ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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淡い光の奥で笑う

 全てが初めてだった。

 思い通りに動く手足に、自分とは違う存在になった筈の身体。

 

 

 それでも、GBN(ここ)現実(リアル)よりも自由な現実がある。

 

 

 

「うわ、だるま女」

 GBNにログインする前、ログインマシンの前でそんな事を言われた。

 ずっと言われてきた事だから、今更どうとも思わない。ただ、言葉を飲み込む。でも───

 

 

「なんですかその言い方は!!」

 ───でも、彼女は違った。

 

 

「本当の事じゃんか! そんな身体でガンプラバトルなんて出来るかよ!」

「そんな事ありませんわ! リンは───スズは、今からGBNを始めるんですのよ。やってみなければ分かりませんわ!!」

 そのまま喧嘩になって、ガンプラバトルをする事に。私は初め戸惑って「辞めよう」と提案したのを覚えている。

 

 

「……私は悔しいですわ。見た目だけで判断して、中身を見ない奴に言われっぱなしなのが悔しい。絶対に見返してやる! 女だからガンプラ作りが下手とか、リンちゃんみたいな身体だからガンプラバトルは出来ないとか───そんなの、私が覆してみせる!!」

 彼女は戦った。二対二のガンプラバトルで、初めてで右も左も分からない私を連れて、ボロボロになっても立ち上がる。

 

 

 そんな彼女の熱意に当てられて。そんな彼女の期待に応えたくて。

 

 

 

「───アンジェの作ってくれたこのガンプラは、私の本当の身体より自由だ」

「……スズ」

 私は、彼女の夢を邪魔する奴を───全部倒すと心に決めた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 宇宙を漂う。

 満身創痍のアストレイゴールドフレームオルニアスは、何もする事が出来ずにただ広大な世界を漂っていた。

 

 

「スズ……」

 その中で、アンジェリカは唯一無二の親友の名を呼ぶ。

 

「私は……ここにあなたを連れてきた事を、少しだけ後悔していますわ。……それでも、あなたは───」

 助けて欲しいという訳ではない。ただ、心配だった。

 

 

 

 赤い閃光がサイコザクレラージェとウイングゼロアビージ二機の間を貫く。

 強力なビーム砲。イージスのスキュラだ。

 

 変形したイージスに続いて、赤いキュベレイが頭上から接近してくる。相手は二機だけだ。

 

 

「……来た。散開、私がキュベレイをやる!」

 言いながらスズはサブアームと合わせて六つの武器を頭上に向ける。同時に放たれたビームと実弾は、広大な筈の空を覆い尽くすような数だった。

 

 

「ほぅ……」

 それを見て赤いキュベレイのパイロットは不適に笑う。そのまま接近すれば着弾は免れない。

 しかしキュベレイに実弾が当たる前に、直前に射出されていたファンネルのビームがザクマシンガンとザクバズーカのの弾丸を掻き消した。

 

 キュベレイはビームだけを避けながらサイコザクレラージェに接近する。

 

 

「そんな……っ」

 驚くスズだが、冷静にビームバズーカを捨てて左手でヒートホークを構えていた。放たれたファンネルのビームをゲシュマイディッヒ・パンツァーが捻じ曲げる。

 

 

「器用な事だな……だるまが!」

「……っ、何!?」

 接近を許したサイコザクレラージェのヒートホークと、キュベレイのビームサーベルが重なり合った。

 

 

 

「スズさん!」

 そんな光景にイージスを追おうとしていたレフトが反応する。続いてライトも視線をイージスからキュベレイに入れ替えた。

 

「その二機はお前がやれ───」

「……っ」

 キュベレイのビームサーベルが、サイコザクレラージェの左腕を切り飛ばす。スズは直ぐに右手のザクマシンガンを捨てながらヒートホークを拾って、続く攻撃に応戦した。

 

 同時に、サバアームのザクマシンがキュベレイに向けられる。腕とサブアームを同時に動かす繊細な動きにキュベレイのパイロットは眉間に皺を寄せた。

 しかしザクマシンガンが火を吐く直前、ファンネルのビームがザクマシンガンの銃口を焼き切る。弾丸が暴発し、二基のザクマシンガンは破裂して爆散した。

 

 

 

「スズさんをやらせるか!」

「スズさんはやらせない!」

 バスターライフルを向ける二人のウイングゼロアビージだが、その眼前にイージスが割って入る。

 邪魔だと言わんばかりに放たれたバスターライフルを、イージスは片腕とシールドを犠牲にして弾き返した。

 

