ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

43 / 171
自分達の戦いを

 ガンプラを握りしめる少年の隣に、一人の男が立っていた。

 

 

「ガンダムが憎いか?」

「……違う」

 男の質問に少年は首を横に振る。

 

「ガンプラが憎いか?」

「……違う」

 再び首を振る少年に、男は不敵な笑みを見せた。

 

 

「GBNが憎いか?」

「……っ」

 少年は答えずに、ただ自分が持っていたガンプラを投げ捨てる。

 

 

「なら、着いてこい。俺達がお前の復讐を手伝ってやる。だから、お前は俺達の復讐を手伝え」

「復讐……?」

 少年は目を見開いた。そして、地面に転がっているプラモに視線を移す。

 

 

「俺達から何もかもを奪ったガンダムを、ガンプラを、GBNを───全てぶっ壊す。……お前、名前は?」

「……俺は───」

 少年は投げ捨てたガンダムに手を伸ばしながら口を開いた。

 

 

 ──何度壊れたって、何度でも直せば良い。繋げば良い──

 

 

「───アオトだ」

 その瞳の奥は───

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「何してたんだよおっさん」

 NFT会場。

 試合を控えていたReBondのメンバー達だったが、トイレに行って来ると言ってその場を離れたカルミアが戻ってきたのは試合開始五分前である。

 

 

「いやー、悪い悪い。おじさん歳だから便秘気味でさぁ」

 頭を掻きながらそういうカルミアにロックは目を細めた。緊張感のないおっさんだ、と口を尖らせる。

 

 

「揃ったので、本格的に作戦について話すっすよ!」

 しかし、時間もあまりないのでニャムは話を切り替えてコンソールパネルを開いた。

 

 そこに映るのはランダムで決められた対戦ステージである荒野と、対戦相手のチーム名及び機体名である。

 そのチーム名"アンチレッド"の名を見てカルミアは目を細めた。

 

 

「ステージは高台の多い荒野で、重力下なので敵チームのファンネル機体が弱体化しているのはこちら側に有利っすね」

「なんでも良いし、俺はアイツらをぶっ倒すだけだけどな」

 アンチレッドとメフィストフェレスの戦いを見てロックは苛立ちを隠さずにいる。そんな彼の姿勢にケイは少し不安を覚えていた。

 

「熱くなり過ぎて足を救われるなよ……?」

「熱くなんてなってねぇ!! あんなの……ガンプラバトルじゃねぇだろ」

 ケイの言葉にロックは目を逸らしながら言葉を落とす。そんなロックを見てカルミアも視線をどこか遠くに逸らした。

 

 

「ケイ殿の言う通りっすけど、ロック氏の言う通りでもあるっす。……ジブンが言うのもなんすけど、あんな戦いを見せられて何も思わない方が無理ってもんっすよ」

「私も……スズちゃんにあんな事した人は少し許せない。けど、仕返しとか……そういうのはいけないと思う」

 怒りを露わにするニャムの言葉に、スズはそう言葉を漏らす。彼女の言葉にニャムは頭を掻いて「それは……確かに」と視線を逸らした。

 

 

 

「俺達は俺達の戦いをしよう。相手がどうとか、そういうのは関係ない。……俺達がガンプラバトルを楽しむ気持ちを、そのままぶつければ良いと思う」

 沈黙するチームの中で、ケイはそんな言葉を漏らす。ロックとニャムは彼の言葉に溜息を吐いてから「確かに」と言葉を揃えた。

 

「……俺様とした事が熱くなり過ぎたか。俺はロック・リバー。クールで格好良い男だからな。そうだな、俺はただ相手を倒すだけだ」

「ケイ殿はジブンと戦った時もそうでしたよね。なるほど、まだまだジブンも心構えが足りないみたいっす」

 複雑な心境を振り払えた二人の横で、カルミアだけは明後日の方に視線を逸らす。

 

 

 自分がなぜここに居るのか、少し分からなくなってきた。

 

 

 

「ただ一つだけ気になるんだけど」

「何? ケー君」

「さっきバトルを見てた時。ユメ、アオトの名前を呼ばなかったか?」

「え?」

「ほら、イージスが自爆した時」

 ケイはアンチレッドとメフィストフェレスのバトル中、イージスがウイングゼロアビージに掴みかかって自爆した時の事を思い出しながらユメに尋ねる。

 

