ガンダムビルドダイバーズRe:Bond【完結】   作:皇我リキ

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カルミア

 カンダ・カラオという男の人生は平凡という訳ではなかったが、不幸ではなかった。

 

 

 趣味の合う友人に恵まれた学生生活。

 ガンプラという趣味を大いに満喫出来る社会的なブームは、彼が大学を卒業した後も変わらない。

 

 ガンプラバトルに魅了された人々の熱気に押され、彼もまたGPDやGBNを楽しむガンプラビルダーだったのである。

 

 

 

 そして彼が運命の出会いをしたのは、GBNの中ではなく就職した職場での事。

 

 

「なに、あんたもGBNやってるのか? おーおー、ガンプラ好き?」

「え? あ、あぁ……好きだが」

「そうかそうか! まさか職場の同僚にもガンプラ好きがいるたぁ、俺さん感激だわ。あんた名前は?」

「……せ、セイヤだ」

 それが、彼との出会いだった。

 

 

 カンダの強引な性格もあり、彼はセイヤと直ぐに打ち解けてGBNで遊ぶ中になっていく。

 

 彼───カンダのダイバーネームはカルミア。

 今現在フォースReBondに所属するダイバーだ。

 

 

 

「楽しいよなぁ、セイヤ」

「そうだな。……なぁ、カルミア」

「お、なによ?」

「北海道から出稼ぎに来てさ、俺は周りにガンダムが好きな奴が居るのか分からなくて歯痒い思いをしていた。……そんな俺をGBNに誘ってくれてありがとうな」

 そしてこの男───セイヤこそ、現在フォースアンチレッドを束ねるリーダーである。

 

 

「なに言ってんのよ。もっと集めようぜ」

「え? もっと?」

「おうよ。例えばさ、ガンプラ好きだけで会社を企業すんのよ。毎日が楽しいだろ。シャッチョサンはセイヤな」

「な、なんで俺なんだ……」

「俺さんはそういうの面倒だから?」

「……ったく、しょうがないな」

 その笑顔は呆れてはいても、屈託のない青年の笑顔だった。

 

 

 二人は思っていたよりも順調にその後も歩んでいく。

 

 ガンプラ好きな社員だけで作った会社。それは、プラモデル専門の運送業だった。

 このガンプラブームに乗った起業は大成功し、会社もみるみる大きくなっていく。

 

 

 

 しかし、運命の歯車が崩れ始めた。

 それは五年前のとある事故からだったのだろう。

 

 

 

「スピード出し過ぎよ」

「大丈夫っすよ! この辺人通りないんで!」

「元気なのはいい事だけどねぇ」

 それは新しく作った会社で、新人の運転をカンダが見守っていた時の事。

 

 

「……ガンプラ?」

「止まれ!」

「───え? うわぁ!!」

 プラモ屋から飛び出して来た女の子を、彼の乗っていたトラックが轢いてしまった。

 

 

「ユメカ……ユメカ!!」

「……な、なんてこった。ひ、ひぃ……ど、どうしたら……どうしよう!」

「あらら……これはヤバいな」

 社員が事故を起こし、決して大きくはなかった彼等の会社は大きな負債を負うことになる。

 

 

 それだけなら、良かったのかもしれない。

 

 

 

「すみません社長……すみません」

「良いんだ、サトウ。それより、ガンプラを嫌いになるなよ? ほら、事が落ち着いたらまた皆でGBNに行こう。会社の事は俺に任せれば良い」

 セイヤは事故でを起こした社員であるサトウに優しく接して、彼を支え続けた。

 そして大きな負債を抱えつつも、ガンダムが───ガンプラが好きな仲間達と前に進もうとしていたのである。

 

 

 GBNで彼女と出会い、別れるまでは───

 

 

 

「ごめんね、セイヤ」

「離せ、離せよ! 離せぇ!! レイアぁ!!」

 赤い髪の、何の変哲もない女の子だった。

 

 

 

「辞めろぉぉおおお!!!!」

 しかしその女の子は───

 

 

「GBNの運営を……俺は絶対に許さない。ガンダムを、ガンプラを……俺達は許さない」

「そうだ、ガンプラなんてなければあの時の事故も……」

「セイヤ……サトウ……お前ら───」

 ───伸ばした手は、届かない。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 赤い手が伸びる。

 

 

「奴等はこの先か? カンダ」

「セイヤ……」

「キサラギ・ユメカはどこですか、カンダ先輩」

「サトウ……」

 赤いキュベレイの隣、サザビーを駆るダイバーこそ、あの時事故を起こしたトラックの運転手サトウだった。

 サトウはカルミアのレッドウルフに詰め寄ってもう一度口を開く。

 

 

「キサラギ・ユメカは……どこですか。この先に居るんですか? 先輩」

「それは……」

 何が正しいのか、分からなかった。

 

