ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】 作:皇我リキ
両手足を一つの鋭利な先端のように纏めて可変するMSイージス。
元々が手足の為に可変した状態でも、イージスは機体前方の手足を広げて敵を拘束する事が出来る。
さらに両手足の間には複列位相エネルギー砲『スキュラ』を搭載。可変中前面への射撃のみならず、拘束した敵をこの武装で撃ち抜く事も可能だ。
そんな武装『スキュラ』を、イージスは前面の敵二機に向けて放つ。
「───ストライク、か」
「───イージス……!」
イージスのパイロットはストライクの名前を、ストライクのパイロットはイージスの名前を口にしていた。
因縁の機体。
それは、機体同士だけでなく。そのパイロット達にとってもの話である。
あの日───
「な、何すんだよ父さん!」
「こんな物もう直したってな! なんの意味もないんだ!」
「プラモ、車に轢かれちゃう……っ」
アオトの父親が道路に投げ捨てたガンプラはストライク。そして、そのストライクとGPDで戦っていた機体こそ───
「ユメカ……ユメカ!!」
───ケイスケのイージスだった。
☆ ☆ ☆
光が空を突き抜ける。
「ユメ、避けろ!!」
「大丈夫! ケー君こそ、大丈夫!?」
「流石に追い付かれるか……。いや、このクロスボーンストライカーなら……!!」
大型のスラスターを全力で吹かすストライクBond。その背後から、イージスが可変状態で追いかけてきていた。
なんとか機体を左右に揺らしてスキュラを避けるが、その度にイージスとストライクの距離が縮まっていく。
「大丈夫、もう少しで合流地点だ……!」
高速飛行での戦闘で背後を取られる事そのものが死に体だ。
振り向いて迎撃しようとすれば、その隙に射撃を捻じ込まれるだろう。
しかし、唯一の救いはもう少しでロック達が固まっている地点へ辿り着く事だった。そうなれば単騎で追いかけて来たイージスは一気に不利になる。
「ケー君!!」
「スキュラか……!」
何発目かのスキュラ。ケイは回避運動の為に左にスラスターをずらして、機体を右に逸らした。
しかし、ストライクが移動した場所に向かってスキュラが飛んで来る。相手の移動を読んで攻撃をその場に置いておく、所謂曲げ打ちだ。
「曲げ打ち!?」
目を見開いて驚きながらも、ケイは腰のビームサーベルを引き出してサーベルを展開する。
機体をひっくり返して、ビームサーベルとさらにビームザンバーの光の刃二つを交差させてスキュラをなんとか防ぎ切った。
しかし、ビームザンバーは溶解して使い物にならなくなってしまう。こうなると頼みの綱はビームサーベルだけだ。
「ストライクBondじゃなかったら今のでやられてた……」
ケイはいつかの日、アオトから譲り受けたストライクをそのまま改良して使い続けている。
彼のストライクの特徴でもあった、両腰にアーマーシュナイダーとビームサーベルを分けて装備する改造は今もこのストライクに受け継がれていた。
そのおかげで、今の窮地をなんとか脱出出来たのである。
「あのビームサーベル、やっぱり……そうか」
イージスのパイロットはそんなストライクを見て目を細めた。そして速度を落としたストライクに対して、機体を変形させて両肘のビームサーベルを展開して突進する。
「ケー君!」
「追撃は読めてる!」
もう少しで合流地点。それを頭の隅に置きながら、ケイは後退しつつもビームサーベルを構えた。
ロックのデュナメスHellやカルミアのレッドウルフの射程距離までもう少し。あと一瞬耐えればなんとかなる。
「───ケイスケか!!」
「───は?」
ビームサーベルがぶつかり合ったその時。イージスからの接触回線でありえない言葉が聞こえて来た。
「なんで……俺の名前を」
ダイバーネームの
それも何処かで聞いた事のあるような声で。
──アオト君、ダメ!!──
そんなユメの言葉が脳裏を過る。
「アオト……なのか?」
もしそうだとしても、再開の喜びよりも大きな疑問の方が強く突き刺さった。
アンチレッドのバトルを思い出す。あんなバトルをする人達の中に、アオトが居る訳がない。
そうして首を横に振るが、次の瞬間ケイを現実が突き刺した。
「……そうだよ、ケイスケ」
「……なん───っ!?」
その答えに驚愕している間に、アラートが一斉に鳴り始める。イージスのビームサーベルと鍔迫り合っている間に、機体の高度が落ちて地面に叩き付けられる直前だった。
「───どうしてだ、アオト!!」
「ケー君!」
スラスターを吹かしてイージスを押し返すように機体を持ち上げる。その背後から、旋回して来たスカイグラスパーが援護射撃を行った。
これにはたまらずイージスのパイロット───アオトも舌を鳴らしてストライクBondから離れる。
「それは───こっちの台詞だ、ケイスケ!!」
スカイグラスパーに牽制射撃をしてから、再びストライクBondに接近戦を仕掛けるイージス。
ビームサーベルがぶつかり合って火花が散った。
「何……?」
「どうしてGBNなんてやってる……どうしてユメカを、こんな場所に連れてきた!!」
「どうしてって……!」