「この野郎……ライト!」

「分かってる、レフト!」

 そんなイージスに向けて、二人はお互い左右にビームサーベルを構えて挟み込むように突撃する。

 挟まれたイージスはしかし、両脚に装備されたビームサーベルを展開。宙返りするようにして二人の攻撃を受け止めた。

 

「だけど!」

「これは!」

「「どうかな!!」」

 対するレフトとライトは、互いに左右に持っていたバスターライフルを中央で連結させる。対GMの逆襲で見せたツインバスターライフルの銃口が光った。

 

 この距離では避けられない。しかも、二人は射線上にキュベレイとサイコザクを並べるように銃口を向ける。

 これが決まればサイコザクもろともになるがキュベレイも落とす事が出来る筈だ。そうすれば、残る敵は一体。ここにフラッグ機が居ようが居まいが勝利に大きく近付く事になる。

 

 

 スズはそれを承知で、防戦一方な中壊れ掛けのサブアームを使ってキュベレイを一瞬拘束した。

 

 

「私ごとやれ、レフトライト……!」

「「いっけぇ! ツインバスターライフル!!」」

 ライフルが放たれる、その瞬間。

 

 イージスは宙返りしてサーベルを振り払いながら変形し、三本の足で二機の小さなガンプラに組み付く。

 その衝撃でバスターライフルの軌道はそれて、放たれた光はただ宇宙を駆けた。

 

 

「え!?」

「な!?」

 そして、二人の機体を掴んだイージスは突然淡い光を放ち出す。

 

 

 

 

 

「───アオト君、ダメ!!」

 戦いをモニターで見ていたユメは、無意識にそんな言葉を漏らしていた。

 そして言ってから「私……今、なんて?」と疑問を浮かべる。

 

 どうして、彼の名前が? 

 

 

 

 

 

 考える間も無く、イージスとウイングゼロアビージ二機を光が包み込んだ。炎の塊が広がる。

 イージスが自爆して、ウイングゼロ二機を道連れにしたのだ。

 

 これでメフィストフェレスの機体はゴールドフレームオルニアスを含めて三機、アンチレッドの機体はキュベレイとゴトラタンだけになる。

 

 

 

「レフト……ライト───」

「よそみしてる場合か?」

「───っ!?」

 驚きのあまり一瞬硬直したスズのサイコザクレラージェを、キュベレイのファンネルが襲った。

 

 なんとかゲシュマイディッヒ・パンツァーの反応が間に合い、直撃はしなかったが片足をビームが貫いてバランスを崩す。

 そうしてさらに動きの鈍くなったサイコザクレラージェの残った足を、キュベレイのビームサーベルが切り飛ばした。

 

 

「この……!」

 サブアームのザクバズーカを発射しながら距離を取ろうとスラスターを吹かせるスズ。

 しかし、赤いキュベレイはその図体の割に機敏な動きで距離を殺していく。スズはザクバズーカをキュベレイに投げつけながら、サブアームでもヒートホークを二本構えた。

 

「アンジェの邪魔はさせない!!」

「そういう台詞は出来る奴だけが言えるんだよ!」

 両手にサーベルを構えた赤いキュベレイは、回転しながら投げ付けられたザクバズーカを切り刻んで弾頭を誘爆させる。

 一瞬爆炎に視界を塞がれたスズの目に映ったのは、炎の中から発射されるファンネルのビームだった。

 

「こんなもので!」

 ゲシュマイディッヒ・パンツァーを前に突き出してビームを弾く。しかし、攻撃の本命はそれではなかった。

 

 

「キュベレイは!?」

 爆炎に飲み込まれたキュベレイの姿が見えない。ファンネルに気を取られた一瞬で姿を消したキュベレイが居たのは───

 

 

「背中がガラ空きだ……」

 ───背後。

 

 

「───しま……っぁあ!?」

 キュベレイの二本のビームサーベルがサブアームを全て切り飛ばす。両足も左手も失っているサイコザクレラージェに残されているのは右手とヒートホークだけだった。

 

 

「……っ、よくも……アンジェのサイコザクを!!」

「ゲームでもだるまにされる気分はどうだ……?」

「ぇ……」

 男の言葉に、スズの表情が歪む。

 

 ──うわ、だるま女──

 いつか誰かに言われたそんな言葉が頭の中で何回も響いた。

 

 