 

 ──アオト君、ダメ!!──

 あの時、ユメはそう言った。彼女自身何故そんな事を言ったのかも分からない、ただ事の半分を理解しているカルミアは目を細めてユメを見る。

 

 

「何故……分かってるんだ?」

 そんな言葉が漏れた。

 

 

 

「えーと、私も分からなくて……」

「疲れてんのか? 無理すんなよ。いや……今からバトルなんだけどな」

 ユメの肩を叩いてそう言うロック。そんな二人を見ながらケイは「アオト……」と一人の友人の名前を呼ぶ。

 

 

 そんな訳がない。

 心のどこかでそう思いながら、ケイはユメの勘の良さが少し怖かった。

 

 エスパーか、ガンダムの作品で扱われている所のニュータイプか。そんなあり得ない可能性を考えてしまう。

 

 

 だって、アオトがあんな場所にいる訳がない。

 

 

 

「とにかく、作戦会議っす。今回フラッグ機はロック氏のデュナメスに設定で良いっすかね?」

「俺?」

「えーと、私は───」

「ユメちゃん、自分が狙われるって分かってるっすよね?」

 ユメが何かを言い掛けた瞬間、ニャムは目を細めて彼女の言葉を遮った。

 

 

「あのフォース、スズさんの先天性四肢障害を知っているようでした。そんな事を態々調べてるような連中っす、さっきの話の手前気にしたくはないっすけど……あの赤いキュベレイのダイバーがもし同じような事をしてくるなら───」

「ユメちゃんの足の事を言ってくる、か?」

 そして今度はニャムの言葉をカルミアが遮る。さっきまで沈黙していた彼の言葉に、四人は少し視線を落とした。

 

 

「怖くない……なんて事はないよ。私も、足の事色々言われたら嫌かもしれない。……だけど、もしそうなったら私は多分ギリギリまで落とされない。勝つ為には、私達のバトルをするには───」

「ユメちゃんそれは───」

「違うぜ、ユメカちゃん」

 ユメの言葉を遮るニャムの言葉を遮って、カルミアはユメの頭に手を置く。

 

 

 

「俺達私達のバトルってのは、相手の内面に揺さぶられないバトルだろ? そういうのは違うと思うのよね、おじさんは」

「カルミアさん……」

「これまでおじさん達はフィールドと、相手の機体と、自分達の機体の事考えて作戦を考えてきた。違う?」

 そう言ってカルミアはニャムに向き直って、顎に手を向けて片目を閉じながらコンソールパネルを眺めた。

 

 

「地上でファンネルが使えないし、相手の機体に強力な射撃武装を持つ機体は少ない。だから接近戦が一番上手なロッ君をフラッグ機にした。……で、良いよね?」

「そ、その通りっす。ステージ的にも近付かれる前までは、ロック氏のデュナメスとジブンのアッガイで索敵しつつケイ殿達に展開してもらうのが良いかと───カルミア殿?」

 ニャムに聞くだけ聞いて、カルミアは四人に背中を向ける。その視線はどこか遠くへ向けられていて、四人は目を合わせて首を横に傾けた。

 

 

 

「───何してんだ、俺」

 カルミアがそう言った瞬間、作戦会議時間が終わり五人はバトルフィールドに転送される。

 

 

 

「ノワール達にされた事は関係ねぇ。……俺は、このフォースを有名にしてアオトやニャムさんのお兄さんに俺達のバトルを見せるだけだ。───ロック・リバー、デュナメスHell。出るぜ!!」

 ReBondのデュナメスHell、ストライクBond、スカイグラスパー、アッガイ、レッドウルフが同時に出撃した。

 その光景をモニターで見ながら、ノワールは強く手を握る。小さく「気を付けろ……お前ら」と声が漏れた。

 

 

 

 ステージは見晴らしの良い荒野。

 ロックとニャムは岩壁の上に立って視界を確保し、お互いに索敵に集中する。

 

 見晴らしが良いと言っても今二人が居るような凸地も多い。

 フラッグ機であるロックが倒されれば負けのバトル。ロックは強く操縦桿を握りながら目を細めた。

 

