ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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復讐

 どう声を掛けたらいいか分からなかった。

 

 

 双子の少年達も、悔しくてたまらない。

 だけど、目の前の小さな女の子はそれ以上の感情に飲み込まれようとしている。

 

「お、おかえりスズさん」

「が、頑張ったねスズさん」

 二人の言葉は届いたのか届いていないのか。スズは何も言わずにその場から消えた。

 

 

「あ、アンジェリカさん……」

「の、ノワールさん……」

 震える二人の声。アンジェリカは黙って俯いて、ノワールはゆっくりと崩れ落ちる。そして───

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

 ───床を叩いて、青年は絶叫した。ただ、ただ……自分が情けなかった。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 モニターから視線を動かさずに、ニャムは眉間に皺を寄せる。

 そんな彼女の隣で、ユメは何も言わずに振り向いた。ニャムは今にも走り出そうとしたそんな少女の肩を掴む。

 

 

「何処に行く気っすか? ユメちゃん」

「何処って……スズちゃんの所だよ!!」

「次の次がジブン達の試合っすよ」

「ニャムさんは今のバトルを見てなんにも思わなかったの!?」

 声を荒げるユメの肩を離すニャム。彼女は俯いて、しかしハッキリと口を開いた。

 

「ジブンはあの男と同じような事をしていた人間っす。……だから、ジブンが何を言っても説得力なんてないっすよ」

「ち、違……ニャムさんはあんな人とは───」

「同じっす。……だからこそ、許せない」

 彼女は震える程手を強く握っている。そんなニャムを見て、ユメは少しだけ落ち着いてその場に止まった。

 

 

「ジブンもそうだったように……ああいう奴は、ぶん殴って目を覚まさせるのが一番っすよ。ケイ殿がジブンにしてくれたみたいに」

「ニャムさん……」

「それに、これはメフィストフェレスの人達の問題っす。スズちゃんが今の戦いでどんな傷を負ったか、ジブン達なんかには計り知れない。……今は、彼等に任せた方が───」

 ニャムがそう言いかけた時、その場に居て黙っていたトウドウが視線を動かす。

 その先にはメフィストフェレスのアンジェリカにノワールとレフト、ライトの四人が立っていた。

 

 

「ノワール……」

 トウドウの呼び掛けに、彼は答えない。ゆっくりと俯いて歩くのが精一杯かのように、その瞳は光を失っている。

 

 

「あ、あはは。負けてしまいましたわ」

「アンジェリカさん……」

 唯一顔を上げて口を開いたのはアンジェリカだった。しかし誰が見ても分かるような無理矢理作った笑顔に、ケイは言葉を失ってしまう。

 

 

「あ、あの……スズちゃんは?」

 スズが居ない事に気が付いて、ユメはそんな言葉を漏らした。レフトとライトは気不味そうに視線を逸らす。

 

「ログアウトしましたわ。私が様子を見てきますので、ノワール達は後を頼みますわよ」

 アンジェリカの儚げな表情に、ユメは言葉を飲み込んだ。ニャムの言う通り、彼等の感情なんて計り知れない。自分にできる事なんてない。

 

 

「スズちゃん……」

 試合を思い出して、ユメは唇を噛み締める。彼女にとってスズは大切な友達の一人だった。ガンプラが、この世界が好きな───大切な仲間だと思っている。

 

 だから、何も出来ない自分が悔しかった。

 

 

「ユメさん」

 そんな彼女に、アンジェリカは優しく微笑みかける。

 

 

 

 

「スズの事を気に掛けてくれてありがとうですわ。でも、次の試合……最も気を付けなければいけないのはきっと貴方ですのよ」

「私……?」

 アンジェリカの言葉に首を横に傾けるユメ。それを聞いていたケイは、強く拳を握りしめた。

 

 

「あの赤いキュベレイの男、一回戦でも言っていたように何かGBNに恨みがあってこの大会に参加しているようですわ」

「GBNは人殺しだって……そう言ってたけど。でも、だからってスズちゃんにあんな───」

「彼の目的はきっと、GBNから人を離れさせる事。そんな事をしてどうするのから分かりませんが、スズの心情を知っていなければあそこまでの事は言えない。彼にはそれだけの目的がある」