「お前の事は調べてある。名前はリン。産まれた時から両手足がなくて、一人じゃ何も出来ない可哀想な女の子だ」

「……ち、違う。私はスズだ。何も出来なくなんてない!」

 スラスターを吹かせてヒートホークを振る。しかし、そんな短調な攻撃は簡単に見切られてサイコザクレラージェに残された唯一の腕は宇宙を舞った。

 

 

「いや、お前は何も出来ない。この通り、お前はゲームでもだるまだ。一人じゃ何も出来ない。この偽物の世界で、本当の世界でやれない事が出来る訳ないだろうが!! 無駄なんだよ!! お前はどこにいっても、何も出来やしない!!」

「……っぁ」

 叩き付けられた言葉に、スズは瞳を揺らしながら自分の身体を抱く。震える腕の感覚が消えていくようだった。

 

 

「……やめ、て」

「お前には腕がない」

「やめて……」

「お前には足もない」

「やめてよ……」

「お前には何も出来ない」

「……やめ───」

「お前には───」

「俺の仲間を……侮辱すなぁぁぁああああ!!!!」

 二人の通信に、一人の青年の声が割って入る。気付けば、高速で接近する迅雷ブリッツの姿が肉眼で確認できる範囲にいた。

 

 

「ブリッツ、隠れていた奴がノコノコと……」

「……ノワール」

「スズから離れろ!! ゲスが!!」

 いつもは冷静なノワールが、声を荒げて全速力で突進してくる。そんな迅雷ブリッツの前に、近くに隠れていたゴトラタンが立ち塞がった。

 

 

「邪魔だ!!!」

 しかし、そんなゴトラタンをノワールの迅雷ブリッツはトリケロスツヴァイのブレードを展開して止まる事なく通り際に切り刻んで突破する。

 

 

「ほぅ」

 それを見たキュベレイのパイロットは文字通りだるまになったサイコザクレラージェを蹴り飛ばして、迅雷ブリッツのブレードを腕ごとサーベルで切り飛ばした。

 しかしノワールは残った腕でビームサーベルを振り、キュベレイの左腕を切り飛ばす。

 

 

「フラッグ機がノコノコと……」

「お前もそうだろう……!」

 ゴトラタンを倒し、残るアンチレッドの機体はキュベレイだけだ。このキュベレイさえ倒せばメフィストフェレスの勝利である。

 

 しかしメフィストフェレスも、ゴールドフレームオルニアスとサイコザクレラージェは撃墜こそされていないが戦力外だ。この戦いは実質的に迅雷ブリッツ対赤いキュベレイのフラッグ機体同士の戦いになる。

 

 

 

「どうしてスズにあんなことを言った!!」

「そう熱くなるなよ。言っただろう、俺はただ……GBNに復讐をするだけだ!」

 サーベルが重なり合って火花が散った。その火花に混じって、ファンネルが迅雷ブリッツを取り囲む。

 

 

「……くっ!」

 ノワールは即座にミラージュコロイドを展開した。ブリッツの姿は広大な宇宙に混じって消える。

 

 

「だから俺はGBNに固執する奴を片っ端から潰す。……これはその始まりに過ぎないんだよ!」

 不適に笑う男のファンネルが一斉に同じ方向を向いた。しかしそこに消えたブリッツがいる訳ではない。まさかと思ってファンネルの銃口の先を見る。

 

 ───そこにいたのは、抵抗する事も出来なくなったサイコザクレラージェだった。

 

 

「お前……何を」

「お前が隠れるなら、遊びの続きだ」

 ファンネルの銃口が光る。ビームがサイコザクを貫いた。しかし、撃破はされない。ギリギリ撃破されないように、ただ弄ぶようにサイコザクを攻撃する。

 

「嫌だ……なんだ……なんで…………私は……ぁぁっ」

 両手足もスラスターも、頭も破壊されて、スズは本当に何も出来なくなっていた。

 

 

「辞めろぉぉぉおおおお!!!!」

 激昂したノワールの迅雷ブリッツがキュベレイに迫る。しかし、待っていたと言わんばかりに放たれたファンネルがその迅雷ブリッツの両足を撃ち抜いた。

 そしてキュベレイのビームサーベルが迅雷ブリッツの手首と頭を切り飛ばす。ノワールは何が起きたのか分からずに、唖然として動けなくなっていた。

 

 

「……なん、だと」

 負ける。

 

 

 ──あんなのに負けんなよ──

 好敵手(ライバル)の言葉が脳裏に浮かんだ。

 