 

 彼女がガンプラを取りに道路に飛び出さなければ、事故も起きなかっただろう。

 ガンダムを、ガンプラを恨む気持ちは自分にもあった。あの時だって───

 

 

「───だけど、あの子は」

「カンダ先輩?」

「あの子は、純粋だ」

 操縦桿を握る手が震える。

 

「確かに俺も、キサラギ・ユメカが憎かったさ。ガンプラが憎い、ガンダムが憎い、俺達から全部奪ったGBNが憎い。今だってな!!」

「カンダ、チームメンバーの居場所を言え。フラッグ機はどれだ」

 静かにそう言うセイヤを、カルミアは歯を食いしばって睨んだ。セイヤはそれでも瞬き一つせずに冷徹な目をカルミアに向ける。

 

 

「言え、カンダ」

「こんなのは復讐じゃねぇ……ただの八つ当たりだ。なぁ、俺達の目的はGBNを潰す事だろ? レイアがこんな事望むかよ!! セイヤ!!」

「GBNがレイアを殺したんだ。レイアにはGBNしかなかった」

「……っ」

 セイヤの言葉にカルミアの瞳が揺れた。頭の中に一人の少女の姿が浮かび上がる。

 

 

 

 ──セイヤ! カルミア! こっちこっち!──

 赤い髪の女の子。そこに居た筈の女の子。

 

 

 

「俺達には現実(リアル)がある。手足が無かろうが、動かすことが出来なかろうが生きていける。それなのに……GBNの運営は、GBNでしか生きていけないレイアよりもこのゲームのプレイヤーを選んだんだ。キサラギ・ユメカみたいなな!!」

「それは……」

 セイヤの怒号に、カルミアは言葉を詰まらせながら崩れ落ちた。

 

 ──ごめんね、セイヤ──

 

 

「言え、カルミア」

「……この奥には、居ない。奥の高台の裏で待機してる」

 そこまで言って彼は目を見開く。今の一言でチームの作戦は破綻した。

 勿論、初めから(・・・・)そのつもりだったのである。ReBondに近付き、この時の為の布石を整える事がカルミアの───カンダの役割であった。

 

 

 

「……フラッグ機は、デュナメスだ」

 思考が回る。まるで海の中にでもいるかのような浮遊感を感じた。

 

 

「……アッガイが索敵型で、司令塔の役割をしてる。だから、奇襲を掛けるならまずアッガイを───」

 これで良い。自分の役割を果たしただけだと、そう思って───脳裏に言葉が過ぎる。

 

 ──ユメちゃん達は顔も名前も知らない、初めて会った時とんでもない無礼をしたジブンの兄を探す手伝いをしてくれてるっす。根本的に優しくて、純粋なんすよ。純粋に、このGBNを楽しんでる……そんな子供達を守るのはジブン達大人の役目では?──

 

 

「───大人の、役割」

「それで良い。カルミア、お前も来い。ここからが、GBNへの復讐だ」

 カルミアの言葉を聞き終えたセイヤは、彼の報告した場所へ機体を向けた。

 それにイージス、サザビー、ゴトラタンも続く。

 

 

「レイア……」

 声が響いた。

 

 

 ──ごめんね、セイヤ──

 大切な仲間。大切な人の、大切な人。

 

 二人を合わせたのは自分だろう。二人を引き離したのも自分だろう。

 

 

 

 ──フォースの皆……ううん。同じ趣味でこの世界に来てる大切な友達と。だから、カルミアさんが楽しめる場所で遊びたいなって──

 偽りの仲間。憎しみの対象、大切な人の仇。

 

 

 ──ケー君達にオススメされて見たんです。カルミアさんはガンダムのアニメ沢山見てるんですか? どのアニメが好きなんですか?──

 それなのに、純粋で眩しい───まるで若い頃の自分を見ているようだった。

 

 

 ──カルミアさんは私達の大切な仲間ですから。物凄く強いし、信用も信頼もしてます! ね、二人共──

 彼女は何も知らない。俺達の復讐には関係ない。

 

 

 

 ──このGBNを楽しんでる……そんな子供達を守るのはジブン達大人の役目では?──

 

 

「……その通りだな、ニャムちゃん。その通りだ。……何やってんだ俺は」

 カルミア(レッドウルフ)が顔を上げ、その瞳が赤く光る。

 

 

「───セイヤ!!」

 そして、その赤い腕をサザビーに向けて飛ばすカルミア。セイヤは驚きつつも、ビームサーベルでレッドウルフのビームハンドを切り飛ばした。

 

 

「……なんのつもりだ、カンダ」

「……カンダ先輩!?」

 襲われたサトウは驚いて向き直り、それを救ったセイヤは鋭い瞳をカルミアに向ける。

 レッドウルフはサブアームでビームサーベルを持ちながら、ライフルをサザビーに向けていた。

 