 俯いてそういうアンジェリカ。その手が震えているのを見て、ユメは息を呑む。

 

 

「スズちゃんは……」

「大丈夫。スズは強い子ですから。私に任せて下さい」

 そう言ってから、アンジェリカはコンソールパネルを開いてログアウトボタンを押した。

 

 

「トウドウ、三人とReBondの方々を頼みましたわよ」

 彼女が残した言葉に、トウドウは無言で首を縦に振る。レフトとライトはともかく、ノワールは俯いて黙ったままだ。

 

 

 

「ごめん、トウドウ……。僕ら、何も出来なかった」

「僕ら、スズさんを守れなかったよ」

「……全員ベストを尽くした。誰も謝る必要はない」

 二人の言葉にそう返すトウドウ。しかし、彼の言葉にノワールは拳を強く握りしめて歯を食いしばる。

 

 

「俺は……!! ベストなんて尽くせてない……」

「ノワール……」

 突然声を上げるノワールに、トウドウはどう声を掛けて良いか分からなかった。

 彼はこのメフィストフェレスのリーダーである。試合に負けた事も、スズの事も背負わなければいけない人物だ。

 

 それでも、彼を責める事なんて出来ない。

 

 

「俺は……スズを守ってやれなかった。俺は、リーダーとしてチームを勝利させる事が出来なかった。……感情に任せて突っ込んで、皆が作ってくれたチャンスをドブに捨てた!!」

 蹲って地面を殴り付ける。

 

 ここはGBNで、電脳世界だ。殴り付けた拳に痛みは無いだろう。しかし、彼のその姿はとても痛々しい。

 

 

「俺は……リーダー失格だ」

「んな事あるかよ!」

 蹲っていたノワールの胸ぐらを掴んで声を上げたのは、ロックだった。

 彼はそのままノワールを立ち上がらせて、眼を真っ直ぐに睨む。

 

 

「……俺は、私情に流されてチームを敗北させた。お前に言った事を、俺は……俺は……!!」

 私情に流されてチームの敗北に繋がるミスをする奴に、リーダーの資格はない。フォースメフィストフェレスとの戦いの時、ノワールはロックにそう言った。

 

 

 だが今回の試合でノワールはどうしたか。

 

 

「スズを見ていられなくて……! 俺は、感情に流されて飛び出した! 俺が、俺が……チームを敗北させたんだ!!」

 もしあの試合で、ノワールが最後まで隠れていてキュベレイに奇襲を掛ければバトルには勝っていたかもしれない。

 そのチャンスを自分で捨てた事は、彼がロックに言った事を自分で再現した事に他ならないだろう。チームの勝利のみを考えればそれが正しい筈だった。

 

 

「じゃあお前は……あのままあの子がやられてるのを、黙ってみてるのが正しかったって言うのか!? 違うだろ!!」

 そんなノワールに、ロックは大声で怒鳴り付ける。

 

 

「……っ、それは」

「お前はリーダーだから、あの子を守る為に戦った!! そうじゃねぇのか!? お前のあの行動の……何が間違ってるってんだよ!!」

 ロックの手は震える程強く握られていた。今のバトルでのノワールの行動は、何一つ間違っていない。彼はそう思っている。

 

 

「そんなお前を、そんなお前の仲間を……侮辱したあのフォースのリーダーを俺は許さねぇ」

 そう言いながらロックはノワールを離した。放心状態だったノワールは、ロックの言葉を聞いてその場に崩れ落ちる。

 

「俺は……」

「お前は間違ってなんていない。お前は、俺が憧れたリーダーの鏡だ。そんなお前を侮辱した奴は───俺がぶちのめす」

 ノワールに背を向けて、ロックは「ReBond集合!」と声を上げた。

 そんな彼の背中が思っていたよりも大きく見えて、ノワールは眼を見開く。

 

 

「……お前は、やっぱり良いリーダーだな」

「立てるか? ノワール」

 手を伸ばすトウドウに、ノワールは「大丈夫だ」と立ち上がった。その瞳は真っ直ぐにライバルの背中を追い掛ける。

 

