ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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大人の役目

 少年達は泳ぐのが好きだった。

 海でも川でも、プールでも。とにかく水の中にいるのが大好きで、GBNの水中で見る景色も本当に好きだったのである。

 

 ただ、沈んでいく機体の中で───

 

 

「溺れる……」

 ───少年達はGBNの不自由な海に恐怖した。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 会場は少しだけ騒ついている。

 

 

 アンチレッドと西中水泳部のバトルは、アンチレッドの圧勝に終わった。

 しかしそのバトルは、燃える物とはいえない。酷く冷たい内容だったと言える。

 

「GBNが人殺しって……どういう事?」

 驚いたような表情のユメがそんな言葉を漏らした。ケイやロックにはその意味がまるで分からない。

 

 

「なんなんですの、あのチームは」

「とにかくデータは取った。俺は作戦を練る」

 アンジェリカの言葉に答える事なく、トウドウは少しこの場を離れる。残った十人は微妙な雰囲気のままモニターを眺めていた。

 

 

「人殺し、ねぇ」

「おっさん、なんか知ってんのか?」

「ぇ、あーいや? 別に」

「ん?」

 カルミアの言葉に少し引っかかるロックだったが、正直な所GBNがなんだという話には興味がない。

 ロックの中での今一番の目標はメフィストフェレス───ノワールとの再戦である。

 

 だから、()()()()()()()()()相手の事はどうでも良かった。

 

 

「あんなのに負けんなよ」

「当たり前だ」

 ロックの言葉にノワールは短く返事をする。ただ、ノワールは少しだけモニターを睨んだ。

 どちらにせよ次に戦う相手は弱い相手ではない。手に力が入る。

 

 

「人殺し……」

 ただユメだけは、その言葉がずっと気になっていた。

 

 

 GBNでは乗っている機体が爆発しても死にはしない。これはゲームだから、自由な世界だから。ならその言葉の意味は? 

 

 

「難しい顔してるな」

「ケー君?」

「大丈夫、このゲームで人は死なないし。その……ユメは俺が守るから」

 最後だけ目を逸らして言うケイに、ユメも顔を赤くしてそっぽを向く。そんな二人を見て目を細めるロックとノワール。

 

 

 

「うーむ、そろそろ自分達の第二試合っすね。気持ちを切り替えて行きましょう!」

 そんなニャムの言葉で五人はメフィストフェレスの面々と別れて作戦会議に移る事にした。

 

「お前」

「スズちゃん? えーと、私ユメだよ」

「……な、名前は良い。えーと……ユメ」

「何?」

「……負けるな」

「勿論!」

 スズに拳を向けたユメも、一度自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。今は次に進む事が大切だ。

 

 

 

 試合が始まる。

 

 

 ステージは山岳地帯。フォースReBondはフラッグ機をニャムの機体に設定し、山の麓付近で集まっていた。

 

 ケイのストライクBondはクロスボーンストライカーを装備、ユメのスカイグラスパーはダブルオーストライカーを装備している。

 山の中では射撃戦が有効ではないのと、山岳で空を飛ぶMAがトランザムを使えればいざという時の機動力を確保出来るからだ。

 

 

「ニャムさん、今回も頼むぜ」

「了解。任せて下さいっす!」

 ロックの言葉にニャムは気持ち良く返事をする。彼女の機体はその赤銅色の機体の膝を落とした。

 

 

 今回の大会で彼女が選んだ機体は、アッガイである。

 しかしただのアッガイではない。機動戦士ガンダムサンダーボルトに登場する、ダリル・ローレンツ専用のアッガイだ。

 

 通常のアッガイとは違い頭部にセンサーバイザーを装備、左腕は展開式のセンサーアームに切り替わっている。

 このアッガイはその装備により敵の索敵に適した機体だ。それにより、第一試合では七色の七連星の機体の動向を確認してReBondを勝利に導いている。

 

 

 

「スコープをセンサーバイザーとリンク! レーダー通信を行うっす!」

 ニャムのモニターにステージの地形と丸い点が十個映った。この丸い点がMSの位置を意味している。

 

 ニャムを中心に四つの丸い点は、フォースReBondの仲間の機体だ。

 敵の機体は山岳の西と東で二機ずつが二手に分かれている。残りの一機はステージの端で一機だけ孤立していた。

 

 

「どう見るっす?」

「敵さん、二機ずつで索敵してるんじゃないかねぇ。……となると」

「奥で孤立してるのがフラッグ機か?」

 ニャムの問い掛けにカルミアとロックがそう答える。

 

 

「余程自衛に自信があるか、隠れていれば大丈夫と思っているのか。……どちらにせよレーダーを見る限りジブン達が気が付かれていないのは確かっす。状況は有利。問題はどうアクションを起こすか」