 

「知ってる? カルミアって花があるんだけどね。おじさんのダイバーネームと一緒なのよ」

「な、何のことですか? カンダ先輩」

「カルミアの花言葉はな───」

 レッドウルフがライフルを放つ。セイヤは近くにいたゴトラタンの頭を掴んでサザビーの前に投げ飛ばした。

 

 ライフルがゴトラタンを貫き、機体が爆散する。

 

 

「……か、カンダ先輩?」

「───裏切り。ガンダムじゃ良くあることよね。おじさんさ、そういうのが大好きなのよ」

 目を細めてそう言うカルミア。言いながらも、彼はスロットを回して次の武器を展開した。

 

 

「ここで裏切るのってよぉ、すげぇガンダムっぽいよなぁ!!」

 レッドウルフのバックパックが展開し、大量のミサイルが放たれる。

 キュベレイ、サザビー、イージスは距離を取りながらミサイルに向けてライフルを放つが、キュベレイの真下から突然ビームが垂直に放たれた。

 

 予め設置しておいた、インコムの罠である。

 

 

「カンダ……っ!!」

「カンダ先輩! 何をするんですか!!」

「……裏切り? 違いますねぇ。おっさんの目的は初めから───」

 そうだ、あの時からずっと。セイヤをGBNに誘った時からずっと───

 

 

「───このGBNを楽しむ事だ!!!」

 スラスターを吹かせ、サザビーに向けて突進した。その前にセイヤのキュベレイが立ち塞がる。

 

 

「レイアの事を忘れたのか……カンダぁ!!」

「忘れちゃいないさ。忘れる訳もねぇ。……だけどな、いやだからそこ! アイツが居たここを!! アイツが守ったここを!!」

 キュベレイがレッドウルフの両腕を切り飛ばした。しかしカルミアは、腰のサブアームを展開してキュベレイの腕を掴む。

 

 

「たとえそれが無に帰っても、ELダイバーが救われてアイツだけが救われなかったとしても!! その思い出の場所も、無くしたらいけないだろ!!」

「カンダぁぁ!!」

 胸部メガ粒子砲の銃口が光った。セイヤは眉間に皺を寄せて叫ぶ。

 

 

「俺達が誰かから奪っちゃいけねーだろ!! セイヤ!!」

 銃口から光が直進した。

 

 

 

 

 ───しかしそれは、キュベレイを貫く事はなく、レッドウルフの胸部だけを貫いて止まる。

 

 

 

 

「奪うんじゃない、救うんだ。奪われる前に」

「……な。アオト君か」

 その光はレッドウルフの放った光ではなく、背後からレッドウルフの胴体に突き刺されたイージスのビームサーベルだった。

 

 イージスがサーベルを収納すると、カルミアのレッドウルフは力が抜けたように地面に倒れる。

 コックピットはエラーのアラームで真っ赤になっていた。カルミアは目を細めるが、直ぐに切り替えてニャムと通信を繋ぐ。

 

 

 

「ニャムちゃーん、悪い。作戦失敗」

「……っと、突然どうしたんすか!? カルミア氏。敵と交戦中では?」

「いや、それがなんだかんだあってねー。敵にそっちの場所バレちゃったよ」

「なんですとぉ!?」

「……だからさ、後の事頼むわ。それと、サザビーだけはユメちゃんに近付けさせるな」

 そう言って、カルミアは通信を切った。ニャムからは「え、どういう───」と聞こえたが彼女なら大丈夫だろう。

 

 

 

「カンダ、裏切るのか。……新しい仲間と戯れるのがそんなに面白かったか? レイアとの思い出よりも、お前は今のGBNを取るのか?」

「……俺もお前も、過去にとらわれてるだけなのよ。おっさんはね、ただ昔みたいにさ───」

「黙れ。もう良い。……二度と俺の前に顔を出すな」

「───せ、セイヤ!!」

 キュベレイのビームサーベルがレッドウルフを切り裂いた。

 

 

 機体は爆散し、そこにはキュベレイとサザビーとイージスだけが残る。

 

 

「アオト、良くやった」

「……はい」

「カンダ先輩……なんで」

「アイツの事は忘れろ。……行くぞ、俺達の復讐を続けるだけだ」

 三機はカルミアの言った場所に向けて、スラスターを吹かせた。

 

 

 

 フォースReBond残り機体四機。

 フォースアンチレッド残り機体三機。




カルミアには野心、裏切りといった花言葉の他にも大きな希望っていう花言葉もあります。面白い花言葉の花なので覚えておくと創作に使えますよ!
そんな訳でカルミア裏切りの裏切り回でした。

あとお気に入り二百人突破ありがとうございます!読了ありがとうございました!
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