 

「スズの事はアンジェリカに任せよう。……今は、アイツの戦いが見たい」

「そうだな」

 次の試合が終われば、今日の最終戦だ。その戦いで、ReBondとアンチレッドが戦う事になる。

 

 

 今はその戦いを見届ける事だ。

 

 

 

「とりあえず作戦会議すん───って、あれ? おっさんは?」

 ロックがReBondを集めて作戦会議を開こうとした矢先、その場にカルミアが居ない事に気が付く。

 さっきまで居たのにと頭を掻くロックに、ユメが「カルミアさんならトイレに行くって言ってたよ」と言伝した。ロックは「トイレだぁ!?」と眼を丸くする。

 

 

「GBNで……トイレ?」

 そんな伝言に、ケイは首を横に傾げるのであった。

 

 

 

 

 

「よ、シチョサン」

 当のカルミアは、会場の端で片手を上げて一人の男に声を掛ける。彼が声を掛けたのは、会場の端で漠然と立っているフードの男のアバターだった。

 

「GBN内で話し掛けるなと言った筈だ」

「いやー、おじさん歳だからメッセージ機能がよく分からなくてさぁ。ねーねー、この際だから教えてくれても良いのよ?」

「何の用だ」

 カルミアの言葉に男は視線も合わせずに答える。まるでお前の話を聞く気はないとでも言うように。

 

 

「……お前のやりたかった復讐ってのは、こんなふざけた事か。関係ない奴を傷付けてなんになる。ユメちゃんにも同じ事をする気か! セイヤ!!」

 男に詰め寄ってカルミアは声を上げた。しかし、そんな彼に対して男は視線も合わせずに口を開く。

 

「GBNがレイアにした事はもっと残酷だった」

「……っ、セイヤ」

「情でも湧いたのか? GBNの外でも生きていける人間に。レイアにはGBNしかなかった。そのGBNが、レイアを殺したんだぞ」

 男の瞳は何処も見ていないようで、一つの事しか見えていないようだった。そんな彼が恐ろしくて、カルミアは後退る。

 

 

「分かったらとっとと戻れ。次の試合、分かっているな?」

「……俺は」

「お前だってガンダムに、ガンプラに全てを奪われた筈だ。俺達は……その復讐をする。忘れたのか? あのユメってガキがお前と同僚から何もかもを奪ったのを」

「セイヤ……!」

「お前がやらなくても俺がやってやる。お前の分も、仲間の分も復讐を果たす。……その気がないなら消えろ」

 そうとだけ言って、男───セイヤはカルミアに背中を向けた。そんなセイヤの背中を四人の仲間が付いていく。

 

 

「ユメカ……」

 その中に一人混じる少年は、一人の少女の名前を口にしていた。

 

 

 

 

 

 現実世界。

 GBNからログアウトした一人の少女は、その綺麗な金色の髪を乱してベッドに顔を埋めている。

 

 

「……ごめんなさい、ごめんなさい」

 少女はただ一人泣いていた。自分の作った黒いガンプラを握りしめて、瞳に大粒の涙を流す。

 

 

 

「スズ……ごめんなさい。許して……。私のせいで……ごめんなさい」

 ただ彼女には泣く事しか出来なかった。




ガンダムビルドダイバーズRe:RISE完結おめでとうございます!!!滅茶苦茶に面白かった。最高でした。感想はTwitterで述べたので、とりあえずお祝いを。

ハーメルンのガンダムビルドダイバーズ原作作品も盛り上がると嬉しいですね。
そんな訳ですが、拙作はこのタイミングでシリアスモードです。お話は少しずつ進んで行きます。

そして評価18件、お気に入り180人ありがとうございますの記念イラストです!

【挿絵表示】

安直にダイバーズのキャラのコスプレさせようと思ったけどダイバーズのキャラがダイバーズのキャラのコスプレしてどうすんねんって事で、ビルドファイターズからアイラ・ユルキアイネン。これからもガンプラを楽しんでいきましょう!


それでは読了ありがとうございました!
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