「五人で固まって二機ずつのチームを叩くか?」

「五対二ならほぼ間違いなく勝てると思うっすけど、時間を稼がれて残りの二機と合流されたらフラッグ機のジブンが戦場にいるのは不味いかもしれません」

 ロックの提案にニャムは反対気味に言葉を漏らした。前回のバトルでは相手が固まっていて一掃出来たから良いが、今回は合流されるという可能性もある以上出来るだけ無理はしたくない。

 

 

「カルミアさんにニャムさんの護衛を任せて、三人でフラッグ機を倒してくるっていうのはどうかな?」

 続いて提案を出したのは意外にもユメである。彼女の言葉にカルミアは「はい?」と顔を丸くした。

 

「なるほど、ぶっちゃけそっちの方が早いか」

「俺達三人でも相手が一機ならなんとかなるかもしれないけど、相手がニャムさん達を見付けたら時間勝負の賭けになるかもしれないぞ?」

 ロックの肯定にケイは顎に手を当てながら声を漏らす。相手よりも有利な状況が作れるが、その分失敗した時のリスクが大きい事にケイは懸念していた。

 

 

「カルミアさんがニャムさんを守ってくれている内に、私達が頑張って倒せば良いと思うんだよね。相手の位置が分かっている以上、先に仕掛けられるのは私達だから」

「それは確かに……」

「あ、ご……ごめんねケー君。戦力外みたいな私がこんな事勝手に───」

「いや、ユメの言う通りだ。それに行動するなら早いに越した事はない」

 謝るユメを静止しながら、ケイはカルミアに「お願い出来ますか?」と、問いかける。

 

 

「出来ますかって言われてもやるしかない訳だけどね。……皆さ、おっさんを信用し過ぎじゃない? おじさんは皆にとって本当に見ず知らずのおっさんなのよ?」

「そんな事ないです!」

 カルミアの言葉にユメは大声を出して抗議した。ロックとケイも、それに「そうだ」「そうですよ」と続く。

 

 

「カルミアさんは私達の大切な仲間ですから。物凄く強いし、信用も信頼もしてます! ね、二人共」

 続くユメの言葉に二人は勢い良く首を縦に振った。ここまでされると、カルミアは何も言えない。

 

 

 

「そんじゃ、作戦は決まりだ。行くぞお前ら、俺達幼馴染組で敵フラッグ機を叩く!! おっさん、ニャムさんの事任せたぜ!!」

「ぇ、ちょ、マジかい」

 カルミアの言葉を聞く前にロックは先走って先行する。苦笑い気味のケイも「カルミアさん、お願いします」と言いながらストライクBondのスラスターを吹かせた。それにユメも続いていく。

 

 

 

「若いなぁ……。将来が心配よ」

「若い子はあのくらい元気なのが丁度良いんすよ。カルミア殿は迷惑に感じてるっすか?」

「いや、別にそう言う訳じゃないんだけどもね」

「それとも自信がないとか?」

「そう言われると、おじさんも引き下がれないけどさ。……それでも、そんな簡単に他人を信用するのはどうよ。相手の本当の顔も見れないGBNでさ」

 カルミアのその言葉にニャムは少しだけ思考を巡らせた。彼の言う事はごもっともである。

 

 この世界は現実の世界ではない。彼の言う通り、ニャムのこの世界での姿と現実の姿は似ても似つかない程違うのだ。

 こうして面と向かって話しているように見えて、相手は顔も知らない他人なのである。

 

 

「ユメちゃん達は顔も名前も知らない、初めて会った時とんでもない無礼をしたジブンの兄を探す手伝いをしてくれてるっす。根本的に優しくて、純粋なんすよ。純粋に、このGBNを楽しんでる……そんな子供達を守るのはジブン達大人の役目では?」

「……ニャムちゃんさ、何歳?」

「……秘密っす」

 目を逸らすニャムにカルミアは「ま、知ってるけど……」と小さく溢した。

 

 

 

「タケシ、敵は確認できたか?」

「ロックな。あぁ、多分アレだ。ラファエルガンダム……か? ちょっとカスタマイズしてある」

 ニャムからのレーダーを頼りに敵に見付からないように進行したケイ達は、孤立した敵機体一機をデュナメスHellのスコープで確認する。

 

 敵機体はデュナメスと同じく機動戦士ガンダムOOに登場する機体、ラファエルだ。

 同作品の劇場版でガンダムマイスターのティエリア・アーデが搭乗する最後の機体であるラファエルガンダム、特徴的なのは───

 

 

「よしユメ、作戦は良いな?」

「うん。ちょっと緊張するけど……頑張るね!」

「それじゃ、暴れるとしますか!!」

 ラファエルに接近する間に作戦を練ったケイ達は一気に速度を上げる。三機に気が付いたラファエルは、高濃度GN粒子によるビーム砲撃で迎撃態勢に入った。

 

