっすね」

 喜ぶユメの横で、ニャムは首を横に振ってそう答える。

 

「フラッグ戦はフラッグ機さえ倒してしまえば試合が終わるルールっす。スナイパーはそれこそ何処からでも勝利をもぎ取れる機体っすから、まだ油断は出来ないっすよ」

「なるほど……」

 ニャムの力説にユメは唇に指を向けてモニターに視線を映した。圧倒的に有利な状態とはいえ、敵スナイパーの位置が分からないのでは予断を許さない状態に変わりはないのである。

 

 

「いや、もう終わりだ」

 しかし、トウドウはそんな二人の会話にこう続けた。ニャムとユメは彼の言葉に首を横に傾ける。

 

 

 

 

「……レフト、ライト」

「分かったよ!」

「やるんだね!」

 スズが通信で二人を呼んだ。レフトとライトのウイングゼロアビージLとRが高台まで飛び上がる。

 

 何をする気だ、と画面を見る全員が思った。

 次の瞬間───二人のSDガンプラがサイコザクレラージェのバックパックの左右で変形をする。

 

 

 片翼の翼を広げ、SD故の簡素なパーツが纏まっていき一つの大きな翼にバスターライフルが着いただけの姿になったウイングゼロアビージ。

 その機体をサイコザクレラージェのバックパックから伸びるサブアームが掴み、三機は合体(・・)した。

 

 

 

「合体した!?」

「え、滅茶苦茶格好良い!?」

 ケイとロックが大声を上げる。一対の翼と化したウイングゼロアビージをバックパックに繋げたサイコザクレラージェは、翼を生やした堕天使のように高台に鎮座していた。

 

「あの上昇性能は……なるほどね」

 カルミアはそれを見て不敵に笑う。この後の展開は少し読めた。

 

 

 

 

「アンジェのサイコザクレラージェに死角はない」

 サイコザクが上昇を始める。その光景を、市街地の建物の影に隠れていたジムスナイパーのパイロットも見ていた。

 

 

「敵のスナイパーが飛んだ!? 空から探して狙い撃ちする気か? だが、飛んでるお前の方が的だぜ!!」

 相手のチームの狙撃手も、伊達にライフルを背負っている訳ではない。

 

 サイコザクがこちらを見付けるまでに、こっちが狙撃すれば良い。先に見つけたのはこちら側である。むしろ、状態は有利だ。

 

 

 

「一撃で落としてここを離脱する。狙撃で位置はバレるだろうが、離れておいてここに来た奴を遠くから狙撃すれば……勝てる!」

 ジムスナイパーがビームスナイパーライフルのスコープを空に向ける。

 

 

「は?」

 しかし、スコープに映るサイコザクは想像よりも遥か高くの高度まで登っていた。

 目測でも10km。まだ上がる。旅客機が空を飛ぶ高さよりも高く、サイコザクレラージェはその上昇性能で飛翔した。

 

 

「あんな高くまでいって狙える筈が───しまった、アイツの目的は俺を見付けて仲間に伝える事か!? なら、ビームが届かなくなる前に撃ち落とさなければ!!」

 ジムスナイパーのパイロットは焦ってライフルを構えて引き金を引く。しかし、既にジムスナイパーとサイコザクレラージェの距離は15km以上離れていた。

 

 相手との距離が離れれば離れる程、ほんの僅かなズレが大きなズレになっていく。ジムスナイパーの射撃は、サイコザクに掠る事すらなく明後日の空を打ち抜いていた。

 

 

「くそ!! こうなれば来る奴を迎撃するしかない。むしろスナイパーに怯えなくて良いんだ!! やってやる、やってやるぞ!!」

 諦めたジムスナイパーのパイロットはライフルを捨ててビームサーベルを構える。震える手。アラートが鳴った。

 

 

 

「───ここは、私の距離だ」

 その遥か上空。成層圏で、サイコザクレラージェはビームスナイパーライフルの引き金を引く。

 

 

「アラート……なんだ? 何処だ? 上? まさ───」

 一筋の閃光が、ジムスナイパーの頭部から股を貫いた。縦に穴が空いた機体は、数秒の間の後爆散する。

 

 

 

 フラッグ機ジムスナイパー撃沈。

 

 WINNER FORCE メフィストフェレス

 

 

 

 

「───任務完了(ミッションコンプリート)

その狙撃手(スナイパー)は天高く、漆黒の翼を広げていた。




GMの逆襲はビルドファイターズからパクりました()ジム頭って実際結構格好良いと思うのです。

そんな訳でフォースメフィストフェレスの試合でした。有効射程ですが、参考までに言うと狙えるかはともかくガンダムのビームライフルでも20kmらしいです。ガンタンクの砲撃は120kmだとか(は?)


リライズもクライマックスが近付いてきましたね。毎週楽しみで仕方がないです。
読了ありがとうございました!
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