ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

38 / 171
アンチレッド

 モニターを見ながら、カルミアは目を細める。

 

 

 フォースGMの逆襲のメンバー達とメフィストフェレスのメンバー達が、お互いの健闘を称えて握手を交わしていた。

 GBNのダイバー達はこのゲームを本気で楽しんでいる。勝った事も負けた事も、全て明日の糧にして。

 

 

 それは、これがゲームだからだ。

 負けても死ぬ訳じゃない。勝っても相手を殺す訳じゃない。

 

 本物のガンダムの世界と違って、この世界は笑顔で溢れかえっている。

 

 

 

「凄い狙撃だった。次は負けないぜ! 俺達を倒したんだから、決勝までは行ってくれよな!」

「勿論そのつもりですわ!」

 ───だから、彼はこの世界が許せない。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 ノワール達が帰って来た姿を確認して、ロックは軽く手を上げた。二人は目が合うと、お互いに口角を吊り上げる。

 

 

「まずは一勝ずつだな」

「次の次だ。態々確認する必要もない」

「お疲れ様! アンジェリカさん、スズちゃん!」

 視線の間で火花を散らす二人の脇で、ユメはアンジェリカとスズに笑顔で詰め寄った。

 

「凄かったよ! スズちゃん!」

「……あ、あのくらい出来る」

 苦笑い気味のスズはアンジェリカに助けを求めて視線を送るが、当のアンジェリカはトウドウと話していて構ってくれそうにない。

 

 

「格好良かった!」

「そ、そう。……あ、アンジェ───」

「トウドウ、次の試合の相手の情報が欲しいですわ」

 アンジェリカは助けを求めるスズの声が聞こえていなかった訳ではないが、あえてスルーを決め込む。

 次の試合の対戦相手の情報が欲しいというのもあるが、本音は面白そうだから放置しているだけだ。

 

 

「な……ぁ」

「ねぇねぇ、どのくらいの高さまで飛んでたの? 成層圏って殆ど宇宙みたいな場所でしょ? GBNの空ってそんな所まで続いてるの?」

 そんなアンジェリカの反応にスズは絶望して固まってしまう。もはや煩く付き纏ってくるユメに構うしかないのだ。

 

 

 

「次の対戦相手か、それなら丁度今から試合が始まるようだな。この試合で勝った方が次の対戦相手になる」

 一方でアンジェリカの問い掛けにトウドウはそう答える。モニターには丁度始まる試合が映し出されていた。

 

 

「フォースアンチレッドVSフォース西中水泳部、か。西中水泳部って……まぁ、そういう繋がりなんだろうな」

「そういう繋がりを名前にするのは、良いと思う」

 苦笑いするロックの隣でケイは微笑ましそうにモニターを見る。カルミアはそんな二人をどこか遠い目で見ていた。

 

「アンチレッドっすか……こっちは怖い名前っすね」

「赤色はガンダムでは特別な色ですわ。その色を着ける程の実力者なら、実物ですわね」

 モニターには二チームの機体がズラリと並んでいる。

 

 

 西中水泳部の機体は、やはりと言うべきか全て水陸両用MSだった。アッガイ、ズゴック、アビス、マーメイドガンダム、アトラスガンダムの面々が並んでいる。

 対するアンチレッドの機体はイージス、サザビー、ゴトラタン、ジンクス、キュベレイと赤い機体達だ。ジンクスとキュベレイは赤い機体もあるが、彼等が使っているのは元々灰色や白だった機体を赤く塗った機体のようである。

 

 

「あれはプルツー用キュベレイMarkIIではなくて、ハマーンが使っていたキュベレイを赤く塗ってあるっすね」

「ジンクスもそれっぽいな」

 ニャムとロックはそう言いながら横目でカルミアを少し見た。彼の機体も偶然か赤い。

 ロックの機体はメフィストフェレスの面々と同じく黒い。ただその小さな繋がりが面白かったりするのである。

 

「……お、おじさんも赤は好きよ」

 そんな事を知ってか知らずか、カルミアは苦笑いしながらモニターに視線を移した。

 

 

「セイヤ……」

 その視線の先で、赤いキュベレイが飛び立つ。

 

 

 

 ステージは奇しくも氷河地帯で、陸と海からなる戦場だった。丁度アトラスガンダムが原作で活躍する話と似たようなフィールドである。

 