 

 一方で崖の下ではカルミアのレッドウルフが待機している。近くには地下水脈に繋がる洞窟があり、カルミアはここを守るような立ち位置に配置していた。

 その理由は、もしカルミアを抜かれても自分達のフラッグ機が地下水脈に居ると思わせる為である。ガンダム世界特有の通常レーダーが機能しない設定において、この作戦は気休めではない。

 

 

 さらに奥。敵の機体を探すのは地上からケイのエクリプスストライクBond、空からはクロスボーンストライカーを装備したスカイグラスパーだ。

 二機はお互いに離れず動きながら、ニャムの指示を元に索敵をしている。

 

 

「ニャムさんのレーダーだと、この辺りに五機纏まってるって話だったよね」

「ユメ、俺から離れ過ぎるなよ」

「心配し過ぎだよケー君」

「そうかな……」

 索敵モニターから目を離さずに口を尖らせるケイ。GBNはガンダムの世界に同じくレーダーやセンサーはあまり役に立たない。

 索敵用に開発されたニャムの機体でも、敵が離れ過ぎているとその効果も半減してしまっていた。その為、今回はケイとユメで大まかな敵の位置を偵察中である。

 

 

「見付けたら奇襲を掛けて、絶対に逃げられる距離を保って撤退。とりあえずの目標は敵を先に見付ける事か……」

「その為の遠距離射撃ようのエクリプスで、逃げる時用に私がクロスボーンなんだね」

 この有視界戦闘において、モニターに映った敵の影を見落とすことは最大の命取りだ。ユメの事は心配しつつ、ケイはモニターを睨み続けた。

 

 

「ユメ、なんか慣れてきたな」

「そうかな、えへへ───あ、ケー君。五時の方向!」

「敵か?」

 そんな中で、敵を先に見つけたユメは機体を大きく旋回させる。スカイグラスパーのモニターには五機の赤い機体が写っていた。

 

 

「バレてないな?」

「うん。ケー君!」

「任せろ!」

 ケイはスラスターを吐かせ機体を持ち上げて、ユメが見付けた纏まっている五機を機体の射程内に入れる。

 サイコザクレラージェ程ではないが、このエクリプスストライクの有効射程は射撃特化装備を銘打っているだけあって伊達ではない。

 

 ヴァリアブル・サイコ・ライフル、ブラスターカノンを展開したケイは、五機に向けて一斉にその砲身から光を放った。

 

 

「一機でも多く、どうせ使い捨てるんだ! 砲身は焼き切れても良い!!」

 オーバーロードも気にせずに、ライフルを連射するエクリプスストライクBond。その砲火は纏まっていた五機を襲い、地面を焼き払う。

 

 爆炎が舞い、荒野を砂嵐が覆い尽くした。

 砲身が熱で捻じ曲がったライフルとブラスターカノンを地面に落としながら、ストライクBondはエクリプスストライカーに充填されていたエネルギーを使い果たしフェイズシフト装甲が解除されていく。

 

 

「……流石にこれでフラッグ機撃破はないか。何機倒せた? とりあえず換装して、逃げる準備───」

「ケー君!!」

 汗を拭うケイのストライクBondの右足を、閃光が掠めた。ビームライフル。直撃はしなかったが、ケイは青ざめながら回避運動を取る。

 

 

「あの五機がこんな遠くの敵に攻撃してくる!?」

 前述通りエクリプスストライクBondの射程は通常のMSより遥かに長い。しかし、その距離の有利を覆されていた。

 

 

「一体何が……」

 ユメからクロスボーンストライカーを譲り受けながら、ケイは機体を反転させる。当初の予定通り、奇襲を掛けて逃げるつもりだが想定外の迎撃に冷や汗が垂れた。

 

 

 スラスターを吹かせるストライクBondとスカイグラスパーの背後で、砂埃の中から赤い閃光が一つ飛び出す。

 

 

 それは鋭利な飛行形態に変形した可変MS───

 

 

 

 

「イージスか……!」

 ───イージス。

 

 

 ──アオト君、ダメ!!──

 その機体だった。




ついにアンチレッドとのバトルスタート。ケイとユメの前に立ち塞がるのは……?

読了ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。