アオトが分からない。目の前に居る大切だった親友が、何を言っているのか分からない。
「ここでなら、ユメカも歩けるから……! ガンプラだって、楽しんでくれてるから!」
「ユメカを歩けなくしたのは、そのガンプラなんだぞ!!」
重なり合う刃。言葉同士がぶつかって、相手の気持ちが流れてくる。
「それでも俺は……ユメカに笑って欲しかったから!! お前が言ったんだろ、ユメカを頼むって!!」
「GBNなんかに頼れなんて言った覚えはない!!」
「なんかって……!」
斬り合いが続いた。その内にケイはデュナメスHellの射程圏内に入り、背後から援護射撃が続く。
しかしやはりというか、デュナメスHellのGNスナイパーライフルは擦りもしなかった。
「タケシのアホ……!」
「……アイツも変わらない。お前も、ユメカも、結局ガンプラに踊らされて」
「お前はさっきから何言ってんだよ……アオト!」
攻防の刹那、デュナメスHellの援護射撃とは逆からビーム攻撃が放たれる。どうやらアンチレッドの残りのメンバーが追い付いて来たらしい。
ケイは舌打ちしながら一旦ビームサーベルを薙ぎ払ってイージスを突き飛ばした。
「ユメ、戻るぞ!」
「え、でも……そのイージス───」
「今はバトルに集中する!」
イージスのパイロットが本当にアオトなのか、とか。なんで自分達に何も言わずにガンプラバトルを始めていたのか、とか。
聞きたい事は山ほど有る。しかし、今はもっと優先するべき事があった。
「お前にユメカを傷付けさせたりしない……絶対に」
「お前がユメカを傷付けるんだよ……ここに連れてきた事でな、ケイスケ」
クロスボーンストライクBondのスラスターが火を吹く。流石の離脱性能に目を細めるアオトだったが、直ぐに背後からアンチレッドの三機が合流した。
アンチレッドの機体はケイの奇襲でジンクスが撃破され、ゴトラタンは右腕を失ったがそれ以外は大きなダメージは見当たらない。
アオトはストライクが向かった先を知らせると、一度ゆっくりと目を閉じる。
「行きましょう……復讐を果たしに」
その瞳は赤く、揺れていた。
「カルミアさん!」
「……お、戻ってきたか」
一方でなんとか離脱したケイとユメは、カルミアの待つ地下水脈への入り口に辿り着く。
「俺達はニャムさん達と合流します」
「でも、良いんですか? 本当に一人で……」
次の作戦は敵を地下水脈に誘導し、相手を後ろから叩く戦法だった。
それにはカルミアにこの地下水脈入口を守る振りをしてもらい、相手にそこを突破してもらわなければならない。
つまるところ、カルミアは捨て駒になる。
「ぇ、あー、別におじさんは……ね? なんならおじさんが全部倒しちゃっても構わんのでしょう? ほらほら、二人は行きな」
二人はカルミアの言葉に甘えて、近くで待機しているニャム達と合流した。
後はアンチレッドがこの場に追い付いたら作戦開始である。
「カルミアさん、なんか変じゃなかった?」
「そうか? 俺は……よく分からなかったけど」
「お、来た来た。俺様の援護射撃はどうだったよ!」
「「一発も擦りもしてなかったよ」」
「なん……だと?」
話しながら合流して、ロックの一言目に同時に返す二人。ニャムはレーダーに注視しながら「作戦は今の所予定通りっす」と口角を吊り上げた。
「……ていうかお前さ、俺が援護してた時誰と戦ってたんだよ。なんで、アオトの名前が出てきた?」
通信状態が悪く会話の全てを聞いていた訳ではないが、ストライクとイージスの交戦中ケイが誰かと話している事だけはなんとなく察しが付く。
その会話の中に彼の名前があるものだから、ロックは目を細めてケイに問い詰めた。
「……アオトが居たんだ」
「はぁ?」
「アオトって……三人が探してる幼馴染みの男の子っすよね? どうしてまた。いや、再開を喜ぶべきなんすか? でも……」
ケイの返事にロックとニャムは頭に疑問符を浮かべて困惑する。
本来なら運命的な再開を喜ぶべき所だ。しかし、そのアオトが居るフォースがあのアンチレッドだったというのがどうしても納得出来ない。
「何かの間違いだった、とか?」
「それはないよニャムさん。相手も俺達を知ってたし……戦い方の癖も同じだった」
「ケイ殿……」
苦しそうな言葉にニャムはどうしたものかと考え込む。
今は当初の目的通り勝つ事が大切だ。
ケイはそう判断したからこそ、今ここに居る。
「んなもん、バトルが終わったら確かめに行けば良い。もしアオトが本当にあんな場所でイキッてるってんなら、俺様がぶん殴って連れ戻す」
「タケシ……。そうだな」
「流石タケシ君。リーダーだね!」
「ロックな?」
「三人共、そろそろカルミア氏と敵が接触するっすよ」
アッガイのレーダーで、四機の機体とカルミアのレッドウルフが同じ座標に映った。
「頼むぜ、おっさん」
この作戦の成否で、バトルの進め方は大きく変わって来る。ユメはスカイグラスパーを着陸させて、熱源探索対策をしてから四人で状況を見守る事にした。
「カンダ」
「カンダ先輩」
「……お前ら」
一方、カルミアのレッドウルフの前に四機の赤いMSが立ち並ぶ。
「奴等はこの先か? カンダ」
赤い手が伸びた。
アオトが駆るMSはイージスでした。因縁、ですね!
読了ありがとうございました!