 

 ──私情に流されてチームの敗北に繋がるミスをする奴に、リーダーの資格はない──

 その好敵手に自分が言った言葉を思い出す。

 

 

 

 俺は何をしているんだ。

 

 

 

「お前はそこで見てろ、この一人で何も出来ないだるまがバラバラにされていくのをな。……まぁ、お前も何も出来ないんだけどな」

 キュベレイはゆっくりとサイコザクレラージェに近付いてビームサーベルを構える。その光の剣を、彼は少しずつコックピットに近付けた。

 

 

「泣き叫べ。もう二度とGBNにログインしようなんて思えない程の恐怖を思い知れ……」

「……ぁ、あ……ぁぁっ」

「スズ!!!」

 ノワールの声が彼女の頭の中で響く。

 

 

 ──だからあなたには、私が力を与えますわ──

 その声に誰かの声が混じった。次回の奥で、何かが光る。

 

 

 ──だからあなたは───スズは、笑って──

 大切な声だ。大切な人の声だ。

 

 

 ──はい、それが新しいあなたの名前ですわ。私の作った最強のガンプラを使って最強のバトルをする。さぁ、スズ───立ってごらんになって!──

 そうだ、私は───

 

 

「───私はリンじゃない!! ここに居る私は、アンジェの最高のガンプラで!! 最高のバトルをする!! フォースメフィストフェレスのスナイパー、スズだ!!!」

 レバーを回す。

 

 

 ──大丈夫。アンジェに奥の手も用意して貰った。……私は、出来るだけ多く相手を屠る──

 ──あ、あはは……。私は乗り気じゃなかったんですのよ? でもスズがどうしてもと言うから──

 彼女にはまだ奥の手が残されていた。

 

 それは両手足もサブアームも失って尚も使える、正真正銘の奥の手である。

 

 

 

「あ?」

「……アンジェの邪魔をする奴は───全員地獄に叩き落とす」

 サイコザクレラージェを淡い光が包み込んだ。

 

 それは、つい先程イージスを包み込んだ光と同じようで───

 

 

 

 自爆。

 それがサイコザクレラージェの最後の奥の手。

 

 

 

「落ちろ」

「そうかよ、それじゃ……仲良く死んでろ」

 ───そんなサイコザクを、キュベレイは即座に投げ飛ばす。

 

 

「───ぇ?」

「スズ……!!」

 宇宙を漂う自爆寸前のサイコザク。その近くには、ノワールの迅雷ブリッツが居た。

 

 

「……ぁ、嫌……違う。待って! ノワール、逃げて!! ごめん……ごめんなさい。違う、違うんだ……アンジェ…………嫌だ、嫌だ! 私が……私がアンジェの邪魔を……嫌だ…………ノワール!!!」

「……スズ、お前は悪くない。悪いのは───」

 手足も何もないサイコザクレラージェが止まる事は出来ない。そんなサイコザクレラージェを、ノワールは辛うじて手首から上が残っている迅雷ブリッツの腕で抱き抱える。

 

 彼女を突き飛ばす事も出来た。それで生き残る事も出来たかもしれない。まだ勝つ方法も残っていただろう。

 でも、それだけは出来なかった。

 

 

 

 爆炎が広がる。サイコザクレラージェと迅雷ブリッツは光に飲み込まれた。

 

 

 

 フラッグ機迅雷ブリッツ撃沈。

 

 

 

 ‪WINNER FORCE‬ アンチレッド

 

 

 

 

 

 ただ一人、戦場に残されたゴールドフレームオルニアスの中で。アンジェリカは強く手を握る。

 

 

 片腕を失った赤いキュベレイだけが、その戦場で笑っていた。




鬱展開は申し訳ないです。続くアンチレッドの復讐、次の対戦相手はフォースReBondだ。

展開が暗いのを払拭する為にイラストを描いてきました!

【挿絵表示】

ルナマリア・ホークのコスプレしたユメちゃんです。髪の色が絶妙に合わない。
本当は評価17件お気に入り170人の記念で描くつもりだったんですが、前回評価が入ってお気に入りも180人超えそう……。本当にありがとうございます。


そしてリライズ。マジで熱い。終わらないで欲しいけど、来週で終わりですね!!展開がたまらん。本当はリライズ終わる頃にはこの作品完結させるつもりだったのにまだまだ先になりそうです。リライズ終わってもReBondを宜しくお願いします……!!

それでは読了ありがとうございました。
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