 

「散開!」

 ケイが言うが早いか、三機はバラバラになってビーム砲を避ける。そのままストライクとデュナメスが挟み込むように、ラファエルの左右に回り込んだ。

 

 三対一で挟み込めば壮大な威力を持つビーム砲も怖くはない。

 二機が肉薄し、ラファエルに接近戦を仕掛けようとする。しかしその時───

 

 

 ラファエルガンダムのバックパックが分離、変形してもう一機のガンダムがその場に現れた。

 

 

「やっぱり分離したか……!」

 ───ラファエルガンダム、特徴的なのはバックパックとして変形しているセラヴィーガンダムIIである。

 

 

 これは分離、変形後にファンネルのように無人操作が可能でありこのラファエルガンダムは一機で二機分の戦力を補う事が出来るMSなのだ。

 

 

「設定上セーフだけどこのバトルのルールは五対五だってのに!」

 声を荒げるロックの前にセラヴィーが立ち塞がる。ケイはラファエルの牽制射撃に一歩引いて応戦した。

 相手はビーム兵器。ABCマントで強行突破も可能かもしれないが、ラファエルにはセラヴィーに続く奥の手もある。カスタマイズ機でもあり油断は出来ない。

 

 

「なんとか接近する……っ!」

 それでもやるしかないのだ。これは時間との勝負なのだから。

 

 ケイはクロスボーンストライカーのスラスターを目一杯吹かせる。ラファエルの牽制射撃を左右上下に交わしながら、遠回りでも確実にラファエルに肉薄した。

 

 

 しかし、ラファエルの周囲をオレンジ色の光の粒子が囲む。GN粒子を圧縮した防御壁、GNフィールドだ。

 これによりビーム兵器は拡散されてしまい、ラファエルには届かない。ビーム以外でも、イーゲルシュテルン等の低威力の実弾ではGNフィールドにかき消されてしまう。

 

 

「やっぱり短機でGNフィールドを使えるくらいにはカスタマイズしてあるか……っ!」

 せっかく接近出来たケイだが、GNフィールドを展開したラファエルに取り繕う隙はなかった。

 自前の武器でGNフィールドを突破出来るのは、実体剣であるアーマーシュナイダーぐらいだろう。しかし、それではリーチと攻撃力が足りない。

 

 

 

「こっちは抑えてるぜ!」

「分かった、作戦通りだな!」

 しかし、ロックもケイも慌てては居なかった。それどころか不適に笑いながら、ロックはセラヴィーを、ケイはラファエルを相手にしている。

 

 

 ───つまりそれは、彼等の仲間がもう一人フリーだという事だ。

 

 

 

「ユメ!!」

「───よーし、トランザム!!」

 ケイが声を掛けた瞬間、上空で待機していたスカイグラスパーが赤い光を放ちながら降下していく。

 ダブルオーストライカーを装備したスカイグラスパーは、その装備によりトランザムが可能になっていた。

 

 高濃度GN粒子を解放したスカイグラスパーは、赤く燃え上がりながら信じられない速度でラファエルに突撃していく。

 それに気が付いて銃口を持ち上げるも、その銃口はストライクBondのABCマントに阻まれた。

 

 

 

「いっけぇぇ!!」

 ユメが叫んで、刹那。

 ダブルオーストライカーのGNソードIIを機体の下に突き出したスカイグラスパーが、ラファエルのGNフィールドを貫通して機体を斬り裂く。

 

 少しの間の後、ラファエルガンダムは三つに分かれながら爆散した。三人は同時にガッツポーズを決める。

 

 

 

 フラッグ機ラファエルガンダム撃沈。

 

 

 WINNER FORCE ReBond

 

 

 

 

「大人の役目……か」

「カルミア殿?」

「俺は一体……何をしてるんだろうな」

 フォースReBond、第二回戦突破。

 

 

 

「やったな、ロック。……さて、次は俺達の番だ」

「ReBondに続きますわよ。そして、あの試合の雪辱を果たしますわ!!」

「頑張りまーす!」

「頑張ろーう!」

「……私はただ、敵を撃つ」

「ステージが決まるぞ。作戦会議だ」

 続くフォースメフィストフェレスの試合、その相手は───

 

 

 

「俺の復讐はまだ始まったばかりだ」

 ───フォースアンチレッド。

 

 

「行くぞ、()()()

「はい」

 そこに、一人の少年が居た。




リライズが熱過ぎる(‪無限回目)

頑張って続きます。ガンダムビルドダイバーズRe:bond。続きましては、ついにアンチレッドVSメフィストフェレスです。そのアンチレッドに気になる影が……?
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