 フォース西中水泳部はこぞって水面に移動し、各々の得意な海中に身を潜めた。

 対するアンチレッドの機体は、地上戦闘の為にサザビーとキュベレイがファンネルを使えない。ランダムステージとはいえ、西中水泳部が大きく有利な戦場となっている。

 

 

「この戦い貰ったな!」

「あぁ、ツキは僕達にある!」

「───そら良かったなぁ……大好きな水の中で負けられるんだ」

 海面上に、アンチレッドの機体二機が飛んでいた。ファンネルを使ったオールレンジ攻撃が得意なサザビーとキュベレイである。

 

 

「海面上、二機居るぞ!」

「水中に居れば怖くねぇ!」

 西中水泳部は海面上に映る二つの赤い機体を見ながら息を飲み込んだ。どちらにせよ戦わなければバトルには勝てない。

 相手は二機だけとはいえ、こちらもまだ始まったばかりである。リーダーであるアトラスガンダムを駆るダイバーは、少しだけ考えて行動に出た。

 

 

「アッガイ、ズゴック、アビスの魚雷ミサイルで先制攻撃を仕掛けるぞ! 集まって一気にお見舞いしてやれ!!」

 リーダーの命令で、三機は集まってミサイル発射管を海面に向ける。

 

「撃て!」

 そう言うが早いか───海面上からアッガイ達の頭上に何かが大量に降ってきて、五人は一瞬固まった。

 

 

「───これ、まさか」

 誰かがそう言った、刹那。

 

 

「海の藻屑に消えろ」

 海面に沈んだ数個の()()()()()が、アッガイとズゴックを文字通り蜂の巣にする。爆散する事はなかったが、二機は操作不能に陥って海面に沈んでいった。

 

 

「ファンネルだと!?」

 驚くのも無理はない。ファンネルは本来地上では使えない武器である。

 否───正しくは重力化では真空中のように制御するのが物理的に不可能なだけだ。

 

 ReBondと砂漠の犬との戦いでカルミアはインコムを接地型の罠として使用している。それと同じ事だ。

 ただ同じではない事といえば、水中は地上と違い浮力が生まれるという事である。

 

 それが何を意味するのかというと───

 

 

 

「まだ来るぞ、逃げろ!」

「うわぁ!?」

 ファンネルがマーメイドガンダムの頭部を掠った。

 

 ───地上で放出すればただ落下するだけのファンネルも、水中ならば緩やかに海底に沈む内に方向転換レベルの制御なら可能という事である。

 

 

 

「離れろ! 離れればあのファンネルは追ってこれない!」

「アッガイとズゴックが!」

 なんとかファンネルの射程から離れた三機だったが、操作不能の二機はただ沈んでいく事しか出来なかった。

 いくら水陸両用MSといえど、損傷した状態では海底の水圧には耐えられないだろう。

 

 

「た、助けてくれリーダー! 溺れる!」

「潰れる! 嫌だぁ!」

 そしてアッガイとズゴックは徐々に拉げ、潰れながら爆散した。

 

 

「惨めなやられ方だな」

「なんだと……ふざけた倒し方しやがって! トドメを刺してやれば、あんなやられ方しなくても済んだのによ!!」

 突然入ってきた通信に、アビスのパイロットが眉間に皺を寄せながら浮上する。

 

「待て、早まるな!」

 リーダーが言うよりも先にアビスが海面に出た。その直後、赤い影が海面からアビスを掴んで攫っていく。

 

 

「ぬわぁ!? なんだ!?」

 海面上で、赤い機体が四本の脚でアビスを上空に持ち上げていった。まるで四本脚のタコのようにも見えるその機体の名は、イージス。

 

 ガンダムSEEDに登場するストライクのライバル機ともいえる機体である。

 

 

「イージス!? しまった……畜生! 離せよ!」

 アビスのコックピットが赤く光った。変形したイージスは四本脚の付け根にはスキュラビーム砲が装備されている。

 捕獲されている状態でこの攻撃を交わす事は出来ない。

 

 ───赤い光が、アビスの頭部を吹き飛ばした。

 

 

 

「外した? いや、なん───うわ!?」

 頭部をスキュラで吹き飛ばされたアビスを、イージスはMS形態に変形して両手足のビームサーベルで切り刻む。

 頭を吹き飛ばされ、手足とスラスターをバラバラにされたアビスはそのまま海面に叩き付けられた。

 

 

 

「あのイージス……」

「ユメ? どうかしたのか?」

「あ、ううん。なんでもない」

 そんな戦いを見ている中、無意識にそんな言葉がユメの口から漏れる。ただ、彼女自身もなんでそんな事を言ったのか分からなかった。

 

 

 

 試合はそんな事も関係なく進む。

 

 

「また……」

 動体以外がまともに残っていないアビスは、アッガイ同様に海面に沈んでから爆散した。

 

 彼等はその名の通りとある中学校の水泳部に属している。

 そんな彼等が海で溺れて死ぬなんて、考えてもいなかった。

 

 

「僕達の海で……こんな」

「ここは本物の海じゃない」

 唐突に、赤いキュベレイが海中に潜ってくる。あまりに突然な事に残る二人は反応出来ずにマーメイドガンダムは背後を取られていた。

 

 

「ひぃ!?」

「この世界は作り物だ。お前達には本物の水があるだろう。……なんでこんな作り物の水を楽しむ」

 キュベレイのパイロットはそう語り掛ける。アトラスガンダムのパイロットであるリーダーは、少しだけ考えてこう口を開いた。

 

「そんなの、俺達はガンダムが好きで……同じくらい泳ぐのが好きだからだ! このゲームが楽しいからだ!」

「人殺しのゲームが楽しいか?」

「このゲームはお前達みたいな倒し方で遊ぶ人殺しのゲームじゃないだろ!」

「いや、このゲームは人殺しのゲームだ。……GBNは人殺しだ!!」

「な、何を言って───」

 キュベレイがビームサーベルを抜く。近くにいたマーメイドガンダムは一瞬でダルマにされて、他の機体と違わず深海に沈んでいった。

 

 

「……フラッグはお前か。丁度いい」

「……っ!」

 アトラスガンダムはスラスターを吐かせて、一気に海中から離脱する。このままではやられる───そう感じてしまったのだ。

 

 

 

「なんなんですの、あの戦い方!」

「相手の心を折って精神的有利を作ろうとしているのか……。アトラスを海上に炙り出す揺さ振りにしては大袈裟過ぎるが」

 不満そうなアンジェリカにトウドウはそんな言葉を漏らす。この試合で勝ったチームが、次のメフィストフェレスの対戦相手だ。

 

「……何が来ても撃ち抜くだけだ」

 スズは静かにそう言って、モニターに視線を映す。バトルは終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

「この!!」

「どうした水泳部。お前の本当の居場所はどこだ?」

 アトラスガンダムはその性能上水陸だけではなく空戦闘能力も高い機体である。

 

 しかし、地上には今相手をしているキュベレイ以外にも四機のMSが待機していた。

 完全に嵌められたのだろう。

 

 

「どうしてそんな事を言うんだ!」

「GBNは人殺しだからだ! このふざけた世界を俺が壊す!!」

「何を言って!!」

 ビームサーベルが交差した。火花が散る中で、キュベレイのパイロットは不適に笑う。

 

 その背後から、再びファンネルが放たれた。しかしここは重力化である。ファンネルは重力に触れて海に落ちていった。

 その途中で───

 

 

「だから俺が、GBNを殺す」

 ───ファンネルは空中で一斉に発射される。

 

 制御出来ないファンネルは滅茶苦茶な角度ではなたれた。それは、アトラスガンダムをキュベレイごと撃ち抜く程に出鱈目な射撃である。

 二機共に全身を撃ち抜かれて、キュベレイはアトラスガンダムを道連れに海中に落ちていった。

 

 

 

「俺が……溺れる? い、嫌だ……嫌だ!」

 泳ぐ事が好きな彼等にとって、たとえ仮想世界の水中だとしても溺れる事は耐えられないだろう。

 彼等にとってこのバトルは()()()()になるに充分だった。

 

「そうだ。この海でお前は溺れる。現実ならそんな事ないだろう? こんなゲーム……辞めちまいな。……この世界の海に、いや───この世界に自由はないんだよ!!」

 アトラスガンダムとキュベレイは、GBNの静かな海面で水圧に潰されて爆散する。

 

 

 フラッグ機アトラスガンダム撃沈。

 

 WINNER FORCE アンチレッド

 

 

 

 彼の復讐が幕を開けた。




午前2時まで添削されずに更新されていました。深くお詫び申し上げます。


遂に出て来た物語の鍵となるフォースアンチレッドの試合でした。今後の展開もお楽しみ下さい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。